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①
パシャッ。
そんな水音が聞こえた直後の事だった。
「どうして、シリル様はいつも私に嫌がらせをされるのですか?」
目の前に居たノエリア様が突然泣き崩れる姿を見て、私は眼を見開いた。あまりに想定外の状況だったのだ。おかげでよく周りから冷静沈着だと言われている私も人並みに驚いてしまっていた。
「ノエリア様、申し訳ございません。突然何を仰られているのか分かりかねるのですが……」
理解が追いつかない私は素直にそう告げてみる。だけど私の質問に対してノエリア様は返事をする気はないのだろう。
「私が市井上がりの者だからでございますか?」
涙を流しながらそう訴えるノエリア様とは、会話がかみ合う様子がなかった。
「だからいつも私に、このような嫌がらせをされるのですか?」
「ノエリア様、恐れ入りますが、どなたかと勘違いされておりませんでしょーーー」
「私のことを色々と陰で言われることは構いません。ですが、ガイラス殿下についてはさすがにガマンができません。いくらお優しいガイラス様が何も仰らないからといって、ガイラス様のお金はシリル様が私物化されて良いものではございません! そんなシリル様の裏切りにガイラス様がどれほどお心を痛められていたか……」
またそこまでお話をされていたノエリア様がワッと泣き崩れてしまう。正直その姿に焦りよりも疲れを感じてしまった私は、思わず溜息を吐き出した。
『なぜ?』と聞いたのだから、すこしは会話というものをして欲しい。そう思ってうんざりしてしまうのは、仕方ないことだと思うのだ。
よく婚約者である第二王子のガイラス殿下からは『そういった所が可愛げがないんだ!』と言われているけど、そこは忘れておくことにする。
そもそも今は第一王太子の生誕パーティーの真っ最中なのだ。そんな中での騒ぎに、周りにいた方々もこちらを興味津々に見つめていた。
「お話は後からしっかりとお伺いしますため、とりあえずお召し物をどうにかされた方がよろしいのではございませんか……?」
この状況はパーティーの主役である第一王太子へあまりに申し訳ない状況なのだ。私はノエリア様の勘違いを訂正する前に、この事態の収拾を優先することにした。
「ノエリア!! どうした!?」
それなのに、そんな私の思いとは裏腹に、大きな声を上げながらフロアを横切ってガイラス殿下がこちらへ駆け寄ってくる。
「ガイラス様……」
泣き崩れていたノエリア様と、ノエリア様の汚れたスカートを見て、ガイラス様が私をキッと睨み付けた。
「お前はまたこうやって、ノエリアへ嫌がらせをしていたのか!?」
「いいえ、そのような事に心当たりはございません」
「しらばっくれるな! 私はいつもノエリアから聞いているんだぞ」
「まぁ、どのような事をでございますか?」
「市井上がりだとずいぶんバカにするような事を言っていたようではないか!」
どうしてノエリア様がそんなことをガイラス様へ仰ったのかは分からない。でも。
「ノエリア様と私がお話をしたのは本日が初めてでございます。そんな私がどうやってノエリア様へそのようなことを言う機会がございましたでしょうか?」
私はハァと溜息を吐き出した。
「だが、今日だってこのように嫌がらせをしているではないか!!」
「いいえ、それは私が行ったことではありません」
「お前でなければ誰が嫌がらせをしたと言うんだ!!」
「…どなたもノエリア様へ嫌がらせなどはしておりません。ただ、ノエリア様が手に持っていらっしゃったグラスを、ご自身のドレスへ傾けてしまっただけのことでございます」
きっと誤って傾けてしまった、きっとそういうことだと思いたい。だってそうでなければあまりにお粗末すぎるのだ。
そんな水音が聞こえた直後の事だった。
「どうして、シリル様はいつも私に嫌がらせをされるのですか?」
目の前に居たノエリア様が突然泣き崩れる姿を見て、私は眼を見開いた。あまりに想定外の状況だったのだ。おかげでよく周りから冷静沈着だと言われている私も人並みに驚いてしまっていた。
「ノエリア様、申し訳ございません。突然何を仰られているのか分かりかねるのですが……」
理解が追いつかない私は素直にそう告げてみる。だけど私の質問に対してノエリア様は返事をする気はないのだろう。
「私が市井上がりの者だからでございますか?」
涙を流しながらそう訴えるノエリア様とは、会話がかみ合う様子がなかった。
「だからいつも私に、このような嫌がらせをされるのですか?」
「ノエリア様、恐れ入りますが、どなたかと勘違いされておりませんでしょーーー」
「私のことを色々と陰で言われることは構いません。ですが、ガイラス殿下についてはさすがにガマンができません。いくらお優しいガイラス様が何も仰らないからといって、ガイラス様のお金はシリル様が私物化されて良いものではございません! そんなシリル様の裏切りにガイラス様がどれほどお心を痛められていたか……」
またそこまでお話をされていたノエリア様がワッと泣き崩れてしまう。正直その姿に焦りよりも疲れを感じてしまった私は、思わず溜息を吐き出した。
『なぜ?』と聞いたのだから、すこしは会話というものをして欲しい。そう思ってうんざりしてしまうのは、仕方ないことだと思うのだ。
よく婚約者である第二王子のガイラス殿下からは『そういった所が可愛げがないんだ!』と言われているけど、そこは忘れておくことにする。
そもそも今は第一王太子の生誕パーティーの真っ最中なのだ。そんな中での騒ぎに、周りにいた方々もこちらを興味津々に見つめていた。
「お話は後からしっかりとお伺いしますため、とりあえずお召し物をどうにかされた方がよろしいのではございませんか……?」
この状況はパーティーの主役である第一王太子へあまりに申し訳ない状況なのだ。私はノエリア様の勘違いを訂正する前に、この事態の収拾を優先することにした。
「ノエリア!! どうした!?」
それなのに、そんな私の思いとは裏腹に、大きな声を上げながらフロアを横切ってガイラス殿下がこちらへ駆け寄ってくる。
「ガイラス様……」
泣き崩れていたノエリア様と、ノエリア様の汚れたスカートを見て、ガイラス様が私をキッと睨み付けた。
「お前はまたこうやって、ノエリアへ嫌がらせをしていたのか!?」
「いいえ、そのような事に心当たりはございません」
「しらばっくれるな! 私はいつもノエリアから聞いているんだぞ」
「まぁ、どのような事をでございますか?」
「市井上がりだとずいぶんバカにするような事を言っていたようではないか!」
どうしてノエリア様がそんなことをガイラス様へ仰ったのかは分からない。でも。
「ノエリア様と私がお話をしたのは本日が初めてでございます。そんな私がどうやってノエリア様へそのようなことを言う機会がございましたでしょうか?」
私はハァと溜息を吐き出した。
「だが、今日だってこのように嫌がらせをしているではないか!!」
「いいえ、それは私が行ったことではありません」
「お前でなければ誰が嫌がらせをしたと言うんだ!!」
「…どなたもノエリア様へ嫌がらせなどはしておりません。ただ、ノエリア様が手に持っていらっしゃったグラスを、ご自身のドレスへ傾けてしまっただけのことでございます」
きっと誤って傾けてしまった、きっとそういうことだと思いたい。だってそうでなければあまりにお粗末すぎるのだ。
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