人生前のめり♪

ナンシー

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6 日常(山に行く その1)

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陸上自衛隊では、『演習場で訓練すること』を『山に行く』と言う。いわゆる暗喩(比喩表現)である。

ある日、僕は近くの山に行ってきた。
と言っても今回は、趣味の登山であって、演習ではない。
そんなに高くも難しくもない場所だけど、久しぶりだったからガッツリ荷物背負って、トレーニング代わりとも言えるけれど、
楽しい時間だった。
営倉(宿舎)に戻ると、談話室に香山と須賀さんがいた。

香山「お帰り、無事か。」

須賀「お!山帰りか、お前も好きだなあ。」

僕「ただいまです。無事帰投。」

須賀「なんだ、ごきげんだな。一人でもそんなに楽しいのか?」

僕「植野も行くはずだったんだけど、急な任務入ってたし。
 一人もいいものですよ?」

香山「そうそう。一人だと歌いながら登れる。」

須賀「香山は人がいてもいなくてもいつも歌ってるじゃないか、しかもアニソン。」

香山「偵察中も頭の中ではリフレイン…」


20kg近いザックを下ろし、缶コーヒーを開ける。
山の上で淹れた珈琲、美味しかったな♪

僕「そういえばさ、今日はナンパされた(笑)」

須賀・香山「「(ΩДΩ)!!」」

須賀「お、女か?」

僕「もちろん(笑)いや、山の話しただけなんですが…なんか、子猫かリスみたいな…(o^^o)」

香山「…種族は?」

僕「ちゃんと人族の大人の女性だって(笑)
 面白い子だった♪」

香山「恐ろしい子…」

僕「面白い子だってば(笑)」

須賀「次はオレも山に行くぞ!荷物が重いほうがモテるのか?そのザイルやカラビナがモテポイントなのか?どうなんだ?!」

僕「あーそうかも。僕がモテたんじゃなくて、ツェルトやザイルにばっかり反応してたので。
 山のこといろいろ教えてほしいって僕のこと『師匠』って呼んでたし(笑)」

香山「師弟スポ根モノ?!」

須賀「くっ、マジ行けばよかった」

僕「また今度皆で行きましょう。香山もあの子なら話できるよ、きっと」

香山「…。」

僕「目を逸らすなよ(笑)」

須賀「絶対オレも誘えよ!」

僕「ハイハイ」



香山「で、自衛官だって言ったのか?」

僕「んー、職業聞かれなかったから言ってない。」 

須賀「本気で付き合うのか?」

僕「いや、まだ全然そんなんじゃないし…やっぱりそのうち聞かれるかなぁ。まだ言いたくないなぁ。」

須賀「なんだ、お前でもそこは尻込みするのか。」

香山「後からだとますます言い難くならないのか?」

僕「僕ら、仕事に関してはいろいろ言われすぎてるからねぇ…隠す気はないけど慎重にはなるね…」

須賀「ふん!言いたい奴には言わせとけ。」

須賀さんは、部屋に戻って行った。
いい人なんだよなぁ。

自衛官であることは僕らには当たり前のただの事実。
でも、世間では異なる見方が存在するようだ。
ここだけの話、自衛官であるというだけでフラれた奴もいる。
赤の他人に罵倒されたり、抵抗できないだろうと嘲笑されたり…理不尽なことも諦めてスルーするしかなかった。


香山「その女の事、気に入ったみたいだな…」

僕「そうだね、うん、まあ、何か言われても慣れてるはずだけど、彼女に言われたら嫌だなあと思うくらいには。」

それでも、僕は彼女…晴和(ハルナ)さんなら、笑って受け入れてくれる気がしている。
一緒にどこの山に行こうかなぁ。
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