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117 春はあけぼの 行事(入隊式)
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まだ風は冷たいが、桜の蕾がようやく開き始めた3月下旬、自衛官候補生が教育を受けるために各駐屯地にやってきた。
班長や同期との顔合わせをしたり、制服を合わせたり、入隊式の予行をしたりと、新しい生活の準備のため3月中には駐屯地入りする。
そして、桜舞い散る4月頭の入隊式において、宣誓書を読み上げ、サインをし、正式に自衛官候補生となる。
まもなく式典行事がはじまる時間だ。
新しい制服に身を包み、キビキビとした動きと大きな声、新人らしさが初々しい。
そんな我が子の晴れ姿を見るため、新隊員の家族も入隊式に駆けつけていた。入隊式後には家族との面会ができ、一緒に昼食をとる。
その時の家族の誇らしい顔を見るのが、僕の密かな楽しみでもある。
僕たち先輩自衛官も、めったに着ない制服と制帽姿で参加していた。
衛生の須賀さんは、具合が悪くなった人が出た場合のため、会場出入り口のある後ろのほうに待機。
R黒田や杦本は、教育隊の担当のため、新人のそばにいる。
特にワンコは、初めての新人教育だ。後輩を構いたくって仕方ない…いや?ワンコだけに構ってほしいのか?
杦本は普段から必要最低限のことしか言葉にせず、表情もあまり変わらないように見える。
身体を張って手本を見せるタイプだと思う。
一見強面で独裁者のようにも見えるが、ハートは熱いし仁義にも篤い。
座右の銘は
『退かぬ!媚びぬ!ちょっぴり省みる!』
って言ってて、周りからは「仁に目覚めたサ○ザー様」と呼ばれてたりする(•᎑•)
僕「…なんで僕が司会進行なんだろう…(´;ω;`)ウゥゥ」
植野「どんまいでーす。」
僕が滑舌悪いのは、周知の事実なのに、まさかの司会進行。
予行から見ている植野は、既に慰めモード。
僕だって諦めムード。
いや、やるけどね?
カミカミでも失敗しても平気な顔でやりきるけどね?
…切ない(・・、)
???「お母さーん‼」
突然会場中がザワついた。
香山「なんだ?」
新人君と家族らしい人たちが揉み合っている?
すぐ杦本やR黒田たちが駆け寄っているが、どうやら新人君が母親にしがみついて離れないようだ。しかも、わんわん泣いている?
みんなが遠巻きに注目する中、新人君とその家族は、会場から撤収していった。
最後に口元を引き締めた父親らしき人が、会場内に向かって深々と頭を下げて立ち去ったのが見えた。
家族の顔を見て里心がついたのか、入隊式前の集団生活で無理だと思ったのか、突発的に叫んでしまったのか…せっかく入隊をしても、向いてないなら辞めるしかない。
僕「…宣誓書にサインする前で良かったね。」
植野「そうですねー、でももしかしたら戻ってくるかもー?」
僕「うん、もしかしたらね。」
他の新人君たちに影響がないといいなぁ。僕はため息を飲み込む。
僕「今年も波乱含みの教育隊だなぁ…」
植野「そーですねーあははー」
僕「あははー」
まずは司会進行を、噛まないように頑張ろう、うん。
班長や同期との顔合わせをしたり、制服を合わせたり、入隊式の予行をしたりと、新しい生活の準備のため3月中には駐屯地入りする。
そして、桜舞い散る4月頭の入隊式において、宣誓書を読み上げ、サインをし、正式に自衛官候補生となる。
まもなく式典行事がはじまる時間だ。
新しい制服に身を包み、キビキビとした動きと大きな声、新人らしさが初々しい。
そんな我が子の晴れ姿を見るため、新隊員の家族も入隊式に駆けつけていた。入隊式後には家族との面会ができ、一緒に昼食をとる。
その時の家族の誇らしい顔を見るのが、僕の密かな楽しみでもある。
僕たち先輩自衛官も、めったに着ない制服と制帽姿で参加していた。
衛生の須賀さんは、具合が悪くなった人が出た場合のため、会場出入り口のある後ろのほうに待機。
R黒田や杦本は、教育隊の担当のため、新人のそばにいる。
特にワンコは、初めての新人教育だ。後輩を構いたくって仕方ない…いや?ワンコだけに構ってほしいのか?
杦本は普段から必要最低限のことしか言葉にせず、表情もあまり変わらないように見える。
身体を張って手本を見せるタイプだと思う。
一見強面で独裁者のようにも見えるが、ハートは熱いし仁義にも篤い。
座右の銘は
『退かぬ!媚びぬ!ちょっぴり省みる!』
って言ってて、周りからは「仁に目覚めたサ○ザー様」と呼ばれてたりする(•᎑•)
僕「…なんで僕が司会進行なんだろう…(´;ω;`)ウゥゥ」
植野「どんまいでーす。」
僕が滑舌悪いのは、周知の事実なのに、まさかの司会進行。
予行から見ている植野は、既に慰めモード。
僕だって諦めムード。
いや、やるけどね?
カミカミでも失敗しても平気な顔でやりきるけどね?
…切ない(・・、)
???「お母さーん‼」
突然会場中がザワついた。
香山「なんだ?」
新人君と家族らしい人たちが揉み合っている?
すぐ杦本やR黒田たちが駆け寄っているが、どうやら新人君が母親にしがみついて離れないようだ。しかも、わんわん泣いている?
みんなが遠巻きに注目する中、新人君とその家族は、会場から撤収していった。
最後に口元を引き締めた父親らしき人が、会場内に向かって深々と頭を下げて立ち去ったのが見えた。
家族の顔を見て里心がついたのか、入隊式前の集団生活で無理だと思ったのか、突発的に叫んでしまったのか…せっかく入隊をしても、向いてないなら辞めるしかない。
僕「…宣誓書にサインする前で良かったね。」
植野「そうですねー、でももしかしたら戻ってくるかもー?」
僕「うん、もしかしたらね。」
他の新人君たちに影響がないといいなぁ。僕はため息を飲み込む。
僕「今年も波乱含みの教育隊だなぁ…」
植野「そーですねーあははー」
僕「あははー」
まずは司会進行を、噛まないように頑張ろう、うん。
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