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第一章 新入生
14 悪役令嬢が増えた?
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振り向くと、少し離れた壁際に、クレマン=モンパンシエ先生が立っていた。きちんとフォーマルを着こなし、立ち姿も美しいのだが、気配が薄く、壁紙と一体化していて気づかなかった。
「ご助言ありがとうございます」
お礼もそこそこに、手早く目当ての品を口へ放り込み、腹を満たした。
「もう少し、と言うのは、時間のことではないよ」
クレマン先生が、笑みを含んだ声で教えてくれる。
食べ過ぎたかもしれない。私は誤魔化すために、質問した。
「先生は踊ってくださいますの?」
「いや。今日は採点係だから、踊らない。踊りながらチェックする先生も、いるけれどね」
と、胸に抱えたファイルを示した。うわ、本当にやっているとは。
「はあ~、本当に成績つけるのですね」
思ったことをそのまま口に出すと、クレマン先生はくすくす笑った。
つやつやの黒髪で、すましていると冷たく見えるが、笑うとちょっと可愛い。前世の私好みの外見である。
私がもっと若くて独身だったら‥‥体は十五で一応独身だけれど、中身はかなりの年上になる。
「君は実に面白いなあ」
「そうですか?」
「うん。ドリーが気に入るのもわかるよ」
「ドリアーヌ様が?」
意外だった。シャルル王子や、アメリへの私の態度を、批判された記憶がある。
「殿下の婚約者として苦労されるのは気の毒だ、という話もあったなあ」
うん、やっぱり評価は低いよね。苦笑いすると、先生は慌てた。
「ふさわしくない、という意味ではなくて、もっと気楽な身分の方に嫁いで伸び伸び暮らした方が、幸せになれるって。例えば僕みたいな」
急に言葉を切って手で口を覆い、横を向いた。手から覗く顔が、赤味を帯びている。
「‥‥と、ドリアーヌ様が仰っていたのですね。ご心配、ありがとうございます。私も彼女のお心遣いは承知しております。そろそろ、あちらへ戻りますわ。先生のお仕事を邪魔してしまいました。失礼致します」
遅まきながら、こちらも扇で顔を隠し、先生の表情には気付かぬ素振りで場を離れた。
さりげなく周囲を確認する。食べ物コーナーは、そもそも人の溜まる場所ではない。
幸いにも、私たちの会話を耳にした人間は、いなさそうだった。
それにしても、クレマン先生は伯爵家の出とは思えぬ粗忽というか、天然なお人柄である。
ドリアーヌから言われた文言をそのまま繰り返したみたいだが、聞かれて恥ずかしい話なら、初めからしなければ良いのに。
彼と結婚したとしたら、王子とは別の意味で苦労しそうだ。
「どこへ行っていた? 婚約者を放っておいて」
どこかの令嬢と踊っていたシャルル王子が、曲が終わった途端、足早に寄ってきた。
先に置いていったのは、そちらでしょうに。
「ダンスの申し込みがありませんでしたので、少々休憩しておりました」
「休憩が長過ぎる」
王子は給仕から受け取ったグラスを一気に空け、すぐ片付けに回すと、私の手を取った。私は慌てて扇を仕舞う。
王子と踊らぬ間、ずっと休んでいたと思っているのだろうか。前世を思い出す以前のサンドリーヌなら、あり得る。
それから最後まで王子と踊って、パーティは終わった。
アメリは誰に取り憑いているのか、こちらへ寄り付かなかったし、会場で揉め事、つまりイベントが起きた様子も見られなかった。私も断罪されなかった。
弟の姿も見えなかった。アメリに捕まったのだろうか。
心配だったが、私は王子にがっちり掴まれていて、確認も何もできなかった。
俺様王子は、扱いが面倒臭い。
年末年始は、実家で過ごした。
日本と違って、数週間単位で学園が休みになる。
この世界の神はブーリなので、クリスマスは、ない。しかし、冬至の行事が同じような時期にある。これから春に向かうのだなあ、と地味に家族でご馳走を囲む感じである。
年が明けると、王宮で新年を祝うパーティがある。これは大人が参加する。私たち学園生以下は参加が許されない。
学園からは、休暇中、科目毎に宿題が出されている。そのため、私もディディエも大概図書室にいた。尤も、課題に追われる私と違って、弟は趣味の本を読んでいるようにしか見えない時も多かった。
同じ学年でも、クラス毎に宿題も異なるようだった。弟が側にいたおかげで、わからない点があればすぐに質問して解決できたのは、助かった。
休みも終わりに近付いた頃、ディディエの婚約者との顔合わせ会が、我が家で行われた。日程を告げられて以来落ち着かなかった弟は、当日も朝から緊張していた。
「外国から来るあちらの方が緊張するでしょう。あなたが緊張をほぐしてあげる立場なのよ。年上だし。彼女、お幾つだったかしら?」
「八歳か、九歳だったと思う」
まるっきり子供ではないか。だが、貴族の婚約としては普通である。
実際やってきた婚約者は、服装も相まって、七五三の子供みたいだった。
「ロタリンギア王国から参りました。ロザモンド=ラインフェルデンと申します」
流暢なメロ語で挨拶を済ませた彼女は、親たちの顔色を窺いつつ、ひたすらニコニコと笑顔で座っていた。ちなみにメロ語は、大方のメロデウェル国民の母語である。
背は低めで、年齢を差し引いても、少々丸い。白くてぽちゃっとした柔らかそうな頬を、濃い金髪が取り囲んでいる。濃青色の瞳は盛り上がる頬肉に負けない大きさで、体重はそのまま背丈が伸びれば、将来美人と呼ばれそうな顔立ちであった。
勿論、今でも十二分に愛らしい。現に、ディディエが見惚れてぼうっとしている。こんな顔もするのだわ。やはり男の子である。
二人の頭上では、親同士がブーリ語で定番の挨拶を取り交わしている。更に今日は、兄夫婦も控えていた。
兄は王宮勤めで激務のため、滅多に会えない。何故かわからないが、宰相の父より忙しく見える。
一方、ロザモンド嬢の両脇には、侍女二人がぴったり寄り添っている。うち一人は、侍女頭と紹介されてもおかしくないほど年季が入っていた。子供同士で勝手に喋る雰囲気ではない。
「では、私たちがあちらで実務的な話を進める間、当人同士で親睦を深めてもらいましょうか。姉のサンドリーヌも同席します。どうぞ、お気楽にお過ごしください」
父上が切り出した。お見合いで言う、『あとは若い人同士で。クフフ』みたいな感じである。
私も残るし、互いの従僕や侍女もいる。別に不安になる要素はない。
それでも娘と離れるのが心配なのか、あちらのご両親は揃ってロザモンド嬢にひた、と目を据えた。娘の方は、変わらずにこにこしながら両親を見上げる。ついでに、私たちの方にも視線を送り、赤面して俯く。初々しいことこの上ない。
兄夫婦も去って私たちだけになると、給仕がプチケーキやらマロングラッセやら、クッキーやらを山盛り運んできた。紅茶セットも。
途端に、ロザモンドの表情が輝き出す。
「うわ、美味しそう」
ロタール語であった。私も、そのぐらいなら聞き取れる。
途端に、両脇の侍女たちが、主に向かって距離を縮めてきた。ロザモンドははっとして、浮かせた腰を下ろし、最前のにこにこ笑顔に戻る。この年齢にして、見事な営業スマイルだった。迂闊にも気づかなかった。
「長旅でお疲れでしょう。あなたのために用意いたしました。どうぞ召し上がれ」
ディディエが流暢なロタール語で促す。ロザモンドは驚きの表情を浮かべた。くるくる変わる瞳が生き生きとして、可愛い。
「ロタール語、お上手ですね」
とメロ語で言ってきた。
「お褒めに預かり、ありがとうございます。ロザモンド嬢のメロ語もお上手です」
ディディエはロタール語で返す。更に勧めたので、ロザモンドは左右を窺いつつ、漸く紅茶に手をつけた。一口飲んで、幸せそうに息を吐く。
「美味しい」
ロタール語で呟く。
「お菓子もどうぞ。紅茶に合います」
ひたすら飲み食いを勧めるディディエ。緊張で話題が見つからないのか。
相手も緊張していることだし、これでいいのかもしれない。
ロザモンドは、ディディエがロタール語を習得したほどには、メロ語が得意でもなさそうだ。私も、弟ほどにはロタール語に堪能でない。
無理に話しかけず、様子を見守ることにする。
それから二人は、お菓子を食べながら、ぽつぽつと言葉を交わした。いつの間にかロザモンドは、メロ語を止めてロタール語で話していた。
当年八歳で、兄が二人いる。国境を越えたのは初めてで、ロタリンギアから馬車でここまで来た。
マロングラッセを初めて食べた。とても美味しい。といった風である。
菓子に伸びる手が、両端に控える侍女の咳払いや物音で、頻繁に戻された。ダイエット中か?
当然ながら、尋ねるのは控えた。
そのうち両親が迎えに来て、ロザモンドは辞去して行った。両親がうちに泊まるよう誘ったのだが、父君の定宿に泊まるそうな。
片付けのため使用人たちが慌ただしい中、二人して父上に呼ばれる。兄夫婦は既に去っていた。相変わらず忙しい人達である。
「どうだった?」
と聞かれても、答えに窮する。仮に、あんな娘は嫌だ、と言っても、じゃあ止めよう、とはならない。好き嫌いではなく、政治だから。
「気立ての良さそうな方でした」
上手い返しだ、ディディエ。
「問題なさそうですが」
私も一応、感想を述べる。父上の顔を見て、何か話がありそうだ、と気付く。
「ロタリンギア王国のツヴェント王太子と、近しい家柄だ。次年度から一年間、聴講生としてノブリージュ学園に在籍する。ノブリージュで学ぶことに憧れていたそうで、既に色々調べているらしい。何分国外からの貴賓でもあり、将来一族に迎え入れる相手でもある。二人とも、気にかけてやってくれ」
「承知しました」
おお、ディディエの婚約者も参戦するのね。追加キャラ? 続編? 原作知らないから、シナリオ通りかも、わからない。
アメリがディディエルートに入ったら、あの可愛らしい子どもが、悪役令嬢と化すのだろうか。
そこは気掛かりな点だ。
「ご助言ありがとうございます」
お礼もそこそこに、手早く目当ての品を口へ放り込み、腹を満たした。
「もう少し、と言うのは、時間のことではないよ」
クレマン先生が、笑みを含んだ声で教えてくれる。
食べ過ぎたかもしれない。私は誤魔化すために、質問した。
「先生は踊ってくださいますの?」
「いや。今日は採点係だから、踊らない。踊りながらチェックする先生も、いるけれどね」
と、胸に抱えたファイルを示した。うわ、本当にやっているとは。
「はあ~、本当に成績つけるのですね」
思ったことをそのまま口に出すと、クレマン先生はくすくす笑った。
つやつやの黒髪で、すましていると冷たく見えるが、笑うとちょっと可愛い。前世の私好みの外見である。
私がもっと若くて独身だったら‥‥体は十五で一応独身だけれど、中身はかなりの年上になる。
「君は実に面白いなあ」
「そうですか?」
「うん。ドリーが気に入るのもわかるよ」
「ドリアーヌ様が?」
意外だった。シャルル王子や、アメリへの私の態度を、批判された記憶がある。
「殿下の婚約者として苦労されるのは気の毒だ、という話もあったなあ」
うん、やっぱり評価は低いよね。苦笑いすると、先生は慌てた。
「ふさわしくない、という意味ではなくて、もっと気楽な身分の方に嫁いで伸び伸び暮らした方が、幸せになれるって。例えば僕みたいな」
急に言葉を切って手で口を覆い、横を向いた。手から覗く顔が、赤味を帯びている。
「‥‥と、ドリアーヌ様が仰っていたのですね。ご心配、ありがとうございます。私も彼女のお心遣いは承知しております。そろそろ、あちらへ戻りますわ。先生のお仕事を邪魔してしまいました。失礼致します」
遅まきながら、こちらも扇で顔を隠し、先生の表情には気付かぬ素振りで場を離れた。
さりげなく周囲を確認する。食べ物コーナーは、そもそも人の溜まる場所ではない。
幸いにも、私たちの会話を耳にした人間は、いなさそうだった。
それにしても、クレマン先生は伯爵家の出とは思えぬ粗忽というか、天然なお人柄である。
ドリアーヌから言われた文言をそのまま繰り返したみたいだが、聞かれて恥ずかしい話なら、初めからしなければ良いのに。
彼と結婚したとしたら、王子とは別の意味で苦労しそうだ。
「どこへ行っていた? 婚約者を放っておいて」
どこかの令嬢と踊っていたシャルル王子が、曲が終わった途端、足早に寄ってきた。
先に置いていったのは、そちらでしょうに。
「ダンスの申し込みがありませんでしたので、少々休憩しておりました」
「休憩が長過ぎる」
王子は給仕から受け取ったグラスを一気に空け、すぐ片付けに回すと、私の手を取った。私は慌てて扇を仕舞う。
王子と踊らぬ間、ずっと休んでいたと思っているのだろうか。前世を思い出す以前のサンドリーヌなら、あり得る。
それから最後まで王子と踊って、パーティは終わった。
アメリは誰に取り憑いているのか、こちらへ寄り付かなかったし、会場で揉め事、つまりイベントが起きた様子も見られなかった。私も断罪されなかった。
弟の姿も見えなかった。アメリに捕まったのだろうか。
心配だったが、私は王子にがっちり掴まれていて、確認も何もできなかった。
俺様王子は、扱いが面倒臭い。
年末年始は、実家で過ごした。
日本と違って、数週間単位で学園が休みになる。
この世界の神はブーリなので、クリスマスは、ない。しかし、冬至の行事が同じような時期にある。これから春に向かうのだなあ、と地味に家族でご馳走を囲む感じである。
年が明けると、王宮で新年を祝うパーティがある。これは大人が参加する。私たち学園生以下は参加が許されない。
学園からは、休暇中、科目毎に宿題が出されている。そのため、私もディディエも大概図書室にいた。尤も、課題に追われる私と違って、弟は趣味の本を読んでいるようにしか見えない時も多かった。
同じ学年でも、クラス毎に宿題も異なるようだった。弟が側にいたおかげで、わからない点があればすぐに質問して解決できたのは、助かった。
休みも終わりに近付いた頃、ディディエの婚約者との顔合わせ会が、我が家で行われた。日程を告げられて以来落ち着かなかった弟は、当日も朝から緊張していた。
「外国から来るあちらの方が緊張するでしょう。あなたが緊張をほぐしてあげる立場なのよ。年上だし。彼女、お幾つだったかしら?」
「八歳か、九歳だったと思う」
まるっきり子供ではないか。だが、貴族の婚約としては普通である。
実際やってきた婚約者は、服装も相まって、七五三の子供みたいだった。
「ロタリンギア王国から参りました。ロザモンド=ラインフェルデンと申します」
流暢なメロ語で挨拶を済ませた彼女は、親たちの顔色を窺いつつ、ひたすらニコニコと笑顔で座っていた。ちなみにメロ語は、大方のメロデウェル国民の母語である。
背は低めで、年齢を差し引いても、少々丸い。白くてぽちゃっとした柔らかそうな頬を、濃い金髪が取り囲んでいる。濃青色の瞳は盛り上がる頬肉に負けない大きさで、体重はそのまま背丈が伸びれば、将来美人と呼ばれそうな顔立ちであった。
勿論、今でも十二分に愛らしい。現に、ディディエが見惚れてぼうっとしている。こんな顔もするのだわ。やはり男の子である。
二人の頭上では、親同士がブーリ語で定番の挨拶を取り交わしている。更に今日は、兄夫婦も控えていた。
兄は王宮勤めで激務のため、滅多に会えない。何故かわからないが、宰相の父より忙しく見える。
一方、ロザモンド嬢の両脇には、侍女二人がぴったり寄り添っている。うち一人は、侍女頭と紹介されてもおかしくないほど年季が入っていた。子供同士で勝手に喋る雰囲気ではない。
「では、私たちがあちらで実務的な話を進める間、当人同士で親睦を深めてもらいましょうか。姉のサンドリーヌも同席します。どうぞ、お気楽にお過ごしください」
父上が切り出した。お見合いで言う、『あとは若い人同士で。クフフ』みたいな感じである。
私も残るし、互いの従僕や侍女もいる。別に不安になる要素はない。
それでも娘と離れるのが心配なのか、あちらのご両親は揃ってロザモンド嬢にひた、と目を据えた。娘の方は、変わらずにこにこしながら両親を見上げる。ついでに、私たちの方にも視線を送り、赤面して俯く。初々しいことこの上ない。
兄夫婦も去って私たちだけになると、給仕がプチケーキやらマロングラッセやら、クッキーやらを山盛り運んできた。紅茶セットも。
途端に、ロザモンドの表情が輝き出す。
「うわ、美味しそう」
ロタール語であった。私も、そのぐらいなら聞き取れる。
途端に、両脇の侍女たちが、主に向かって距離を縮めてきた。ロザモンドははっとして、浮かせた腰を下ろし、最前のにこにこ笑顔に戻る。この年齢にして、見事な営業スマイルだった。迂闊にも気づかなかった。
「長旅でお疲れでしょう。あなたのために用意いたしました。どうぞ召し上がれ」
ディディエが流暢なロタール語で促す。ロザモンドは驚きの表情を浮かべた。くるくる変わる瞳が生き生きとして、可愛い。
「ロタール語、お上手ですね」
とメロ語で言ってきた。
「お褒めに預かり、ありがとうございます。ロザモンド嬢のメロ語もお上手です」
ディディエはロタール語で返す。更に勧めたので、ロザモンドは左右を窺いつつ、漸く紅茶に手をつけた。一口飲んで、幸せそうに息を吐く。
「美味しい」
ロタール語で呟く。
「お菓子もどうぞ。紅茶に合います」
ひたすら飲み食いを勧めるディディエ。緊張で話題が見つからないのか。
相手も緊張していることだし、これでいいのかもしれない。
ロザモンドは、ディディエがロタール語を習得したほどには、メロ語が得意でもなさそうだ。私も、弟ほどにはロタール語に堪能でない。
無理に話しかけず、様子を見守ることにする。
それから二人は、お菓子を食べながら、ぽつぽつと言葉を交わした。いつの間にかロザモンドは、メロ語を止めてロタール語で話していた。
当年八歳で、兄が二人いる。国境を越えたのは初めてで、ロタリンギアから馬車でここまで来た。
マロングラッセを初めて食べた。とても美味しい。といった風である。
菓子に伸びる手が、両端に控える侍女の咳払いや物音で、頻繁に戻された。ダイエット中か?
当然ながら、尋ねるのは控えた。
そのうち両親が迎えに来て、ロザモンドは辞去して行った。両親がうちに泊まるよう誘ったのだが、父君の定宿に泊まるそうな。
片付けのため使用人たちが慌ただしい中、二人して父上に呼ばれる。兄夫婦は既に去っていた。相変わらず忙しい人達である。
「どうだった?」
と聞かれても、答えに窮する。仮に、あんな娘は嫌だ、と言っても、じゃあ止めよう、とはならない。好き嫌いではなく、政治だから。
「気立ての良さそうな方でした」
上手い返しだ、ディディエ。
「問題なさそうですが」
私も一応、感想を述べる。父上の顔を見て、何か話がありそうだ、と気付く。
「ロタリンギア王国のツヴェント王太子と、近しい家柄だ。次年度から一年間、聴講生としてノブリージュ学園に在籍する。ノブリージュで学ぶことに憧れていたそうで、既に色々調べているらしい。何分国外からの貴賓でもあり、将来一族に迎え入れる相手でもある。二人とも、気にかけてやってくれ」
「承知しました」
おお、ディディエの婚約者も参戦するのね。追加キャラ? 続編? 原作知らないから、シナリオ通りかも、わからない。
アメリがディディエルートに入ったら、あの可愛らしい子どもが、悪役令嬢と化すのだろうか。
そこは気掛かりな点だ。
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