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王国編

謎が増えました

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 この世界にはクロウディル王国以外にも様々な国家が存在する、ヴェルガリア帝国・ジュベレール共和国・セリオル獣人国の4つ。
 魔族と龍族の国もあるが人族が関わることができるのがこの4つの国らしく、どの国も陸路でいけるという話だ。
「海を渡って他の国に・・・という船の旅をする事はないのです?」
 海の旅はファンタジーの醍醐味だと思っているのだが・・・海が無い世界なのだろうか、いや食卓に魚介類もでてたからそんなことはないだろう。
「漁業で船上での寝泊まりや客船はありますわ、ただ旅という感じではありませんわね」
 世界地図見たことないんですのと呆れられたのだが言われてみればちゃんと見たことはなかった。歴史を叩き込まれる際に図はみたような気がするが全体像はよくわかっていなかった。
「海に囲まれてるのですからわざわざ海路を通る必然性はないということですわ、客船での海上旅行くらいですわね」
 各国の移動の基本は陸路ですわと地図を見せながら話すミリーだがこの地図の形は何というか・・・丸いのである。
「んー、まあメルカトル図法も長方形だし・・・そんなこともあるですかね~」
「める・・・なんですの?」
 いえなにもと返しつつ話を戻す、魔族と龍族はどこに住んでるのかを聞いてみる。
「フィオナは本当に歴史だけは覚えが悪いですわね・・・龍族はともかく魔族は冷戦になった経緯でわかるですわ、約400年前の次元断裂事変により大陸は分断しましたわね?」
 後はわかるでしょうと言われて記憶を引っ張り出す、ヴェルガリア帝国の北側で勇者と魔王・・・そして古龍による大戦最後に発生したのが次元断裂と呼ばれる天変地異。
「ヴェルガリア帝国の北に魔族の国があったということです?」
「そういうことですわ、それから400年間の現在でもその次元断裂後の魔海からの影響で魔物が狂暴化・・・冒険者ギルドの討伐依頼も帝国や共和国の方が多く扱っていますわ」
 ジオで依頼を受けていたが王都での討伐依頼は主に北側の山岳地帯や周辺の洞窟が多かった、南側の地方からの依頼は素材採取程度のものだったなと思い出す。
「クロウディル王国は北西のヴェルガリア霊峰山の神域が影響している事で他国に比べて被害が少ないのですわ、冒険者だけで生活をしてる人達は帝国と共和国に拠点を置いていることも多いですわ」
 王都の冒険者は副業でやってる方が多いですのとミリーは話を止めた。
「一時期はどうなるかと思いましたが、無事2年生には上がれそうですわね」
「ミリーのお陰なのです、そういえばそれで気になってた事があるのです」
 その気になっているものと言うのは魔導学院での進級前に行われる魔力測定であった。

 異世界の魔力測定イベント・・・どういう展開になるのか少しだけワクワクしている私がいた・・・本来は入学後にもあったがゴタゴタしてミリーと私の測定を忘れていたままだったのだが。
 やはり持ってる魔力量が桁違いで測定器を壊しちゃうみたいな、魔力属性の性質については今までの事から浸透はしてないことから測定するのは魔力の上限だろうかと考えを巡らせていると・・・教師の測定による階級基準の話が耳に入る。
「階級基準の改定に関しては皆さんには聞き馴染みがないとは思いますが、クルス商会が世界各国に普及させた魔力測定器によってより詳細な魔力量の確認が可能になり・・・」
 それ以前は触媒結晶を加工した大型の測定器で光の度合いで階級分けをしていたとのことだが、このクルス商会が作ったとされるのが魔力量を数値化できるというものでその数値ごとに階級をより明確化させたとのこと。
「0~500が初級、500~1000が中級、1000~5000が上級となり・・・」
 なるほど、わからん・・・個人的には数値化でより基準が理解しにくくなってるような気がするが・・・国級の宮廷魔導師が5000~10000の間で龍級である龍族に至っては10000以上となるらしい。
 分断された後に人族側に帰化した魔族は個体差で階級はバラバラと・・・人族側にいる魔族がいるというのにも驚いたが基本、龍族の魔力が個体差に限らず高い。
「そういえばクルス商会とはなんです?」
 と隣に座っているミリーに小声で聞いてみた。
「40年前に時計を普及させたことで一躍有名になった商会ですわね、その5年後にはこの魔力測定器を広めていると・・・一商会で世界的な基準を確立させた手腕は見事ですわ」
 共和国を拠点に様々な製品を開発し、今では商会連合を率いる大企業・・・魔導具とはまったく違う仕組みで小型化された製品は暮らしの基準を変えるまでに至った。
「術式を刻まずに魔導具のような自動化を実現・・・どうやってるのですかね~」
「企業秘密との話ですわね、ほら移動しますわよ」
 さて、私の魔力量はどれくらいなのかなとウキウキしながらミリーの後ろに付いていった。

 学院始まって以来、1年生で最高の魔力量を叩き出した。その数値は4500で上級魔導師でもかなり高く、宮廷魔導師の国級にもいずれ手が届くであろう。
 その人物はもちろん・・・ミリー・シュタッドであった。
「あれぇぇ・・・?」
 王女で美人で頭も良く、その上で魔導師の才能もあり・・・それで魔力量も最高級ともくればもう学院に通う必要ないのでは。
 それは別にいいのだが問題は私の方だった・・・正直、大出力レーザーブレードぶっ放しても魔力切れを感じることはなかったから私も相当な魔力量を保持してると思っていたのだが。
「369?何かの間違いなのではなくて?」
 初級の魔力量というのが結果だった、といっても年齢相当ではあるということで特別低いとかではない。今期の1年生の人数は36人で私は上から9番目の魔力量なので平均より高い方である。
「とはいっても測定器に異常は見られないからねぇ、ミリー君の後に確認もしたから・・・」
 特に測定器の異常でもなく、これが現在の私の数値だとすると・・・
「・・・まあ、平均よりは高いからミリーがそんなに気にしなくてもいいのですよ・・・」
 測定器壊したらどうしようとか口にしてなくてよかったと思うが、まさか初級とは・・・魔力の上限は使っていけば上がるものだと思っていた。
 上がり幅は個人差があるから、学院入学時に一番低かった子が首席で卒業した例もあったとのことだ。
「確かに魔力量が高いから才能があるとは限りません、それは近接職の方が上級の魔力量があっても魔導術を行使できるとは別なのですわ・・・」
「ジオでレーザーブレード使いまくってるからもう少し高いとは・・・私も思ってたです」
 まあ結果として出てる以上はどうもしようがないので気を取り直してこれからの学院生活を送るとしよう。

 ベンタルミナというのは触媒結晶の加工前の魔石の名前だが、自然界でも確認されているが主な入手源は魔物である。
 魔物はこの自然界で生成されたベンタルミナを野生動物が体内に取り込んだことで誕生したと言われているが、私とミリーは下層街の一郭にある工房に足を運んでいた。
 この工房は触媒結晶の加工を専門としており、ミリーの使っている手甲の触媒結晶を加工したところでもある。
「ミリーの手甲の触媒結晶はオーダーメイドだったのですね、その大きさにするのは技術が必要なのですね」
 他国からも加工依頼がくるらしく腕は確かとのこと、小さくしつつ魔力の蓄積もある程度確保するのは難しいとのこと。
 ミリーのはそれを2つ用意させたということで結構無理をさせたことは反省していたらしい。
「杖だと少し効率悪くありません?持ち手の長さで魔力を多めに使うことになると思い、この手甲を考えついたのですわ」
「なるほど~確かに便利なのです、私のディオールは大きいから持ち運ぶのが少々大変なのです」
 母マリナから貰った大切な杖ではあるが、ジオで持てばちょうどいい大きさになるが私が持つにはアンバランスなのだ。
「そういえばここには何か用があったのです?」
「ブーツの靴底に取り付けるための触媒結晶の加工を依頼してましたの、1年待たされましたわ」
 反省はするが後悔はしないらしい、以前言った足にでもつけて属性放出で飛ぶのというのを本気で試すつもりのようだ。
「フィオナは触媒結晶なしでもあのブレードというのを使えるのですよね?だったら触媒結晶の増幅なしでも飛べますの?」
 と聞かれてふと意識してみる、風を発生させ宙に浮く。
「おお、いいことを思いついたです。ジオにバックパックを取り付ければスラスターみたいになるかもです」
「あの魔力量でその使い方してたらすぐに魔力切れが起きそうなものですのに・・・やはり外気魔力を無意識に使ってるのかもしれませんわね」
 触媒結晶は魔力を溜め込む性質を利用しているというのは要するに電池ということだろうか?
「触媒結晶は魔力を蓄積するということですよね?だったら解放しなければ維持されるです?」
「臨戦態勢の時に使う方法ですわね、反面蓄積していくと結晶から光を放ってしまいますので魔物に居場所がバレてしまいますわ」
 そこで私は今までのことを思い返してみる、ディオールの杖を使ってきた時に一度も触媒結晶は光を放っていなかったと気付いた。
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