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帝国編

魔物は討伐した後も大変でした

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 魔物の姿は多岐に渡る、鳥型でも大きいカラスのような見た目だったり鷹のようなものもいる。
 ここ大森林では虫型と鳥型の縄張り争いもあるようだが私達が狩っている場所は虫型が多いようだ・・・ミリーにとっては相性が最悪なエリアとも言える。
 ミリーに襲いかかっているのはテントウ虫のような外殻が丸い虫型だが裏側の脚の中心に口があり、上から覆い被さるように攻撃してくる。
 器用にエア・シールドで防ぎつつ、ウインド・カッターで凪ぎ払っている。
 ユラの方はライトニング・バレットを撃ちながら、近づいてきた奴を素手から属性放出させたプラズマ・ブレードで薙払っていた。
 ブレウに迫ってきた虫型をルミが魔導術で防御を張り、態勢が崩れた一瞬をすかさず斬り払う・・・隙を突かれる前にトールがフレア・バレットで撃墜。
 結果的に私とレナはそれぞれ単独での戦闘になっていた、互いに援護するまもなく倒している。
 レナの視野は全方位見えてるのかというレベルで隙がない、槍に乗っている白く光る魔力もそうだがあのオッドアイに何か秘密があるのだろうか・・・
「改造短剣、シュートッ!」
 テントウ虫タイプは溶解液を内包していないのでレーザーブレードを展開した短剣を飛ばしてみる、魔物とはいえ虫というのはなんでこうどこからともなくやってくるのか・・・
 バチィィンッ
 無意識で張れるようになっていた全方位バリアーに虫型がぶつかってきていた、近接攻撃対策はこれでどうにかできそうだが・・・蚊に刺されるのとは訳が違うので防げていないと問題である。
 ブォォンッ
「凄いねあれ、どうやっているのかな」
 レナが独り言のように呟いている、バリアーと大鎌ブレードで斬り払うのを見ての感想みたいだ。
 私的には近接職側の人達の反応動作が凄いと思うのだが、皆身体の使い方が上手い。
 今のが最後だったらしく辺りはいつの間にか静かになっていた、レナ以外もこちらに集まってきていた。

 全方位バリアーや大鎌ブレードを見た面々が私に話を聞いてきていた、説明もし辛いのが面倒ではあるが・・・
「ミリーさんやユラさんの魔導術もかなりのものだけど・・・フィオナちゃんのあれって魔導術なの?」
 どうやら私に防御を張る前にバリアーが防いだのを見たようだった、あれに関しては意識と脳波の差を利用したもの・・・というイメージだが。
 意識で判断するより先に脳波が発生するのを魔導術的に展開させるといった感じだろうか、成功したということはこの世界での立証ができたとも言えるか。
 車の運転に慣れてない頃はアクセルやブレーキは意識するが、慣れると意識せず動かせるといった無意識下タスクでレーザーブレードやシールドを展開させる。
 同じように全方位バリアーを発生させるようになれば意識判断の前に使えるようになるのではと・・・ルミの聞きたい答えではないだろうがそうとしか言えない。
「すみません、フィオナは時々意味の分からないことを言うときがあるんですの・・・」
「言い方ぁ・・・単に意識は現実より0.5秒遅れるのを利用してるだけなのです。じゃないと私は見てからの防御なんて間に合わないのですよ」
 この世界の人達はそれがないんじゃないのかというくらい反応が早い、合同戦のユラにもほぼこれで通用させたと言ってもいいくらいだ。
 相手の無意識で一切の予測ができない状態でしかおそらくまともに攻撃が通らない気すらしてくる。
「あんな魔導術を意識すらせずに使う・・・小さな天才魔導師はこのことを言っていたの?」
 レナがミリーとユラの方を見ながら話しかけている、君は視覚外の魔物を斬り払ってたような気がするのだが・・・
「・・・初耳だよ、今聞いたから」
「意識する前に展開するなんて聞いてませんわ・・・無意識だから術式も構築されないという事だったんですのね」
 コーザル領域の力を現象化させてるだけだからそこは違うのだが、リア以外には認識できないことだろうしそういうことにしておこう。

 あまり遅くなってもあれということで、大森林には2時間ほどで帝都に戻ることになった。
 大森林の行き来だけでも6時間はかかるので、移動時間のほうが長かった。
「これだけ狩ればそろそろ俺達もミスリルになれるんじゃねえか?」
「どうだろう、ベンタ・ルミナと虫型の素材の量的にはまだじゃないかな」
 討伐の報告の際は魔物の核にもなっている触媒結晶の素材、ベンタ・ルミナの魔石と魔物の体の一部を持っていきギルドに提出をする。
 リアがいるときは空間収納とか異次元のことができた事で済んでいたが、虫型の残骸が入っている大きめの鞄を持つミリーの顔は憂鬱そうである。
 トールが代わりに持つと言ってミリーから鞄を受け取っていた、魔導師の割に力持ちである。
「しかしユラさんは刀すら抜かなかったのに強いよな・・・手から雷とかどうやってるんで?」
「・・・多分難しいと思う、魔力の放出のようなものだから」
「魔力って直接放出して属性に変換できましたっけ・・・?」
 ユラも今日初めてあった皆と打ち解けているようだ、面識がないパーティーでの戦闘は合同戦以来になるだろう。
 今回は魔物が相手だから実戦で即時協力できた・・・とはいってもグループ的にはいつもと大差がなかったようにも見えるが。
 その中でもレナの魔力は見覚えのない視え方だった、2つの魔力性質は初めて見た。
 複数の属性を持っているということだろうか、レナ本人が性質を理解できたら双属性のようなことができてかっこよさそうだ。
 単純に特殊な槍かとも思ったが背負っている槍からは特に何も見えてはいない、戦闘時でのことからやはりレナ自身の力なのだろうか。
「レナは学院に通っている間にミスリルになったと聞きましたが、どんな依頼をこなしましたの?」
「ディオール樹の素材回収の護衛の手伝いを請け負った時かな、その際大物がでたんだよ」
 中心エリアは魔力も使いづらくなる為、ディオール樹の木材の回収は戦力を必要とする。
 希少素材と言われるわけだなと、その回収の際に大型のムカデがディオール樹に出現したとのことだ。
「まあそれを倒したのが私ということ、撤退中で倒す瞬間は見られてなかったんだけどね」
 近接職はまだ魔力の循環による強化があるとはいえ、1人で留めまで刺したとのこと・・・槍捌きでどうにかできるような感じでもなさそうだが。
 レナと付き合いの長い友人たちもどう倒したか知らないようだった。
「切り札はあまりひけらかさないものだよ、フィオナもそうみたいだけど?」
 レナの両目が私を見つめていた・・・この子の視線は少し苦手である、魔力の性質を視られてるとも違う探りを感じる目だ。
「・・・そうだね、私とミリーも知らないことを今日言っちゃうくらいだし」
 残念な事にその切り札の使える条件が分かっていない私なのであった。
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