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帝国編

特異個体に改訂されました

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 食事の代金を払っていった龍人貴族とバンダナリーダーは、2時間後にギルドにて待つと言い残し去っていった。
 最初は断ったがいえいえとごり押しされてしまったのだが、足を運ばないわけにもいかなくなったと。
「フィオナ達だけでなく私(わたくし)とユラも呼ばれましたわね、何か話しましたの?」
「学院の訓練で実力は体感したからね、合同戦も観に行ったし」
 大型ムカデ討伐の報告の際に、ミリー達の事もレナがギルドに伝えたのだろうが・・・呼出はやはり魔海の件だろう。
 戦力を集める理由は特殊個体の討伐だろうが、できればそっとしておいたほうがいいと判断している・・・普通の魔物であれば問題ではないのだろう。
 そういう意味では大樹での戦闘のほうが人族的に厳しい条件だった、魔力の制限がないぶん本来なら魔海の特殊個体の方がやりやすいだろう。
「呼び出された事自体には驚かないんだね、魔海の大型については知っていたりする?」
「そうですわね、フィオナとリアさんからある程度は・・・特殊個体の危険性についてはギルドから聞いてまして?」
「新たに命名されたのがルスカ・カリーナということくらいだけど・・・」
 レナは私達に疑心な視線を送る、個人的には名前が追加されてることを聞き返したいところだが先に話を振られた。
「ギルドはミスリルを前提にしてると言ってたけど、確か全員ゴールドって話なのにこの件をいつから知っていたの?」
「と言っても情報封鎖は最初から機能してはいないのです、アーシルでヤバい魔物が出たというのは周知されてるですよ?」
 帝都に来る途中の中間村ギルド食堂でも噂はされていた、特別知っててもおかしくはないだろうと。
「特殊個体とまでは誰も知らないはずなんだけどね、ルスカについて知ってるようだから気になった」
 どうやらヤバいの=特殊個体とはならないようだった、私がルスカと聞いたの自体はヒュージさんだが。
 リアの言うコーザル体は伏せているものだから、私達の対応も少しズレているようだった。
「それはそれとして、フィオナが食べ終わってからの話ですわね」
 どの道ギルドで話す事にはなるだろうから、ゆっくり食事を済ませるのだった。

 東城下町ギルド2階の部屋の1室に案内され、窓際の椅子に座るギルドマスターが挨拶する。
「改めてギルドマスターのヒュージです、リア様にも足を運んでいただいて申し訳ありません」
「構わないのじゃ、フィオナだけでは納得させれぬじゃろうからな」
 酷い言いようだが、意味は少し異なるようだ・・・私はあくまで人族で高次領域が絡んでいると古龍の話を切り出す方が説得力があるのだろう。
 ただ凄いヤバくて危険だと、子供が騒いでるみたい捉えられると困るのも事実。
 リアと同じ事を言ったとしても、発言先で認識は変わってしまうもの・・・理屈で説明しても立場だけで意味合いが違ってくる。
 一般人と医者が同じ事を言っても後者を信じるのが人というものだろう。
「ヒュージさんが敬意を払う龍人貴族・・・この方はどのような・・・?」
「この方に関してはルスカ・カリーナより内密に・・・古龍ヴェルガリア様でございますので」
 バンダナのおじさん・・・名前はバードナーというらしい、流石に古龍とは思っていなかったようで驚愕しているようだった。
「私は聞いててよかったのかな・・・?」
「そうじゃな、ヴェルトールが暴れぬようにしといてくれればよい」
 面倒が増えるからの、ヴェルトールと話ができるなら恐らく最初から知っていたのだろうが・・・たまに左目を瞑り1人頷いていたのは念話のような状態だったのだろうか。
「特殊個体を改め、特異個体と呼ぶ魔物の討伐に関してなのですが・・・リア様が話に同行されてるのはそれだけの存在なのでしょう」
「やはり討伐なのですね・・・私個人としては手を出すのは得策ではないと思うのです」
「フィオナちゃんの言うことも理解したいのですが・・・人族の話だけでもない事なのだと」
 アーシルからの定期報告である程度察しはついてるのだろう、個体の名称を改訂したあたり人族だけでの討伐には無理があると。
「共和国に定住している魔族なり協力は得られぬのか?まあ妾が言うのもあれじゃが」
「人族との共生にあたり力を振るわないとなっているので・・・変わりに獣人国セリオルに話を通しました」
 獣人国といえば大戦時でも人族に協力しなかったことで、今回の件についても難しいのだろうか。
「身も蓋もない言い方をすると種族の力だけでは厳しいと思うがな、それこそ神器を必要とする話じゃ」
 歴史的には現存する神器は獣人国にある1つだけとなっている、実際はフィアがアイギスを持ってはいるが・・・
「神器が必要になる可能性も伝えてあるのですが・・・獣人国側が気になる返答をしているのです」
「そういえば獣人国にある神器ってどういう能力があるのです?学院にいたときミリーに聞いたようなそうでないような・・・」
「フィオナは興味が無いことへの忘れる速度が早すぎるのですわ・・・と言いたい所ですがメーインティヴについては歴史書でも名前しか分かっていないですわね」
 聖剣や盾は分かるが、もう1つはなんなのか・・・前世で言う三種の神器とも違うようだが。
「本当なのかは定かではありませんが・・・神器メーインティヴは消失したから無理、との事です・・・」
 大戦で使われていないはずなのに、既に無くなっていたようだった。
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