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帝国編

龍族の眼はよく視えているようなのです

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「えーと・・・炎・・・槍・・・穿て、フレア・ラ・・・」
 ・・・中級魔導術のフレア・ランスの詠唱を試みては失敗、この世界でいう魔導師は魔導術を行使する際呪文を唱える行動を取る。
 情報収集の結果、呪文を唱えるそれ自体は重要でもなく、現在の魔導術は古代文字をイメージし魔力を放出・・・外気魔力との相互干渉で模様が浮かび上がるのは検証済みではありますが。
 ブォォォンッ
「あの杖は・・・アーティファクトでしょうか?」
『可能性はあるね・・・と言いたいところだけど、シオン・・・違うの分かった上で言ってるでしょ?』
「触媒結晶以外はディオール樹素材の杖ですね、端的に言うとピーキーな装備になります」
『僕にはこの世界の魔力が使えないからいまいち伝わらないのだけど、君でも装備は無理?』
「問題ありません、魔力を流すと軽くなる性質ですが持つだけで消耗し過ぎる程度の事です・・・ぶっちゃけブランド品とでも思っておいて下さい」
『あの子の杖でレーザーが照射できる理由がないと・・・音声通信だけでは状況が分かりにくいね』
「帝都から離れた小さな森で魔導術を練習、魔物が襲ってきた際レーザー照射による近接攻撃・・・現在串焼きを食べながらぼんやりしていると経過観察ではこうなります」
『僕は幼女の動向を報告しろとは一言も・・・それで、帝都から離れた場所で1人練習しているのはどの程度の期間?』
「不明です、正確には今日居場所が特定できたのです・・・光学迷彩を使用して移動しているのは想定外でしたので」
『だからそういうことは先に言ってもらえる・・・?冗談はやめ・・・』
「問題なのは使用された瞬間に索敵できなくなる事で移動先の発見が遅れました、魔力探知ごと遮断されますね」
 フィオナ・ウィクトールの友人から先に接触しそれとなく商品を宣伝、後回しにしていたことは報告しなくてもよいでしょう。
 決して十数年振りに来た帝都の観光などをしていたわけではありません。
『レーザーにステルスからのジャマー・・・信じたくはないけどこれは・・・』
「アキが認めたがらない転生者でしょうか、この世界の魔導術で再現するのは・・・と言いたい所ですがアーシルでのご友人達も魔導術の範囲を超えていましたが」
『今時の若い子達の感性・・・とでもいうのだろうか・・・?』
「老害が必ず使う言葉を・・・アキも年ですね」
『魔力の万能エネルギーとしての応用で血液に作用させた僕は魔力を使えはしないけど見た目の年齢は・・・』
「私は見た目の事など一言も口にはしておりませんが?」
『・・・』「・・・」『無言で呆れるのやめてもらえる?』

 東城下町の城壁門近くの露店にて、カフェ・フレイアから足を運んだ私は串焼きの工程を見届けたのです。
「フィオナちゃん見てるだけで楽しいかい・・・?さっき買ってくれたばかりでまた来てくれるのはいいけれども」
「朝一番で頂きましたのです、これも魔導コンロなのですね・・・横に広いのです」
「数十年前に用意してもらった特注品でね、友人が頼んでくれたのさ」
「なるほど・・・ヒュージさんがクルス商会に掛け合った感じなのですね」
 神殿で聞いた話ではこの御方、マースチェルさんは古い戦友らしいのですが。
 リアはともかく、龍人の方々は見た目で何年生きているのかさっぱり分からないのです。
「ヒュージからフィオナちゃんの串焼きは毎日6本まで無償という話だけど、エクタシス君に払わせるとはなかなかやるじゃないか」
「皇帝陛下を君付けするだけあって事情はご存知のようなのですね・・・日によっては自腹でちゃんと追加する時は払うのです」
 槍2本の刃先を引っ剥がして作った竹馬で身長的に見えなかった串を焼く所を眺めつつ、マースチェルさんが口を開く。
「アーシル、魔海の化け物相手に関してはあたし等龍族の出番かと思ってたけどね、君達が最初に帝都に来たとき・・・ヴェルガリア様が同行していた時点でただ事ではないと判断していたんだが、古龍様を連れ出しただけはあるようだね」
「やっぱり龍族の方々はリアの正体もお見通しだったと・・・ヒュージさんもそうでしたが龍人貴族様達は魔力の性質も余裕で視れるです?」
「人族では視えてる方が珍しいようだね、龍族は全員視えてるだろうさ」
 他人がどう見えてるかというのは分からないようなのです、それはまあ当たり前と言えば当たり前なのですが。
「その2本の棒で立ち位置高くしているのには突っ込んだほうがいいのかい?」
「気にしないで大丈夫なのです、焼くところを見るためだけに作ったなんて事はないのです」
「酔狂な子だねぇ、ほら持っていきな・・・視えるのとはまた違うんだけどね、フィオナちゃんの魔力の気配がたまに消えるのはどうやってんだい?」
「?魔力の気配ですか?・・・もしかして光学迷彩ですかね・・・姿以外も見えなくできてたです・・・?」
 マースチェルさんの前で展開してみてから直ぐに解除してみる・・・感心してくれているようなのです。
「人族とは思えない力だねぇ・・・似たようなのは最近見たけど魔力は普通に視えてたんだが・・・このがーりっくぱうだー?をやたら強く薦めてた女だったよ・・・匂いの拡散が凄くて断ったけどね」
 手広く宣伝しまくっているようなのです・・・試供品で置いていった物のようですが。
 それはそれとして似たようなのというのは・・・光学迷彩って魔導術で実は使えたりするです・・・?
 ドローン飛ばしてたくらいだから技術的に再現した可能性も・・・私はなんだかんだ魔力をまともに使えてないから知らない手段があるかもです。
「では、もう少しだけ魔導術の練習をしてくるのです・・・身体強化は懲り懲りですが」
「フィオナちゃんは堅実に積み重ねる子だったのかい・・・てっきり直感的に行動しているものだと」
「後先考えない子とはよく言われるのです、当たって砕けない程度には気をつけているつもりなのですが」
 割と砕けてる気がしなくもない現実からは目をそらし、東城壁門に向かい帝都から出てしばらく・・・周囲に人がいないタイミングを見計らうのです。
「?視線を感じたような・・・気のせい・・・」
 マースチェルさんの言っていた事に習い周囲の魔力を視ると・・・平原にポツンと魔力が確認できたのですが・・・普通に見ると誰もいないのです。
「町中でこれを見分けれる龍族の眼は流石としか・・・」
「行動解析上、確信的に私を視認・・・あなたも魔力探知が使えるようですね」
 平原に白い白髪がなびき、黒白基調のメイド服の女性が姿を現したのでした。
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