あの夏をもう一度─大正時代の想ひ出と恋文─
大正時代──本田虎臣が十二歳になる夏、湘南にある別荘へ来ていた。
そこで出会ったのは、八重澤幸一と名乗る少年だった。
元々引き合ったのは、妹の薫子と幸一を結婚相手にと親同士が決めたためであった。虎臣と幸一は同年齢もあってすぐに打ち解け、やがて互いの別荘を行き来したり海辺で長い時間を過ごすようになる。
綺麗だのすぐに褒め言葉を口にする幸一に心乱され、虎臣は心が追いつかないでいた。
──なあ、口吸いしよっか?
幸一に言われ、虎臣は初めて身体にも変化が訪れた。
短い夏に別れを告げた後は文通をしていたが、いつしか彼から来なくなってしまう。
虎臣は高校生になり、学生寮に入った。同室になったのは、十二歳の夏に出会った幸一だった。彼の大人になった姿に、虎臣は十二歳に初めて唇を合わせた日のことを思い出す。同時に、なぜ手紙の返事をくれなかったのだと、心にわだかまりができてしまい──。
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