73 / 233
第73話 楽々地下五階層へ
しおりを挟む
一晩明けて俺は家の外の玄関前に立っていた。
「じゃあ行ってくるけど」
「……はい。気をつけて行ってきてくださいね」
玄関前まで見送りにきてくれていた珠理奈ちゃんが言う。
「……お土産もお願いします」
「わかってるよ」
ダンジョンのことを黙っている代わりにお土産を要求してきた珠理奈ちゃん。
なかなか食えない子どもだ。さすが初子姉ちゃんの娘だけのことはある。
「もし俺がいない間に初子姉ちゃんが来たら、その時は――」
「……うまくごまかしますから大丈夫です」
「あ、ああ。ありがと」
この子に任せておけば大丈夫だろう。
俺はそう確信して「行ってきます」と庭に出ていく。
何も庭で全裸になる必要はないことに今朝になって気付いた俺は写し鏡の門の前までは服を着た状態で石階段を下りていく。
そして鏡を前にして服を脱ぐと俺は手をかざした。
『地下何階層からスタートしますか?』
「地下一階層で頼む」
『地下一階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
俺は慣れた動作で写し鏡の門に入っていった。
◇ ◇ ◇
「マツイさ~ん。待ってましたよ~」
俺の前に飛んできたククリと合流。
「せっかく昨日は順調にいっていたのに災難でしたね」
「まったくだよ」
トウキョウダンジョンでは同一フロアには連続して一時間しかいられないので昨日はそれを超えたためダンジョンから放り出されてしまったのだ。
「なんとかならないのか? 一時間縛り」
「もっと深い階層に行けば制限時間を無視して行動できるようになるアイテムも出てきますよ。きっと」
「何っ、本当か?」
きっとという言葉が気になるが……。
「俺さ、このダンジョンに潜るようになってから寝不足なんだよなぁ」
首をこきこき鳴らしながらククリに聞こえるように言う。
体質なのかもともと俺はあまり普段から睡眠を必要としないタチだったがそれでも一時間以内の仮眠ばかりではなかなか疲れもとれない。
もし本当にククリが言うようなアイテムがあるのなら是非とも手に入れたいところだ。
「ではますます深い階層を目指さないとですね」
「そうだな、頑張るよ」
前回同様地下一階層を歩き回るが相変わらずスライムは俺を見て逃げ出していく。
そのおかげで時間のロスもなくアイテム探しをすることが出来た。
宝箱の中から防御力+1のブーメランパンツを拾い上げるとこれを履く。
「これ防御力+1なんてないだろ。ただの生地の薄い水着じゃないか」
「似合ってますよ、マツイさん」
そう言われてもまったく嬉しくない。
俺はどこぞのお笑い芸人のような恰好のままアイテム探しを続けた。
その結果、におい袋と魔力草と皮の袋を手に入れることが出来た。
におい袋は首にかけ、皮の袋は魔力草を入れてから肩にかける。
「さっさと次の階層に行こうか」
「はいっ」
◇ ◇ ◇
地下二階層のゴブリンフロア。
ここでもモンスターは俺に襲い掛かってくることはなかった。
それだけ俺が強くなっているということだ。
俺はフロア中くまなくアイテムを探し十五分ほどで攻撃力+2のバタフライナイフと攻撃力+7の鉄の槍と薬草の計三つのアイテムを手に入れた。
バタフライナイフと薬草を皮の袋にしまい込み、鉄の槍を片手で持つと地下三階層へと進む。
◇ ◇ ◇
地下三階層。
階段を下りてすぐ恐れを知らずに向かってくるゾンビの頭を鉄の槍で一突きして倒した俺はフロアを探索。
慣れない武器をそれなりに使いこなしてゾンビを返り討ちにしながら進んでいく。
「マツイさんの力は既に成人男性の四倍以上ありますし、ゾンビ系に対して三倍のダメージを与えられるゾンビコレクターを持っていますから充分素手でも倒せますよ」
とククリは言うがゾンビを素手で倒すなんてお断りだ。
ゾンビは首をはねるか脳を破壊するしかないのにそれを素手でやるなんてたとえ出来るとしてもやりたくはない。
俺はその後も襲い来るゾンビを鉄の槍で撃退しアイテムを手にしていった。
「結局みつけたのは薬草二つだけか」
「地下三階層にはあまりいいアイテムはなかったですね」
「ああ、次行こうか」
俺はフロアの臭いを嫌い、ククリとの会話もそこそこに地下四階層へと歩を進めた。
◇ ◇ ◇
地下四階層は俺の苦手な蜂型モンスターのビーフロア。
ゾンビフロアと同じくあまり長居はしたくないので魔眼の透視能力を駆使しながらビーを避けつつアイテムを探す。
その成果としてビーに一切遭遇することなくフロアのアイテムをすべて取りきることに成功した。
攻撃力+2の錆びた剣と防御力+1の鉢巻きと混乱効果のある黒曜の玉と混乱を治す効果のあるワーム草をゲットした俺は鉢巻きを額に巻きつけ黒曜の玉とワーム草を皮の袋にしまった。
鉄の槍より攻撃力の劣る錆びた剣だが俺は剣の方が扱いなれているのでどっちを使うか少し悩むも結局高値で売れそうな鉄の槍を選んだ。
皮の袋も割とふくれてきたので錆びた剣は仕方なく諦めることにした。
鉄の槍と二刀流という考えも浮かんだが試しに素振りをしてみたら使いにくかったので早々にやめた。
そして次が因縁のコボルトフロアだ。
俺は気を引き締めると地下五階層への階段を駆け下りていった。
「じゃあ行ってくるけど」
「……はい。気をつけて行ってきてくださいね」
玄関前まで見送りにきてくれていた珠理奈ちゃんが言う。
「……お土産もお願いします」
「わかってるよ」
ダンジョンのことを黙っている代わりにお土産を要求してきた珠理奈ちゃん。
なかなか食えない子どもだ。さすが初子姉ちゃんの娘だけのことはある。
「もし俺がいない間に初子姉ちゃんが来たら、その時は――」
「……うまくごまかしますから大丈夫です」
「あ、ああ。ありがと」
この子に任せておけば大丈夫だろう。
俺はそう確信して「行ってきます」と庭に出ていく。
何も庭で全裸になる必要はないことに今朝になって気付いた俺は写し鏡の門の前までは服を着た状態で石階段を下りていく。
そして鏡を前にして服を脱ぐと俺は手をかざした。
『地下何階層からスタートしますか?』
「地下一階層で頼む」
『地下一階層ですね。それでは写し鏡の門を通ってください』
俺は慣れた動作で写し鏡の門に入っていった。
◇ ◇ ◇
「マツイさ~ん。待ってましたよ~」
俺の前に飛んできたククリと合流。
「せっかく昨日は順調にいっていたのに災難でしたね」
「まったくだよ」
トウキョウダンジョンでは同一フロアには連続して一時間しかいられないので昨日はそれを超えたためダンジョンから放り出されてしまったのだ。
「なんとかならないのか? 一時間縛り」
「もっと深い階層に行けば制限時間を無視して行動できるようになるアイテムも出てきますよ。きっと」
「何っ、本当か?」
きっとという言葉が気になるが……。
「俺さ、このダンジョンに潜るようになってから寝不足なんだよなぁ」
首をこきこき鳴らしながらククリに聞こえるように言う。
体質なのかもともと俺はあまり普段から睡眠を必要としないタチだったがそれでも一時間以内の仮眠ばかりではなかなか疲れもとれない。
もし本当にククリが言うようなアイテムがあるのなら是非とも手に入れたいところだ。
「ではますます深い階層を目指さないとですね」
「そうだな、頑張るよ」
前回同様地下一階層を歩き回るが相変わらずスライムは俺を見て逃げ出していく。
そのおかげで時間のロスもなくアイテム探しをすることが出来た。
宝箱の中から防御力+1のブーメランパンツを拾い上げるとこれを履く。
「これ防御力+1なんてないだろ。ただの生地の薄い水着じゃないか」
「似合ってますよ、マツイさん」
そう言われてもまったく嬉しくない。
俺はどこぞのお笑い芸人のような恰好のままアイテム探しを続けた。
その結果、におい袋と魔力草と皮の袋を手に入れることが出来た。
におい袋は首にかけ、皮の袋は魔力草を入れてから肩にかける。
「さっさと次の階層に行こうか」
「はいっ」
◇ ◇ ◇
地下二階層のゴブリンフロア。
ここでもモンスターは俺に襲い掛かってくることはなかった。
それだけ俺が強くなっているということだ。
俺はフロア中くまなくアイテムを探し十五分ほどで攻撃力+2のバタフライナイフと攻撃力+7の鉄の槍と薬草の計三つのアイテムを手に入れた。
バタフライナイフと薬草を皮の袋にしまい込み、鉄の槍を片手で持つと地下三階層へと進む。
◇ ◇ ◇
地下三階層。
階段を下りてすぐ恐れを知らずに向かってくるゾンビの頭を鉄の槍で一突きして倒した俺はフロアを探索。
慣れない武器をそれなりに使いこなしてゾンビを返り討ちにしながら進んでいく。
「マツイさんの力は既に成人男性の四倍以上ありますし、ゾンビ系に対して三倍のダメージを与えられるゾンビコレクターを持っていますから充分素手でも倒せますよ」
とククリは言うがゾンビを素手で倒すなんてお断りだ。
ゾンビは首をはねるか脳を破壊するしかないのにそれを素手でやるなんてたとえ出来るとしてもやりたくはない。
俺はその後も襲い来るゾンビを鉄の槍で撃退しアイテムを手にしていった。
「結局みつけたのは薬草二つだけか」
「地下三階層にはあまりいいアイテムはなかったですね」
「ああ、次行こうか」
俺はフロアの臭いを嫌い、ククリとの会話もそこそこに地下四階層へと歩を進めた。
◇ ◇ ◇
地下四階層は俺の苦手な蜂型モンスターのビーフロア。
ゾンビフロアと同じくあまり長居はしたくないので魔眼の透視能力を駆使しながらビーを避けつつアイテムを探す。
その成果としてビーに一切遭遇することなくフロアのアイテムをすべて取りきることに成功した。
攻撃力+2の錆びた剣と防御力+1の鉢巻きと混乱効果のある黒曜の玉と混乱を治す効果のあるワーム草をゲットした俺は鉢巻きを額に巻きつけ黒曜の玉とワーム草を皮の袋にしまった。
鉄の槍より攻撃力の劣る錆びた剣だが俺は剣の方が扱いなれているのでどっちを使うか少し悩むも結局高値で売れそうな鉄の槍を選んだ。
皮の袋も割とふくれてきたので錆びた剣は仕方なく諦めることにした。
鉄の槍と二刀流という考えも浮かんだが試しに素振りをしてみたら使いにくかったので早々にやめた。
そして次が因縁のコボルトフロアだ。
俺は気を引き締めると地下五階層への階段を駆け下りていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
675
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる