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第137話 カエルの涙

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少し経って気分が落ち着いてから俺は立ち上がった。

「よし、じゃあこっちの宝箱からいくぞ」
魔石が入っているであろう宝箱を開けてみる。

ガチャ。

宝箱を開けた隙間から青い光がぼんやりと見えた。

「おおっ。やっぱり魔石だっ」

中に入っていたのは青く光り輝く魔石だった。

「やりましたね、マツイさんっ」
『ピキー』
「ああ」
毒の沼地にまで入った甲斐があったというものだ。

俺は魔石を取り出すと皮の袋にそっとしまう。

「じゃあ次はこっちの宝箱ですね」
ククリが指で指し示す。
俺はもう一つの宝箱に目を向けた。

「こっちも透視はしたんだけど初めて見るものだったんだよなぁ」
言いながら宝箱に手をかける。
そして開けて中を覗くと宝箱の底には透明な液体の入った小さめの容器が置かれていた。

「これ一体何なんだ? ククリ」
手に取ってよーく見てみるが中身はさらさらとした液体のようだ。

「えーっとですね、透明の液体は確か……ポーション? じゃなくって、エリクサー? でもなかったような、う~ん……惚れ薬、はピンク色だし~……ええと~」
ククリはこめかみに人差し指を当てぶつぶつと何やらつぶやいている。
っていうか今惚れ薬って聞こえた気がしたけど……。

興味深い単語に勝手に胸を高鳴らせていたところ、
「……あっ、思い出しましたっ。それはカエルの涙です!」
唐突に大声を上げるククリ。

「え? カエルの涙?」
「はい。その液体はカエルの涙ですっ」
ククリは晴れやかな顔で言い切った。

「なんだよそれ。なんかあんまり飲みたくないネーミングだな」
「カエルの涙は飲み物じゃありませんよ。体に振りかけて使うんです」
「あ、そうなの? 振りかけるとどんな効果があるんだ?」
「石化が解けます」
「石化って……石になるってことだよな。そんな状況あり得るのか?」
「はい。まだ出てきてはいませんけどあとあと出てくるモンスターの中にはそういう特技を使うものがいますから」
とククリ。

「マジかよ」
石化なんかしたらそれはもう死ぬことと変わらないんじゃ?
俺が不安そうな顔をしていたのを見てククリは「心配しないでくださいよ」と俺の肩をぽんと叩いた。

「マツイさんがもし石になっちゃったとしても私がカエルの涙をかけてもとに戻してあげますから」
「ほ、本当か?」
「はいっ」

ククリは強くうなずくが俺が石になる時に俺の持ち物ごと石化してしまうんじゃないだろうな……と嫌な考えが頭をよぎった。
なのでそのことをククリに訊ねてみる。

「なあ、石化って服ごと石になるのか? だとしたらカエルの涙を入れてる皮の袋も一緒に石になっちゃうんじゃないのか?」
「うん? ……多分平気ですよ」
ククリは急にロボットみたいな感情のない顔になって淡々と答えた。

「多分てなんだよ。はっきり断言してくれ、不安になるだろ」
「はいはい、わかりましたよ、絶対平気です。さあそれではエルダーグリュプスを倒しにいきますよマツイさん」
ククリは「ふんふ~ん」と鼻歌交じりにスーッと先を飛んでいってしまう。

「あ、ククリ待てってば。本当は知らないんじゃないだろうなっ、おいっ……」
『ピキー』

俺とスラはククリの後を慌てて追いかけた。
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