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帰宅
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「はい、今日はこのくらいで大丈夫です。ありがとうございました」
マルゴット様のその言葉で、私は椅子から立ち上がり、残った魔力を大きな魔石へと移した。今まで体に満ちていた魔力が少なくなったのが分かる。
さて、帰るか。もうすぐお昼になりそうだ。帰ってお昼ご飯を食べたい。
「クリス、帰りましょうか」
「うん」
お昼からは何をしようかな。ああ、クルトお兄様も家に帰ったよね。剣を教えてもらおうかな。うん、そうしよう。騎士科の朝練に混ざって訓練はしているが、未だにクルトお兄様に勝ったことはない。
こっそり魔法で身体強化しても絶対に勝てないのだ。クルトお兄様はすごい。
「では、わたくし達は帰りますわ。また来ます」
カイ達とお城で会うこともできないし、そうなったら私は他に行くところもない。かと言って家に籠っているのは退屈だ。カミラと一緒に過ごせるのは嬉しいけど。
「ヘンドリックお兄様はもたまにはお家に帰ってくださいませ。アリアから帰って来ないと聞いておりますわよ」
魔法省の人たちに比べるとだいぶましな顔をしてはいるがうっすらと隈ができているのは見える。つまりお兄様も安定の魔法省生活をしているのだ。やっぱり今日もお弁当を作ってくればよかった。
「お前が夕食を作るというなら帰る」
私が夕食を? そんなことで帰って来るの?
「カラアゲだ」
ああ、唐揚げ。なるほど、本当に気に入ってくれているんだ。この世界にはない料理だもんね。でも私は本当は味噌汁が飲みたい。味噌がないから作れないけど。まさか味噌の作り方なんて知らないし。
そう思って、ふとひらめいた。魔法で作れないのかな。魔法で作ったものって食べられるのかな。
「あの、ヘンドリックお兄様。先ほど魔法で作ったお水を飲んでられましたが、魔法で作ったものも食べることができるのですか?」
「食べることはできるが、栄養として摂取することはできない。水なら喉の渇きは収まるが、腹に入るわけではない」
じゃあ味噌を作った場合、味噌の栄養はないけど、味噌汁の味は再現できるってこと? ……これはちょっと面白いかも。帰ってやってみよう。
「お兄様が帰って来られるのでしたら、わたくし毎日でもお夕飯を作りますわ。ですので、どうか人間らしい生活を送ってくださいませ」
「先生たちに比べると私はまだましな方だが」
お兄様は「善処する」と言うと、さっさと手元にあった書類へ視線を落とした。こうなってしまえばもうダメだ。何を言っても返事がないのは今までで学んでいる。さっさと帰ろう。
「ではマルゴット様、ごきげんよう」
「ええ、またお待ちしておりますわ。ヨハンにも顔を出すように言ってくださいませ」
「はい、兄様も一緒に来られそうなときは一緒に来ます」
会話を終えてクリスと二人で魔法省を出る。お城に来てこんなにも早く帰ることはあまりないのでちょっと違和感がある。大体お昼ご飯はごちそうになるもんね。ああ、お城のご飯は美味しかったな。陛下の所で食べるお菓子も美味しかったな。たまには陛下が呼んでくれないかな。なんて、そんなわけないよね。
クリスと一緒に馬車へ乗り込むと、いつも通り馬車は動き出した。
「おかえりなさいませ」
クリスの家の馬車に送ってもらい、屋敷へ入ると、満面の笑みを浮かべたカミラがいた。ほわっと心が温かくなる。ああ、本当に可愛い。すごく久しぶりに会った気がする。
「ただいま帰りました。暑い日が続いているけど体調は大丈夫かしら?」
「はい、元気いっぱいです」
「それならよかったわ。後でお部屋に行ってもいいかしら? お話ししたいことがたくさんあるのよ」
「はい! お待ちしております!」
頷いたカミラの頭を軽くなでて私は自分の部屋へと向かう。そういえばアリアの姿が見えない。いつもだったら真っ先に出てくるのに。どこにいるのだろうか。きょろきょろしながら歩いていると、私の部屋の横の部屋の扉が開いていることに気が付いた。
あれ、あっちの隣がカミラの部屋よね。それで、こっちがクルトお兄様のお部屋。私とクルトお兄様の部屋の間は誰も使っていなかったはずだ。気になってちょっと覗いてみる。
「……アリア!」
中にはアリアがいた。アリアは何かをしていた手を止めて私を見ると、はっとして駆け寄って来た。
「おかえりなさいませ、エレナ様。申し訳ありません、お出迎えもせずに……」
「いいのよ、忙しそうね」
「先ほどヘンドリック様よりお部屋を整えるようにとの指示が届きましたので。明日帰って来られるそうです」
な、なんですと! ヘンドリックお兄様帰って来るの!? っていうか部屋すらなかったの!? そう言えば去年一緒に帰ってきた時は客室に泊まっていたような気がする。
なるほど、学校にいる間はほとんど帰って来なかったから部屋がなくなっているのか。うん? それっておかしくない? いくら寮にいるからって部屋がなくなるって……。
そりゃ帰りたくもなくなるわ。
「忙しいところ申し訳ないのだけど、お昼ご飯を食べたいの。お義母様に挨拶してくるからその間に準備をしておいてくれるかしら?」
「あ、はい、準備は致しますが、ご一緒します」
「大丈夫よ。ひとりで行けるわ」
忙しそうなアリアの邪魔をしてはいけない。私はさっさとお義母様の部屋へと歩いた。お義母様と会うのも久しぶりだな。ああ、最初の試験で一番だったことを報告したら褒めてもらえるだろうか。
ノックをして扉を開けると、お義母様は私を見た。
「失礼いたします。エレナ、ただいま帰りました」
中に入って礼をする。お義母様もきっと喜んでくれているはずだ。ほら、顔を上げたら笑顔のお義母様が……え!? 何怒ってるの!?
私の想像とは違い、そこには明らかに怒っているお義母様がいた。
「エレナ、わたくしあなたに教えましたよね? どうして一人で入ってくるのかしら?」
……はっ! しまった! 一人で歩いたり自分で扉を開けたりしたらいけないんだった。学校ではメイドさんなんていなかったからすっかり忘れていた!
「おかえりなさいを言う前に説教が必要なようですね。そこに座りなさい」
こうして私は帰宅一番、お義母様に令嬢としての振る舞いについてこんこんと説教されたのであった。
マルゴット様のその言葉で、私は椅子から立ち上がり、残った魔力を大きな魔石へと移した。今まで体に満ちていた魔力が少なくなったのが分かる。
さて、帰るか。もうすぐお昼になりそうだ。帰ってお昼ご飯を食べたい。
「クリス、帰りましょうか」
「うん」
お昼からは何をしようかな。ああ、クルトお兄様も家に帰ったよね。剣を教えてもらおうかな。うん、そうしよう。騎士科の朝練に混ざって訓練はしているが、未だにクルトお兄様に勝ったことはない。
こっそり魔法で身体強化しても絶対に勝てないのだ。クルトお兄様はすごい。
「では、わたくし達は帰りますわ。また来ます」
カイ達とお城で会うこともできないし、そうなったら私は他に行くところもない。かと言って家に籠っているのは退屈だ。カミラと一緒に過ごせるのは嬉しいけど。
「ヘンドリックお兄様はもたまにはお家に帰ってくださいませ。アリアから帰って来ないと聞いておりますわよ」
魔法省の人たちに比べるとだいぶましな顔をしてはいるがうっすらと隈ができているのは見える。つまりお兄様も安定の魔法省生活をしているのだ。やっぱり今日もお弁当を作ってくればよかった。
「お前が夕食を作るというなら帰る」
私が夕食を? そんなことで帰って来るの?
「カラアゲだ」
ああ、唐揚げ。なるほど、本当に気に入ってくれているんだ。この世界にはない料理だもんね。でも私は本当は味噌汁が飲みたい。味噌がないから作れないけど。まさか味噌の作り方なんて知らないし。
そう思って、ふとひらめいた。魔法で作れないのかな。魔法で作ったものって食べられるのかな。
「あの、ヘンドリックお兄様。先ほど魔法で作ったお水を飲んでられましたが、魔法で作ったものも食べることができるのですか?」
「食べることはできるが、栄養として摂取することはできない。水なら喉の渇きは収まるが、腹に入るわけではない」
じゃあ味噌を作った場合、味噌の栄養はないけど、味噌汁の味は再現できるってこと? ……これはちょっと面白いかも。帰ってやってみよう。
「お兄様が帰って来られるのでしたら、わたくし毎日でもお夕飯を作りますわ。ですので、どうか人間らしい生活を送ってくださいませ」
「先生たちに比べると私はまだましな方だが」
お兄様は「善処する」と言うと、さっさと手元にあった書類へ視線を落とした。こうなってしまえばもうダメだ。何を言っても返事がないのは今までで学んでいる。さっさと帰ろう。
「ではマルゴット様、ごきげんよう」
「ええ、またお待ちしておりますわ。ヨハンにも顔を出すように言ってくださいませ」
「はい、兄様も一緒に来られそうなときは一緒に来ます」
会話を終えてクリスと二人で魔法省を出る。お城に来てこんなにも早く帰ることはあまりないのでちょっと違和感がある。大体お昼ご飯はごちそうになるもんね。ああ、お城のご飯は美味しかったな。陛下の所で食べるお菓子も美味しかったな。たまには陛下が呼んでくれないかな。なんて、そんなわけないよね。
クリスと一緒に馬車へ乗り込むと、いつも通り馬車は動き出した。
「おかえりなさいませ」
クリスの家の馬車に送ってもらい、屋敷へ入ると、満面の笑みを浮かべたカミラがいた。ほわっと心が温かくなる。ああ、本当に可愛い。すごく久しぶりに会った気がする。
「ただいま帰りました。暑い日が続いているけど体調は大丈夫かしら?」
「はい、元気いっぱいです」
「それならよかったわ。後でお部屋に行ってもいいかしら? お話ししたいことがたくさんあるのよ」
「はい! お待ちしております!」
頷いたカミラの頭を軽くなでて私は自分の部屋へと向かう。そういえばアリアの姿が見えない。いつもだったら真っ先に出てくるのに。どこにいるのだろうか。きょろきょろしながら歩いていると、私の部屋の横の部屋の扉が開いていることに気が付いた。
あれ、あっちの隣がカミラの部屋よね。それで、こっちがクルトお兄様のお部屋。私とクルトお兄様の部屋の間は誰も使っていなかったはずだ。気になってちょっと覗いてみる。
「……アリア!」
中にはアリアがいた。アリアは何かをしていた手を止めて私を見ると、はっとして駆け寄って来た。
「おかえりなさいませ、エレナ様。申し訳ありません、お出迎えもせずに……」
「いいのよ、忙しそうね」
「先ほどヘンドリック様よりお部屋を整えるようにとの指示が届きましたので。明日帰って来られるそうです」
な、なんですと! ヘンドリックお兄様帰って来るの!? っていうか部屋すらなかったの!? そう言えば去年一緒に帰ってきた時は客室に泊まっていたような気がする。
なるほど、学校にいる間はほとんど帰って来なかったから部屋がなくなっているのか。うん? それっておかしくない? いくら寮にいるからって部屋がなくなるって……。
そりゃ帰りたくもなくなるわ。
「忙しいところ申し訳ないのだけど、お昼ご飯を食べたいの。お義母様に挨拶してくるからその間に準備をしておいてくれるかしら?」
「あ、はい、準備は致しますが、ご一緒します」
「大丈夫よ。ひとりで行けるわ」
忙しそうなアリアの邪魔をしてはいけない。私はさっさとお義母様の部屋へと歩いた。お義母様と会うのも久しぶりだな。ああ、最初の試験で一番だったことを報告したら褒めてもらえるだろうか。
ノックをして扉を開けると、お義母様は私を見た。
「失礼いたします。エレナ、ただいま帰りました」
中に入って礼をする。お義母様もきっと喜んでくれているはずだ。ほら、顔を上げたら笑顔のお義母様が……え!? 何怒ってるの!?
私の想像とは違い、そこには明らかに怒っているお義母様がいた。
「エレナ、わたくしあなたに教えましたよね? どうして一人で入ってくるのかしら?」
……はっ! しまった! 一人で歩いたり自分で扉を開けたりしたらいけないんだった。学校ではメイドさんなんていなかったからすっかり忘れていた!
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