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救出
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ユリウス殿下は突然名前を呼ばれたことに対してか、ちょっとだけ驚いたような表情を見せ、そして笑った。戸惑いと懐かしさが混ざったような笑顔。
「まずはお名前を呼ぶ無礼をお許しください。『殿下』ですとちょっと紛らわしくて……」
「はい、許します。そう呼ばれるのは懐かしくてね。そっちの方が嬉しいよ」
ずっとここで一人だったのだろうか。いなくなってからの七年間。誰とも話すこともなく、名前も呼ばれることもなく。それはどんなに寂しいことなのだろう。
急にユリウス殿下はふいと歩き始めた。あ、あれ、どこに行くの? ついて行くべき? どうしたらいいの? 少し迷ったが、結局後ろをついて行くことにした。ここで一人になってもどうしたらいいか分からないし。
ユリウス殿下は迷いのない足取りで、ある一室の前で立ち止まると、私を振り返った。
「座ってゆっくり話をしよう」
その言葉と同時にドアが一人でに開き、中の様子が見えた。
……普通の部屋だよね。よく見ると、布団が少し乱れていたり、椅子がきちんと中に入ってなかったりと生活感があった。
ああ、ここがユリウス殿下の部屋なのか。
ユリウス殿下に促され、部屋に入る。すると椅子が勝手に引かれた。ユリウス殿下を見上げるとにこにこして自分も勝手に引かれたもう一方の椅子に座った。
……魔法か。
私も椅子に座り、横に置かれたワゴンに視線を向ける。使われた形跡はある。ユリウス殿下が日常的に使っている物なのだろう。
勝手に魔法でお茶を入れる。コトンと目の前にお茶が置かれ、ユリウス殿下は満足そうにそれに口を付けた。
「早速ですが、図書室のあの本はなんの目的があるのでしょうか?」
一番聞きたかったことを真っ先に聞くと、何が可笑しかったのか、ユリウス殿下はふふっと笑った。
「君が思っているほど明確な目的があったわけじゃないよ。ただ優秀な子を見つけたかっただけだよ。誰も読めるなんて思っていない。あれを読もうと奮起する子と興味も持たない子を分けるだけ」
「何のために、でしょうか?」
「それは聞くまでもない。国のためだ。やる気のある子にはぜひとも高い位についてもらわないと。まあ僕がここから出られなくなってしまったからそれも無意味だけどね」
やっぱり出られないんだ。私が思うに、ここは闇魔法で作られた異空間だ。ユリウス殿下の本に書いてあったことを信じるなら。まあ信じるも信じないも、実際に違う空間があるわけだし。
「ベルメール先生はあの本を読める子を今でも探しておられますわ」
「……そっか」
ユリウス殿下が一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、次に嬉しそうに微笑んだ。
「それで、君は読めたんだろう?」
「ええ、だから今ここにいるのです。率直に伺います。出る方法に心当たりはありませんか?」
「ないね。思いつく限り色々試してみたよ。どの属性を使ってみても、組み合わせてみてもできなかった。だからここに入って来られる君が不思議でたまらないよ」
なるほど。そういうことか。
「はっきりと申し上げましょう。外の世界ではユリウス殿下は忘れられかけております」
「うん、そうだと思った」
……軽っ! これ言うの結構勇気いったんだけど。大分気を遣ったんだけど。
「僕もここにいて自分の存在を忘れかけたことがある。多分ここにいると存在そのものが消えてしまうんだ。それを思えば外の世界の人が僕のことを忘れるのは不自然なことではない」
自分の存在を忘れる? 自分のことなのに?
ぞわっとした。これが闇魔法なんだと思うと、急に恐ろしくなった。
「闇属性の魔法に害のない魔法なんてないんだ。実感したよ」
「だけど空間を作ることができると本に書かれてましたよね? その時は出ることができたのですか?」
「卒業前は小さな空間しか作ったことがなかったんだ。調子に乗って大きな空間を作ってみようとするからこうなったんだよ」
大きな空間。他に闇魔法を使える人がいないから分からないけど、それも素質なのかなと思った。素質のない人はきっとどんなに小さな空間でも出られなくなるんじゃないか、と。これは勘だけど。
使い方さえ間違えなかったら便利な魔法なのかもしれない。だけどあまりにもリスクが大きすぎる。
「それで、君はさっき僕を助けに来たと言ったね。この魔法を解くことができるのかい?」
「分かりません」
きっぱりとそう言う私にユリウス殿下は目をぱちくりさせた。そりゃそうだ。『助けに来た』なんて堂々と言っておきながら解くことができるかどうか分からないなんてふざけている。
「ですが、ユリウス殿下が闇属性を使えるように、わたくしにも切り札がございます」
できるかは分からないけどやってみるだけやってみよう。だって、闇属性に対抗できるのは光属性だって相場が決まっているもん!
魔力を意識して、空間を壊すイメージを。
すると、パキン、と何かが割れるような音が、感じがした。そして一気に体が重くなり、私は椅子から崩れ落ちた。
「まずはお名前を呼ぶ無礼をお許しください。『殿下』ですとちょっと紛らわしくて……」
「はい、許します。そう呼ばれるのは懐かしくてね。そっちの方が嬉しいよ」
ずっとここで一人だったのだろうか。いなくなってからの七年間。誰とも話すこともなく、名前も呼ばれることもなく。それはどんなに寂しいことなのだろう。
急にユリウス殿下はふいと歩き始めた。あ、あれ、どこに行くの? ついて行くべき? どうしたらいいの? 少し迷ったが、結局後ろをついて行くことにした。ここで一人になってもどうしたらいいか分からないし。
ユリウス殿下は迷いのない足取りで、ある一室の前で立ち止まると、私を振り返った。
「座ってゆっくり話をしよう」
その言葉と同時にドアが一人でに開き、中の様子が見えた。
……普通の部屋だよね。よく見ると、布団が少し乱れていたり、椅子がきちんと中に入ってなかったりと生活感があった。
ああ、ここがユリウス殿下の部屋なのか。
ユリウス殿下に促され、部屋に入る。すると椅子が勝手に引かれた。ユリウス殿下を見上げるとにこにこして自分も勝手に引かれたもう一方の椅子に座った。
……魔法か。
私も椅子に座り、横に置かれたワゴンに視線を向ける。使われた形跡はある。ユリウス殿下が日常的に使っている物なのだろう。
勝手に魔法でお茶を入れる。コトンと目の前にお茶が置かれ、ユリウス殿下は満足そうにそれに口を付けた。
「早速ですが、図書室のあの本はなんの目的があるのでしょうか?」
一番聞きたかったことを真っ先に聞くと、何が可笑しかったのか、ユリウス殿下はふふっと笑った。
「君が思っているほど明確な目的があったわけじゃないよ。ただ優秀な子を見つけたかっただけだよ。誰も読めるなんて思っていない。あれを読もうと奮起する子と興味も持たない子を分けるだけ」
「何のために、でしょうか?」
「それは聞くまでもない。国のためだ。やる気のある子にはぜひとも高い位についてもらわないと。まあ僕がここから出られなくなってしまったからそれも無意味だけどね」
やっぱり出られないんだ。私が思うに、ここは闇魔法で作られた異空間だ。ユリウス殿下の本に書いてあったことを信じるなら。まあ信じるも信じないも、実際に違う空間があるわけだし。
「ベルメール先生はあの本を読める子を今でも探しておられますわ」
「……そっか」
ユリウス殿下が一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、次に嬉しそうに微笑んだ。
「それで、君は読めたんだろう?」
「ええ、だから今ここにいるのです。率直に伺います。出る方法に心当たりはありませんか?」
「ないね。思いつく限り色々試してみたよ。どの属性を使ってみても、組み合わせてみてもできなかった。だからここに入って来られる君が不思議でたまらないよ」
なるほど。そういうことか。
「はっきりと申し上げましょう。外の世界ではユリウス殿下は忘れられかけております」
「うん、そうだと思った」
……軽っ! これ言うの結構勇気いったんだけど。大分気を遣ったんだけど。
「僕もここにいて自分の存在を忘れかけたことがある。多分ここにいると存在そのものが消えてしまうんだ。それを思えば外の世界の人が僕のことを忘れるのは不自然なことではない」
自分の存在を忘れる? 自分のことなのに?
ぞわっとした。これが闇魔法なんだと思うと、急に恐ろしくなった。
「闇属性の魔法に害のない魔法なんてないんだ。実感したよ」
「だけど空間を作ることができると本に書かれてましたよね? その時は出ることができたのですか?」
「卒業前は小さな空間しか作ったことがなかったんだ。調子に乗って大きな空間を作ってみようとするからこうなったんだよ」
大きな空間。他に闇魔法を使える人がいないから分からないけど、それも素質なのかなと思った。素質のない人はきっとどんなに小さな空間でも出られなくなるんじゃないか、と。これは勘だけど。
使い方さえ間違えなかったら便利な魔法なのかもしれない。だけどあまりにもリスクが大きすぎる。
「それで、君はさっき僕を助けに来たと言ったね。この魔法を解くことができるのかい?」
「分かりません」
きっぱりとそう言う私にユリウス殿下は目をぱちくりさせた。そりゃそうだ。『助けに来た』なんて堂々と言っておきながら解くことができるかどうか分からないなんてふざけている。
「ですが、ユリウス殿下が闇属性を使えるように、わたくしにも切り札がございます」
できるかは分からないけどやってみるだけやってみよう。だって、闇属性に対抗できるのは光属性だって相場が決まっているもん!
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