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一年生最後の試験結果
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放課後のノイナー先生の補習。これにもラルフは遅れて来た。もう既に授業は始まっていたが、ノイナー先生はチラッとラルフの方を見ただけで何も言わなかった。これまた開けっ放しになった扉はクリスが魔法で閉めた。
ため息を吐きたいが、それどころではない。昼休みの魔法科の補習とは難易度が全然違う。科によって多少の違いはあるだろうけど、もしかするとこれが二年生の授業レベルなのかもしれない。ということはヨハンは手を抜いてくれていたのだ。それも最初だけだろうけど。
「ノイナー先生、どうしてそこはそうなるんですか?」
クリスが元気よく手を上げて聞く。私も聞きたかったところだ。ノイナー先生の説明にカイも必死に耳を傾けている。これが国のトップレベルの授業なのだと実感した。
一年生の授業だけならまだしも、このレベルで授業に全く出ずに卒業したユリウス殿下って本当にすごい人なんだな……。
ラルフはというと、またノートもとらずにふんぞり返っていた。
「はい、今日はもう終わりましょう。復習はしっかりしてきてくださいね」
「ノイナー先生、質問よろしいでしょうか」
さっと立ち上がってノイナー先生のところへと近付く。こういうのはスピードが大事なんだ。先生が帰る前に立ち上がって話しかける。
愛玲奈の時に身につけた技だ。まあ技と言うほどのものではないけど。ノイナー先生は扉へと向かおうとしていた足を止めて、私へと向き直った。二つ三つ質問をした後、お礼を言って離れようとすると、ノイナー先生は私を引き留めた。
「あなたに聞くのはとても忍びないのだけど、ラルフは昔からあんな感じなのかしら?」
ああ、ラルフのこと。ノイナー先生は私たちが婚約者だって知ってるんだね。だけどそれを私に聞かれてもノイナー先生の望んでいるような答えは得られないだろう。
「申し訳ありません。わたくし達の婚約は親の決めたことでして……わたくしもそう親しくはないので詳しくは知りません。ですが、その、わたくしが初めて会った九歳の時と今ではあまり変わっていないように見えますわ」
あああ、こんなことを言うのが恥ずかしい。婚約者として恥ずかしい! 身内ではないけど、親しくもないけど、だけど身内の恥をさらすようなものだ。早く婚約破棄したい!!!
ノイナー先生は私の表情を見て察したのか、「そうなのね」と頷いて教室から出て行った。……ん? 待って、ラルフいるんじゃない? 本人の目の前であんなこと言ったの? それはさすがにまずくない?
そろーっと振り返ってみると、そこにいたのはクリスとカイだけ。
あれ? いない。いつの間にいなくなったんだろう。目をぱちくりしていると、クリスが立ち上がって言った。
「ラルフならエレナが立って先生の所に行ったのと同時くらいに席を立って出て行っていたよ」
ああ、そうなの。全然気づかなかったけど、それならよかった。ほっと息をついて机の上に広げたノートとペンをまとめる。よし、帰って復讐しよう。
そう思った時だった。扉が開いて誰かが入って来た。うん? 誰だ?
クリスとカイと三人でほぼ同時にそちらに目を向ける。入って来たのはレオンとマクシミリアンだった。
「よお、迎えに来たぜ」
「三人ともお疲れ」
教室の中には五人。そっか、これからも補習があるなら、こうして自然と五人になれる時間がとれるんだ。これは嬉しい。できればここにヨハンとフロレンツもいてくれたらもっと嬉しい。フロレンツが再来年に入学してくるとして、その頃には皆で集まれるかな。
クリスと顔を見合わせ、椅子に座り直す。風魔法で周囲の音を拾っていたら人が来てもすぐに教室を出ることができるだろう。
レオンとマクシミリアンも椅子に座り、五人で向かい合う。久しぶりにゆっくり話せる時間はあっという間に過ぎて行った。
寮に戻り、夕飯を食べた後はひたすら復讐だ。部屋の向こう側ではクリスも机に向かって一心不乱に勉強している。
いやー、一年生の授業がお城で習ったところばっかりで楽勝じゃん、って思っていたけど、国トップの学校はやはり伊達ではなかった。ちょっとなめていた。と言うかもう少しで一年生最後の定期テストだし。模様の入ったリボンを手でいじる。二年生の勉強ばかりしていて成績が落ちたらどうしよう、と思った。
が、どうやら杞憂だったようだ。
貼り出された結果を見上げる。隣でクリスが小さな声で、だけど嬉しそうに「よっしゃあ!」と言うのが聞こえた。
クリスは三位。前までは五位や六位をうろうろしていたので今までで一番いい成績だ。
「勉強漬けの日々が報われた気がしますわ」
なんて言って目元を押さえるものだから思わず笑ってしまった。
向こう側にカイの姿が見えた。カイも前回に比べると点数があがっている。平均して五、六点くらい。カイが私の方を見て、目が合った。口が動き、爽やかな笑顔を浮かべる。
私は再び結果に目をやった。「負けたよ」とカイの声が聞こえた気がした。
私は一位。全て満点。心の底からふつふつと喜びが沸き上がる。今にも飛び上がって喜びたい衝動をぐっと抑え、私はクリスの手を引いてその場を離れた。何かを言ったら声が弾んでしまいそうで、クリスを見たら抱き着いてしまいそうで。
誰もいない静かな教室に二人で入り、私はクリスを振り返った。そして口を開く。
「やりましたわ!! 一年間ずっと一位! やりましたわよ、クリス!!」
「うん、すごいよエレナ! おめでとう!」
「クリスも三位よ! すごいわ!」
クリスと手と手をを取り合って飛び跳ねる。全身で喜びを表す。こんなにも嬉しかったことは久しぶりかもしれない。これでお父様やお義母様、お兄様方に胸を張れる。カミラにも誇れるお姉ちゃんでいられる。
ある程度喜びつくして、ふう、と息をつく。いつまでも喜んではいられない。
「次は来年ね。一緒に頑張りましょう」
クリスの手をきゅっと握ると、クリスも握り返してくれた。
ため息を吐きたいが、それどころではない。昼休みの魔法科の補習とは難易度が全然違う。科によって多少の違いはあるだろうけど、もしかするとこれが二年生の授業レベルなのかもしれない。ということはヨハンは手を抜いてくれていたのだ。それも最初だけだろうけど。
「ノイナー先生、どうしてそこはそうなるんですか?」
クリスが元気よく手を上げて聞く。私も聞きたかったところだ。ノイナー先生の説明にカイも必死に耳を傾けている。これが国のトップレベルの授業なのだと実感した。
一年生の授業だけならまだしも、このレベルで授業に全く出ずに卒業したユリウス殿下って本当にすごい人なんだな……。
ラルフはというと、またノートもとらずにふんぞり返っていた。
「はい、今日はもう終わりましょう。復習はしっかりしてきてくださいね」
「ノイナー先生、質問よろしいでしょうか」
さっと立ち上がってノイナー先生のところへと近付く。こういうのはスピードが大事なんだ。先生が帰る前に立ち上がって話しかける。
愛玲奈の時に身につけた技だ。まあ技と言うほどのものではないけど。ノイナー先生は扉へと向かおうとしていた足を止めて、私へと向き直った。二つ三つ質問をした後、お礼を言って離れようとすると、ノイナー先生は私を引き留めた。
「あなたに聞くのはとても忍びないのだけど、ラルフは昔からあんな感じなのかしら?」
ああ、ラルフのこと。ノイナー先生は私たちが婚約者だって知ってるんだね。だけどそれを私に聞かれてもノイナー先生の望んでいるような答えは得られないだろう。
「申し訳ありません。わたくし達の婚約は親の決めたことでして……わたくしもそう親しくはないので詳しくは知りません。ですが、その、わたくしが初めて会った九歳の時と今ではあまり変わっていないように見えますわ」
あああ、こんなことを言うのが恥ずかしい。婚約者として恥ずかしい! 身内ではないけど、親しくもないけど、だけど身内の恥をさらすようなものだ。早く婚約破棄したい!!!
ノイナー先生は私の表情を見て察したのか、「そうなのね」と頷いて教室から出て行った。……ん? 待って、ラルフいるんじゃない? 本人の目の前であんなこと言ったの? それはさすがにまずくない?
そろーっと振り返ってみると、そこにいたのはクリスとカイだけ。
あれ? いない。いつの間にいなくなったんだろう。目をぱちくりしていると、クリスが立ち上がって言った。
「ラルフならエレナが立って先生の所に行ったのと同時くらいに席を立って出て行っていたよ」
ああ、そうなの。全然気づかなかったけど、それならよかった。ほっと息をついて机の上に広げたノートとペンをまとめる。よし、帰って復讐しよう。
そう思った時だった。扉が開いて誰かが入って来た。うん? 誰だ?
クリスとカイと三人でほぼ同時にそちらに目を向ける。入って来たのはレオンとマクシミリアンだった。
「よお、迎えに来たぜ」
「三人ともお疲れ」
教室の中には五人。そっか、これからも補習があるなら、こうして自然と五人になれる時間がとれるんだ。これは嬉しい。できればここにヨハンとフロレンツもいてくれたらもっと嬉しい。フロレンツが再来年に入学してくるとして、その頃には皆で集まれるかな。
クリスと顔を見合わせ、椅子に座り直す。風魔法で周囲の音を拾っていたら人が来てもすぐに教室を出ることができるだろう。
レオンとマクシミリアンも椅子に座り、五人で向かい合う。久しぶりにゆっくり話せる時間はあっという間に過ぎて行った。
寮に戻り、夕飯を食べた後はひたすら復讐だ。部屋の向こう側ではクリスも机に向かって一心不乱に勉強している。
いやー、一年生の授業がお城で習ったところばっかりで楽勝じゃん、って思っていたけど、国トップの学校はやはり伊達ではなかった。ちょっとなめていた。と言うかもう少しで一年生最後の定期テストだし。模様の入ったリボンを手でいじる。二年生の勉強ばかりしていて成績が落ちたらどうしよう、と思った。
が、どうやら杞憂だったようだ。
貼り出された結果を見上げる。隣でクリスが小さな声で、だけど嬉しそうに「よっしゃあ!」と言うのが聞こえた。
クリスは三位。前までは五位や六位をうろうろしていたので今までで一番いい成績だ。
「勉強漬けの日々が報われた気がしますわ」
なんて言って目元を押さえるものだから思わず笑ってしまった。
向こう側にカイの姿が見えた。カイも前回に比べると点数があがっている。平均して五、六点くらい。カイが私の方を見て、目が合った。口が動き、爽やかな笑顔を浮かべる。
私は再び結果に目をやった。「負けたよ」とカイの声が聞こえた気がした。
私は一位。全て満点。心の底からふつふつと喜びが沸き上がる。今にも飛び上がって喜びたい衝動をぐっと抑え、私はクリスの手を引いてその場を離れた。何かを言ったら声が弾んでしまいそうで、クリスを見たら抱き着いてしまいそうで。
誰もいない静かな教室に二人で入り、私はクリスを振り返った。そして口を開く。
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「うん、すごいよエレナ! おめでとう!」
「クリスも三位よ! すごいわ!」
クリスと手と手をを取り合って飛び跳ねる。全身で喜びを表す。こんなにも嬉しかったことは久しぶりかもしれない。これでお父様やお義母様、お兄様方に胸を張れる。カミラにも誇れるお姉ちゃんでいられる。
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