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串焼き
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ある程度お土産を買い終え、アリアの持つ荷物が増えてきたころ、ようやくいい匂いの元にたどり着いた。
「串焼き! あったよ!」
クリスが嬉しそうにお店へと近付いていくと、お店のおばさんはにこやかに私たちを見た。
「一年ぶりだね、フロレンツ様。お友達かい?」
「うん、こっちの二人が僕の従姉妹、こっちが友達だよ。今年も食べに来たんだ。人数分頼むよ」
フロレンツが仲良さげにそう話す。おばさんは「はいよ」と言うと、もう既に焼けているお肉を網の上に戻した。温まったらすぐに食べられるのだろう。食欲をそそる匂いとその見た目でもう待ちきれない。
「早く食べたいわね」
「ええ、本当に。とても美味しそう!」
カミラはお行儀よく待っているが、気持ちは私と同じだろう。少しするとおばさんは串焼きを一本ずつ差し出してくれた。
「ほら、そっちの姉ちゃんたちも」
そう声をかけられたのはアリアとサラだった。普段、使用人は主人と一緒に食事をすることはない。アリアは当然断ろうとした。私はその前に口を開く。
「アリア、サラ、早く受け取ってちょうだい。皆で一緒に食べるわよ」
戸惑ったように私と串焼きを交互に見るアリア。一口目は皆で一緒に。そんな空気の中でアリアは、一緒に食べるわけにはいかないが、私たちがアリアたちを待っていることが分かったのだろう。
すっと前に出たのはフロレンツの執事さんだった。執事さんはお礼を言っておばさんから串焼きを受け取る。そしてそれを見たアリアとサラも観念して串焼きを手に持った。
よしよし、ここは王都じゃないんだから、細かいことは気にしなくてもいいの。美味しいものは皆で食べた方が美味しいしね。
「いただきます」
熱々のお肉にかぶりつく。立ったままの食事なんてあり得ない。ナイフで切ってないお肉なんてあり得ない。だけどこれ以上ないほど美味しい。
あまりの美味しさに喋るのを忘れるほどだ。パクパクと無言で食べているといつの間にか最後の一口になっていた。無くなってしまうのがとても惜しくて食べるのをためらっていると、向こうで「おばさん、もう一本ちょうだい!」とクリスの声が聞こえた。
……そうだね、こっちにいる間はまた食べに来られるもんね。がぶっと最後のお肉を口に入れる。最後の最後まで美味しい。串に刺して焼いただけなのに、味付けは塩と胡椒だけなのに、どうしてこんなに美味しいのだろうか。
「美味しかったでしょ」
フロレンツが誇らしげに私を見た。その手にはもう何も刺さってない串がある。
「ええ、本当に。また食べに来たいわ」
「うん、また来ようね」
アリアとサラも満足そうな顔をしている。もしかすると王都でも貴族街を出たらこういうものが売っているのかな。いつか行ってみたい。カミラと、二本目を食べていたクリスが食べ終わると、私たちはおばさんにお礼を言ってお店を離れた。
あの美味しさであの値段は安い。網で焼いたらあんなに美味しくなるんだろうか。自分でもやってみたい。寮の外でしたら怒られるかな。でも家でしたらお義母様とアリアにすごい怒られそうだし。……お城か!
陛下に許可を取って一角を借りてしよう。ヘンドリックお兄様にも手伝ってもらおうかな。お肉を分けてあげたら手伝ってくれるよね。ああ、あとヨハンと、フロレンツ? となるとカイ達も一緒にしたいに決まっている。人目に付かないところだったらオッケーかな。ああ、確かレオンの属性が火だったよね。手伝ってもらおう。
ってこれ普通にバーベキューじゃん。……まあいいか。帰ったらバーベキューだ。ヨハンから陛下に話を通してもらおう。
なんてことを考えていると、馬車へと着いた。午後からはおばあ様とお茶なのでもう帰らないといけない。でもまた来よう。
「とても楽しかったわね」
馬車の中でそう言うと、最初に反応したのはクリスだった。
「うん、楽しかったし美味しかった。満足だよ」
その表情を見ただけで分かる。クリスはもうすっかりお肉を食べたことしか頭にない。まあ確かに美味しかったけど。
「帰ったらお昼ご飯ですわよ。食べられるかしら?」
「わたくしはちょっと自信がありません……」
カミラが自分のお腹を押さえてそう言う。確かに普段から少食のカミラにはあのお肉を食べて一人前というのは難しいかもしれない。ペロリと食べてしまったけど結構ボリュームあったし。
私もちょっと厳しいかもしれない。
そう言うとフロレンツは笑った。
「二人ともまだまだだね。僕はお昼ご飯だって余裕だよ!」
「あら、さすが男の子ね」
「でもさ、あのお肉に比べたら何を食べたって美味しく感じなさそうだよ」
クリスがしょんぼりとそんなことを言った。普段のご飯だって美味しいけどな。クリスはどうも串焼きが気に入ったようだ。二本も食べていたし。
「クリスこそお昼ご飯が食べられないのではなくて?」
「うん、そうかも……」
なんて言っていたクリスだったが、屋敷へ戻るとお昼ご飯もしっかりと一人前、美味しそうにたいらげていた。
「串焼き! あったよ!」
クリスが嬉しそうにお店へと近付いていくと、お店のおばさんはにこやかに私たちを見た。
「一年ぶりだね、フロレンツ様。お友達かい?」
「うん、こっちの二人が僕の従姉妹、こっちが友達だよ。今年も食べに来たんだ。人数分頼むよ」
フロレンツが仲良さげにそう話す。おばさんは「はいよ」と言うと、もう既に焼けているお肉を網の上に戻した。温まったらすぐに食べられるのだろう。食欲をそそる匂いとその見た目でもう待ちきれない。
「早く食べたいわね」
「ええ、本当に。とても美味しそう!」
カミラはお行儀よく待っているが、気持ちは私と同じだろう。少しするとおばさんは串焼きを一本ずつ差し出してくれた。
「ほら、そっちの姉ちゃんたちも」
そう声をかけられたのはアリアとサラだった。普段、使用人は主人と一緒に食事をすることはない。アリアは当然断ろうとした。私はその前に口を開く。
「アリア、サラ、早く受け取ってちょうだい。皆で一緒に食べるわよ」
戸惑ったように私と串焼きを交互に見るアリア。一口目は皆で一緒に。そんな空気の中でアリアは、一緒に食べるわけにはいかないが、私たちがアリアたちを待っていることが分かったのだろう。
すっと前に出たのはフロレンツの執事さんだった。執事さんはお礼を言っておばさんから串焼きを受け取る。そしてそれを見たアリアとサラも観念して串焼きを手に持った。
よしよし、ここは王都じゃないんだから、細かいことは気にしなくてもいいの。美味しいものは皆で食べた方が美味しいしね。
「いただきます」
熱々のお肉にかぶりつく。立ったままの食事なんてあり得ない。ナイフで切ってないお肉なんてあり得ない。だけどこれ以上ないほど美味しい。
あまりの美味しさに喋るのを忘れるほどだ。パクパクと無言で食べているといつの間にか最後の一口になっていた。無くなってしまうのがとても惜しくて食べるのをためらっていると、向こうで「おばさん、もう一本ちょうだい!」とクリスの声が聞こえた。
……そうだね、こっちにいる間はまた食べに来られるもんね。がぶっと最後のお肉を口に入れる。最後の最後まで美味しい。串に刺して焼いただけなのに、味付けは塩と胡椒だけなのに、どうしてこんなに美味しいのだろうか。
「美味しかったでしょ」
フロレンツが誇らしげに私を見た。その手にはもう何も刺さってない串がある。
「ええ、本当に。また食べに来たいわ」
「うん、また来ようね」
アリアとサラも満足そうな顔をしている。もしかすると王都でも貴族街を出たらこういうものが売っているのかな。いつか行ってみたい。カミラと、二本目を食べていたクリスが食べ終わると、私たちはおばさんにお礼を言ってお店を離れた。
あの美味しさであの値段は安い。網で焼いたらあんなに美味しくなるんだろうか。自分でもやってみたい。寮の外でしたら怒られるかな。でも家でしたらお義母様とアリアにすごい怒られそうだし。……お城か!
陛下に許可を取って一角を借りてしよう。ヘンドリックお兄様にも手伝ってもらおうかな。お肉を分けてあげたら手伝ってくれるよね。ああ、あとヨハンと、フロレンツ? となるとカイ達も一緒にしたいに決まっている。人目に付かないところだったらオッケーかな。ああ、確かレオンの属性が火だったよね。手伝ってもらおう。
ってこれ普通にバーベキューじゃん。……まあいいか。帰ったらバーベキューだ。ヨハンから陛下に話を通してもらおう。
なんてことを考えていると、馬車へと着いた。午後からはおばあ様とお茶なのでもう帰らないといけない。でもまた来よう。
「とても楽しかったわね」
馬車の中でそう言うと、最初に反応したのはクリスだった。
「うん、楽しかったし美味しかった。満足だよ」
その表情を見ただけで分かる。クリスはもうすっかりお肉を食べたことしか頭にない。まあ確かに美味しかったけど。
「帰ったらお昼ご飯ですわよ。食べられるかしら?」
「わたくしはちょっと自信がありません……」
カミラが自分のお腹を押さえてそう言う。確かに普段から少食のカミラにはあのお肉を食べて一人前というのは難しいかもしれない。ペロリと食べてしまったけど結構ボリュームあったし。
私もちょっと厳しいかもしれない。
そう言うとフロレンツは笑った。
「二人ともまだまだだね。僕はお昼ご飯だって余裕だよ!」
「あら、さすが男の子ね」
「でもさ、あのお肉に比べたら何を食べたって美味しく感じなさそうだよ」
クリスがしょんぼりとそんなことを言った。普段のご飯だって美味しいけどな。クリスはどうも串焼きが気に入ったようだ。二本も食べていたし。
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