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クリスの気持ち
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「ちょっと待ってください、ベアトリクス様のおっしゃることが本当なら、あの刺客は誰が? それにいつかの訓練場での火は?」
ああ、そうか、そういうことになるのか。今までベアトリクスの仕業だと思っていたことがまた分からなくなった。
「刺客に関しては分からないけど、お父様の可能性があるわ。お父様は宰相に対して恨みがあるようだし、わたくしのことも溺愛しているもの」
ああ、娘を馬鹿にされて我慢ができなかったと。入学前の子供の喧嘩に家同士がどうかなることはないとお義母様は言っていたけど……。公には何もしないけど、公爵が個人的に動いたってことか。
「大丈夫よ。入学した時点でお父様はもうほとんど手出しができない状況になっているうえに、ここまで注目を浴びたら、本当にもう何もできないわ」
「それで、訓練場の件は? 何かご存じですか?」
「ああ、あなたの婚約者よ」
おお、そうか、ラルフか。
心の底から納得がいった。確かにラルフは私のことを嫌っている。あの状況で私が目立っているのが面白くなかったのだろう。
魔力の見えるベアトリクスが言うのだから間違いはないだろう。あれ、だけど……
「疑うわけではありませんが、あの時ベアトリクス様は随分疲れておられるようでしたが……」
あの魔法がベアトリクスではないというのなら、ベアトリクスは何をして座り込むほど疲れていたのだろうか。
「あれはあなたの魔力が目へ集まっているのが見えたから、わたくしもしてみようと思ったのよ。できなかったけれど」
恥ずかしさを隠すためか、少しツンツンとした口調でそう言う。……結構かわいいな、この子。
「何よ、にやにやしないでちょうだい」
面白くなさそうにベアトリクスが私を見る。おっと、にやにやしていたつもりはないけど、思わず口角があがってたようだ。
「すみません、ベアトリクス様とこうしてお話しできる日が来たことが嬉しくて」
まあ色々あったけど、ほとんど誤解だったみたいだし、思い出したらムカつくこともないわけではないが、だけど普通に話すことができる今の状態はとてもいいと思う。
できればこのまま断罪イベントもスキップしてしまいたい。
後はリリーが出てくれば、皆がそろう。ゲームが始まる日もそう遠くない。ようやく私の知っている世界が見られることに少し心が躍った。
ベアトリクスが部屋から出て行くなり、クリスは私を見た。何か言いたいのかもしれないけど、何も言ってこない。私は居心地の悪さを感じながら冷めたお茶を一口飲んだ。
多分これは私から話を振れってことよね。そう思いながらも無視して机の上の本を魔法で手元へと引き寄せる。
ふわっと飛んでくる本をキャッチしようと手を伸ばす。しかし私の手が届く前に本は止まった。止められた。
今日のクリスはいつもよりもしつこい気がする。
「どうしたの?」
「どうしたじゃないよ。本当にいいの? あのベアトリクスだよ? 今までのが誤解だったとしても、悪口も言われてるし、殴られてもいるじゃん。あんな普通に話すことのできるエレナが意味わかんない」
クリスの言いたいことは分かる。ベアトリクスと話している間もちょっと不満そうな顔してたし。だけどそんなこと言ったって今のベアトリクスに対してこちらからきつく当たる理由がない。
「子供のしたことよ」
そう言うとクリスは「同い年じゃん」と口を尖らせた。確かに。でも中身は年上だもん。とは言わないけど。
「クリスだってさっきベアトリクス様と一緒にラルフ様を追い詰めていたでしょう?」
「そ、れは……」
クリスが口ごもる。そしてもごもごと言い返してきた。
「目的が同じだったから……」
「わたくしとベアトリクス様もそうよ。ユリウス殿下を探すうえでベアトリクス様の目はとても力になるの。あちらから協力してくれるのだから、断る理由はないわ」
「それは、そうだけど……」
クリスは私から視線をそらして、「だって……」と口の中で何かを言っている。
不満だけど、私の言っていることは理解できるのだろう。
「文句があるなら言えばいいわ。クリスの思っていることは当然だと思うし、ベアトリクス様だって多分それを分かっているもの」
この二人は結構いいコンビになりそうな気がする。文句を言って、喧嘩もして、それでも組ませたら最強。そんなコンビに。きっとお互い対等に言い合えるんじゃないかな、と。
「仲良くして欲しいとは言わないわ。だけどベアトリクス様の協力は不可欠だと、それは分かっていてちょうだい」
私がそう言うと、クリスは深くため息を吐いた。その表情は既に諦めが浮かんでいる。
「エレナは大人みたいなこと言うね。もういいよ。一番被害に遭ってるエレナがそう言うんだもん。私が怒るのはおかしいもんね」
クリスは優しい。だから怒ってくれたのは分かる。だけど私は本当に気にしていないし、どちらかといえばチクチクしたままではこれから先に支障が出るかもしれない。
ベアトリクスが悪役令嬢に戻っても困るし。
クリスには悪いけど、少し我慢をしてもらおう。
「だけど怒ってくれてありがとう。その気持ちはとても嬉しいわ」
そう言って笑うと、クリスは照れたのか、少し頬を赤くしてそっぽを向いた。
「エレナは私がいないとだめだからね」
そんな照れ隠しに、私は思わず笑ってしまった。
ああ、そうか、そういうことになるのか。今までベアトリクスの仕業だと思っていたことがまた分からなくなった。
「刺客に関しては分からないけど、お父様の可能性があるわ。お父様は宰相に対して恨みがあるようだし、わたくしのことも溺愛しているもの」
ああ、娘を馬鹿にされて我慢ができなかったと。入学前の子供の喧嘩に家同士がどうかなることはないとお義母様は言っていたけど……。公には何もしないけど、公爵が個人的に動いたってことか。
「大丈夫よ。入学した時点でお父様はもうほとんど手出しができない状況になっているうえに、ここまで注目を浴びたら、本当にもう何もできないわ」
「それで、訓練場の件は? 何かご存じですか?」
「ああ、あなたの婚約者よ」
おお、そうか、ラルフか。
心の底から納得がいった。確かにラルフは私のことを嫌っている。あの状況で私が目立っているのが面白くなかったのだろう。
魔力の見えるベアトリクスが言うのだから間違いはないだろう。あれ、だけど……
「疑うわけではありませんが、あの時ベアトリクス様は随分疲れておられるようでしたが……」
あの魔法がベアトリクスではないというのなら、ベアトリクスは何をして座り込むほど疲れていたのだろうか。
「あれはあなたの魔力が目へ集まっているのが見えたから、わたくしもしてみようと思ったのよ。できなかったけれど」
恥ずかしさを隠すためか、少しツンツンとした口調でそう言う。……結構かわいいな、この子。
「何よ、にやにやしないでちょうだい」
面白くなさそうにベアトリクスが私を見る。おっと、にやにやしていたつもりはないけど、思わず口角があがってたようだ。
「すみません、ベアトリクス様とこうしてお話しできる日が来たことが嬉しくて」
まあ色々あったけど、ほとんど誤解だったみたいだし、思い出したらムカつくこともないわけではないが、だけど普通に話すことができる今の状態はとてもいいと思う。
できればこのまま断罪イベントもスキップしてしまいたい。
後はリリーが出てくれば、皆がそろう。ゲームが始まる日もそう遠くない。ようやく私の知っている世界が見られることに少し心が躍った。
ベアトリクスが部屋から出て行くなり、クリスは私を見た。何か言いたいのかもしれないけど、何も言ってこない。私は居心地の悪さを感じながら冷めたお茶を一口飲んだ。
多分これは私から話を振れってことよね。そう思いながらも無視して机の上の本を魔法で手元へと引き寄せる。
ふわっと飛んでくる本をキャッチしようと手を伸ばす。しかし私の手が届く前に本は止まった。止められた。
今日のクリスはいつもよりもしつこい気がする。
「どうしたの?」
「どうしたじゃないよ。本当にいいの? あのベアトリクスだよ? 今までのが誤解だったとしても、悪口も言われてるし、殴られてもいるじゃん。あんな普通に話すことのできるエレナが意味わかんない」
クリスの言いたいことは分かる。ベアトリクスと話している間もちょっと不満そうな顔してたし。だけどそんなこと言ったって今のベアトリクスに対してこちらからきつく当たる理由がない。
「子供のしたことよ」
そう言うとクリスは「同い年じゃん」と口を尖らせた。確かに。でも中身は年上だもん。とは言わないけど。
「クリスだってさっきベアトリクス様と一緒にラルフ様を追い詰めていたでしょう?」
「そ、れは……」
クリスが口ごもる。そしてもごもごと言い返してきた。
「目的が同じだったから……」
「わたくしとベアトリクス様もそうよ。ユリウス殿下を探すうえでベアトリクス様の目はとても力になるの。あちらから協力してくれるのだから、断る理由はないわ」
「それは、そうだけど……」
クリスは私から視線をそらして、「だって……」と口の中で何かを言っている。
不満だけど、私の言っていることは理解できるのだろう。
「文句があるなら言えばいいわ。クリスの思っていることは当然だと思うし、ベアトリクス様だって多分それを分かっているもの」
この二人は結構いいコンビになりそうな気がする。文句を言って、喧嘩もして、それでも組ませたら最強。そんなコンビに。きっとお互い対等に言い合えるんじゃないかな、と。
「仲良くして欲しいとは言わないわ。だけどベアトリクス様の協力は不可欠だと、それは分かっていてちょうだい」
私がそう言うと、クリスは深くため息を吐いた。その表情は既に諦めが浮かんでいる。
「エレナは大人みたいなこと言うね。もういいよ。一番被害に遭ってるエレナがそう言うんだもん。私が怒るのはおかしいもんね」
クリスは優しい。だから怒ってくれたのは分かる。だけど私は本当に気にしていないし、どちらかといえばチクチクしたままではこれから先に支障が出るかもしれない。
ベアトリクスが悪役令嬢に戻っても困るし。
クリスには悪いけど、少し我慢をしてもらおう。
「だけど怒ってくれてありがとう。その気持ちはとても嬉しいわ」
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そんな照れ隠しに、私は思わず笑ってしまった。
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