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面倒なクリス
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「レオンと二人で何してたの? 私抜きで!」
部屋に戻ってもクリスはまだちょっとぷんぷんしていた。
「だから、ごめんなさい。次からはちゃんと一言言うから。そんなに怒らないでちょうだい」
「絶対だからね!」
「ええ、絶対よ」
それでようやく機嫌が治った。こうなればもういつも通りだ。
めんどくさい彼女みたいだな、と思ったのは秘密。
「で? 何してたの?」
「ちょっと練習したいことがあったから手伝ってもらってたのよ」
ついでのお悩み相談と。
「練習?」
「ええ、人の魔法に割り込む練習」
結局全くできなかったけど。あんなに頑張ってみたけど一歩も進めなかった。エレナにコツくらい聞いておけばよかったと後悔中。
「何それ」
クリスが怪訝そうに私を見る。そんなことできるわけないでしょ、と顔に書いてあるのが分かった。私だって同じ立場なら信じないかもしれない。でもエレナは実際にやったんだし……。
「いつか本で読んだのよ。試してみようと思って」
「嘘だ」
さらっと嘘をつくと、クリスが速攻そう言い、私の顔を見る。
え、嘘がばれた? それとも魔法に割り込むってこと? どっち?
「本で読んだんじゃないでしょ。嘘つく時の顔してるもん。嘘でしょ」
「……すごいわね」
見破られたショックよりも普通にすごいと思ってしまった。顔には出ないように気を付けているはずなんだけど……さすがもう何年も一緒にいるだけある。私はクリスの嘘を見破ることができるかは分からないけど。
「隠し事ならまだ許せるけど嘘はだめ! ほんとは何なの?」
これはごまかせない。まあいいか。
「人に聞いたのよ。実際にやったことがあるんですって」
「誰?」
「クリスの知らない人よ」
「信用できるの? 嘘じゃないの?」
信用できる? 嘘じゃない? そう聞かれるとはっきりとは頷けない。エレナが何かを隠していて、私にそう嘘をついたんだとも考えられる。けどエレナは嘘をつくとは思えない。根拠はないけど。
「嘘じゃないわ」
多分。心の中で付け加えておく。言葉にしたらクリスは怒りそうだから。
「誰が言ったの?」
……しつこいな。やっぱり一人で勝手に帰って来たことを怒っているんだろうか。
「隠し事は許せるって言ったじゃない」
「許せるけど気になるのは気になるの!」
そう言われたってこの体の本来の持ち主だなんて言えない。さて、なんと言ったらクリスは納得するだろうか。
「……もう一人のわたくし、かしら?」
考えた結果、すごく訳の分からないことを言ってしまった。何がもう一人の私、だよ。いや確かに間違ってはないと思うけど……中二病かよ!
心の中で自分にツッコミを入れるが言ってしまったものはもう取り消せない。ああ、今こそ時間を戻す魔法が欲しい。
「あ、あの、クリス……?」
クリスは何も言わない。顔が熱くて変な汗がだらだら出てくる。すごくいたたまれない気持ちでクリスを見ると、クリスは深いため息を吐いた。
「分かったよ。私も協力する」
「え?」
え? え? まじ? 待って、あれでいいの? あんな訳分からないあれでいいの?
納得してくれたんだろうけど、私は納得がいかない。呆然としていると、クリスは「変な顔になってるよ」と可笑しそうに笑った。
おかしいのはこの世界か、クリスか、私か。もう何でもいいや。
数日、一か月、数か月、半年。
暇を見つけては練習をした。練習に付き合ってくれるのはクリスだったり、レオンだったり、カイだったりしたけど。しかし一向にできる気配がない。
「……魔法に割り込むなんて本当にできるの?」
三年生が終わるころ、とうとうクリスがそう言った。一緒にいたカイとレオンもぎょっとした顔でクリスを見る。
……いいよ、別に。練習に付き合ってくれてる皆がそう思っていることはとっくに気が付いている。だけどエレナができたのだからできるはずなのだ。しかし魔力の量を細かく調整してみても、属性を組み合わせてみてもできないのだ。
流石に私も心が折れかけている。
「せっかく手伝ってくださっているのに申し訳ありません」
本当に申し訳ない。頭を下げると、ふいにマクシミリアンが言った。
「やっぱり魔力の量は関係ないんじゃない? 今までずっとやってきたけどエレナちゃんの魔法が消えるか、カイ達の魔法が消えるかのどっちかだったよね。多分意識するのは他のところなんだよ」
私もそんな気はしている。だけど他のところが分からないのだ。それが分かったらこんなに苦労はしていないのだ。
「魔法に詳しい人に相談してみるのがいいんじゃない?」
カイがそう言うが、その魔法に詳しい人に会いたくないから今まで聞いて来なかったのだ。あれから私はヘンドリックお兄様に会っていない。そしてヨハンとも話をしていない。なんだか気まずくて。マルゴット様に会えたらいいんだけど、魔法省にはお兄様もいるし……。
そんな私の微妙な気持ちを知っているクリスがポンと手を打った。
「いるよ! 他に魔法に詳しい人!」
え? そんな人いたっけ……。そう考えて私もはっとした。
「フィリップ叔父様!」
すっかり忘れていた。魔法大好きな叔父様なら知らなくても少しくらい調べてくれるかもしれない。
私は勢いよく立ち上がった。もう他に打つ手はない。
「わたくしお手紙を出してみますわ!」
部屋に戻ってもクリスはまだちょっとぷんぷんしていた。
「だから、ごめんなさい。次からはちゃんと一言言うから。そんなに怒らないでちょうだい」
「絶対だからね!」
「ええ、絶対よ」
それでようやく機嫌が治った。こうなればもういつも通りだ。
めんどくさい彼女みたいだな、と思ったのは秘密。
「で? 何してたの?」
「ちょっと練習したいことがあったから手伝ってもらってたのよ」
ついでのお悩み相談と。
「練習?」
「ええ、人の魔法に割り込む練習」
結局全くできなかったけど。あんなに頑張ってみたけど一歩も進めなかった。エレナにコツくらい聞いておけばよかったと後悔中。
「何それ」
クリスが怪訝そうに私を見る。そんなことできるわけないでしょ、と顔に書いてあるのが分かった。私だって同じ立場なら信じないかもしれない。でもエレナは実際にやったんだし……。
「いつか本で読んだのよ。試してみようと思って」
「嘘だ」
さらっと嘘をつくと、クリスが速攻そう言い、私の顔を見る。
え、嘘がばれた? それとも魔法に割り込むってこと? どっち?
「本で読んだんじゃないでしょ。嘘つく時の顔してるもん。嘘でしょ」
「……すごいわね」
見破られたショックよりも普通にすごいと思ってしまった。顔には出ないように気を付けているはずなんだけど……さすがもう何年も一緒にいるだけある。私はクリスの嘘を見破ることができるかは分からないけど。
「隠し事ならまだ許せるけど嘘はだめ! ほんとは何なの?」
これはごまかせない。まあいいか。
「人に聞いたのよ。実際にやったことがあるんですって」
「誰?」
「クリスの知らない人よ」
「信用できるの? 嘘じゃないの?」
信用できる? 嘘じゃない? そう聞かれるとはっきりとは頷けない。エレナが何かを隠していて、私にそう嘘をついたんだとも考えられる。けどエレナは嘘をつくとは思えない。根拠はないけど。
「嘘じゃないわ」
多分。心の中で付け加えておく。言葉にしたらクリスは怒りそうだから。
「誰が言ったの?」
……しつこいな。やっぱり一人で勝手に帰って来たことを怒っているんだろうか。
「隠し事は許せるって言ったじゃない」
「許せるけど気になるのは気になるの!」
そう言われたってこの体の本来の持ち主だなんて言えない。さて、なんと言ったらクリスは納得するだろうか。
「……もう一人のわたくし、かしら?」
考えた結果、すごく訳の分からないことを言ってしまった。何がもう一人の私、だよ。いや確かに間違ってはないと思うけど……中二病かよ!
心の中で自分にツッコミを入れるが言ってしまったものはもう取り消せない。ああ、今こそ時間を戻す魔法が欲しい。
「あ、あの、クリス……?」
クリスは何も言わない。顔が熱くて変な汗がだらだら出てくる。すごくいたたまれない気持ちでクリスを見ると、クリスは深いため息を吐いた。
「分かったよ。私も協力する」
「え?」
え? え? まじ? 待って、あれでいいの? あんな訳分からないあれでいいの?
納得してくれたんだろうけど、私は納得がいかない。呆然としていると、クリスは「変な顔になってるよ」と可笑しそうに笑った。
おかしいのはこの世界か、クリスか、私か。もう何でもいいや。
数日、一か月、数か月、半年。
暇を見つけては練習をした。練習に付き合ってくれるのはクリスだったり、レオンだったり、カイだったりしたけど。しかし一向にできる気配がない。
「……魔法に割り込むなんて本当にできるの?」
三年生が終わるころ、とうとうクリスがそう言った。一緒にいたカイとレオンもぎょっとした顔でクリスを見る。
……いいよ、別に。練習に付き合ってくれてる皆がそう思っていることはとっくに気が付いている。だけどエレナができたのだからできるはずなのだ。しかし魔力の量を細かく調整してみても、属性を組み合わせてみてもできないのだ。
流石に私も心が折れかけている。
「せっかく手伝ってくださっているのに申し訳ありません」
本当に申し訳ない。頭を下げると、ふいにマクシミリアンが言った。
「やっぱり魔力の量は関係ないんじゃない? 今までずっとやってきたけどエレナちゃんの魔法が消えるか、カイ達の魔法が消えるかのどっちかだったよね。多分意識するのは他のところなんだよ」
私もそんな気はしている。だけど他のところが分からないのだ。それが分かったらこんなに苦労はしていないのだ。
「魔法に詳しい人に相談してみるのがいいんじゃない?」
カイがそう言うが、その魔法に詳しい人に会いたくないから今まで聞いて来なかったのだ。あれから私はヘンドリックお兄様に会っていない。そしてヨハンとも話をしていない。なんだか気まずくて。マルゴット様に会えたらいいんだけど、魔法省にはお兄様もいるし……。
そんな私の微妙な気持ちを知っているクリスがポンと手を打った。
「いるよ! 他に魔法に詳しい人!」
え? そんな人いたっけ……。そう考えて私もはっとした。
「フィリップ叔父様!」
すっかり忘れていた。魔法大好きな叔父様なら知らなくても少しくらい調べてくれるかもしれない。
私は勢いよく立ち上がった。もう他に打つ手はない。
「わたくしお手紙を出してみますわ!」
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