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婚約させよう計画
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「おかえりー」
部屋に入るとクリスがベッドで横になって本を読んでいた。慣れた光景だけど、うつぶせになり足をパタパタさせているところを見ると、本当にお嬢様なのか確認したくなる。
まあ偽物の私がそんなこと言えないけど。
「ただいま。レオナ様って今まであまり話すこともなかったけれど、とても穏やかでいい方ね」
名前で呼んでちょうだいね、って最初の頃に言われて、たまに話すくらいの仲。こんなにもがっつり話をしたのは初めてだ。何気なくそう言うと、クリスは信じられないと言った顔で私を見た。
「知らなかったの? 身分が高いのに優しくて女神のようだって一部の生徒から崇拝されてるんだよ。しかもすごい綺麗だしね」
「何よそれ。崇拝って冗談でしょ」
ふっと笑ってそう言うと、クリスは「ほんとだよ」と返してきた。その声のトーンが本気だったので私は言葉が出てこなかった。
唖然としている私を見てクリスは平然としていた。
「レオナ様ってああ見えて結構やり手だよ。あっちこっちの情報を学校で集めてるらしい。エレナも話をする時は気を付けた方が良いよ」
気を付けた方がいいと言われても私は家のことなんてほとんど何も知らない。興味はないし、お父様も話さない。大体そんな情報を集めている暇などない。そういうのはお兄様二人にお任せだ。
ふーんと頷くと、クリスは私の方をチラッと見て、「エレナは大丈夫か」とポソッと言った。
それは「エレナは喋らないから大丈夫」ではなく「エレナは何も知らないから大丈夫」といったニュアンスだった。さすがクリス。私のことをよく分かっている。
「さっき兄様から伝言きたよ。明日の放課後お城に行くようにって。リリーも一緒に」
「陛下からの呼び出しかしら?」
「多分ね」
今度は何だろう。怪我を治すか、薬を作るか。そのどっちかだろうけど。
「それで、どうだったの? 話はできた?」
クローゼットを開けて部屋着を出すと、クリスは再び本へと視線を落として聞いて来た。
「ええ。ベアトリクス様はリリー様と仲良くするつもりはないらしいわ」
来ていた服を脱いで椅子の背にかける。
クリスは「エレナのために?」と言った。クリスは知っていたのか。まあ私と違って他の子とも積極的に話をしているクリスだ。知っていても不思議ではない。
「ええ。とても嬉しいけれど、ベアトリクス様と殿下が対立するような状況にだけはなって欲しくないのよね」
リリーはベアトリクスと仲良くできなくても卒業してしまえば眩しい未来が待っているのだ。だから申し訳ないけど、多少冷たい態度を取られても、いじめだけを阻止しておけばいい。
だけどカイに関しては違う。ベアトリクスがカイを敵に回し、カイが積極的にベアトリクスを糾弾しようとすれば、私にはもうどうしようもできない。後はベアトリクスが断罪されるだけ。
ベアトリクスとはそれなりに仲良くなったし、それだけは絶対に回避したい。
私がため息を吐くと、クリスが何でもないように「それは大丈夫だよ」と言った。
え? 大丈夫? 何が?
よく意味が分からなくてポカンとしてクリスを見ると、クリスは本を閉じて座った。
「カイはエレナの状況を知らなかったみたい。だから今日はリリーをかばったけど、リリーが本当にエレナを危険へと追い詰めるような状況なら今度からはあんなことしないって。さっき話したんだ」
……なんと。私の心配は一瞬でなくなってしまった。いや、待てよ。それはそれでまずくない? カイがリリーを庇わないとして、それはまだいい。だけど変に距離を置いたりしてしまったら乙女ゲームが成り立たなくなってしまう。
リリーとカイはくっつかないし、周りの二人とも距離ができてしまう。ヨハンやフロレンツだって攻略対象ではあるけど、できれば身分がダントツに高いあの三人のうちの誰かとくっついて欲しい。
そしたら、リリーがこの国の光属性の使い手となって、私が自由になるかもしれないし。
……これ私が光属性を持っていなかったら全て上手くいったんじゃない? 隠して生きたエレナは賢いな。
しかしそんなこと言ったってもう遅い。どうにか正規ルートに戻す必要がある。
「……クリス。殿下とリリーを婚約させたいの。手伝ってちょうだい」
「はあ!?」
いきなり何を言っているんだという顔を私に向けるクリス。気持ちは分かる。私がクリスの立場だったら今の話の流れでどうしてそうなるんだと自分でも私でも思うだろう。
「お願い、わたくしを信じてちょうだい。リリーを次の皇后陛下にしたいの」
クリスがジトっと私を見る。「信じられない」と小さく呟くのが聞こえた。しかし私が何も言わずにクリスを見ていると、クリスはため息を吐いた。
「……光属性を使えるから?」
「ええ、そうね」
「それならリリーよりもエレナの方が良いと思うけど」
「わたくしは嫌! わたくしの為にリリーと殿下をくっつけたいの!」
これで得をするのは誰かと聞かれれば私だとはっきり言える。リリーが皇后になってその光属性を使うと、私の影は薄くなって、縛られることもなくなり、そして私は一人で好きに生きるのだ。
うん、完璧な人生計画だ。
ジーっとクリスを見つめる。「お願い」と追い打ちのようにそう言うと、クリスは諦めの表情を浮かべ、「分かったよ」と頷いてくれた。
部屋に入るとクリスがベッドで横になって本を読んでいた。慣れた光景だけど、うつぶせになり足をパタパタさせているところを見ると、本当にお嬢様なのか確認したくなる。
まあ偽物の私がそんなこと言えないけど。
「ただいま。レオナ様って今まであまり話すこともなかったけれど、とても穏やかでいい方ね」
名前で呼んでちょうだいね、って最初の頃に言われて、たまに話すくらいの仲。こんなにもがっつり話をしたのは初めてだ。何気なくそう言うと、クリスは信じられないと言った顔で私を見た。
「知らなかったの? 身分が高いのに優しくて女神のようだって一部の生徒から崇拝されてるんだよ。しかもすごい綺麗だしね」
「何よそれ。崇拝って冗談でしょ」
ふっと笑ってそう言うと、クリスは「ほんとだよ」と返してきた。その声のトーンが本気だったので私は言葉が出てこなかった。
唖然としている私を見てクリスは平然としていた。
「レオナ様ってああ見えて結構やり手だよ。あっちこっちの情報を学校で集めてるらしい。エレナも話をする時は気を付けた方が良いよ」
気を付けた方がいいと言われても私は家のことなんてほとんど何も知らない。興味はないし、お父様も話さない。大体そんな情報を集めている暇などない。そういうのはお兄様二人にお任せだ。
ふーんと頷くと、クリスは私の方をチラッと見て、「エレナは大丈夫か」とポソッと言った。
それは「エレナは喋らないから大丈夫」ではなく「エレナは何も知らないから大丈夫」といったニュアンスだった。さすがクリス。私のことをよく分かっている。
「さっき兄様から伝言きたよ。明日の放課後お城に行くようにって。リリーも一緒に」
「陛下からの呼び出しかしら?」
「多分ね」
今度は何だろう。怪我を治すか、薬を作るか。そのどっちかだろうけど。
「それで、どうだったの? 話はできた?」
クローゼットを開けて部屋着を出すと、クリスは再び本へと視線を落として聞いて来た。
「ええ。ベアトリクス様はリリー様と仲良くするつもりはないらしいわ」
来ていた服を脱いで椅子の背にかける。
クリスは「エレナのために?」と言った。クリスは知っていたのか。まあ私と違って他の子とも積極的に話をしているクリスだ。知っていても不思議ではない。
「ええ。とても嬉しいけれど、ベアトリクス様と殿下が対立するような状況にだけはなって欲しくないのよね」
リリーはベアトリクスと仲良くできなくても卒業してしまえば眩しい未来が待っているのだ。だから申し訳ないけど、多少冷たい態度を取られても、いじめだけを阻止しておけばいい。
だけどカイに関しては違う。ベアトリクスがカイを敵に回し、カイが積極的にベアトリクスを糾弾しようとすれば、私にはもうどうしようもできない。後はベアトリクスが断罪されるだけ。
ベアトリクスとはそれなりに仲良くなったし、それだけは絶対に回避したい。
私がため息を吐くと、クリスが何でもないように「それは大丈夫だよ」と言った。
え? 大丈夫? 何が?
よく意味が分からなくてポカンとしてクリスを見ると、クリスは本を閉じて座った。
「カイはエレナの状況を知らなかったみたい。だから今日はリリーをかばったけど、リリーが本当にエレナを危険へと追い詰めるような状況なら今度からはあんなことしないって。さっき話したんだ」
……なんと。私の心配は一瞬でなくなってしまった。いや、待てよ。それはそれでまずくない? カイがリリーを庇わないとして、それはまだいい。だけど変に距離を置いたりしてしまったら乙女ゲームが成り立たなくなってしまう。
リリーとカイはくっつかないし、周りの二人とも距離ができてしまう。ヨハンやフロレンツだって攻略対象ではあるけど、できれば身分がダントツに高いあの三人のうちの誰かとくっついて欲しい。
そしたら、リリーがこの国の光属性の使い手となって、私が自由になるかもしれないし。
……これ私が光属性を持っていなかったら全て上手くいったんじゃない? 隠して生きたエレナは賢いな。
しかしそんなこと言ったってもう遅い。どうにか正規ルートに戻す必要がある。
「……クリス。殿下とリリーを婚約させたいの。手伝ってちょうだい」
「はあ!?」
いきなり何を言っているんだという顔を私に向けるクリス。気持ちは分かる。私がクリスの立場だったら今の話の流れでどうしてそうなるんだと自分でも私でも思うだろう。
「お願い、わたくしを信じてちょうだい。リリーを次の皇后陛下にしたいの」
クリスがジトっと私を見る。「信じられない」と小さく呟くのが聞こえた。しかし私が何も言わずにクリスを見ていると、クリスはため息を吐いた。
「……光属性を使えるから?」
「ええ、そうね」
「それならリリーよりもエレナの方が良いと思うけど」
「わたくしは嫌! わたくしの為にリリーと殿下をくっつけたいの!」
これで得をするのは誰かと聞かれれば私だとはっきり言える。リリーが皇后になってその光属性を使うと、私の影は薄くなって、縛られることもなくなり、そして私は一人で好きに生きるのだ。
うん、完璧な人生計画だ。
ジーっとクリスを見つめる。「お願い」と追い打ちのようにそう言うと、クリスは諦めの表情を浮かべ、「分かったよ」と頷いてくれた。
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