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生んでしまった誤解
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家に帰った私たちを待っていたのはお義母様のお叱り……ではなく、満面の笑みだった。
部屋に入るなり、にっこにこのお義母様と目が合い、私はどういう顔をしたらいいのか分からなかった。
「ただいま帰りました。この度は急なお話で申し訳ありません……」
とりあえずカミラと一緒に頭を下げる。するとお義母様は「あらまあ!」と嬉しそうな声色で言った。
「謝る必要はありませんわよ。聞けばお相手はあのシュルツ侯爵家のご子息なんでしょう? 将来は安泰だわ」
……どういうことだ? 私はマクシミリアンのことなんてお義母様にはもちろん、アリアにすら言っていない。どこからお義母様に話がいったのだろう。
カミラを顔を見合わせて首を傾げていると、お義母様は一通の手紙を掲げた。
「つい先ほど急なお誘いの謝罪が来ましたわ。更に、『ドレスはこちらでご用意いたします』ですって!」
な、なんと……。中身を確かめても確かにそう書いてある。使用人からサイズ確認の手紙がまた来る、とも。さっきの今だ。手紙が来ていることも驚きだが、更にドレスの用意までなんて。確かに侯爵家ともなれば数日でドレスの用意をすることもできるだろうけど。
マクシミリアンいい男すぎだよ……。
あまりの神対応ぶりに感動して涙が出そうになる。もうこのまま本当にカミラの婚約者になって欲しい。そしたらカミラは絶対に幸せになれるだろう。
そんなこと絶対に言えないけど。
しかしお義母様はもうその気かもしれない。少なくとも普通は興味のない相手を卒業パーティーに誘うなどないのだから。
今更一緒に連れて行ってくれるようにこっちから頼んだなんて言えない。しかも婚約に発展する可能性など全くないとはもっと言えない。
……まあ後のことは後で考えよう。私は怒られることなくカミラのパーティーの準備も問題ないのだから。
「カミラ、本当におめでとう。正式なお話はまた後日かしら? 楽しみにしているわ」
カミラが引きつった笑みを浮かべる。私もどうにか自然に見えるように笑顔を浮かべる。とりあえず今は話を合わせるしかない。目配せをするとカミラはお義母様へと笑顔を向けた。
「気が早いですわ、お母様」
……ごめん、カミラ。ここまでは計算外だったの。
心の中で謝罪して、私たちはとりあえずその場を乗り切った。
「……ということなの」
部屋に戻ってアリアに全てを話す。カミラを卒業パーティーに連れて行きたかったこと。そしてマクシミリアンに頼んだこと。それによってお義母様が盛大な勘違いをしてしまったこと。
アリアは私の話が終わると、とてもため息を吐きたそうな表情のまま「そういうことですか」と言った。
「ごめんなさい、準備のことを考えていなかったわけではないの。だけど、アリアならどうにかしてくれるかと思って……」
怒ってはいないようだけど、申し訳ないと思うので先に謝っておく。一応私だって考えていなかったわけではないのだ。最初からドレスを仕立てて間に合わないなら、私がヘンドリックお兄様の卒業パーティーの時に来たドレスをお直ししたらいいんじゃないかな、なんて考えていた。最終手段、魔法を使って。
ちゃんと考えてはいたのだ。ただマクシミリアンが上手だっただけで。
「別に怒ってはおりません。エレナ様は私のおっしゃりたいことはご存じでしょう?」
「ええ。わたくしは軽い気持ちだったのだけど、結果的にマクシミリアン様のご負担になってしまったもの。次からはもっと考えて行動するようにするわ」
私の反省している態度を見て、アリアが頷く。
「奥様の件はとりあえずなるようにしかなりません。どちらにしろ、あちらにその気がなければこちらからどうにかすることはできませんので」
そりゃそうだ。なるようにしかならないのだ。カミラには本当に申し訳ないことをしてしまったが、これはどうしようもない。後でしっかり謝って、お義母様からの言及をどうかわすかの作戦を立てておこう。
「ところで、ヘンドリックお兄様はパーティーに来られるのかしら? クリスも知らないようだったのだけど……」
別に来てもいいけど、来るなら心の準備をしておきたい。クリスは特にだろう。アリアが知っているなら、と思ったのだが、アリアは首を横に振った。
「いえ、まだ何も聞いておりません。念のため、ご衣装は用意しておりますが……」
「そうなのね」
アリアも知らないとなるともう他の誰も知らないだろう。
そう考えて、はたと思った。
「ヘンドリックお兄様とアリアの関係はどのようなものなのかしら?」
元々アリアはヘンドリックお兄様付きだったとは聞いているけど、それにしても二人の信頼関係は厚い気がする。ただの主従関係だと言われても納得ができない。許されない身分差の恋! みたいな秘密の関係が……!? なんて期待している。
予想外の質問だったのか、アリアは一瞬だけ目を丸くし、そして静かな声で言った。
「ヘンドリック様は、私の恩人です」
その表情はとても穏やかで、清らかで。私の想像していたような関係ではないことは一目瞭然だった。
部屋に入るなり、にっこにこのお義母様と目が合い、私はどういう顔をしたらいいのか分からなかった。
「ただいま帰りました。この度は急なお話で申し訳ありません……」
とりあえずカミラと一緒に頭を下げる。するとお義母様は「あらまあ!」と嬉しそうな声色で言った。
「謝る必要はありませんわよ。聞けばお相手はあのシュルツ侯爵家のご子息なんでしょう? 将来は安泰だわ」
……どういうことだ? 私はマクシミリアンのことなんてお義母様にはもちろん、アリアにすら言っていない。どこからお義母様に話がいったのだろう。
カミラを顔を見合わせて首を傾げていると、お義母様は一通の手紙を掲げた。
「つい先ほど急なお誘いの謝罪が来ましたわ。更に、『ドレスはこちらでご用意いたします』ですって!」
な、なんと……。中身を確かめても確かにそう書いてある。使用人からサイズ確認の手紙がまた来る、とも。さっきの今だ。手紙が来ていることも驚きだが、更にドレスの用意までなんて。確かに侯爵家ともなれば数日でドレスの用意をすることもできるだろうけど。
マクシミリアンいい男すぎだよ……。
あまりの神対応ぶりに感動して涙が出そうになる。もうこのまま本当にカミラの婚約者になって欲しい。そしたらカミラは絶対に幸せになれるだろう。
そんなこと絶対に言えないけど。
しかしお義母様はもうその気かもしれない。少なくとも普通は興味のない相手を卒業パーティーに誘うなどないのだから。
今更一緒に連れて行ってくれるようにこっちから頼んだなんて言えない。しかも婚約に発展する可能性など全くないとはもっと言えない。
……まあ後のことは後で考えよう。私は怒られることなくカミラのパーティーの準備も問題ないのだから。
「カミラ、本当におめでとう。正式なお話はまた後日かしら? 楽しみにしているわ」
カミラが引きつった笑みを浮かべる。私もどうにか自然に見えるように笑顔を浮かべる。とりあえず今は話を合わせるしかない。目配せをするとカミラはお義母様へと笑顔を向けた。
「気が早いですわ、お母様」
……ごめん、カミラ。ここまでは計算外だったの。
心の中で謝罪して、私たちはとりあえずその場を乗り切った。
「……ということなの」
部屋に戻ってアリアに全てを話す。カミラを卒業パーティーに連れて行きたかったこと。そしてマクシミリアンに頼んだこと。それによってお義母様が盛大な勘違いをしてしまったこと。
アリアは私の話が終わると、とてもため息を吐きたそうな表情のまま「そういうことですか」と言った。
「ごめんなさい、準備のことを考えていなかったわけではないの。だけど、アリアならどうにかしてくれるかと思って……」
怒ってはいないようだけど、申し訳ないと思うので先に謝っておく。一応私だって考えていなかったわけではないのだ。最初からドレスを仕立てて間に合わないなら、私がヘンドリックお兄様の卒業パーティーの時に来たドレスをお直ししたらいいんじゃないかな、なんて考えていた。最終手段、魔法を使って。
ちゃんと考えてはいたのだ。ただマクシミリアンが上手だっただけで。
「別に怒ってはおりません。エレナ様は私のおっしゃりたいことはご存じでしょう?」
「ええ。わたくしは軽い気持ちだったのだけど、結果的にマクシミリアン様のご負担になってしまったもの。次からはもっと考えて行動するようにするわ」
私の反省している態度を見て、アリアが頷く。
「奥様の件はとりあえずなるようにしかなりません。どちらにしろ、あちらにその気がなければこちらからどうにかすることはできませんので」
そりゃそうだ。なるようにしかならないのだ。カミラには本当に申し訳ないことをしてしまったが、これはどうしようもない。後でしっかり謝って、お義母様からの言及をどうかわすかの作戦を立てておこう。
「ところで、ヘンドリックお兄様はパーティーに来られるのかしら? クリスも知らないようだったのだけど……」
別に来てもいいけど、来るなら心の準備をしておきたい。クリスは特にだろう。アリアが知っているなら、と思ったのだが、アリアは首を横に振った。
「いえ、まだ何も聞いておりません。念のため、ご衣装は用意しておりますが……」
「そうなのね」
アリアも知らないとなるともう他の誰も知らないだろう。
そう考えて、はたと思った。
「ヘンドリックお兄様とアリアの関係はどのようなものなのかしら?」
元々アリアはヘンドリックお兄様付きだったとは聞いているけど、それにしても二人の信頼関係は厚い気がする。ただの主従関係だと言われても納得ができない。許されない身分差の恋! みたいな秘密の関係が……!? なんて期待している。
予想外の質問だったのか、アリアは一瞬だけ目を丸くし、そして静かな声で言った。
「ヘンドリック様は、私の恩人です」
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