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狙いは私
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歩くスピードを少し緩めると、少しして後ろから追いかけてくる足音が聞こえた。
振り返るとそこにはクリスとマクシミリアンが。
わあ、クリスは来てくれるかと思っていたけど、まさかマクシミリアンも来るとは思っていなかった。ああ、そっか、カミラを連れて来ちゃったもんね。
「申し訳ありません、マクシミリアン様。あの場にカミラを残すのは少しためらわれまして」
「うん」
私の謝罪にマクシミリアンは分かっている、という風に頷いた。
さーて、じゃあ帰るか!
パーティー会場に戻るのもちょっとあれだし、ここにいたって仕方がない。というかあのままパーティーに居続けるつもりであろうラルフの神経の図太さは少し見習いたい。だからといってああはなりたくないけど。
「わたくし達は一足先にお暇しますわ。クリスとマクシミリアン様は楽しんでいらしてくださいませ」
パートナーを連れて帰ってしまうのは申し訳ないけど、別に一人だからってなんともないだろう。一人で来ている子もいないことはないのだから。
じゃあ、と歩き始まると、どこからか急に声が聞こえた。
「あの男の子は惜しいことをしたね。君を手放すなんて」
……まじかー。ここで来ちゃうのか。
カミラの近くに寄り、手を握る。何があってもすぐに守れるように。
「手放すも何も、婚約していたからと言ってわたくしはあの方のものであったわけではありませんわ。わたくしは誰のものにもなりませんもの」
そう返すと面白そうに笑う声が聞こえ、そして目の前にユリウス殿下が現れた。久しぶりに見るその顔は全く変わっていない。
カイと似ている。最初に会った時は思わなかったけど、カイが成長してやはり兄弟だなと思うようになった。
「それは困るな」
マクシミリアンが走っていくのが視界の端に見えた。おそらく騎士団を呼びに行ってくれたのだろう。騎士団くらいでユリウス殿下がどうかなるとは思えないけど。
ユリウス殿下もそれを分かっているのか、余裕の表情でマクシミリアンの背を眺めている。
危害を加えようとしたらすぐにでも攻撃するつもりだけど、そういうわけではないようだ。
「僕は君が欲しいんだ」
「とおっしゃいますと?」
狙いはカイではなく私か。
カミラの背を押してクリスの方へ行かせる。カミラはユリウス殿下のことは知らないので、何事かまだよく分かっていない様子だ。分からなくていい。カミラを面倒ごとに巻き込むつもりはない。
「僕と一緒に来て欲しい」
「嫌だ、と申し上げたらどうなりますか?」
どうせ私に拒否権はないんだろうけど、一応聞いてみる。できれば一緒に行きたくはない。だって私はカミラとラルフの婚約を阻止するという大事な使命があるのだから!
ユリウス殿下の目がカミラに向く。
「君以外の誰かを連れて行こうかな。だけど君以外の安全を保障するつもりはない」
必要があれば人が死ぬこともためらわないような人だ。それは本心からの言葉なのだろう。
ため息を隠すつもりもなかった。
「お前は次から次へと忙しいな」
揶揄うような、呆れたような声が聞こえた。
それは私に言わないで欲しい。今日のことに関しては私に原因はないはずだ。ラルフのことも、ユリウス殿下のことも。
「そうおっしゃられましても、わたくしだって困っているところですの」
振り返ってそう言うと、ヘンドリックお兄様と、剣を構えたクルトお兄様がいた。なるほど、クルトお兄様も騎士団で来ていたのか。
「エレナ、こっちへ」
クルトお兄様は守ってくれるつもりなのだろう。しかしヘンドリックお兄様は突っ立ったまま動こうとしない。
……私はヘンドリックお兄様に賛成。
「クルトお兄様、剣を収めてくださいませ。危ないですわ」
「危ないのはエレナだろう! 早くこっちに来てくれ!」
何も言わずに首を横に振る。クルトお兄様がいくら強くたってユリウス殿下に敵うわけがない。この人と戦って勝てる可能性があるなら、私だってじっとはしていない。
「クルト、エレナの言う通りだ。剣を収めろ」
「兄上……!」
……騎士団ももっと大人数がいるか、せめてここにいるのがヴェルナー様だったら違ったかもしれないけど、クルトお兄様一人じゃ話にならない。まあ仕方ないか。騎士団が固めているのはカイの周りだもんね。
「お兄様、クリス、お願いがあるのです」
ユリウス殿下と一緒に行くのはもう仕方がない。だけどどうしても一つ言っておかなくてはならない。
「ラルフ様とカミラの婚約だけは絶対に阻止してくださいませ」
こういうのは本来なら口に出すなんてとんでもなく失礼なのだろう。だけど背に腹は代えられない。それにラルフはもっと失礼だからセーフなはず。
クリスがゲッと顔を歪める。めんどくさ、とでも言いたげなその表情を見ると思わず笑いが込み上げてきた。
「ヘンドリックお兄様、ちゃんとわたくしを助けてくださいね」
「分かっている」
ユリウス殿下の言う通りにするのはすごく癪だ。すごく癪だけど、今までの感じだととりあえず私の命が危ないことはないだろう。幸か不幸か、ユリウス殿下は私を気に入ってくれているようだから。
「お、お姉さま……」
不安そうな表情で私を見るカミラに微笑む。
「大丈夫よ、カミラ。すぐに戻るわ。だからカミラは先に帰っていてちょうだい」
それだけ言って私はユリウス殿下の手を取った。
振り返るとそこにはクリスとマクシミリアンが。
わあ、クリスは来てくれるかと思っていたけど、まさかマクシミリアンも来るとは思っていなかった。ああ、そっか、カミラを連れて来ちゃったもんね。
「申し訳ありません、マクシミリアン様。あの場にカミラを残すのは少しためらわれまして」
「うん」
私の謝罪にマクシミリアンは分かっている、という風に頷いた。
さーて、じゃあ帰るか!
パーティー会場に戻るのもちょっとあれだし、ここにいたって仕方がない。というかあのままパーティーに居続けるつもりであろうラルフの神経の図太さは少し見習いたい。だからといってああはなりたくないけど。
「わたくし達は一足先にお暇しますわ。クリスとマクシミリアン様は楽しんでいらしてくださいませ」
パートナーを連れて帰ってしまうのは申し訳ないけど、別に一人だからってなんともないだろう。一人で来ている子もいないことはないのだから。
じゃあ、と歩き始まると、どこからか急に声が聞こえた。
「あの男の子は惜しいことをしたね。君を手放すなんて」
……まじかー。ここで来ちゃうのか。
カミラの近くに寄り、手を握る。何があってもすぐに守れるように。
「手放すも何も、婚約していたからと言ってわたくしはあの方のものであったわけではありませんわ。わたくしは誰のものにもなりませんもの」
そう返すと面白そうに笑う声が聞こえ、そして目の前にユリウス殿下が現れた。久しぶりに見るその顔は全く変わっていない。
カイと似ている。最初に会った時は思わなかったけど、カイが成長してやはり兄弟だなと思うようになった。
「それは困るな」
マクシミリアンが走っていくのが視界の端に見えた。おそらく騎士団を呼びに行ってくれたのだろう。騎士団くらいでユリウス殿下がどうかなるとは思えないけど。
ユリウス殿下もそれを分かっているのか、余裕の表情でマクシミリアンの背を眺めている。
危害を加えようとしたらすぐにでも攻撃するつもりだけど、そういうわけではないようだ。
「僕は君が欲しいんだ」
「とおっしゃいますと?」
狙いはカイではなく私か。
カミラの背を押してクリスの方へ行かせる。カミラはユリウス殿下のことは知らないので、何事かまだよく分かっていない様子だ。分からなくていい。カミラを面倒ごとに巻き込むつもりはない。
「僕と一緒に来て欲しい」
「嫌だ、と申し上げたらどうなりますか?」
どうせ私に拒否権はないんだろうけど、一応聞いてみる。できれば一緒に行きたくはない。だって私はカミラとラルフの婚約を阻止するという大事な使命があるのだから!
ユリウス殿下の目がカミラに向く。
「君以外の誰かを連れて行こうかな。だけど君以外の安全を保障するつもりはない」
必要があれば人が死ぬこともためらわないような人だ。それは本心からの言葉なのだろう。
ため息を隠すつもりもなかった。
「お前は次から次へと忙しいな」
揶揄うような、呆れたような声が聞こえた。
それは私に言わないで欲しい。今日のことに関しては私に原因はないはずだ。ラルフのことも、ユリウス殿下のことも。
「そうおっしゃられましても、わたくしだって困っているところですの」
振り返ってそう言うと、ヘンドリックお兄様と、剣を構えたクルトお兄様がいた。なるほど、クルトお兄様も騎士団で来ていたのか。
「エレナ、こっちへ」
クルトお兄様は守ってくれるつもりなのだろう。しかしヘンドリックお兄様は突っ立ったまま動こうとしない。
……私はヘンドリックお兄様に賛成。
「クルトお兄様、剣を収めてくださいませ。危ないですわ」
「危ないのはエレナだろう! 早くこっちに来てくれ!」
何も言わずに首を横に振る。クルトお兄様がいくら強くたってユリウス殿下に敵うわけがない。この人と戦って勝てる可能性があるなら、私だってじっとはしていない。
「クルト、エレナの言う通りだ。剣を収めろ」
「兄上……!」
……騎士団ももっと大人数がいるか、せめてここにいるのがヴェルナー様だったら違ったかもしれないけど、クルトお兄様一人じゃ話にならない。まあ仕方ないか。騎士団が固めているのはカイの周りだもんね。
「お兄様、クリス、お願いがあるのです」
ユリウス殿下と一緒に行くのはもう仕方がない。だけどどうしても一つ言っておかなくてはならない。
「ラルフ様とカミラの婚約だけは絶対に阻止してくださいませ」
こういうのは本来なら口に出すなんてとんでもなく失礼なのだろう。だけど背に腹は代えられない。それにラルフはもっと失礼だからセーフなはず。
クリスがゲッと顔を歪める。めんどくさ、とでも言いたげなその表情を見ると思わず笑いが込み上げてきた。
「ヘンドリックお兄様、ちゃんとわたくしを助けてくださいね」
「分かっている」
ユリウス殿下の言う通りにするのはすごく癪だ。すごく癪だけど、今までの感じだととりあえず私の命が危ないことはないだろう。幸か不幸か、ユリウス殿下は私を気に入ってくれているようだから。
「お、お姉さま……」
不安そうな表情で私を見るカミラに微笑む。
「大丈夫よ、カミラ。すぐに戻るわ。だからカミラは先に帰っていてちょうだい」
それだけ言って私はユリウス殿下の手を取った。
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