池に落ちて乙女ゲームの世界に!?ヒロイン?悪役令嬢?いいえ、ただのモブでした。

紅蘭

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カミラの婚約

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「エレナが言わなくても今後婚約していたかどうかという点は分からない。もしかしたらそうなっていたかもしれないし、そうなっていないかもしれない。今言えることはこの婚約はエレナの言葉によって決まったと言うことだ」


つまり私が余計なことを言わなかったらとりあえずこんなことにはならなかったのか……。


「お前があの時そう言ったことで今後の方向性が決まった。陛下としては光属性の使い手をもう一人取り込むことができるし、うちとしても悪いことではない。何より、王家に入れるくらいしなければお前は手に負えない」


厄介払いがしたかったと聞こえるのは私の被害妄想だろうか。


「とりあえずお前はもう少し考えて喋ることだ」


本当にその通りかもしれない。今回はうかつだった。しかしあの場にはあれだけ人がいたのだ。誰か一人くらい教えてくれてもいいじゃないか!


「この件はなかったことに……」


チラ、とお父様を見てみたがお父様は無言で首を横に振った。


「わ、わたくしはただの伯爵家の娘です。殿下の婚約者になど……」


皆の視線が一斉にリリーに向く。……そうだった。


「ほら、ユリウス殿下はまだ皆の記憶から失われておられるではありませんか」

「それに関してはもう決定している。ユリウスの魔法を使い、この国全ての人間の記憶を少しだけ書き換える。もちろん、継承権の放棄はしてもらうが」


なんだって! そんなことしたらなんでもアリじゃないか!


「できるけどしないっておっしゃったではありませんか!」


非難するわけではないけど文句を言うとユリウス殿下は微笑んだ。


「これで君が手に入るならそれでもいいかなって」

「……嫌いになりますよ」


ボソッとそう言うとユリウス殿下は困ったような笑みを浮かべた。


「それは嫌だな」


ダメだ、効いていない。というか私が本当にユリウス殿下を嫌うなんて思っていない顔だ。確かに悪い使い方さえしなければ別にいいと思う。使い方次第。闇属性に限らず魔法なんてそんなものだし。

何か、この婚約を取り消すような何か……。


「あ、ほら、わたくし、ラルフ様の件もまだ片が付いておりませんもの。ラルフ様との婚約が解消されたとしても一度婚約破棄をされたわたくしなど……」

「その件はもう片付いている。気にするな」


なんだって! 私がいない間に片付けられているなんて……。ちょっと待って、それなら、


「カミラは? カミラはどうなったのです?」


カミラを自分の婚約者に、とラルフは言っていた。それが本来のストーリー。しかしカミラが私と仲が良く、ラルフに苦手意識を持っている今、ラルフの婚約者にはならない道があるかもしれない。しかし身分が低いのはこちらだ。どうしても言われるとお父様は断れない可能性もある。


「カミラは婚約者が決まった」


なんだって……! 雷が落ちたような衝撃が走った。可愛いカミラがあのラルフの婚約者に……。私との婚約を破棄し、だけどカミラの婚約者にはならないよう今まで頑張ってきたつもりだった。

つもりだけだったのかもしれない。こうなったら二人の婚約をどうにかなかったことにさせないといけない。

メラメラと燃えてきたその時、クリスの遠慮がちな声が聞こえた。


「あのー、エレナ?」

「何かしら? わたくしこれから忙しくなりそうなの。ここでゆっくりしている暇なんてないわ」


早く家に帰って策を練らねば。とりあえずお義母様にラルフの人柄を話して味方に付いてもらうところから。お義母様はカミラが幸せになれないとなればきっと全力で動いてくれる。


「多分誤解してると思うよ」

「カミラの婚約相手はシュルツ侯爵家のご子息だ」


って言うと……マクシミリアン?

え? マクシミリアンがカミラの婚約者?

驚きに目を見張りクリスを見ると、クリスは頷いた。


「エレナがなんとしてもカミラとラルフの婚約を阻止してくれて言ったから私考えたんだよ」

「クリス……」


侯爵家と伯爵家じゃあ正式に申し込まれたら断れない可能性がある。いくらお父様が宰相でも。


「婚約を断るにはやっぱり婚約者がもういるって言うのが一番だろうから。マクシミリアンのところに行ってみたら、私が言う前にマクシミリアンが名乗り出てくれたんだよ」

「マクシミリアン様が……」


卒業パーティーでのエスコートを頼んだ時はそんな素振りは見せなかった。だけど多分私がカミラとラルフの婚約を阻止したがっていたから。マクシミリアンは一聞いたら十分かる。自分が最適だと思ってくれたのだろう。


「結局私は大したことしていないけどね」


それでもカミラの為に考えてくれたのだ。


「ありがとう! クリス大好き!」


あまりに嬉しくてクリスに抱き着くと背中をポンポンされた。


「はいはい、マクシミリアンにも後でお礼言っておきなよ」

「ええ、もちろん。マクシミリアン様が婚約者だったらカミラの将来も安心だわ」


ニコニコしてそう言うと、皆がジーっと私とクリスを見ていた。何々?


「いつまでくっついているつもりだ」


ヘンドリックお兄様がそう言い、お父様も何か言いたそうにゴホンと咳払いをする。

別にいいじゃん。なんて思ったが一応陛下と殿下二人の前だ。あまり砕けた態度も良くないか。クリスから離れ、卒業パーティーの時の二人を思い出す。

マクシミリアンは攻略対象の一人だ。もちろん他の人たちと比べてもずば抜けてかっこいい。だけどそのマクシミリアンと並んだカミラも負けてはいなかった。美男美女。そんな言葉がお似合いの二人。

思わず顔がにやけた。これでカミラのことは心配ない!
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