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町中編3
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「ほほほ、良い気分じゃ」
袖なしのブラウスにジーンズ姿となった玉兎は町の中を歩いていた。
右手の檜扇で口を軽く覆っているが、良く通る声のため周囲に笑い越えが響き渡る。
「少しやり過ぎじゃ無いのか?」
「構わぬじゃろう」
光弾の威力を非常に低くして記者を名乗った男を気絶させた玉兎は、手から精気を注入して男を操り始めた。
精気は精神状態で量や威力が大きく変動する。
逆に精気の流れ具合で人を制御することも可能だ。
それを利用して玉兎は記者の男にスマホのデータを全て削除させた。
これまでに同じ手口で撮影した女性のデータも含めて全部削除させた。
しかも悪いことにこの男は、女性達からデータをネタにして撮影料名目で金を定期的に脅し取っていた。
しかも約束を翻し一部会員限定のアンダーサイトを立ち上げして多額の金を懐に収めている。
その金を全て女性達に返金した上で、残りの売上を全て玉兎へ貢がせた。
玉兎の精神操作の影響下で自ら銀行のATMを操作して現金を引き出させたために証拠は一切ない。振り込め詐欺のグループが涎を流して欲しがる能力だろう。
ただ悪人とはいえ、無一文にするのは酷いと一刀は少し思う。
しかし、脅し上げられ自分の裸の写真を撮られた女性達がおり、彼女たちの名誉の為に通報しないとなれば、これくらいの罰は必要だろう。
「けど、こんな大金をどうするんだよ」
「服を買うのじゃ。あのファッションデザイナーの腕は非常に良い」
その場に居たファッションデザイナーの女性も精神操作でその場の記憶を改竄して店に返した。彼女の借金も無許可の金貸しのために違法であり返済の必要はない。
彼女の借金はなかった事になるよう男と女の記憶から消し去った。
「それでどんな服を買うんだよ」
その洋服店へ入っていく玉兎に一刀は尋ねた。
「いらっしゃいませ! 初めてのお客様ですね」
先ほど会ったファッションデザイナーの女性が挨拶をした。先ほどまでの記憶が無いので初対面の挨拶をかけてくる。
「どのような服をお探しですか。お客様は大変お体のラインが綺麗なため、どの服でも似合いますよ」
「ショーウィンドウにあるウェディングドレスじゃ。妾でも大丈夫であろう」
「勿論です! あれは私の自信作なんです! 貴方の様な綺麗な方に着て頂いて本当に嬉しいです! 直ぐに用意します!」
喜びが溢れすぎて身体がスキップするようなノリで女性はショーウィンドウにあるウェディングドレスを取り出してきて、玉兎に差し出した。
そして店の奥で玉兎と共に入り、着替えを始める。
「完成です!」
良い仕事をしたドヤ顔の職人と言った感じで女性はいう。
だが、それだけの事はあった。
ほんのり血色の良い玉兎の肌とウェディングドレスの純白、それに長い黒髪がコントラストとなって全体が美しい。
ショルダーオフの上半身は腰の辺りがくびれ、豊満な胸を強調するが、バラの刺繍付きシースルーの布が隠して華を添える。
胸元から下もビーズと刺繍で飾られ煌びやかさを増している。
白いロンググローブで細く美しい腕を清純なものにしている。
対照的に白いロングスカートは大きく広がり、玉兎の下半身を隠している。しかし代わりに幾つ物レースが施され、各所に白いバラや銀色に輝くビーズが配置され華やかさを引き立たせる。
いつもは妖艶な顔も白いヴェールで隠され、透けて見える黒髪が美しさだけを通すようで一層可憐だ。
先ほどまで着替えを手伝っていたこのドレスの制作者が見とれてしまうのも仕方が無い。
それだけドレスと玉兎が綺麗でその相乗効果により、美しさが一層際立っていた。
「どうじゃ?」
「あ、ああ、いいぞ」
あまりに綺麗な姿に一刀は放心状態だった。
「では、其方にもタキシードを着て貰おうか」
「あ、ああ……う、うん?」
肯定した後、何に自分が頷いたか、一瞬理解出来ず、気が付いた時には手遅れだった。
ファッションデザイナーに腕を引かれて奥へ連れて行かると、あっという間に服を脱がされ、店にあったタキシードを着せられる。
「凄くきつい」
普段はラフで動きやすい格好でいるのだが、ベルトをしてピッタリのシャツを着て重い燕尾服を着ているのは窮屈に感じた。
「よく似合っておるぞ」
普段は嘲笑を浮かべる玉兎の口元が喜びの形に変わっていた。
険のある切れ長の瞳も目端が垂れており、心の底から喜んでいた。
「あまり笑うなよ」
ヴェールで玉兎の顔が見えない一刀はからかわれたと思い、つっけんどんな返事をする。
「さて、お二人とも写真を撮らせて貰います」
女性が話しかけて、店の一角に設置された撮影用のスクリーンを下ろしその前に二人を並ばせてカメラで写真を撮った。
「バッチリです。店に飾っちゃいたいです」
店内でプリントされた写真をみて満足した女性が言う。
「ふむ確かに良いのう。じゃが、妾の美脚が見えぬのは少し残念じゃ」
ドレスの構造上、スカートが足を覆ってしまうのは仕方なかった。
「それならここの華飾りを引っ張れば」
女性は、スカートから紐で垂れる白バラの飾りを引っ張る。すると、スカートの前が捲れ上がった。
「このように前を出す事が出来ます」
捲れ上がったスカートからは純白のタイツに包まれた細く優美なラインを描く足が、その付け根からしっかりと見えていた。
レオタード状の上半身部分の端、クロッチ部分さえハッキリ見えるほどに。
「ぶっ」
いきなりの開幕に一刀は噴き出してしまった。
「ほほほ、これは面白いのう。しかしこの仕掛けは少々下品では?」
「じゃあ、厚手のスカートを外してこちらのシースルーに替えますか。ここを外せば直ぐに帰られるようにしてあります」
そう言って女性は手早くスカートを外すとシースルーのスカートに替えた。
同じような刺繍とビーズが施されているが、下が薄く透けて、レオタードの際どいカットもうっすらと見えている。
「ほほほ、これはよいのう。このまま着て帰るかのう」
「止めろ!」
一刀は某高校の美術教師か、と心の中で突っ込んで止めた。
「うむ、満足じゃ」
再び袖なしのブラウスにジーンズ姿になった玉兎は町の中を気分良く歩いていた。
「荷物持ちの方も気を使ってほしいものだ」
洋服店で買った大量の箱を持たされた一刀が文句を言う。
先ほどのウェディングドレス、勿論シースルーのスカートが入っている箱も含まれている。他にも気に入った大量の衣服がある。
資金源は勿論先ほど男から巻き上げた金だ。
「おお、そうじゃった。忘れておった」
「何をだ?」
また碌でもない事を考えついた思った一刀は、溜息を付いて、立ち止まった。
すると玉兎は身体を半回転させると一刀に近付き、両手で一刀の頬を手で押さえると自分の唇を一刀の唇に重ねた。
「県大会に優勝した褒美じゃ」
細く白い糸を引きながら唇を離した玉兎は告げた。
「決勝前の交わりを前祝いとしても良かったのじゃが、優勝してから改めて言わねばならぬと思ってのう」
「それならもっと早く貰いたかったな。こんなに荷物を持たせるなよ」
「女子は準備に時間が掛かる。それを待つのも男の甲斐性じゃ。細かいことを気にするな」
「それでも酷くないか?」
「ほほほ、褒美が欲しいか。ならばくれてやろう」
袖なしのブラウスにジーンズ姿となった玉兎は町の中を歩いていた。
右手の檜扇で口を軽く覆っているが、良く通る声のため周囲に笑い越えが響き渡る。
「少しやり過ぎじゃ無いのか?」
「構わぬじゃろう」
光弾の威力を非常に低くして記者を名乗った男を気絶させた玉兎は、手から精気を注入して男を操り始めた。
精気は精神状態で量や威力が大きく変動する。
逆に精気の流れ具合で人を制御することも可能だ。
それを利用して玉兎は記者の男にスマホのデータを全て削除させた。
これまでに同じ手口で撮影した女性のデータも含めて全部削除させた。
しかも悪いことにこの男は、女性達からデータをネタにして撮影料名目で金を定期的に脅し取っていた。
しかも約束を翻し一部会員限定のアンダーサイトを立ち上げして多額の金を懐に収めている。
その金を全て女性達に返金した上で、残りの売上を全て玉兎へ貢がせた。
玉兎の精神操作の影響下で自ら銀行のATMを操作して現金を引き出させたために証拠は一切ない。振り込め詐欺のグループが涎を流して欲しがる能力だろう。
ただ悪人とはいえ、無一文にするのは酷いと一刀は少し思う。
しかし、脅し上げられ自分の裸の写真を撮られた女性達がおり、彼女たちの名誉の為に通報しないとなれば、これくらいの罰は必要だろう。
「けど、こんな大金をどうするんだよ」
「服を買うのじゃ。あのファッションデザイナーの腕は非常に良い」
その場に居たファッションデザイナーの女性も精神操作でその場の記憶を改竄して店に返した。彼女の借金も無許可の金貸しのために違法であり返済の必要はない。
彼女の借金はなかった事になるよう男と女の記憶から消し去った。
「それでどんな服を買うんだよ」
その洋服店へ入っていく玉兎に一刀は尋ねた。
「いらっしゃいませ! 初めてのお客様ですね」
先ほど会ったファッションデザイナーの女性が挨拶をした。先ほどまでの記憶が無いので初対面の挨拶をかけてくる。
「どのような服をお探しですか。お客様は大変お体のラインが綺麗なため、どの服でも似合いますよ」
「ショーウィンドウにあるウェディングドレスじゃ。妾でも大丈夫であろう」
「勿論です! あれは私の自信作なんです! 貴方の様な綺麗な方に着て頂いて本当に嬉しいです! 直ぐに用意します!」
喜びが溢れすぎて身体がスキップするようなノリで女性はショーウィンドウにあるウェディングドレスを取り出してきて、玉兎に差し出した。
そして店の奥で玉兎と共に入り、着替えを始める。
「完成です!」
良い仕事をしたドヤ顔の職人と言った感じで女性はいう。
だが、それだけの事はあった。
ほんのり血色の良い玉兎の肌とウェディングドレスの純白、それに長い黒髪がコントラストとなって全体が美しい。
ショルダーオフの上半身は腰の辺りがくびれ、豊満な胸を強調するが、バラの刺繍付きシースルーの布が隠して華を添える。
胸元から下もビーズと刺繍で飾られ煌びやかさを増している。
白いロンググローブで細く美しい腕を清純なものにしている。
対照的に白いロングスカートは大きく広がり、玉兎の下半身を隠している。しかし代わりに幾つ物レースが施され、各所に白いバラや銀色に輝くビーズが配置され華やかさを引き立たせる。
いつもは妖艶な顔も白いヴェールで隠され、透けて見える黒髪が美しさだけを通すようで一層可憐だ。
先ほどまで着替えを手伝っていたこのドレスの制作者が見とれてしまうのも仕方が無い。
それだけドレスと玉兎が綺麗でその相乗効果により、美しさが一層際立っていた。
「どうじゃ?」
「あ、ああ、いいぞ」
あまりに綺麗な姿に一刀は放心状態だった。
「では、其方にもタキシードを着て貰おうか」
「あ、ああ……う、うん?」
肯定した後、何に自分が頷いたか、一瞬理解出来ず、気が付いた時には手遅れだった。
ファッションデザイナーに腕を引かれて奥へ連れて行かると、あっという間に服を脱がされ、店にあったタキシードを着せられる。
「凄くきつい」
普段はラフで動きやすい格好でいるのだが、ベルトをしてピッタリのシャツを着て重い燕尾服を着ているのは窮屈に感じた。
「よく似合っておるぞ」
普段は嘲笑を浮かべる玉兎の口元が喜びの形に変わっていた。
険のある切れ長の瞳も目端が垂れており、心の底から喜んでいた。
「あまり笑うなよ」
ヴェールで玉兎の顔が見えない一刀はからかわれたと思い、つっけんどんな返事をする。
「さて、お二人とも写真を撮らせて貰います」
女性が話しかけて、店の一角に設置された撮影用のスクリーンを下ろしその前に二人を並ばせてカメラで写真を撮った。
「バッチリです。店に飾っちゃいたいです」
店内でプリントされた写真をみて満足した女性が言う。
「ふむ確かに良いのう。じゃが、妾の美脚が見えぬのは少し残念じゃ」
ドレスの構造上、スカートが足を覆ってしまうのは仕方なかった。
「それならここの華飾りを引っ張れば」
女性は、スカートから紐で垂れる白バラの飾りを引っ張る。すると、スカートの前が捲れ上がった。
「このように前を出す事が出来ます」
捲れ上がったスカートからは純白のタイツに包まれた細く優美なラインを描く足が、その付け根からしっかりと見えていた。
レオタード状の上半身部分の端、クロッチ部分さえハッキリ見えるほどに。
「ぶっ」
いきなりの開幕に一刀は噴き出してしまった。
「ほほほ、これは面白いのう。しかしこの仕掛けは少々下品では?」
「じゃあ、厚手のスカートを外してこちらのシースルーに替えますか。ここを外せば直ぐに帰られるようにしてあります」
そう言って女性は手早くスカートを外すとシースルーのスカートに替えた。
同じような刺繍とビーズが施されているが、下が薄く透けて、レオタードの際どいカットもうっすらと見えている。
「ほほほ、これはよいのう。このまま着て帰るかのう」
「止めろ!」
一刀は某高校の美術教師か、と心の中で突っ込んで止めた。
「うむ、満足じゃ」
再び袖なしのブラウスにジーンズ姿になった玉兎は町の中を気分良く歩いていた。
「荷物持ちの方も気を使ってほしいものだ」
洋服店で買った大量の箱を持たされた一刀が文句を言う。
先ほどのウェディングドレス、勿論シースルーのスカートが入っている箱も含まれている。他にも気に入った大量の衣服がある。
資金源は勿論先ほど男から巻き上げた金だ。
「おお、そうじゃった。忘れておった」
「何をだ?」
また碌でもない事を考えついた思った一刀は、溜息を付いて、立ち止まった。
すると玉兎は身体を半回転させると一刀に近付き、両手で一刀の頬を手で押さえると自分の唇を一刀の唇に重ねた。
「県大会に優勝した褒美じゃ」
細く白い糸を引きながら唇を離した玉兎は告げた。
「決勝前の交わりを前祝いとしても良かったのじゃが、優勝してから改めて言わねばならぬと思ってのう」
「それならもっと早く貰いたかったな。こんなに荷物を持たせるなよ」
「女子は準備に時間が掛かる。それを待つのも男の甲斐性じゃ。細かいことを気にするな」
「それでも酷くないか?」
「ほほほ、褒美が欲しいか。ならばくれてやろう」
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