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高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい
54.トラウマ
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「萱島君可愛い~!ちび蓮ヤバ!この頃から完成してんじゃん!」
「マジで産まれた時から一緒なんだな!」
0歳~3歳辺りの写真が収められたアルバムを見て、黒崎君と啓太が騒いでる。
俺の誕生から始まる写真には、ほぼ1歳になろうかと言う蓮がしっかり写ってるんだよね。
もちろん遥も一緒だ。
それぞれの誕生日やクリスマス等のイベントには、萱島家の写真以外に蓮と遥と祝う写真が必ず有る。
「お、こっちは幼稚園になってる!晴人可愛いな。」
次のアルバムは幼稚園入園から卒園まで。
幼稚園での風景は勿論、海デビューもキャンプデビューもお祭りデビューも三人一緒だ。
この頃、早生まれの俺は体力も体格も全てが同級生よりも発達が遅かった。
幼少期の数ヶ月差って凄い違うもんね。
着替えができない、給食が食べられない、折り紙が折れない…
細々した理由で、とにかく俺は毎日泣いてた。
家に帰りたくて号泣する俺の所へ来てくれるのは蓮と遥だったんだよな。
二人は当時から賢くて、大人達がする会話も理解してるみたいだった。
俺だけがちんぷんかんぷんで置いていかれそうになると、どちらかが噛み砕きまくって説明してくれた気がする。
この頃は蓮と遥の事を兄と姉みたいに思ってたなぁ。
「小学生キターー!
てかさ、遥ちゃんて超美少女じゃない⁉︎」
黒崎君が見てるのは小学校の入学式だ。
萱島家、切藤家、南野家が小学校の前に集合してるやつ。
因みに小学校は公立で、登下校も三人でしてた。
「…あれ?学校の写真、春から一気にクリスマスまで飛んでる?」
啓太の声に俺はギクリとする。
「あー…実は俺、一年生の時不登校気味で…。」
そうなんだよね。
入学して数日した頃からクリスマス辺りまで、俺は学校に行ってない。
それには理由があって、俺がクウォーターだって事を他人に知られたくないのは、実はこの頃の苦い記憶のせいでもある。
小学校に入学して1週間が経った頃だった。
「ねえ、萱島ってどの子?」
5年生の男女が数人、何故か俺を探しに教室まで来た。
一年生から見た五年生って本当に大人だよね。
体格差も凄いし、俺はかなりビビリながらも彼女達の下へ向かう。
「えぇ~⁉︎これがそうなの⁉︎全然ハーフじゃないじゃん!!」
「ほんとだ!全然アラン君みたいじゃないじゃん!!」
目の前に現れた俺に、五年生の集団は大騒ぎだ。
アラン君って言うのは当時人気だったハーフの芸能人で、どうもハーフ=イケメンと思い込んでたらしい。
今なら、
勝手にイメージ作んなよ!
てか俺ハーフじゃなくてクウォーターだし!
って言い返して終わるだけの案件なんだけど、当時まだ6歳だった俺にとっては違った。
「はぁ~!ガッカリ!」
「もしかして、目立ちたいからハーフって嘘付いてるんじゃない?」
「嘘つきかよ!見に来て損した!」
次々と放たれる俺を責める言葉に何も反論できず、文句タラタラの彼らが去って行くのを呆然と見ていた。
その次の日からだ。
俺は学校に行けなくなってしまった。
入学したての慣れない環境の中で、一方的に上級生に責められた恐怖。
誰も助けてくれない中、身が竦んで自分では話すことすらできなかった事。
そして何より…
自分の見た目が、人をガッカリさせたんだ、と。
ただ存在してるだけで他人を失望させて、しかも嘘つき呼ばわりされた事が物凄くショックだった。
だけど、小学一年生にこの感情を上手く処理する事はできず、父さんにも母さんにも言えなくて。
俺は口数が少なくなり、登校時間になると泣いたり吐いたりするようになった。
不安で苦しくて、母さんがいないと夜も眠れない。
幼児期も母さんがいないと眠れなくて蓮と一緒に寝てたけど、卒園ギリギリで一人寝ができるようになったのに。
所謂、精神的ストレスによる退行ってやつだ。
両親は何とか原因を探ろうとしてた。
だけど学校の話しを拒絶する俺から聞き出すのは無理だったし、この時蓮と遥とは別のクラスだった。
休み時間だった事もあってクラス内の目撃者は殆ど無し。
つまり、ほぼ迷宮入りと言う形で俺の不登校は進んで行った訳だ。
幸いだったのは、父さんも母さんも無理に学校に行かせるタイプじゃなかった事。
それと、父さんが仕事柄常に家にいるため預け先にも困らなかった事だ。
蓮と遥は放課後毎日俺に会いに来てくれた。
特に蓮は、また眠れなくなった俺のために母さんが夜勤の夜はいつも家に来てくれるようになった。
「晴、大丈夫だよ。」
寝る前に手を握って言ってくれるその言葉が俺にとっては御守りだ。
蓮は俺といる時、手を繋いだり俺を足の間に座らせたり、とにかく身体の何処か一部が触れ合うようにする。
その体温に心から安心して、俺は学校には行けないながらも少しずつ元気を取り戻していった。
そして、二学期も終わろうかと言う12月のある日。
「晴。晴に意地悪した奴等はもう何もしてこないから大丈夫だよ。」
唐突に蓮に言われて驚いたのを覚えてる。
そこには遥もいて、大きく頷いていた。
「全員見付けて弱味ーーじゃないや。えっと、お願いしたから。もう絶対やらないって約束してくれたよ。」
(何か途中で遥に睨まれて言い直したけど何だろう?でも、蓮と遥がそう言うなら大丈夫なのかな?
)
「絶対俺達が守ってやるから!」
「うん!晴に悲しい顔させない!」
兄と姉の頼もしい言葉に、俺は決心した。
そして、少しずつ学校へ通うようになり…。
三学期からは全く問題なく登校できるようになったのだった。
だけど、俺はこの一件で学んだんだ。
俺の顔は肩書きと合ってなくて不自然なんだって。
だから、前髪を伸ばして日本人ぽくない瞳の色を隠すようになったし、極力周りに知られないように注意を払うようにもなった。
それから、この前の警察みたいに、相手に威圧的な態度を取られると何も言い返せなくなっちゃうのも多分この件が原因。
子供の頃のトラウマってなかなか消えてくれないよね。。
●●●
こんな過去があったので、美優の美容院で前髪を短くしたのは、晴人にとってとても大きな事でした。
蓮と一緒にいたくて「変わりたい」と思ったからなんですが…。蓮側がどう受け取っていたのかはside蓮で。
「マジで産まれた時から一緒なんだな!」
0歳~3歳辺りの写真が収められたアルバムを見て、黒崎君と啓太が騒いでる。
俺の誕生から始まる写真には、ほぼ1歳になろうかと言う蓮がしっかり写ってるんだよね。
もちろん遥も一緒だ。
それぞれの誕生日やクリスマス等のイベントには、萱島家の写真以外に蓮と遥と祝う写真が必ず有る。
「お、こっちは幼稚園になってる!晴人可愛いな。」
次のアルバムは幼稚園入園から卒園まで。
幼稚園での風景は勿論、海デビューもキャンプデビューもお祭りデビューも三人一緒だ。
この頃、早生まれの俺は体力も体格も全てが同級生よりも発達が遅かった。
幼少期の数ヶ月差って凄い違うもんね。
着替えができない、給食が食べられない、折り紙が折れない…
細々した理由で、とにかく俺は毎日泣いてた。
家に帰りたくて号泣する俺の所へ来てくれるのは蓮と遥だったんだよな。
二人は当時から賢くて、大人達がする会話も理解してるみたいだった。
俺だけがちんぷんかんぷんで置いていかれそうになると、どちらかが噛み砕きまくって説明してくれた気がする。
この頃は蓮と遥の事を兄と姉みたいに思ってたなぁ。
「小学生キターー!
てかさ、遥ちゃんて超美少女じゃない⁉︎」
黒崎君が見てるのは小学校の入学式だ。
萱島家、切藤家、南野家が小学校の前に集合してるやつ。
因みに小学校は公立で、登下校も三人でしてた。
「…あれ?学校の写真、春から一気にクリスマスまで飛んでる?」
啓太の声に俺はギクリとする。
「あー…実は俺、一年生の時不登校気味で…。」
そうなんだよね。
入学して数日した頃からクリスマス辺りまで、俺は学校に行ってない。
それには理由があって、俺がクウォーターだって事を他人に知られたくないのは、実はこの頃の苦い記憶のせいでもある。
小学校に入学して1週間が経った頃だった。
「ねえ、萱島ってどの子?」
5年生の男女が数人、何故か俺を探しに教室まで来た。
一年生から見た五年生って本当に大人だよね。
体格差も凄いし、俺はかなりビビリながらも彼女達の下へ向かう。
「えぇ~⁉︎これがそうなの⁉︎全然ハーフじゃないじゃん!!」
「ほんとだ!全然アラン君みたいじゃないじゃん!!」
目の前に現れた俺に、五年生の集団は大騒ぎだ。
アラン君って言うのは当時人気だったハーフの芸能人で、どうもハーフ=イケメンと思い込んでたらしい。
今なら、
勝手にイメージ作んなよ!
てか俺ハーフじゃなくてクウォーターだし!
って言い返して終わるだけの案件なんだけど、当時まだ6歳だった俺にとっては違った。
「はぁ~!ガッカリ!」
「もしかして、目立ちたいからハーフって嘘付いてるんじゃない?」
「嘘つきかよ!見に来て損した!」
次々と放たれる俺を責める言葉に何も反論できず、文句タラタラの彼らが去って行くのを呆然と見ていた。
その次の日からだ。
俺は学校に行けなくなってしまった。
入学したての慣れない環境の中で、一方的に上級生に責められた恐怖。
誰も助けてくれない中、身が竦んで自分では話すことすらできなかった事。
そして何より…
自分の見た目が、人をガッカリさせたんだ、と。
ただ存在してるだけで他人を失望させて、しかも嘘つき呼ばわりされた事が物凄くショックだった。
だけど、小学一年生にこの感情を上手く処理する事はできず、父さんにも母さんにも言えなくて。
俺は口数が少なくなり、登校時間になると泣いたり吐いたりするようになった。
不安で苦しくて、母さんがいないと夜も眠れない。
幼児期も母さんがいないと眠れなくて蓮と一緒に寝てたけど、卒園ギリギリで一人寝ができるようになったのに。
所謂、精神的ストレスによる退行ってやつだ。
両親は何とか原因を探ろうとしてた。
だけど学校の話しを拒絶する俺から聞き出すのは無理だったし、この時蓮と遥とは別のクラスだった。
休み時間だった事もあってクラス内の目撃者は殆ど無し。
つまり、ほぼ迷宮入りと言う形で俺の不登校は進んで行った訳だ。
幸いだったのは、父さんも母さんも無理に学校に行かせるタイプじゃなかった事。
それと、父さんが仕事柄常に家にいるため預け先にも困らなかった事だ。
蓮と遥は放課後毎日俺に会いに来てくれた。
特に蓮は、また眠れなくなった俺のために母さんが夜勤の夜はいつも家に来てくれるようになった。
「晴、大丈夫だよ。」
寝る前に手を握って言ってくれるその言葉が俺にとっては御守りだ。
蓮は俺といる時、手を繋いだり俺を足の間に座らせたり、とにかく身体の何処か一部が触れ合うようにする。
その体温に心から安心して、俺は学校には行けないながらも少しずつ元気を取り戻していった。
そして、二学期も終わろうかと言う12月のある日。
「晴。晴に意地悪した奴等はもう何もしてこないから大丈夫だよ。」
唐突に蓮に言われて驚いたのを覚えてる。
そこには遥もいて、大きく頷いていた。
「全員見付けて弱味ーーじゃないや。えっと、お願いしたから。もう絶対やらないって約束してくれたよ。」
(何か途中で遥に睨まれて言い直したけど何だろう?でも、蓮と遥がそう言うなら大丈夫なのかな?
)
「絶対俺達が守ってやるから!」
「うん!晴に悲しい顔させない!」
兄と姉の頼もしい言葉に、俺は決心した。
そして、少しずつ学校へ通うようになり…。
三学期からは全く問題なく登校できるようになったのだった。
だけど、俺はこの一件で学んだんだ。
俺の顔は肩書きと合ってなくて不自然なんだって。
だから、前髪を伸ばして日本人ぽくない瞳の色を隠すようになったし、極力周りに知られないように注意を払うようにもなった。
それから、この前の警察みたいに、相手に威圧的な態度を取られると何も言い返せなくなっちゃうのも多分この件が原因。
子供の頃のトラウマってなかなか消えてくれないよね。。
●●●
こんな過去があったので、美優の美容院で前髪を短くしたのは、晴人にとってとても大きな事でした。
蓮と一緒にいたくて「変わりたい」と思ったからなんですが…。蓮側がどう受け取っていたのかはside蓮で。
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