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解決編
57.
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(side 萱島晴人)
蓮が目を覚ましてから2カ月が経った。
季節は7月、梅雨明け間近の今日この頃。
俺と蓮は話し合いをして……ない。
はい、してません。
ちょ、待って!聞いて欲しい。
これにはちゃんと事情があるから!
蓮が目覚めた直後、俺はもう涙が止まらなくて子供みたいにわんわん泣いて。
まさかの、蓮本人にナースコールを押させるって言うダメっぷりを発揮してしまった。
駆けつけた蓮父が直ぐに蓮の診察を始めた時、俺は看護師さんに別の部屋へ連れていかれて。
渡されたタオルをグショグショにするのを見かねたのか、背中を撫でてくれてハーブティーまで淹れて貰って。
蓮と話したくてグズって『あまり興奮すると患者の様態にも障るので』なんて宥められる始末。
…本当に恥ずかしいし、大変申し訳ない。
ようやく病室に戻る許可を貰って大急ぎで向かうと、蓮は目を閉じてて。
不安に駆られる俺に、蓮父が暫くは寝てる時間が多いって説明してくれた。
「身体を回復させる為だから大丈夫。晴ちゃん、蓮を待っててくれてありがとう。」
目を赤くした蓮父に言われて、あんなに泣いたのにまた涙が溢れて。
だけど、次に蓮が起きるタイミングを逃したくなくて四六時中枕元に噛り付く俺を見かねたのか、強制的に別の部屋に移動させられてしまった。
なんと、父さんを召喚するって形で。
「晴、自己管理できないなら実家に連れ戻しちゃうよ?」
笑顔でそう言われたけど、こう言う時の父さんは母さんより恐い。
冷や汗をかきつつ寝食を疎かにしないと約束して…ついでに大学にも復帰する事を約束させられた。
春休みが終わってからも休む事に対して渋い顔してた母さんを説得してくれた父さんには、頭が上がらない。
ここから通うのを二つ返事で了承してくれた蓮父にも感謝しつつ、約1ヵ月ぶりの通学。
そしたらさ、まぁ…覚悟はしてたけど遅れを取り戻すのが大変で。
必修の単位なんかギリギリだし…体調管理にめっちゃ気を付けないと!
療養が必要な診断書出してくれるって言う蓮父に甘えとけばよかった…と後悔。
大学休んで蓮の傍にいた事に関しては、全く後悔はしてないけど。
ただ、とにかくバタバタの毎日で。
一方の蓮は検査に次ぐ検査。
ちょっと多すぎじゃないかって、実は心配になったりもしてる。
蓮父曰く『頭打ってるからね、検査は沢山必要なんだよ』って事だけど…。
それとは別にリハビリもあって、その他の時間は回復の為に寝てる時間も多くて。
つまり、起きて話せる状態の蓮と会える時間が少ないんだよね。
それに身体を治す事に専念して欲しいから、話は蓮が退院するまで待とうかなって。
偶にタイミングが合った時に何でもない話ができるだけでも、今は嬉しいから。
そんな風に考えながらスマホで時間を確認すると、
『獄中死の霊泉丈一郎、死因は心臓発作と判明。1年前から薬服用か。』
蓮父が買ってくれた新品(俺が使ってたスマホは竹田先輩に水没させられたから)に表示されたニュースを見てドキリとする。
切藤家を苦しめて来たラスボスの死が公表されたのは、最近の事。
これに関しては様々な憶測が飛び交ってて、中には暗殺説なんかもあって。
記事によると丈一郎には心臓疾患があったっぽいから、変な噂は落ち着くだろうけど。
『また、同氏は政治資金規正法違反の他、息子の慎一郎と共に少なくとも3件の行方不明事件への関与が疑われている。』
そんな記事の最後の一文に寒気を覚えたのは、奴等なら本当に誰かを誘拐したり…下手したら殺したりしてる可能性があるって分かってるからだ。
だって、妊娠中の美優さんにあんな事したんだし。
政治家として有名で人気もあった丈一郎の罪に、世間は大騒ぎだ。
『自分で手を下す訳ないよね?って事はヤクザと繋がりがあるって事でおK?』『この行方不明事件って、手首だけ残されてたやつじゃなかった?』『政治家怖すぎる』
こんなコメントが溢れてて、俺も本当に危なかったのかもって改めて怖くなった。
蓮とか遥とか切藤家が必死になって俺を守ろうとしてた理由が腑に落ちたって言うか…。
因みに、息子の慎一郎は生きてるけど、今回の件で霊泉家はもう終わりだって言われてる。
例え悪だったとしても、圧倒的カリスマの存在ってやっぱりデカイんだなぁ。
ウンウン頷きながら目的の病室のドアをノックすると、返事があった。
やった!今日は起きてる!
「蓮!調子どう!?ご飯食った?リハビリどうだった??」
はやる気持ちを抑え切れなくて聞きながら入ると、ベッドに身を起こした蓮が笑った。
「調子はいい。飯は食った。リハビリはいつも通り。」
律儀に答えながら蓮がこっちに来て…こっちに来て!?
「あ、、歩いていいの!?」
「ん、今日許可下りた。てか体力落ちすぎてやべぇ。」
久しぶりに目線を上げてする会話に、ちょっと胸が詰まる。
「な、なら少し歩く?」
「晴は?疲れてねぇの?」
距離を詰められるのも久々なら、少しかがんで覗き込まれるのも久々で。
ドギマギしながら頷くと、頭を優しく撫でられた。
「じゃ、付き合って。」
夕方とは言えまだまだ暑いから、2人でゆっくりフロア内を散歩する。
「凄い!普通に歩けてるね。」
「いやでも変な感じするわ。意識が足追い抜こうとしてくる。」
その言い方に笑いながら暫く歩いて、この前美優さんとお月見した窓の側で休憩。
今日はまだ月は見えないけど、夕焼けが凄く綺麗だ。
「…晴、もう少し待ってて。」
ふいに言われて振り向くと、真剣な蓮の瞳がこっちを見ていた。
「もう色々聞いてるとは思うけど、俺の口から全部話すから。」
約束を守ろうとしてくれる蓮に頷く。
「うん、分かってる。ちゃんと待ってるから、今は蓮の身体の事1番に考えよ?」
ピクリと蓮の左肩が動いて…だけどギプスで固定されたその先は動かなくて。
思わずって感じの反応に、もしかしてと思う。
「あの…蓮、手に触ってもいい?」
違ったら恥ずかしいなと思いながらも聞くと、蓮が僅かに目を瞠った。
これは、当たってたっぽい…?
分からないけど、ソロリと伸ばされた蓮の右手を両手で包む。
大きな掌、長い指…そして、体温。
思わず自分の頬に押し当てると、涙が溢れて。
この温かさを喪わなくて良かった…。
「晴、ごめんな…。」
雫を拭ってくれる親指の優しさと、後悔が滲んだ声に堪らない気持ちになる。
その前の経緯がどうであれ、蓮が俺を庇って大怪我した事には変わりないのに。
「何で蓮が謝るんだよ…それを言うなら、俺の方なのに…」
だけど、蓮が望んでるのは謝罪の言葉じゃないって事も分かってるから。
「蓮、守ってくれてありがとう。」
目を見てそう言うと、蓮が息を呑んだ。
俺の頬から離れた手に、頭を強く引き寄せられる。
「お前が無事で良かった…」
万感の思いが籠ったそれにまた泣けて、蓮の肩口に額を擦り付けた。
生きて、会話して、抱き合って。
そんな普通の事を、神様に感謝せずにはいられない。
夕焼けの名残が消えて、空に星が瞬き出しても。
俺達はずっと寄り添って、互いの存在を確かめていた。
(side 切藤蓮)
晴が傍にいる。
そう思うだけで、俺の身体は細胞レベルで全力を出すらしい。
それはもう、親父に驚異的な回復スピードと言われる程に。
だけど、ギプスが外れた左手のリハビリは正直辛い。
思い通りに身体を動かせない事がこれ程大変だとは、正直思って無かった。
ぶっちゃけ生きてて『できない事』を経験した事が無かったから余計かもしれない。
ゴムボールを掴むだけの行為に、苦戦する事30分。
たったそれだけで心身共に疲弊して、グッタリと椅子の背にもたれて。
ダラリと垂れ下がった自分の腕の重さにウンザリしながら今日のリハビリを終えた。
病室へ戻る廊下を歩きながら、目覚めてから今日までの事思い返す。
あの時、夢なのか走馬灯なのか分からない世界で、泣きそうな晴の声を聞いた。
傍に行きたいと強く願うと、何故か桜守りが現れて。
眩しさに目を閉じて、次に開けた時には病室にいた。
隣には晴がいて、これも夢かと思って。
『おかえり…蓮!!』
胸を震わせるその言葉で、自分が現実に戻って来た事を確信した。
晴に言いたい事も謝りたい事も沢山あったけど、思うように声が出ない。
泣き続けるその姿に焦って、枕元のナースコールを押して。
その時、動く右手に桜守りを握ってる事に気が付いた。
晴に渡した霊泉避けの御守り同様に、これにも何かあるんだろうか。
だけど深く考える前に、飛んで来た親父によって診察が始まって。
晴が看護師に連れて行かれるのを視界の端に捕らえながらも、意識を保てなかった。
とにかく、眠くて堪らない。
意識が戻って暫くは、ほとんど寝て過ごしてたと思う。
そんなんだから、晴と会話する事もままならなかった。
少し起きられる時間が長くなってきたと思ったら、今度は検査と脳機能のリハビリが始まって。
一方の晴は大学へ行き出して忙しくなった。
親父から聞いた話だと、晴は俺が目覚めるまでの間大学を休んでたらしい。
ほぼ1カ月ともなると、遅れを取り戻すのは大変だろう。
申し訳なく思いながらも、晴が傍にいてくれる事が嬉しかった。
だけど、罪悪感を感じてるんじゃないかと心配でもあった。
早く話したいけど、全て話せるまでには体力が回復していない。
一緒に過ごせる時間もあまりない…ってか、検査多くね?
医学の知識があるだけに、何かがおかしいと感じ始める。
「蓮、調子はどうだ?」
そんなもどかしい日々の中で、訪ねて来た翔の様子がいつもと違う事に気付いて。
「俺の身体、何割回復する?」
単刀直入に聞くと翔は驚いて、やがて苦笑した。
「鋭いなぁ、そっちの機能は問題無しだな。」
そう言うと、グッと真面目な顔になる。
「初めに言っておくと、ショックな内容もあると思う。だけど、お前は包み隠さず聞きたいよな?」
迷いなく頷いた俺に、翔が説明を始めた。
「まず、脳の事だ。検査とリハビリが多いのは気付いてたと思うけど、これは一部に気になる点があったからなんだ。」
曰く、リハビリも機能の回復具合をデータとして摂っていた実験的なものだったらしい。
「蓮、初めて俺と話した時の事覚えてるか?」
「あ?なんだよいきなり?」
いいから、と言われて記憶を探る。
いつも通り頭の中の『どうでもいい』に分類した項目を開いて、遡って。
ーーそのシーンが、見当たらない。
どんなに小さな事でも、映像として残せていた記憶のストックが見当たらない。
「…一部の記憶が欠損してるって事か?」
「と言うよりも、記憶できる容量が少なくなったんだと俺は見てる。因みに俺は覚えてるよ。5歳のお前に『こっち来んな』って言われて衝撃だったからな…。」
遠い目をする翔に構わず記憶を探ると、5歳の記憶がまばらに出て来た。
優劣は不明だが、どうやら全部を忘れてる訳じゃないらしい。
「テスト結果では、小学生以降の記憶はハッキリ残ってる事が判明した。直近の記憶も大丈夫だし、一度見たら覚えられる瞬間記憶もそのままだ。」
つまり、古い記憶から消えていくって事か。
「常人ならそれが普通だけど、蓮は全て詳細まで覚えてからな…暫くは喪失感があるかもしれない。
ただ、日常生活で困る事は無い筈だ。」
周りの遣り取りで耳にする『そんな事あったっけ?』ってのが、俺の人生にも加わるって事か。
色々探ってみると、晴に関する記憶は結構残っていた。
全て思い出せないのは悔しいが、あれだけの事故でそこが残せたならまぁ良しとするか。
ただ、「大学入試レベルの問題も全部正解してたし、学業も大丈夫だな。」と続ける翔の表情は優れない。
どうやら俺の身体の異変はこれだけじゃないらしい。
「他には?」
「うん…後は、目かな。見えてるけど、左目の視力だけ少し落ちてる。」
外部からの強い衝撃で視力が落ちるのは、そう珍しい事ではない。
「今後もっと左右差が出る可能性がある。」
「左目が失明までいくって事か?」
「いや、そこまでの可能性は低い。勿論、絶対とは言い切れないけど…。」
視力の低下だけなら、コンタクトやらレーシックでも何とかなるが…。
「定期的な検査は必須だ。だけど、あくまでも可能性の話だから。」
「分かった。今どうこう言ってもどうしようもねぇな。で、まだあんだろ?これか?」
気遣わし気な翔に左手を示すと、翔はやや躊躇ってから頷いた。
「そうだ。骨折は完治する。だけど、神経は完璧にとはいかない。」
そう言うと、翔は俺の表情を窺うように見つめる。
「蓮、お前ベンチプレス何キロ上がる?」
「あ?100行くかどうかじゃね?」
突然の話題を訝しみながらも、あぁと納得する。
「そこまでは、もう無理だ。」
断定した言い方に、利き手の状態が1番悪い事を悟った。
まぁでも、あんな動き日常でする事ねえし。
寝た状態で100キロ持ち上がらなくなったからって、特に不便は無いだろう。
「俺としては49キロが持ち上げられればそれでいい。」
そう言うと、翔はキョトンとした後泣き笑いに顔を歪めた。
「そうか…そうだな。もうちょっと太った方がいいけど。」
細身の誰かに思い至ったらしい翔が笑って、また表情を引き締めた。
「それから、細かい作業も苦手になるかもしれない。ピアニストにもなれないな。」
なる予定ねーよ、と返しかけて気が付く。
「手術をするのも、難しい。」
これまでで1番苦しそうに翔が告げる。
「あー、俺は医者にはなれねぇんだな?」
正確には、内科医にならなれる。
だけど、手術を伴う外科医はーー現在俺が目指しているそれへの道は絶たれたらしい。
別に、絶対になりたかった訳じゃない。
大学を医学部に決めたのも『医師免許取っておくか』程度のものだったし。
人を救いたいなんて志は無くて、ただ晴にいい暮らしをさせてやれると思っただけ。
金の話で言えば、他の職業でもきっと稼ぐ事は可能だ。
だけど…
この先にも、できない事が出てくるのかもしれない。
自分の能力とは関係なく、できないと諦める事が。
悲痛な顔で翔が何か言ってるが、あまり耳に入らなかった。
ただ、無性に晴に会いたくなって。
「翔、晴には言うなよ。」
ハッとした翔が何か言いかけて黙る。
こんな事知ったら、晴は俺を許さないといけなくなる。
自分が傷つけられた事に対して怒れなくなる。
そして罪悪感と責任感から、傍にいようとするだろう。
それは俺にとって、渇望してやまないものだけれど。
少し前の俺だったら、利用してでも晴も手に入れようとしただろうけど。
今はただ、そんな理由で晴を縛りたくない。
これ以上苦しんだり傷ついたりして欲しくない。
晴の幸せを何より大切にしたい。
だから、全て話して晴がどうするか決めた後で。
「晴には、俺から話す。」
もう秘密は作らない。
だけど、順序を選ぶ事は許して欲しい。
近付いてきた来た翔が俺の頭に手を置く。
「おい、触んな。」
そう言いながらも、手を払い除ける事はしなかった。
そんな出来事があったその日、晴が俺を散歩に連れ出してくれた。
翔は親父からの歩行許可も携えていて、これに関してはかなり嬉しい。
2人で夕焼けに染まる空を見ていると、ふいに晴が言った。
『蓮、守ってくれてありがとう』
それだけで体の中の色んな感情が溢れそうになって、晴を抱き締めようとして。
動かない左手に、『できない事』が圧し掛かって。
そうしたら、晴の方から俺に触れてくれた。
俺の為に流してくれた綺麗な涙が、心を溶かすみたいに広がって。
寄り添いながら、その存在の大きさを改めて思い知った。
晴がいないと俺は生きていけない。
この感情が晴にとって重いと分かっていても。
どうしても、手放したくないと思った。
晴が俺を許せないなら、身を引くべきだと分かってる。
だけど…誠心誠意謝って、この先何年でも許しを乞おう。
みっともなく縋って、泣きわめくかもしれない。
だけど、伝えたい。
どうしようもなくお前が好きで、傍にいて欲しいんだって。
その為には、一刻も早く退院しなくては。
そんな思いからリハビリに精を出してるのが今の状況だ。
左手以外はもう問題なくて、頭の抜糸も済んでいる。
傷痕はグロいから晴にはあまり見せたくないが…まぁ、髪で隠れるし問題ない。
体力もかなり戻ったし、食事も普通に摂れる。
ただ、リハビリだけはそうもいかない。
できない自分に苛立って、押し黙る事が増えて。
だけど、大学が夏休みに入って晴と過ごせる時間が長くなって精神的に安定した。
「蓮、無理すんなよ?」
時折晴が心配そうに言ってくるけど、何も問題ない。
お前がここにいてくれるから、俺は大丈夫だ。
そんな風に日々は過ぎて、左手の動きが随分スムーズになった頃。
遂に退院許可が下りた。
救急搬送されてから4ヶ月が経った、8月末の事だった。
●●●
季節がだいぶ現実に近付いてきました。笑
蓮が目を覚ましてから2カ月が経った。
季節は7月、梅雨明け間近の今日この頃。
俺と蓮は話し合いをして……ない。
はい、してません。
ちょ、待って!聞いて欲しい。
これにはちゃんと事情があるから!
蓮が目覚めた直後、俺はもう涙が止まらなくて子供みたいにわんわん泣いて。
まさかの、蓮本人にナースコールを押させるって言うダメっぷりを発揮してしまった。
駆けつけた蓮父が直ぐに蓮の診察を始めた時、俺は看護師さんに別の部屋へ連れていかれて。
渡されたタオルをグショグショにするのを見かねたのか、背中を撫でてくれてハーブティーまで淹れて貰って。
蓮と話したくてグズって『あまり興奮すると患者の様態にも障るので』なんて宥められる始末。
…本当に恥ずかしいし、大変申し訳ない。
ようやく病室に戻る許可を貰って大急ぎで向かうと、蓮は目を閉じてて。
不安に駆られる俺に、蓮父が暫くは寝てる時間が多いって説明してくれた。
「身体を回復させる為だから大丈夫。晴ちゃん、蓮を待っててくれてありがとう。」
目を赤くした蓮父に言われて、あんなに泣いたのにまた涙が溢れて。
だけど、次に蓮が起きるタイミングを逃したくなくて四六時中枕元に噛り付く俺を見かねたのか、強制的に別の部屋に移動させられてしまった。
なんと、父さんを召喚するって形で。
「晴、自己管理できないなら実家に連れ戻しちゃうよ?」
笑顔でそう言われたけど、こう言う時の父さんは母さんより恐い。
冷や汗をかきつつ寝食を疎かにしないと約束して…ついでに大学にも復帰する事を約束させられた。
春休みが終わってからも休む事に対して渋い顔してた母さんを説得してくれた父さんには、頭が上がらない。
ここから通うのを二つ返事で了承してくれた蓮父にも感謝しつつ、約1ヵ月ぶりの通学。
そしたらさ、まぁ…覚悟はしてたけど遅れを取り戻すのが大変で。
必修の単位なんかギリギリだし…体調管理にめっちゃ気を付けないと!
療養が必要な診断書出してくれるって言う蓮父に甘えとけばよかった…と後悔。
大学休んで蓮の傍にいた事に関しては、全く後悔はしてないけど。
ただ、とにかくバタバタの毎日で。
一方の蓮は検査に次ぐ検査。
ちょっと多すぎじゃないかって、実は心配になったりもしてる。
蓮父曰く『頭打ってるからね、検査は沢山必要なんだよ』って事だけど…。
それとは別にリハビリもあって、その他の時間は回復の為に寝てる時間も多くて。
つまり、起きて話せる状態の蓮と会える時間が少ないんだよね。
それに身体を治す事に専念して欲しいから、話は蓮が退院するまで待とうかなって。
偶にタイミングが合った時に何でもない話ができるだけでも、今は嬉しいから。
そんな風に考えながらスマホで時間を確認すると、
『獄中死の霊泉丈一郎、死因は心臓発作と判明。1年前から薬服用か。』
蓮父が買ってくれた新品(俺が使ってたスマホは竹田先輩に水没させられたから)に表示されたニュースを見てドキリとする。
切藤家を苦しめて来たラスボスの死が公表されたのは、最近の事。
これに関しては様々な憶測が飛び交ってて、中には暗殺説なんかもあって。
記事によると丈一郎には心臓疾患があったっぽいから、変な噂は落ち着くだろうけど。
『また、同氏は政治資金規正法違反の他、息子の慎一郎と共に少なくとも3件の行方不明事件への関与が疑われている。』
そんな記事の最後の一文に寒気を覚えたのは、奴等なら本当に誰かを誘拐したり…下手したら殺したりしてる可能性があるって分かってるからだ。
だって、妊娠中の美優さんにあんな事したんだし。
政治家として有名で人気もあった丈一郎の罪に、世間は大騒ぎだ。
『自分で手を下す訳ないよね?って事はヤクザと繋がりがあるって事でおK?』『この行方不明事件って、手首だけ残されてたやつじゃなかった?』『政治家怖すぎる』
こんなコメントが溢れてて、俺も本当に危なかったのかもって改めて怖くなった。
蓮とか遥とか切藤家が必死になって俺を守ろうとしてた理由が腑に落ちたって言うか…。
因みに、息子の慎一郎は生きてるけど、今回の件で霊泉家はもう終わりだって言われてる。
例え悪だったとしても、圧倒的カリスマの存在ってやっぱりデカイんだなぁ。
ウンウン頷きながら目的の病室のドアをノックすると、返事があった。
やった!今日は起きてる!
「蓮!調子どう!?ご飯食った?リハビリどうだった??」
はやる気持ちを抑え切れなくて聞きながら入ると、ベッドに身を起こした蓮が笑った。
「調子はいい。飯は食った。リハビリはいつも通り。」
律儀に答えながら蓮がこっちに来て…こっちに来て!?
「あ、、歩いていいの!?」
「ん、今日許可下りた。てか体力落ちすぎてやべぇ。」
久しぶりに目線を上げてする会話に、ちょっと胸が詰まる。
「な、なら少し歩く?」
「晴は?疲れてねぇの?」
距離を詰められるのも久々なら、少しかがんで覗き込まれるのも久々で。
ドギマギしながら頷くと、頭を優しく撫でられた。
「じゃ、付き合って。」
夕方とは言えまだまだ暑いから、2人でゆっくりフロア内を散歩する。
「凄い!普通に歩けてるね。」
「いやでも変な感じするわ。意識が足追い抜こうとしてくる。」
その言い方に笑いながら暫く歩いて、この前美優さんとお月見した窓の側で休憩。
今日はまだ月は見えないけど、夕焼けが凄く綺麗だ。
「…晴、もう少し待ってて。」
ふいに言われて振り向くと、真剣な蓮の瞳がこっちを見ていた。
「もう色々聞いてるとは思うけど、俺の口から全部話すから。」
約束を守ろうとしてくれる蓮に頷く。
「うん、分かってる。ちゃんと待ってるから、今は蓮の身体の事1番に考えよ?」
ピクリと蓮の左肩が動いて…だけどギプスで固定されたその先は動かなくて。
思わずって感じの反応に、もしかしてと思う。
「あの…蓮、手に触ってもいい?」
違ったら恥ずかしいなと思いながらも聞くと、蓮が僅かに目を瞠った。
これは、当たってたっぽい…?
分からないけど、ソロリと伸ばされた蓮の右手を両手で包む。
大きな掌、長い指…そして、体温。
思わず自分の頬に押し当てると、涙が溢れて。
この温かさを喪わなくて良かった…。
「晴、ごめんな…。」
雫を拭ってくれる親指の優しさと、後悔が滲んだ声に堪らない気持ちになる。
その前の経緯がどうであれ、蓮が俺を庇って大怪我した事には変わりないのに。
「何で蓮が謝るんだよ…それを言うなら、俺の方なのに…」
だけど、蓮が望んでるのは謝罪の言葉じゃないって事も分かってるから。
「蓮、守ってくれてありがとう。」
目を見てそう言うと、蓮が息を呑んだ。
俺の頬から離れた手に、頭を強く引き寄せられる。
「お前が無事で良かった…」
万感の思いが籠ったそれにまた泣けて、蓮の肩口に額を擦り付けた。
生きて、会話して、抱き合って。
そんな普通の事を、神様に感謝せずにはいられない。
夕焼けの名残が消えて、空に星が瞬き出しても。
俺達はずっと寄り添って、互いの存在を確かめていた。
(side 切藤蓮)
晴が傍にいる。
そう思うだけで、俺の身体は細胞レベルで全力を出すらしい。
それはもう、親父に驚異的な回復スピードと言われる程に。
だけど、ギプスが外れた左手のリハビリは正直辛い。
思い通りに身体を動かせない事がこれ程大変だとは、正直思って無かった。
ぶっちゃけ生きてて『できない事』を経験した事が無かったから余計かもしれない。
ゴムボールを掴むだけの行為に、苦戦する事30分。
たったそれだけで心身共に疲弊して、グッタリと椅子の背にもたれて。
ダラリと垂れ下がった自分の腕の重さにウンザリしながら今日のリハビリを終えた。
病室へ戻る廊下を歩きながら、目覚めてから今日までの事思い返す。
あの時、夢なのか走馬灯なのか分からない世界で、泣きそうな晴の声を聞いた。
傍に行きたいと強く願うと、何故か桜守りが現れて。
眩しさに目を閉じて、次に開けた時には病室にいた。
隣には晴がいて、これも夢かと思って。
『おかえり…蓮!!』
胸を震わせるその言葉で、自分が現実に戻って来た事を確信した。
晴に言いたい事も謝りたい事も沢山あったけど、思うように声が出ない。
泣き続けるその姿に焦って、枕元のナースコールを押して。
その時、動く右手に桜守りを握ってる事に気が付いた。
晴に渡した霊泉避けの御守り同様に、これにも何かあるんだろうか。
だけど深く考える前に、飛んで来た親父によって診察が始まって。
晴が看護師に連れて行かれるのを視界の端に捕らえながらも、意識を保てなかった。
とにかく、眠くて堪らない。
意識が戻って暫くは、ほとんど寝て過ごしてたと思う。
そんなんだから、晴と会話する事もままならなかった。
少し起きられる時間が長くなってきたと思ったら、今度は検査と脳機能のリハビリが始まって。
一方の晴は大学へ行き出して忙しくなった。
親父から聞いた話だと、晴は俺が目覚めるまでの間大学を休んでたらしい。
ほぼ1カ月ともなると、遅れを取り戻すのは大変だろう。
申し訳なく思いながらも、晴が傍にいてくれる事が嬉しかった。
だけど、罪悪感を感じてるんじゃないかと心配でもあった。
早く話したいけど、全て話せるまでには体力が回復していない。
一緒に過ごせる時間もあまりない…ってか、検査多くね?
医学の知識があるだけに、何かがおかしいと感じ始める。
「蓮、調子はどうだ?」
そんなもどかしい日々の中で、訪ねて来た翔の様子がいつもと違う事に気付いて。
「俺の身体、何割回復する?」
単刀直入に聞くと翔は驚いて、やがて苦笑した。
「鋭いなぁ、そっちの機能は問題無しだな。」
そう言うと、グッと真面目な顔になる。
「初めに言っておくと、ショックな内容もあると思う。だけど、お前は包み隠さず聞きたいよな?」
迷いなく頷いた俺に、翔が説明を始めた。
「まず、脳の事だ。検査とリハビリが多いのは気付いてたと思うけど、これは一部に気になる点があったからなんだ。」
曰く、リハビリも機能の回復具合をデータとして摂っていた実験的なものだったらしい。
「蓮、初めて俺と話した時の事覚えてるか?」
「あ?なんだよいきなり?」
いいから、と言われて記憶を探る。
いつも通り頭の中の『どうでもいい』に分類した項目を開いて、遡って。
ーーそのシーンが、見当たらない。
どんなに小さな事でも、映像として残せていた記憶のストックが見当たらない。
「…一部の記憶が欠損してるって事か?」
「と言うよりも、記憶できる容量が少なくなったんだと俺は見てる。因みに俺は覚えてるよ。5歳のお前に『こっち来んな』って言われて衝撃だったからな…。」
遠い目をする翔に構わず記憶を探ると、5歳の記憶がまばらに出て来た。
優劣は不明だが、どうやら全部を忘れてる訳じゃないらしい。
「テスト結果では、小学生以降の記憶はハッキリ残ってる事が判明した。直近の記憶も大丈夫だし、一度見たら覚えられる瞬間記憶もそのままだ。」
つまり、古い記憶から消えていくって事か。
「常人ならそれが普通だけど、蓮は全て詳細まで覚えてからな…暫くは喪失感があるかもしれない。
ただ、日常生活で困る事は無い筈だ。」
周りの遣り取りで耳にする『そんな事あったっけ?』ってのが、俺の人生にも加わるって事か。
色々探ってみると、晴に関する記憶は結構残っていた。
全て思い出せないのは悔しいが、あれだけの事故でそこが残せたならまぁ良しとするか。
ただ、「大学入試レベルの問題も全部正解してたし、学業も大丈夫だな。」と続ける翔の表情は優れない。
どうやら俺の身体の異変はこれだけじゃないらしい。
「他には?」
「うん…後は、目かな。見えてるけど、左目の視力だけ少し落ちてる。」
外部からの強い衝撃で視力が落ちるのは、そう珍しい事ではない。
「今後もっと左右差が出る可能性がある。」
「左目が失明までいくって事か?」
「いや、そこまでの可能性は低い。勿論、絶対とは言い切れないけど…。」
視力の低下だけなら、コンタクトやらレーシックでも何とかなるが…。
「定期的な検査は必須だ。だけど、あくまでも可能性の話だから。」
「分かった。今どうこう言ってもどうしようもねぇな。で、まだあんだろ?これか?」
気遣わし気な翔に左手を示すと、翔はやや躊躇ってから頷いた。
「そうだ。骨折は完治する。だけど、神経は完璧にとはいかない。」
そう言うと、翔は俺の表情を窺うように見つめる。
「蓮、お前ベンチプレス何キロ上がる?」
「あ?100行くかどうかじゃね?」
突然の話題を訝しみながらも、あぁと納得する。
「そこまでは、もう無理だ。」
断定した言い方に、利き手の状態が1番悪い事を悟った。
まぁでも、あんな動き日常でする事ねえし。
寝た状態で100キロ持ち上がらなくなったからって、特に不便は無いだろう。
「俺としては49キロが持ち上げられればそれでいい。」
そう言うと、翔はキョトンとした後泣き笑いに顔を歪めた。
「そうか…そうだな。もうちょっと太った方がいいけど。」
細身の誰かに思い至ったらしい翔が笑って、また表情を引き締めた。
「それから、細かい作業も苦手になるかもしれない。ピアニストにもなれないな。」
なる予定ねーよ、と返しかけて気が付く。
「手術をするのも、難しい。」
これまでで1番苦しそうに翔が告げる。
「あー、俺は医者にはなれねぇんだな?」
正確には、内科医にならなれる。
だけど、手術を伴う外科医はーー現在俺が目指しているそれへの道は絶たれたらしい。
別に、絶対になりたかった訳じゃない。
大学を医学部に決めたのも『医師免許取っておくか』程度のものだったし。
人を救いたいなんて志は無くて、ただ晴にいい暮らしをさせてやれると思っただけ。
金の話で言えば、他の職業でもきっと稼ぐ事は可能だ。
だけど…
この先にも、できない事が出てくるのかもしれない。
自分の能力とは関係なく、できないと諦める事が。
悲痛な顔で翔が何か言ってるが、あまり耳に入らなかった。
ただ、無性に晴に会いたくなって。
「翔、晴には言うなよ。」
ハッとした翔が何か言いかけて黙る。
こんな事知ったら、晴は俺を許さないといけなくなる。
自分が傷つけられた事に対して怒れなくなる。
そして罪悪感と責任感から、傍にいようとするだろう。
それは俺にとって、渇望してやまないものだけれど。
少し前の俺だったら、利用してでも晴も手に入れようとしただろうけど。
今はただ、そんな理由で晴を縛りたくない。
これ以上苦しんだり傷ついたりして欲しくない。
晴の幸せを何より大切にしたい。
だから、全て話して晴がどうするか決めた後で。
「晴には、俺から話す。」
もう秘密は作らない。
だけど、順序を選ぶ事は許して欲しい。
近付いてきた来た翔が俺の頭に手を置く。
「おい、触んな。」
そう言いながらも、手を払い除ける事はしなかった。
そんな出来事があったその日、晴が俺を散歩に連れ出してくれた。
翔は親父からの歩行許可も携えていて、これに関してはかなり嬉しい。
2人で夕焼けに染まる空を見ていると、ふいに晴が言った。
『蓮、守ってくれてありがとう』
それだけで体の中の色んな感情が溢れそうになって、晴を抱き締めようとして。
動かない左手に、『できない事』が圧し掛かって。
そうしたら、晴の方から俺に触れてくれた。
俺の為に流してくれた綺麗な涙が、心を溶かすみたいに広がって。
寄り添いながら、その存在の大きさを改めて思い知った。
晴がいないと俺は生きていけない。
この感情が晴にとって重いと分かっていても。
どうしても、手放したくないと思った。
晴が俺を許せないなら、身を引くべきだと分かってる。
だけど…誠心誠意謝って、この先何年でも許しを乞おう。
みっともなく縋って、泣きわめくかもしれない。
だけど、伝えたい。
どうしようもなくお前が好きで、傍にいて欲しいんだって。
その為には、一刻も早く退院しなくては。
そんな思いからリハビリに精を出してるのが今の状況だ。
左手以外はもう問題なくて、頭の抜糸も済んでいる。
傷痕はグロいから晴にはあまり見せたくないが…まぁ、髪で隠れるし問題ない。
体力もかなり戻ったし、食事も普通に摂れる。
ただ、リハビリだけはそうもいかない。
できない自分に苛立って、押し黙る事が増えて。
だけど、大学が夏休みに入って晴と過ごせる時間が長くなって精神的に安定した。
「蓮、無理すんなよ?」
時折晴が心配そうに言ってくるけど、何も問題ない。
お前がここにいてくれるから、俺は大丈夫だ。
そんな風に日々は過ぎて、左手の動きが随分スムーズになった頃。
遂に退院許可が下りた。
救急搬送されてから4ヶ月が経った、8月末の事だった。
●●●
季節がだいぶ現実に近付いてきました。笑
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