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プロローグ
コンビニ強盗
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――この物語の主人公「霧崎直央」はごく普通の学生、ではない。別に家柄が特別なわけではなく、一般家庭で生まれた少年である。父親はサラリーマン、母親は専業主婦、下に弟がおり、最近では母親が妊娠した事が発覚してもう少しで弟が生まれる。
高校一年生ではあるが昔から家事はよく手伝っており、母親がいない間は家の管理は彼が行っている。弟の面倒を見たり、夜遅く帰ってくる父親のために料理を用意し、自分自身も勉学に励む典型的な「いい子」だった。しかし、彼には他人と比べて目立つ特徴があり、それが原因で昔から色々とからかわれていたこともある。
その特徴というのが顔立ちが母親に似すぎて中性的で体型も華奢なので女性と間違われる事が多く、特に子供の頃は初対面の人間には女子と勘違いされ、男子から告白されたこともある。この時点では笑い話として流せるかもしれないが、問題なのは容姿が男性と掛け離れすぎて未だに女性と勘違いされてしまう。
学校で体育の授業で着替える際に男子の視線を集め、放課後を迎えると男子だと知っているのに男性から告白され、女子からは優れた容姿のせいで妬まれてしまう。声変わりを迎えてもハスキーボイスとして認識して彼を女性と勘違いする人間も多い。
それでも当の本人は周囲が何を言おうと自分は男であり、他の人間の第一印象など全く気にしていなかった。だが、そんな彼が初めて自分の容姿に気を配るべきだったと後悔する日が訪れた。
「えっと……」
「ううっ……ひっくっ……」
「うるせえっ!!泣くんじゃねえっ!!お前らも近づくな!!この女達がどうなってもいいのか!?」
「一歩でも動いたら撃ち殺すぞ!!」
――現在の直央は下校の最中、弟が好きなお菓子を買うためにコンビニに寄った。しかし、そこで偶然にも同級生の「桃山 桃」という女子と遭遇し、彼女と雑談を行っているときに唐突にサングラスとマスクで顔を覆い隠した2人の男がコンビニに入り込む。
男は拳銃を握りしめて店員から金を奪い、そのまま立ち去ろうとしたが運悪く巡回中のパトカーが店の異変に気付き、コンビニの前を警官が立ち塞がる。それを確認した男達は女性で非力そうな二人の高校生を捕まえ、両手で2人を抱えながら警官を威嚇するように拳銃を人質に向ける。
(まさかこんな状況でも女子と間違えられるとは……くそう、うちの高校が私服だった事が災いしたか)
男物の学生服を着こんでいたら勘違いされる事もなかったのかもしれないが、よりにもよって今日の直央は母親が編んでくれたセーターを着こんでおり、首元もマフラーで覆い隠しているので喉仏も確認できない。コンビニ強盗は直央を女子だと勘違いして同級生の桃山と共に二人で人質を取り、コンビニに立てこもる。助けを求めようにもコンビニに居るのは気弱そうな女性店員が一人だけで他の人間の姿は見えない。
『君たちはもう包囲されている!!人質を解放して出てこい!!』
「畜生っ!!近付くじゃねえっ!!この女がどうなってもいいのか!?」
「いててっ……!?」
拳銃の銃口を頭に押し付けられ、直央は怒りの表情を浮かべるが強盗の目には女子が睨みつけたようにしか捉えられず、彼が男性である事に気づかない。
「あ、兄貴……このままじゃ不味いですよ。やっぱり、自首するしか……」
「弱気になってんじゃない!!こいつらを人質にして逃げるんだ……その女を黙らせろ!!」
「ひうっ!?」
「か、可哀そうだよ兄貴!!」
泣きじゃくる桃山に苛立ちを抱いたように直央を抑えつける男が怒鳴りつけると、もう一人の気弱そうな男性が自分が人質にしているにも関わらずに彼女を庇う。それを見た直央はこちらの男は説得すれば自首する可能性があるのではないかと考え、自分を抑えている男をどうにかすれば何とかなるのではないかと考える。
(確かポケットの方に……)
人質にはされているが直央も桃山も身体を縛り付けられてはおらず、直央は自分のズボンに入れたままのボールペンがあることを思い出す。買い物に出かけるときによく利用しており、彼はどうにか男に抱き着かれながらもボールペンに手を伸ばし、ポケットから引き抜いて容赦なく男の太腿に突き刺す。
「うぎゃあっ!?」
「兄貴!?」
「このっ!!」
容赦なくボールペンの先を突きさされた男は悲鳴を上げ、直央は拘束する力が弱まった隙に振り払い、男の顔面に向けて右肘を叩きこむ。
「ふんっ!!」
「ぐふっ!?」
昔から女子と間違えられたため、少しでも男らしくなるために様々な武道を並んだ。結局、どれも長続きはしなかったが、素人と比べれば武術の心得はある。ちなみに長続きしなかった理由はどれだけ鍛えても筋肉が身に付かず、弟が生まれた時から面倒を任されるようになったので辞めてしまった。
相手の男は直央と比べれば体格も大きいが、不意を突いて鍛えられない人体の急所を狙い、直央は男性の最大の弱点である股間に容赦なく蹴りこむ。
「ふんぬっ!!」
「うぎゃあっ!?」
「あ、兄貴!?」
「えっ……!?」
股間を蹴り上げられた男が拳銃を落として跪き、その様子に相棒の男が驚愕の言葉を上げ、直央はその隙に近くの棚に置かれていた商品を掴み取ってもう一人の男の顔面に投げつける。
「このっ!!」
「うあっ!?」
「わああっ!?」
ケースに入った歯磨き粉が相棒の男の顔に衝突し、桃山が解放される。それを逃さずに直央は男の元に賭けより、頭を突き出して顎に頭突きを放つ。
「ていっ!!」
「げふっ!?」
男の顎に直央の頭が叩きつけられ、人体で最も重く硬い箇所で攻撃された男は後ろに倒れこみ、直央は頭を抑えながらも桃山の手を掴んで出入口に走り出す。
「逃げよう!!」
「う、うん!!」
不意を突いて男二人を倒す事に成功したが、ここで調子に乗らずに直央は桃山を連れて出入口に向かう。既に店員も店の奥に逃げ出したのか姿は見えず、二人は出入口に向かった瞬間、唐突に二人の足元が光り輝く。
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
床が唐突に発光した事で立ち止まってしまい、何が起きたのか理解できずに直央は視線を向ける。警察官が閃光弾でも投げ込んだのかと思ったが、床には「魔法陣」のような紋様が広がっており、桃山の身体が光に包み込まれようとしていた。
「な、何が起きてるの……!?」
「桃山さん……!?」
「くそ、餓鬼どもがっ!!」
その時、後ろから股間を蹴られた男の怒声が響き渡り、直央が振り返るとそこには血走った眼で拳銃を構える男の姿が映し出される。咄嗟に直央は桃山を救うため、彼女を突き飛ばしてしまう。
「逃げてっ!!」
「えっ!?」
「死ねっ!!」
桃山の身体が魔法陣から突き飛ばされ、その直後に直央の胸元に強い衝撃が走り、彼はその場に倒れこむ。
「あれ……?」
魔法陣の中心で倒れこんだ直央は自分の胸元を抑え、尋常ではない量の血液が流れている事に気付き、徐々に意識が薄れていくことに気付く。
(嘘……だろ……)
まさかこんな形で自分が死ぬことになるとは思わず、最後に彼の視界に映し出されたのはコンビニの中に入り込む大量の警官と、泣きじゃくる桃山の姿、そして逃げ出そうとする二人の男が足元を滑らせて床に転がり込む姿だった――
高校一年生ではあるが昔から家事はよく手伝っており、母親がいない間は家の管理は彼が行っている。弟の面倒を見たり、夜遅く帰ってくる父親のために料理を用意し、自分自身も勉学に励む典型的な「いい子」だった。しかし、彼には他人と比べて目立つ特徴があり、それが原因で昔から色々とからかわれていたこともある。
その特徴というのが顔立ちが母親に似すぎて中性的で体型も華奢なので女性と間違われる事が多く、特に子供の頃は初対面の人間には女子と勘違いされ、男子から告白されたこともある。この時点では笑い話として流せるかもしれないが、問題なのは容姿が男性と掛け離れすぎて未だに女性と勘違いされてしまう。
学校で体育の授業で着替える際に男子の視線を集め、放課後を迎えると男子だと知っているのに男性から告白され、女子からは優れた容姿のせいで妬まれてしまう。声変わりを迎えてもハスキーボイスとして認識して彼を女性と勘違いする人間も多い。
それでも当の本人は周囲が何を言おうと自分は男であり、他の人間の第一印象など全く気にしていなかった。だが、そんな彼が初めて自分の容姿に気を配るべきだったと後悔する日が訪れた。
「えっと……」
「ううっ……ひっくっ……」
「うるせえっ!!泣くんじゃねえっ!!お前らも近づくな!!この女達がどうなってもいいのか!?」
「一歩でも動いたら撃ち殺すぞ!!」
――現在の直央は下校の最中、弟が好きなお菓子を買うためにコンビニに寄った。しかし、そこで偶然にも同級生の「桃山 桃」という女子と遭遇し、彼女と雑談を行っているときに唐突にサングラスとマスクで顔を覆い隠した2人の男がコンビニに入り込む。
男は拳銃を握りしめて店員から金を奪い、そのまま立ち去ろうとしたが運悪く巡回中のパトカーが店の異変に気付き、コンビニの前を警官が立ち塞がる。それを確認した男達は女性で非力そうな二人の高校生を捕まえ、両手で2人を抱えながら警官を威嚇するように拳銃を人質に向ける。
(まさかこんな状況でも女子と間違えられるとは……くそう、うちの高校が私服だった事が災いしたか)
男物の学生服を着こんでいたら勘違いされる事もなかったのかもしれないが、よりにもよって今日の直央は母親が編んでくれたセーターを着こんでおり、首元もマフラーで覆い隠しているので喉仏も確認できない。コンビニ強盗は直央を女子だと勘違いして同級生の桃山と共に二人で人質を取り、コンビニに立てこもる。助けを求めようにもコンビニに居るのは気弱そうな女性店員が一人だけで他の人間の姿は見えない。
『君たちはもう包囲されている!!人質を解放して出てこい!!』
「畜生っ!!近付くじゃねえっ!!この女がどうなってもいいのか!?」
「いててっ……!?」
拳銃の銃口を頭に押し付けられ、直央は怒りの表情を浮かべるが強盗の目には女子が睨みつけたようにしか捉えられず、彼が男性である事に気づかない。
「あ、兄貴……このままじゃ不味いですよ。やっぱり、自首するしか……」
「弱気になってんじゃない!!こいつらを人質にして逃げるんだ……その女を黙らせろ!!」
「ひうっ!?」
「か、可哀そうだよ兄貴!!」
泣きじゃくる桃山に苛立ちを抱いたように直央を抑えつける男が怒鳴りつけると、もう一人の気弱そうな男性が自分が人質にしているにも関わらずに彼女を庇う。それを見た直央はこちらの男は説得すれば自首する可能性があるのではないかと考え、自分を抑えている男をどうにかすれば何とかなるのではないかと考える。
(確かポケットの方に……)
人質にはされているが直央も桃山も身体を縛り付けられてはおらず、直央は自分のズボンに入れたままのボールペンがあることを思い出す。買い物に出かけるときによく利用しており、彼はどうにか男に抱き着かれながらもボールペンに手を伸ばし、ポケットから引き抜いて容赦なく男の太腿に突き刺す。
「うぎゃあっ!?」
「兄貴!?」
「このっ!!」
容赦なくボールペンの先を突きさされた男は悲鳴を上げ、直央は拘束する力が弱まった隙に振り払い、男の顔面に向けて右肘を叩きこむ。
「ふんっ!!」
「ぐふっ!?」
昔から女子と間違えられたため、少しでも男らしくなるために様々な武道を並んだ。結局、どれも長続きはしなかったが、素人と比べれば武術の心得はある。ちなみに長続きしなかった理由はどれだけ鍛えても筋肉が身に付かず、弟が生まれた時から面倒を任されるようになったので辞めてしまった。
相手の男は直央と比べれば体格も大きいが、不意を突いて鍛えられない人体の急所を狙い、直央は男性の最大の弱点である股間に容赦なく蹴りこむ。
「ふんぬっ!!」
「うぎゃあっ!?」
「あ、兄貴!?」
「えっ……!?」
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「このっ!!」
「うあっ!?」
「わああっ!?」
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「ていっ!!」
「げふっ!?」
男の顎に直央の頭が叩きつけられ、人体で最も重く硬い箇所で攻撃された男は後ろに倒れこみ、直央は頭を抑えながらも桃山の手を掴んで出入口に走り出す。
「逃げよう!!」
「う、うん!!」
不意を突いて男二人を倒す事に成功したが、ここで調子に乗らずに直央は桃山を連れて出入口に向かう。既に店員も店の奥に逃げ出したのか姿は見えず、二人は出入口に向かった瞬間、唐突に二人の足元が光り輝く。
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
床が唐突に発光した事で立ち止まってしまい、何が起きたのか理解できずに直央は視線を向ける。警察官が閃光弾でも投げ込んだのかと思ったが、床には「魔法陣」のような紋様が広がっており、桃山の身体が光に包み込まれようとしていた。
「な、何が起きてるの……!?」
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「くそ、餓鬼どもがっ!!」
その時、後ろから股間を蹴られた男の怒声が響き渡り、直央が振り返るとそこには血走った眼で拳銃を構える男の姿が映し出される。咄嗟に直央は桃山を救うため、彼女を突き飛ばしてしまう。
「逃げてっ!!」
「えっ!?」
「死ねっ!!」
桃山の身体が魔法陣から突き飛ばされ、その直後に直央の胸元に強い衝撃が走り、彼はその場に倒れこむ。
「あれ……?」
魔法陣の中心で倒れこんだ直央は自分の胸元を抑え、尋常ではない量の血液が流れている事に気付き、徐々に意識が薄れていくことに気付く。
(嘘……だろ……)
まさかこんな形で自分が死ぬことになるとは思わず、最後に彼の視界に映し出されたのはコンビニの中に入り込む大量の警官と、泣きじゃくる桃山の姿、そして逃げ出そうとする二人の男が足元を滑らせて床に転がり込む姿だった――
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