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剣鬼 闘技祭準備編
ハヅキ家の目的
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「王国の王女がどうしてここに居るのよ?」
「む?そこのお前、何処かで見覚えが……思い出した!!もしかしてギラン殿の娘ではないのか!?」
「……父を知っているの?」
ナオがシズネの顔を見て大声を上げ、ギランの名前が出てきたことにシズネも驚くが、ナオは嬉しそうな表情を浮かべながら彼女に近づく。
「いや、本当に久しぶりだな。私の事は覚えていないのか?昔、王都でパーティが開かれた時に妹と共に遊んでいた仲じゃないか!!」
「……覚えていないわ」
「ええっ……」
「冗談よ。言われてみれば確かにその顔には見覚えがあるわね」
「お、驚かせるな!!全く……無事だったんだな」
意外な事にシズネとナオは顔見知りだったらしく、まだシズネの父親が健在の頃、つまりはシズネがウォール家に追われる前の頃に二人は顔を合わせていた。だが、シズネが父親の死を切っ掛けに母親から追い出されて以来は顔を合わせておらず、ナオも何度か彼女の消息を追ったそうだが見つける事が出来なかったという。
「それにしてもどうしてお前がレナの家に……いや、というか前に来た時よりも人数が増えていないか?」
「あ、あの……王女様、でいいんでしょうか?ど、どうしてこの家に?」
「ああ、そうだった!!こんな事を話している場合じゃなかった……レナ、急いで氷雨のギルドに向かうぞ!!ここに居るのは不味い!!」
「え、ギルドに?」
ミナの言葉に用事を思い出したとばかりにナオはレナの腕を掴み、力尽くで引き寄せようとするが、それをシズネが引き留める。
「落ち着きなさいよ。まずは何があったのか私達にも話しなさい」
「駄目だ!!まずはレナを安全な場所に避難させないと……」
「仕方ないわね。それなら私達も一緒に行くわよ、それなら文句ないでしょう?」
「……仕方ないな。だが、すぐに準備してくれ。話す時間も惜しいんだ」
シズネの言葉に少しは冷静さを取り戻したのかナオは頷き、レナ達は氷雨のギルドに向けて移動を開始する。無論、家を出る前に壺の中で眠っていたコトミンとヒトミンも呼び起こし、全員がナオの後に続く。ちなみにレナは姿が見られないようにフードで全身を覆い隠し、ナオも自分の格好が目立つ事に気付いたのか同じようにフードを纏う。
「よし……こっちの道を行くぞ。くれぐれも怪しまれないように気を付けろ」
「その前にいい加減に理由ぐらい説明しなさい。どうしてハヅキ家とやらがレナの存在に気付いたのよ」
「話すと長くなるからまずは落ち着ける場所に移動する」
移動の最中にシズネがナオを問い質すが、彼女は答えずにレナを先に安全な場所に避難させる事に集中し、周囲の警戒を怠らない。このような時に感知能力に優れたハンゾウが居れば心強いが、既に彼女は先にギルドに戻っている。
「よし……ここまで来れば大丈夫だろう」
「え?ここって……」
「何処かで見覚えがある気がする」
ギルドに向かうと言いながらナオが辿り着いたのはレナが最初にこの都市に訪れた時に賞金首のミラに襲われた広場であり、彼女は周囲の様子を警戒しながら水晶札を取り出す。マリアが開発した魔道具であり、表面には転移魔法の術式が刻まれている。こちらを使用すれば誰でも転移魔法を発動する事が可能であり、ナオは全員を一か所に呼び集めて水晶札を掲げた。
「解放術式!!」
「おおっ、なんか久しぶりだよなこれ」
「深淵の森で使って以来かな」
「相変わらず不思議な道具だな」
「あ、これマリアさんの……」
「な、何が起きてるの?」
「怯えなくていい」
「怯えてないわよっ!!」
ナオの言葉に反応するように転移魔法陣が地面に展開し、レナ達を取り囲む。最も範囲はそれほど広くはないのでナオは魔法陣から他の人間が離れないように注意を施す。
「全員、離れないように気を付けろ。魔法陣の外に身を乗り出していたら危険だからな」
「大丈夫よ」
「問題ない」
「クゥンッ……」
「ウルはちょっと大きすぎるから入れないかも知れないな……仕方ない、悪いけどウルは普通にギルドに移動してくれる?」
「ウォンッ」
魔法陣内に存在すればどれほどの人数でも移動する事が出来るが、身体が大きいウルが入り込めず、残念ながら彼だけは自力でギルドに向かうしかない。白狼種の移動速度ならばギルドの建物まで即座に駆け付けられるので心配はないと思うが、ゴンゾウが全員から離れる。
「レナ、俺も大きいから魔法陣からはみ出すかもしれない。ウルと一緒に徒歩で向かう」
「あ、いいの?良かったねウル、一人じゃないぞ」
「クゥ~ンッ」
「おっと……ははは、くすぐったいぞ」
一緒に残ってくれるという言葉にウルはゴンゾウの顔を舐めやり、彼は困った表情を浮かべながらもウルの頭を撫でる。そして他の人間は転移魔法を使用して先にギルドに向かう事が決まり、ナオが水晶札を構えながら魔法名を告げた。
「星形魔法陣!!」
ナオの言葉が良い終った瞬間、地面に展開していた魔法陣が光り輝き、レナ達の身体を光が包み込む――
「む?そこのお前、何処かで見覚えが……思い出した!!もしかしてギラン殿の娘ではないのか!?」
「……父を知っているの?」
ナオがシズネの顔を見て大声を上げ、ギランの名前が出てきたことにシズネも驚くが、ナオは嬉しそうな表情を浮かべながら彼女に近づく。
「いや、本当に久しぶりだな。私の事は覚えていないのか?昔、王都でパーティが開かれた時に妹と共に遊んでいた仲じゃないか!!」
「……覚えていないわ」
「ええっ……」
「冗談よ。言われてみれば確かにその顔には見覚えがあるわね」
「お、驚かせるな!!全く……無事だったんだな」
意外な事にシズネとナオは顔見知りだったらしく、まだシズネの父親が健在の頃、つまりはシズネがウォール家に追われる前の頃に二人は顔を合わせていた。だが、シズネが父親の死を切っ掛けに母親から追い出されて以来は顔を合わせておらず、ナオも何度か彼女の消息を追ったそうだが見つける事が出来なかったという。
「それにしてもどうしてお前がレナの家に……いや、というか前に来た時よりも人数が増えていないか?」
「あ、あの……王女様、でいいんでしょうか?ど、どうしてこの家に?」
「ああ、そうだった!!こんな事を話している場合じゃなかった……レナ、急いで氷雨のギルドに向かうぞ!!ここに居るのは不味い!!」
「え、ギルドに?」
ミナの言葉に用事を思い出したとばかりにナオはレナの腕を掴み、力尽くで引き寄せようとするが、それをシズネが引き留める。
「落ち着きなさいよ。まずは何があったのか私達にも話しなさい」
「駄目だ!!まずはレナを安全な場所に避難させないと……」
「仕方ないわね。それなら私達も一緒に行くわよ、それなら文句ないでしょう?」
「……仕方ないな。だが、すぐに準備してくれ。話す時間も惜しいんだ」
シズネの言葉に少しは冷静さを取り戻したのかナオは頷き、レナ達は氷雨のギルドに向けて移動を開始する。無論、家を出る前に壺の中で眠っていたコトミンとヒトミンも呼び起こし、全員がナオの後に続く。ちなみにレナは姿が見られないようにフードで全身を覆い隠し、ナオも自分の格好が目立つ事に気付いたのか同じようにフードを纏う。
「よし……こっちの道を行くぞ。くれぐれも怪しまれないように気を付けろ」
「その前にいい加減に理由ぐらい説明しなさい。どうしてハヅキ家とやらがレナの存在に気付いたのよ」
「話すと長くなるからまずは落ち着ける場所に移動する」
移動の最中にシズネがナオを問い質すが、彼女は答えずにレナを先に安全な場所に避難させる事に集中し、周囲の警戒を怠らない。このような時に感知能力に優れたハンゾウが居れば心強いが、既に彼女は先にギルドに戻っている。
「よし……ここまで来れば大丈夫だろう」
「え?ここって……」
「何処かで見覚えがある気がする」
ギルドに向かうと言いながらナオが辿り着いたのはレナが最初にこの都市に訪れた時に賞金首のミラに襲われた広場であり、彼女は周囲の様子を警戒しながら水晶札を取り出す。マリアが開発した魔道具であり、表面には転移魔法の術式が刻まれている。こちらを使用すれば誰でも転移魔法を発動する事が可能であり、ナオは全員を一か所に呼び集めて水晶札を掲げた。
「解放術式!!」
「おおっ、なんか久しぶりだよなこれ」
「深淵の森で使って以来かな」
「相変わらず不思議な道具だな」
「あ、これマリアさんの……」
「な、何が起きてるの?」
「怯えなくていい」
「怯えてないわよっ!!」
ナオの言葉に反応するように転移魔法陣が地面に展開し、レナ達を取り囲む。最も範囲はそれほど広くはないのでナオは魔法陣から他の人間が離れないように注意を施す。
「全員、離れないように気を付けろ。魔法陣の外に身を乗り出していたら危険だからな」
「大丈夫よ」
「問題ない」
「クゥンッ……」
「ウルはちょっと大きすぎるから入れないかも知れないな……仕方ない、悪いけどウルは普通にギルドに移動してくれる?」
「ウォンッ」
魔法陣内に存在すればどれほどの人数でも移動する事が出来るが、身体が大きいウルが入り込めず、残念ながら彼だけは自力でギルドに向かうしかない。白狼種の移動速度ならばギルドの建物まで即座に駆け付けられるので心配はないと思うが、ゴンゾウが全員から離れる。
「レナ、俺も大きいから魔法陣からはみ出すかもしれない。ウルと一緒に徒歩で向かう」
「あ、いいの?良かったねウル、一人じゃないぞ」
「クゥ~ンッ」
「おっと……ははは、くすぐったいぞ」
一緒に残ってくれるという言葉にウルはゴンゾウの顔を舐めやり、彼は困った表情を浮かべながらもウルの頭を撫でる。そして他の人間は転移魔法を使用して先にギルドに向かう事が決まり、ナオが水晶札を構えながら魔法名を告げた。
「星形魔法陣!!」
ナオの言葉が良い終った瞬間、地面に展開していた魔法陣が光り輝き、レナ達の身体を光が包み込む――
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