不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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闘技祭 決戦編

タザン

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「なんか凄くキャラの濃い人が出てきたな……皆は知ってる?」
「私は名前ぐらいしか聞いた事がないわね」
「俺もだ」
「僕は名前すら聞いたことないよ」


タザンに関してはレナ以外の3人もよく知らないらしく、獣人族の間では有名な人物らしいが、わざわざ身体を鍛えるために鉄球付きの枷を身に付けている時点で変人である事は間違いない。しかし、格闘家としては一流なのかその筋肉は見事な物であり、体毛が濃いという点を除けば筋肉好きの方にはたまらない肉体だろう。


「あの恰好を見る限り、明らかに格闘家の職業ね。それに猿型の獣人族というのも珍しいわね」
「猿と言うかゴリラだと思うけど」


この世界にゴリラが存在するのかは不明だが、タザンの動向を見る限りではゴリラが擬人化したようにしか見えず、パフォーマンスが派手と言う理由でレナはプロレスラーを見ている気分に陥る。しかし、その一方でレナは会話に夢中で紹介を聞き逃した選手が一人存在する事に気付き、最後の選手に視線を向けた。


「そう言えばあと一人は誰なの?」
「ほら、あそこにいる奴だよ」
「あの顔は……特に見た事がないわね」


4人目の選手に関しては傭兵と思われる中年男性であり、同じく傭兵であるシズネが顔を知らない時点で有名な人物ではない可能性が高い。それでも試合に出場できる時点で相当な実力者のはずだが、男性は疲れた表情を浮かべながら既に西側の黒柱に待機していた。


「なんか冴えないおっさんにしか見えないな……本当に戦えるのかあれ?」
「ダイン、見た目で人を判断してはいけない」
「でも、確かに覇気が感じられないわね。というより、やる気があるように見えないわね」
「試合前に何かあったのかな?」


名簿を確認する限り、男性の名前は「ダン」という傭兵だと判明する。名簿には名前しか記されていないので選手の詳細情報までは分からないが、レナは何故か男性を見て違和感を感じる。


「あの人……」
『それでは試合を始めます!!最終試合……開始ぃっ!!』


レナが男性に感じた違和感を他の人間に話す前にラビットの試合開始の合図が行われた。最初に動いたのはタザンであり、両手に取り付けた鉄球を振り回しながら駆け抜ける。


「うほおおおおっ!!」


試合場の中央に移動するとタザンは上空に跳躍し、勢いよく鉄球を地面に叩きつける。一体何十キロ存在するのか鉄球が地面に衝突した瞬間に軽い振動が走り、土煙を舞い上げる。他の三人は土煙に隠れたタザンに警戒したように身構えると、煙の中から鉄球が飛び出してきた。


「ぬうっ!?」
「うおおおおっ!!」


最初にタザンが狙ったのはジイらしく、鎖付きの鉄球が迫る。ジイは接近する鉄球に対して鉄槌で受け止めるが、そのあまりの衝撃に身体が仰け反ってしまう。その隙を逃さぬとばかりにタザン本人が姿を現し、もう片方の鉄球を今度は頭上から振り下ろす。


「うほぉっ!!」
「うおおっ!?」


咄嗟にジイはその場を転がって鉄球を回避したが、上空から接近してきた鉄球は地面に衝突した瞬間に地割れを作り上げる。その馬鹿げた威力にジイは冷や汗を流し、身体を起き上げると逃げ出す。


「こりゃいかん……一時撤退じゃ!!」
「逃さんぞぉっ!!」


逃走を開始したジイに対してタザンは両手の鉄球を振り回し、追撃を加えようとした。しかし、そんな彼の背後から接近する影が存在した。


「っ……!!」
「うほっ!?」


タザンがジイに集中している間に背後から接近していたダンが腰に装着していた斧を振り翳し、背中から斬りかかる。しかし、タザンは咄嗟に両手の鎖の鎧を利用して刃を受け止め、金属音が試合場に鳴り響く。


「ぐぬぬっ……ふんっ!!」


鎖と斧という変わった武器で鍔迫り合いが続くが、タザンは両腕の力瘤を肥大化させ、力尽くで斧の刃を弾き返す。手持ちの武器を弾かれた傭兵は地面に尻餅をついてしまい、その隙を逃さずにタザンは蹴りつけた。


「ぬぅんっ!!」
「っ……!?」


腹部を勢いよく蹴りつけられた傭兵は十数メートル先まで吹き飛ばされ、派手に転倒しながら倒れこむ。その様子を目撃した観客は悲鳴を上げるが、攻撃を仕掛けたタザンは眉を顰める。


「うほぉっ……?」


タザンは男性を蹴りつけた右足に視線を向け、いつの間にか自分の足首に赤色のような物体が付いている事に気付き、疑問を抱く。しかし、右足に取りついた物を確認する暇もなく、前方に存在したアルミナが接近している事に気付いた。


「行くぞ筋肉だるま君!!」
「むぅっ!!正面から来るとは……気に入ったぞっ!!」


魔術師でありながら杖を背中に背負った状態で接近してきたアルミナに対し、タザンは両腕の鉄球を振り回しながら正面から迎え撃つ体勢に入る。しかし、その姿を見たアルミナは笑みを浮かべ、両手を左右に広げて驚くべき魔法を発動させた。
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