不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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放浪編

鬼の子はやはり鬼(アイラ「うふふっ……」)

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「そうだ、この鎖なら……こうすればどうだっ!?」
『ウガァッ!?』


オーガの拳を受け止めた鎖を「形状高速変化」の能力で鎖の表面を刃物のように研ぎ澄ませた瞬間、拳を食い込ませていた部分に血液が滲む。オーガは慌てて拳を引き抜いたが、その隙を逃さずにレナは右腕を伸ばして掌底を叩きこむ。


「食らえ、衝風!!」
『ガハァッ……!?』


レナが掌を押し当てた箇所に衝撃波が発生し、脇腹に強烈な一撃を受けたオーガは血反吐を吐く。風の聖痕の効果で風属性の魔法が強化されているのか通常時よりも魔法の威力が高まっており、続けてレナは久々に自分が得意とする拳の戦技を発動させる。


「弾撃!!」
『オグゥッ!?』


勢いよく地面を踏み込み、足の裏から足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕の順番に身体を回転及び加速させ、勢い良く拳を撃ち込む。貫通力に特化したレナが独自に編み出した拳技であり、鋼鉄の刃でさえも簡単に弾くはずのオーガの頑丈な皮膚に拳の跡が残る程に強烈な一撃が炸裂した。


『グ、ガァッ……』
「いい加減に……くたばれ!!」


腹部を抑えながら膝を崩したオーガに対してレナは痛めた左拳を摩りながらも後ろに下がり、今度は右拳に意識を集中させ、止めの一撃を放つ。


「撃雷!!」
『ッ――!?』


拳に重力と電撃の魔力を帯びた状態でオーガの顔面を打ち抜き、顔面が凹んだ上に全身に電撃を浴びたオーガは白目を剥いて倒れこむ。その様子を確認した囚人達は唖然とした表情を浮かべ、その一方でレナは額に汗を流して痛めた両拳を回復魔法で治療する。


「お、おい……あいつ、一体何をしたんだ?」
「嘘だろ!?オーガを素手で殺したのか!?」
「そんなバカな……レベルが50を超える格闘家でも成体のオーガには適わないと言われてるんだぞ!!」
「でも、実際に死んでるじゃねえか……何なんだあいつ、魔術師じゃないのか?」


遠目ではレナが素手のみでオーガを倒したようにしか見えなかった囚人達は騒ぎ出し、続けて二度も試験場に送り込んだ魔物を殺された事で観客席に立っていた人間達も混乱する。まさか素手でオーガを打ち倒すような存在が現れるとは思わず、これ以上の魔物の用意などしていなかった。


「お、おい!!あのガキは食料調達班のうちが引き取るからな!!」
「馬鹿を言え!!俺が先に目を付けたんだ!!だから警備班が引き取る!!」
「待て!!あれほどの逸材を見逃せるか!!あいつは調理班のうちが引き取る。いい用心棒になりそうだからな!!」
「お、落ち着け!!まだ試験は終わってないぞ!?」


観客席の囚人達は我先にとレナを引き取ろうと騒ぎ出すが、当のレナ本人は倒れたオーガの様子を調べ、頭部の角に手を伸ばす。


(よし……今の内に)


レナの錬金術師の能力は生物に対しては使用する事は出来ないが、既に命を失った死体に関して別であり、オーガの頭に生えている角の片方を物質変換の能力を利用して剥ぎ取る。他の囚人に気づかれないように回収した角を空間魔法で異空間に収めると、話し合いが纏まったのか試験の説明を行っていた囚人が前に出る。


「お、おめでとう!!見事に生き残った君達は晴れて監獄都市に住む事が許された正規の囚人となった!!いやはや……まさかここまでの人数が生き残るとは監獄都市の歴史上でも稀な結果だぞ?」
「正規の囚人?どういう意味だ!?」
「……言葉通りの意味だ。試験を見事に勝ち抜いた君達は正式に囚人として認められた。それと同時に囚人として認定された者には仕事が分け与えられる」
「仕事だと!?一体何をやらせる気だ!!」
「そうだね……食料の調達、食事の用意、監獄内の清掃、他には農作業や警備の仕事もある。ちなみにこの監獄都市では金銭の流通が認められている」
「なんだと!?ここにも金があるのか?」
「そういう事だ。外の世界でも同じようにこの監獄都市でも働けば相応の報酬も与えられるだろう」


監獄内でも金銭が流通されているという話に試験場内の囚人達は驚き、しかも対価に見合った報酬を受け取れるという話に目を輝かせる者も居た。だが、そんな彼等の希望を揉み消すように男性は言葉を付け加えた。


「但し、食事に関しては全て有料制となっている……つまり、働かざる者は食うべからず、働いてお金を稼がなければ明日生き残るための食事も手に入らない事になるがね」
「な、何だって!?」
「それじゃあ……金を稼がないと生き残れないのか!?」
「当たり前じゃないか。ここは世界最悪の監獄……それほど甘い場所じゃないんだよ。仕事に関しても種類は豊富だが、それぞれの仕事には働ける人数は限られている。ちなみに仕事中は看守の監視が入るから小さな失敗も許されないから気を付けたまえ」


普通の刑務所や監獄では死刑囚であろうと食事に関しては毎日用意されるが、監獄都市内の食事は全て有料制のため、お金を持たない人間には食事は与えられない。しかも肝心の仕事は看守の監視付きとなっており、仕事で失敗すれば看守から直々に罰則を与えられ、最悪の場合は命を奪われる。

監獄ではあるが「都市」という名前が付けられている時点で他の監獄とは囚人の支配体制が大きく異なり、囚人は一定の自由を与えられる一方で他の監獄よりも厳しい環境下で過ごす必要があり、この監獄都市が世界最悪の監獄だと言われる由縁でもあった。
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