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放浪編
退魔刀の奪還
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「うわっ!?」
「な、何だっ!?」
「砂ぁっ!?」
『…………!?』
唐突に発生した大量の砂煙は休憩所に広がり、兵士達は混乱を起こす。その間にもレナは瞼を閉じた状態で「心眼」のスキルを発動させ、目元を閉じた状態で生物の気配を感じ取って看守の元に向かう。
(よし、気づかれていない……ここだ!!)
心眼によって砂煙の中でも正確にサイクロプスの位置を把握し、背中に掲げている退魔刀に向けて手を伸ばす。だが、寸前でサイクロプスは巨大な眼を両手で覆い隠して起き上がり、方向を放つ。
『ギュロロロロッ!?』
「うわっ!?」
人語を話す事も出来ないのかサイクロプスは目元から大量の涙を流しながら暴れ狂い、机や椅子を蹴り飛ばす。傍に存在した巨人族の兵士も巻き込まれ、サイクロプスの怪力によって突き飛ばされてしまう。
「不味い!!サイクさんが……うわぁっ!?」
「ぎゃああっ!?」
「お、落ち着いて……うぎゃっ!?」
『キュロロロッ……!!』
混乱して周囲の人間も把握できないのかサイクロプスは自分を取り押さえようとする兵士を吹き飛ばし、暴れ狂う。その様子を確認したレナはどうにか隙をついて退魔刀を奪うため、砂煙が消えないうちに背後に接近して剣を奪い取ろうとした。
「このっ……大人しくしろ!!」
『ギュロォッ!?』
背中からサイクロプスに飛び掛かったレナは両手で頭を鷲掴み、至近距離から「衝風」の戦技を発動させて衝撃を与え、脳震盪を起こす。いくら相手が化け物のような外見をしていようと人間と同様に頭部は急所であり、脳震盪を起こして動きが鈍っている内にレナは退魔刀を掴み、無理やりに引き剥がす。
(よし、成功!!)
即座に退魔刀を空間魔法で異空間に戻すと、消えかけている砂煙から脱出してその場を離れる。残されたのは殴り飛ばされた巨人族の兵士と、頭を抑えた状態で跪くサイクロプスだけとなり、騒ぎを聞きつけた囚人達が何事かと集まる。
「おい、何が起きたんだ!?いったい何の騒ぎだ?」
「あれ見ろよ……兵士が倒れてるぞ」
「何だ、またサイクさんが酔っ払って喧嘩でもしたのか?」
集まった人々が休憩所の様子を見て疑問を抱き、その間にレナは人混みを掻き分けてゴンゾウとネズミの元へ戻る。二人は砂煙の中でレナが何をしたのかは分からなかったが、サイクロプスが所持していた退魔刀が消えている事から武器の奪還に成功したことを悟った。
「終わったよ。どうにか回収できた」
「おおっ!!凄いぞレナ!!」
「まさか本当に看守から武器を奪い取るとは……でも、何処に肝心の武器は隠したんですか?何も持ってませんよね?」
「それは企業秘密という事で……」
レナが大剣を所持していない事にネズミは疑問を抱くが、空間魔法の事を知られたくなかったレナは適当に誤魔化し、急いでこの場を離れる。
「これで一つ目の武器は回収出来た。後は魔法腕輪と反鏡剣を取り戻せれば十分かな……あ、ゴンちゃんの装備も取り返さないと」
「俺の事は気にしないで良い。大した物は持っていなかったからな……だが、闘拳だけは取り返しておきたいが」
「そういえばレナのお兄さんは魔法腕輪も所持していたんですよね?それはどんな代物なんですか?」
「何だその取って付けたような呼び方は……何か知ってるの?」
「まあ、あると言えばありますけど……ちなみにその魔法腕輪の特徴も教えてもらって構いませんか?」
ネズミの言葉にレナは自分が装備していた魔法腕輪の特徴を伝え、様々な貴重な魔石を取り付けている事を説明すると、ネズミは心当たりがあるのか言いにくそうに答えた。
「やっぱり……レナの兄さん、その腕輪の持ち主に関しては実は知っているかも知れません」
「今度は兄さんかい……普通にレナと呼んでいいよ」
「ではこれからは普通にレナさんと呼ばせてもらいます。それでなんですが、レナさんの魔法腕輪を所持している人物に心当たりがあります」
「例の看守長じゃないのか?」
「いえ、看守長は武器にしか興味ないので装飾品の類には興味も寄せません。多分、お二人もまだ出会っていない看守なんですが……ちょっと、僕が苦手な方なんです」
「誰?」
妙に勿体ぶった言い方をするネズミに疑問を抱きながらもレナが問いただすと、彼は軽くため息を吐きながらレナの魔法腕輪を所持していると思われる看守の事を話す。
「……この監獄都市の中で唯一の女性の看守です。名前はパール、種族は……サキュバスです」
「サキュバス?」
「淫魔の事だな」
「ええ、まあ……そういう事ですね」
サキュバスと聞いてレナはゴンゾウと顔を見合わせ、かなり前の話になるがダインに襲い掛かった淫魔の事を思い出す。この世界では吸血鬼と同一の存在に扱われており、主に男性は吸血鬼、女性はサキュバスと呼ばれている。吸血鬼は人減の血液を好むのに対し、女性のサキュバスは人間の精気を好むのが有名である。
「な、何だっ!?」
「砂ぁっ!?」
『…………!?』
唐突に発生した大量の砂煙は休憩所に広がり、兵士達は混乱を起こす。その間にもレナは瞼を閉じた状態で「心眼」のスキルを発動させ、目元を閉じた状態で生物の気配を感じ取って看守の元に向かう。
(よし、気づかれていない……ここだ!!)
心眼によって砂煙の中でも正確にサイクロプスの位置を把握し、背中に掲げている退魔刀に向けて手を伸ばす。だが、寸前でサイクロプスは巨大な眼を両手で覆い隠して起き上がり、方向を放つ。
『ギュロロロロッ!?』
「うわっ!?」
人語を話す事も出来ないのかサイクロプスは目元から大量の涙を流しながら暴れ狂い、机や椅子を蹴り飛ばす。傍に存在した巨人族の兵士も巻き込まれ、サイクロプスの怪力によって突き飛ばされてしまう。
「不味い!!サイクさんが……うわぁっ!?」
「ぎゃああっ!?」
「お、落ち着いて……うぎゃっ!?」
『キュロロロッ……!!』
混乱して周囲の人間も把握できないのかサイクロプスは自分を取り押さえようとする兵士を吹き飛ばし、暴れ狂う。その様子を確認したレナはどうにか隙をついて退魔刀を奪うため、砂煙が消えないうちに背後に接近して剣を奪い取ろうとした。
「このっ……大人しくしろ!!」
『ギュロォッ!?』
背中からサイクロプスに飛び掛かったレナは両手で頭を鷲掴み、至近距離から「衝風」の戦技を発動させて衝撃を与え、脳震盪を起こす。いくら相手が化け物のような外見をしていようと人間と同様に頭部は急所であり、脳震盪を起こして動きが鈍っている内にレナは退魔刀を掴み、無理やりに引き剥がす。
(よし、成功!!)
即座に退魔刀を空間魔法で異空間に戻すと、消えかけている砂煙から脱出してその場を離れる。残されたのは殴り飛ばされた巨人族の兵士と、頭を抑えた状態で跪くサイクロプスだけとなり、騒ぎを聞きつけた囚人達が何事かと集まる。
「おい、何が起きたんだ!?いったい何の騒ぎだ?」
「あれ見ろよ……兵士が倒れてるぞ」
「何だ、またサイクさんが酔っ払って喧嘩でもしたのか?」
集まった人々が休憩所の様子を見て疑問を抱き、その間にレナは人混みを掻き分けてゴンゾウとネズミの元へ戻る。二人は砂煙の中でレナが何をしたのかは分からなかったが、サイクロプスが所持していた退魔刀が消えている事から武器の奪還に成功したことを悟った。
「終わったよ。どうにか回収できた」
「おおっ!!凄いぞレナ!!」
「まさか本当に看守から武器を奪い取るとは……でも、何処に肝心の武器は隠したんですか?何も持ってませんよね?」
「それは企業秘密という事で……」
レナが大剣を所持していない事にネズミは疑問を抱くが、空間魔法の事を知られたくなかったレナは適当に誤魔化し、急いでこの場を離れる。
「これで一つ目の武器は回収出来た。後は魔法腕輪と反鏡剣を取り戻せれば十分かな……あ、ゴンちゃんの装備も取り返さないと」
「俺の事は気にしないで良い。大した物は持っていなかったからな……だが、闘拳だけは取り返しておきたいが」
「そういえばレナのお兄さんは魔法腕輪も所持していたんですよね?それはどんな代物なんですか?」
「何だその取って付けたような呼び方は……何か知ってるの?」
「まあ、あると言えばありますけど……ちなみにその魔法腕輪の特徴も教えてもらって構いませんか?」
ネズミの言葉にレナは自分が装備していた魔法腕輪の特徴を伝え、様々な貴重な魔石を取り付けている事を説明すると、ネズミは心当たりがあるのか言いにくそうに答えた。
「やっぱり……レナの兄さん、その腕輪の持ち主に関しては実は知っているかも知れません」
「今度は兄さんかい……普通にレナと呼んでいいよ」
「ではこれからは普通にレナさんと呼ばせてもらいます。それでなんですが、レナさんの魔法腕輪を所持している人物に心当たりがあります」
「例の看守長じゃないのか?」
「いえ、看守長は武器にしか興味ないので装飾品の類には興味も寄せません。多分、お二人もまだ出会っていない看守なんですが……ちょっと、僕が苦手な方なんです」
「誰?」
妙に勿体ぶった言い方をするネズミに疑問を抱きながらもレナが問いただすと、彼は軽くため息を吐きながらレナの魔法腕輪を所持していると思われる看守の事を話す。
「……この監獄都市の中で唯一の女性の看守です。名前はパール、種族は……サキュバスです」
「サキュバス?」
「淫魔の事だな」
「ええ、まあ……そういう事ですね」
サキュバスと聞いてレナはゴンゾウと顔を見合わせ、かなり前の話になるがダインに襲い掛かった淫魔の事を思い出す。この世界では吸血鬼と同一の存在に扱われており、主に男性は吸血鬼、女性はサキュバスと呼ばれている。吸血鬼は人減の血液を好むのに対し、女性のサキュバスは人間の精気を好むのが有名である。
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