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放浪編
最後の奪取
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(見つけた。やっぱりあいつが持っていたか……)
木陰に身を隠しながらレナはハイ・ゴブリンの傍で控えている兵士の一人に視線を向け、早朝に試験場の建物で見かけた兵士だと確信する。兵士の腰にはレナの反鏡剣が差されており、奪われた最後の武器を発見した。ネズミの話を聞いた時から兵士が試験場に在中している兵士ではない事は予想できたが、よりにもよって看守の直属の配下だったらしい。
ハイ・ゴブリンの傍に控える兵士は顔色を悪くしながら手配書を握り締め、仕切りに周囲の警戒を行う。どうやら自分の武器を奪った相手がレナだと知って報復に現れるのはでないかと不安を抱いているらしく、それに気づいたハイ・ゴブリンが話しかける。
「どうした?先ほどから妙に落ち着きがないな」
「あ、いや……」
「たかが一人の囚人相手に怯え過ぎた。全く、看守長もパールも大げさに騒ぎ過ぎだ……」
兵士の動揺する理由を知らないハイ・ゴブリンは呆れた表情を浮かべ、たった一人の囚人が逃げ出しただけで警備体制を最大限にまで高める現状に違和感を抱く。いくら監獄都市の人間が外に抜け出そうとしたところで逃げ切れるはずがなく、このように警備体制を厳重にしなくともいずれは見つかるとハイ・ゴブリンは考えていた。
だが、その捜索対象のレナは既にハイ・ゴブリンの傍に存在し、武器を奪い返す算段を立てていた。今回は複雑すぎる作戦を立てずに実力行使で奪う事に集中し、レナは一気に駆け抜ける。
「う、うわぁあああっ!!」
「何だっ!?」
「おい、どうした!?」
敢えて注目を浴びるように大声を上げながら走り出してきたレナに対して兵士とハイ・ゴブリンは驚いた表情を浮かべ、それを見たレナは後ろを振り返るふりをしながら顔を隠す。あくまでも何者かに追われているように演技を行い、兵士と看守から怪しまれないように近寄りながら右手に魔力を集中させる。
「おい、何があった!?一体何を見た!?」
「あ、あいつが……あいつが追いかけてくる!!」
「手配書の男か!?」
十分に接近するとレナは息を荒げながら顔を伏せ、左手で自分の後方を指差す。そのレナの行動に全員が一瞬だけ視線を集中させるが、指差す方向には誰も居ない。
「何だ?別に誰も……」
「ええ、そうですね!!」
「ぬおっ!?」
「何をっ!?」
訝し気な表情を浮かべた反鏡剣を装備している兵士に対してレナは左手で腕を掴み、顔を見せつける。その行動に周囲の兵士は驚くが、レナの顔をよく見た兵士は顔色を青ざめさせ、声を震わせる。
「お、お前は!?」
「それは、俺の物だ!!」
「うぎゃあっ!?」
髪の毛の色が変色していた事、囚人服を身に着けていた事から兵士はレナの存在に気づかなかったのが運の尽きであり、容赦なく腹部を蹴りつけられるのと同時に反鏡剣を奪われる。その姿を見たハイ・ゴブリンはいち早くレナの存在に気づき、兵士達に命令を下す。
「その男が手配書の奴だ!!捕まえろ!!」
「もう、遅い!!」
左手で反鏡剣を握り締めながらレナは右手を兵士達に向けると、事前に蓄積させていた闇属性の魔力と風の聖痕を組み合わせた魔法を放つ。
「暗闇注意!!」
「うおおおっ!?」
『うわぁああっ!?』
レナはダインから教わった闇属性の初級魔法の「闇夜」を発動させ、更に風の聖痕の力で強化した「風圧」を組み合わせて魔法の黒霧を生み出して煙幕のように拡散させる。校庭全体に漆黒の闇が広がり、視界を封じられた兵士とハイ・ゴブリンは混乱した声を上げる。
闇に支配された空間ではレナ自身も視界を封じられるのではないかと思われるが、この世界の魔法の法則として自分自身の魔法は肉体には及ばないという法則が存在し、レナの視界は暗闇でも十分に周囲の状況を確認する事が出来た。兵士と看守が混乱を起こしている間に反鏡剣を腰に差して逃走しようとすると、久しぶりに視界に画面が表示された。
『技術スキル:闇風』
「おおっ、なんか久しぶりだな……うわっ!?」
「ガウッ!!」
久々に新しいスキルを習得した事にレナは声を上げてしまい、その声に反応したのか暗闇の中を一匹の狼が疾走してレナに牙を向けてきた。背中には隻腕のゴブリンを乗せており、音を頼りに攻撃を仕掛ける。
「ガアアッ!!」
「うわっと!?危ないな……」
「ギイッ……!?」
ガルムと呼ばれる狼はレナに噛みつこうとしたが、寸前で避けられてしまい、その際に背中に乗っていたゴブリンがレナの声を聞いて何かに気づいたように硬直し、ガルムの背中から落ちてしまう。それに気づいたガルムは慌てて立ち止まり、鼻を引くつかせてゴブリンの位置を探る。
「ガウッ……!?」
「ギイイッ……」
「……?」
ゴブリンとガルムのやり取りにレナは不思議に思いながらも魔法の効果が終える前に逃げ出すため、校庭を駆け出す。しかし、そんなレナの頭上から無数の影が接近していた。
木陰に身を隠しながらレナはハイ・ゴブリンの傍で控えている兵士の一人に視線を向け、早朝に試験場の建物で見かけた兵士だと確信する。兵士の腰にはレナの反鏡剣が差されており、奪われた最後の武器を発見した。ネズミの話を聞いた時から兵士が試験場に在中している兵士ではない事は予想できたが、よりにもよって看守の直属の配下だったらしい。
ハイ・ゴブリンの傍に控える兵士は顔色を悪くしながら手配書を握り締め、仕切りに周囲の警戒を行う。どうやら自分の武器を奪った相手がレナだと知って報復に現れるのはでないかと不安を抱いているらしく、それに気づいたハイ・ゴブリンが話しかける。
「どうした?先ほどから妙に落ち着きがないな」
「あ、いや……」
「たかが一人の囚人相手に怯え過ぎた。全く、看守長もパールも大げさに騒ぎ過ぎだ……」
兵士の動揺する理由を知らないハイ・ゴブリンは呆れた表情を浮かべ、たった一人の囚人が逃げ出しただけで警備体制を最大限にまで高める現状に違和感を抱く。いくら監獄都市の人間が外に抜け出そうとしたところで逃げ切れるはずがなく、このように警備体制を厳重にしなくともいずれは見つかるとハイ・ゴブリンは考えていた。
だが、その捜索対象のレナは既にハイ・ゴブリンの傍に存在し、武器を奪い返す算段を立てていた。今回は複雑すぎる作戦を立てずに実力行使で奪う事に集中し、レナは一気に駆け抜ける。
「う、うわぁあああっ!!」
「何だっ!?」
「おい、どうした!?」
敢えて注目を浴びるように大声を上げながら走り出してきたレナに対して兵士とハイ・ゴブリンは驚いた表情を浮かべ、それを見たレナは後ろを振り返るふりをしながら顔を隠す。あくまでも何者かに追われているように演技を行い、兵士と看守から怪しまれないように近寄りながら右手に魔力を集中させる。
「おい、何があった!?一体何を見た!?」
「あ、あいつが……あいつが追いかけてくる!!」
「手配書の男か!?」
十分に接近するとレナは息を荒げながら顔を伏せ、左手で自分の後方を指差す。そのレナの行動に全員が一瞬だけ視線を集中させるが、指差す方向には誰も居ない。
「何だ?別に誰も……」
「ええ、そうですね!!」
「ぬおっ!?」
「何をっ!?」
訝し気な表情を浮かべた反鏡剣を装備している兵士に対してレナは左手で腕を掴み、顔を見せつける。その行動に周囲の兵士は驚くが、レナの顔をよく見た兵士は顔色を青ざめさせ、声を震わせる。
「お、お前は!?」
「それは、俺の物だ!!」
「うぎゃあっ!?」
髪の毛の色が変色していた事、囚人服を身に着けていた事から兵士はレナの存在に気づかなかったのが運の尽きであり、容赦なく腹部を蹴りつけられるのと同時に反鏡剣を奪われる。その姿を見たハイ・ゴブリンはいち早くレナの存在に気づき、兵士達に命令を下す。
「その男が手配書の奴だ!!捕まえろ!!」
「もう、遅い!!」
左手で反鏡剣を握り締めながらレナは右手を兵士達に向けると、事前に蓄積させていた闇属性の魔力と風の聖痕を組み合わせた魔法を放つ。
「暗闇注意!!」
「うおおおっ!?」
『うわぁああっ!?』
レナはダインから教わった闇属性の初級魔法の「闇夜」を発動させ、更に風の聖痕の力で強化した「風圧」を組み合わせて魔法の黒霧を生み出して煙幕のように拡散させる。校庭全体に漆黒の闇が広がり、視界を封じられた兵士とハイ・ゴブリンは混乱した声を上げる。
闇に支配された空間ではレナ自身も視界を封じられるのではないかと思われるが、この世界の魔法の法則として自分自身の魔法は肉体には及ばないという法則が存在し、レナの視界は暗闇でも十分に周囲の状況を確認する事が出来た。兵士と看守が混乱を起こしている間に反鏡剣を腰に差して逃走しようとすると、久しぶりに視界に画面が表示された。
『技術スキル:闇風』
「おおっ、なんか久しぶりだな……うわっ!?」
「ガウッ!!」
久々に新しいスキルを習得した事にレナは声を上げてしまい、その声に反応したのか暗闇の中を一匹の狼が疾走してレナに牙を向けてきた。背中には隻腕のゴブリンを乗せており、音を頼りに攻撃を仕掛ける。
「ガアアッ!!」
「うわっと!?危ないな……」
「ギイッ……!?」
ガルムと呼ばれる狼はレナに噛みつこうとしたが、寸前で避けられてしまい、その際に背中に乗っていたゴブリンがレナの声を聞いて何かに気づいたように硬直し、ガルムの背中から落ちてしまう。それに気づいたガルムは慌てて立ち止まり、鼻を引くつかせてゴブリンの位置を探る。
「ガウッ……!?」
「ギイイッ……」
「……?」
ゴブリンとガルムのやり取りにレナは不思議に思いながらも魔法の効果が終える前に逃げ出すため、校庭を駆け出す。しかし、そんなレナの頭上から無数の影が接近していた。
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