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放浪編
粘土の騎士
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「何だこいつ……!?」
『ッ……!!』
「レナ、危ない!!シャドウ・スリップ!!」
退魔刀を受け止めた甲冑の石像は右手に握りしめていた戦斧をレナに向けて振りかざすが、咄嗟にダインは背中に抱えていた杖を地面に突き刺して自分の影を鞭の様に変化させて石像の足元を振り払う。石像が転んだ隙にレナは離れると、闘拳を装着したゴンゾウが倒れた石像に向けて拳を振り下ろす。
「ぬんっ!!」
『ッ……!?』
上から振り落とされたゴンゾウの拳に対して石像は巨体からは想像できない俊敏な動作で跳躍し、攻撃を回避するのと同時に距離を取る。その獣人族顔負けの身軽さにゴンゾウは驚くが、即座にコトミンが水筒を片手に水の精霊魔法を放つ。
「二人とも、退いて!!」
「うわっ!?」
「うおっ!?」
コトミンが掌に収めた水を投げ放つと、水の塊は空中で拡散せずにレナとゴンゾウの間を通り過ぎて石像の元へ向かう。石像の正体が深淵の森の戦人形と同じ類の相手ならば水が弱点のはずであり、迫りくる「水の弾丸」に対して石像はまともに受ける。
『?』
「き、効かない!?」
「ゴーレムじゃないのか!?」
しかし、ゴーレムの類ならば水分を吸収すると肉体が変色するはずなのだが、石像には何も異変は生じず、不思議そうに自分の身体を眺める。考える素振りを行う事から意思を持った存在だとは分かるが、全てのゴーレムの共通の弱点である「水」が効かないあたり、ゴーレムとは異なる存在の可能性が出てきた。
レナは先ほどの戦闘で大盾を攻撃した時の違和感を思い出し、試しにもう一度攻撃を仕掛けるために動く。石像が再び近寄ってきたレナに対して戦斧を振り下ろすが、正面から振り落とされた斧を回避しながらレナは退魔刀を振り払う。
「このっ!!」
『ッ……!!』
「また受けた!?」
斧を回避して繰り出したレナの大剣が石像の大盾に衝突するが、最初の時のように石像は強烈な衝撃を受け止める。その際にレナは大剣の刃が大盾に飲み込まれている事に気付き、慌てて刃を引き抜く。
「こいつ……もしかして粘土か!?」
「粘土……?」
『…………』
石像の大盾は退魔刀の一撃を受け止めた事で大きく凹んだが、すぐに形を変形させて元に戻る。まるでレナの「形状高速変化」のように石像は自分の甲冑や武具と防具を変形する事が出来るらしく、攻撃を受ける際に粘土のように柔らかくなって衝撃を吸収している事が発覚した。
攻撃の際には硬度を硬質化させ、防御の際には硬度を軟質化させる事で衝撃を吸収する能力を持つらしく、再生能力と錯覚する程に肉体を変化させる石像にレナは冷や汗をかく。これではどれほど攻撃しても致命傷は与えられず、どんな攻撃も吸収されては打つ手がない。
「物理攻撃では相性が悪いのか……ダイン!!影魔法でこいつを拘束出来ないの!?」
「やろうと思えば出来るけど、今の僕の魔力だとそんなに長くは止められないぞ!?」
「ならやって!!」
「わ、分かったよ……シャドウ・バインド!!」
レナの言葉にダインは覚悟を決めたように影魔法で石像の肉体を拘束する。実態を持たない影を防ぐ事は出来ないのか石像は自分の肉体に纏わりつく影に抵抗できず、動作が停止する。その間にレナは石像を仕留める方法を探し、一か八かの賭けになるが退魔刀に水属性の魔力を送り込む。
「よし、そのまま抑えてて……!!コトミン、もう一度こいつに水を浴びせろ!!」
「了解」
コトミンは水筒の水を全て取り出すと石像に向けて先ほどの「水弾」を放ち、全身に水分を染み渡らせる。だが、やはり普通のゴーレムと違って肉体の硬度が変化する様子はなく、石像は影を振り払おうともがく。ダインの影魔法が解除される前にレナは退魔刀に刻まれた紋様に魔力を流し込み、水属性の魔力を纏わせて石像に切りつける。
「食らえ!!」
『技術スキル「氷結剣」を習得しました』
視界に新たな戦技を覚えた画面が表示されるが、気にせずにレナは退魔刀を石像に叩きつけると、刃の纏う冷気の魔力の影響を受けて石像の肉体が凍り付く。
『ッ……!?』
「そのまま凍れ!!」
事前にコトミンが水分を滲ませていた事で石像の肉体が加速度的に凍り付き、やがて全身が氷結化するとレナは退魔刀を力尽くで引き抜く。その直後にダインの影魔法が解除され、残されたのは全身が凍り付いた石像を見て全員が倒したのか不安を抱くが、石像が動く様子はなかった。
「ふうっ……倒した、のかな?」
「いや、凍り付かせて動けなくなっただけだと思う……氷が解ける前にここから離れよう」
「そ、そうだな……なら、僕が隠れ家に案内するよ。こっちにあるから皆付いて来いよ」
「隠れ家?」
ダインの言葉に不思議に思ったレナ達は後に続くと、東門からそれほど離れていない建築物の中にダインは駆け込み、窓が存在しない部屋の中に入ると荷物を下ろして全員を招く。部屋の天井は崩壊しているので上を見上げると青空が広がっていた。
「ほら、ここが僕の隠れ家だよ。あ、ちゃんと入る時は扉を閉めろよ!!またあいつに追いかけ回われるのは御免だからな……」
「隠れ家って……ダインはここに住んでるの?」
「そうだよ!!あの変な光を受けて目を覚ましたら僕はこの部屋の中に飛んでたんだよ!!」
どうやらダインは冒険都市から転移した際にこの部屋の中に飛ばされたらしく、偶然にもコトミンと同じ遺跡の中に転移したようだが、コトミンが早々に遺跡から抜け出したのに対してダインはずっとこの場所に住み続けていたらしい。
『ッ……!!』
「レナ、危ない!!シャドウ・スリップ!!」
退魔刀を受け止めた甲冑の石像は右手に握りしめていた戦斧をレナに向けて振りかざすが、咄嗟にダインは背中に抱えていた杖を地面に突き刺して自分の影を鞭の様に変化させて石像の足元を振り払う。石像が転んだ隙にレナは離れると、闘拳を装着したゴンゾウが倒れた石像に向けて拳を振り下ろす。
「ぬんっ!!」
『ッ……!?』
上から振り落とされたゴンゾウの拳に対して石像は巨体からは想像できない俊敏な動作で跳躍し、攻撃を回避するのと同時に距離を取る。その獣人族顔負けの身軽さにゴンゾウは驚くが、即座にコトミンが水筒を片手に水の精霊魔法を放つ。
「二人とも、退いて!!」
「うわっ!?」
「うおっ!?」
コトミンが掌に収めた水を投げ放つと、水の塊は空中で拡散せずにレナとゴンゾウの間を通り過ぎて石像の元へ向かう。石像の正体が深淵の森の戦人形と同じ類の相手ならば水が弱点のはずであり、迫りくる「水の弾丸」に対して石像はまともに受ける。
『?』
「き、効かない!?」
「ゴーレムじゃないのか!?」
しかし、ゴーレムの類ならば水分を吸収すると肉体が変色するはずなのだが、石像には何も異変は生じず、不思議そうに自分の身体を眺める。考える素振りを行う事から意思を持った存在だとは分かるが、全てのゴーレムの共通の弱点である「水」が効かないあたり、ゴーレムとは異なる存在の可能性が出てきた。
レナは先ほどの戦闘で大盾を攻撃した時の違和感を思い出し、試しにもう一度攻撃を仕掛けるために動く。石像が再び近寄ってきたレナに対して戦斧を振り下ろすが、正面から振り落とされた斧を回避しながらレナは退魔刀を振り払う。
「このっ!!」
『ッ……!!』
「また受けた!?」
斧を回避して繰り出したレナの大剣が石像の大盾に衝突するが、最初の時のように石像は強烈な衝撃を受け止める。その際にレナは大剣の刃が大盾に飲み込まれている事に気付き、慌てて刃を引き抜く。
「こいつ……もしかして粘土か!?」
「粘土……?」
『…………』
石像の大盾は退魔刀の一撃を受け止めた事で大きく凹んだが、すぐに形を変形させて元に戻る。まるでレナの「形状高速変化」のように石像は自分の甲冑や武具と防具を変形する事が出来るらしく、攻撃を受ける際に粘土のように柔らかくなって衝撃を吸収している事が発覚した。
攻撃の際には硬度を硬質化させ、防御の際には硬度を軟質化させる事で衝撃を吸収する能力を持つらしく、再生能力と錯覚する程に肉体を変化させる石像にレナは冷や汗をかく。これではどれほど攻撃しても致命傷は与えられず、どんな攻撃も吸収されては打つ手がない。
「物理攻撃では相性が悪いのか……ダイン!!影魔法でこいつを拘束出来ないの!?」
「やろうと思えば出来るけど、今の僕の魔力だとそんなに長くは止められないぞ!?」
「ならやって!!」
「わ、分かったよ……シャドウ・バインド!!」
レナの言葉にダインは覚悟を決めたように影魔法で石像の肉体を拘束する。実態を持たない影を防ぐ事は出来ないのか石像は自分の肉体に纏わりつく影に抵抗できず、動作が停止する。その間にレナは石像を仕留める方法を探し、一か八かの賭けになるが退魔刀に水属性の魔力を送り込む。
「よし、そのまま抑えてて……!!コトミン、もう一度こいつに水を浴びせろ!!」
「了解」
コトミンは水筒の水を全て取り出すと石像に向けて先ほどの「水弾」を放ち、全身に水分を染み渡らせる。だが、やはり普通のゴーレムと違って肉体の硬度が変化する様子はなく、石像は影を振り払おうともがく。ダインの影魔法が解除される前にレナは退魔刀に刻まれた紋様に魔力を流し込み、水属性の魔力を纏わせて石像に切りつける。
「食らえ!!」
『技術スキル「氷結剣」を習得しました』
視界に新たな戦技を覚えた画面が表示されるが、気にせずにレナは退魔刀を石像に叩きつけると、刃の纏う冷気の魔力の影響を受けて石像の肉体が凍り付く。
『ッ……!?』
「そのまま凍れ!!」
事前にコトミンが水分を滲ませていた事で石像の肉体が加速度的に凍り付き、やがて全身が氷結化するとレナは退魔刀を力尽くで引き抜く。その直後にダインの影魔法が解除され、残されたのは全身が凍り付いた石像を見て全員が倒したのか不安を抱くが、石像が動く様子はなかった。
「ふうっ……倒した、のかな?」
「いや、凍り付かせて動けなくなっただけだと思う……氷が解ける前にここから離れよう」
「そ、そうだな……なら、僕が隠れ家に案内するよ。こっちにあるから皆付いて来いよ」
「隠れ家?」
ダインの言葉に不思議に思ったレナ達は後に続くと、東門からそれほど離れていない建築物の中にダインは駆け込み、窓が存在しない部屋の中に入ると荷物を下ろして全員を招く。部屋の天井は崩壊しているので上を見上げると青空が広がっていた。
「ほら、ここが僕の隠れ家だよ。あ、ちゃんと入る時は扉を閉めろよ!!またあいつに追いかけ回われるのは御免だからな……」
「隠れ家って……ダインはここに住んでるの?」
「そうだよ!!あの変な光を受けて目を覚ましたら僕はこの部屋の中に飛んでたんだよ!!」
どうやらダインは冒険都市から転移した際にこの部屋の中に飛ばされたらしく、偶然にもコトミンと同じ遺跡の中に転移したようだが、コトミンが早々に遺跡から抜け出したのに対してダインはずっとこの場所に住み続けていたらしい。
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