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最終章 前編 〈王都編〉
邪魔をするな
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ハンゾウと共にレナは屋根の上を駆け抜け、瞬動術の能力を発動して一気に跳躍を行う。ハンゾウも日の国の忍者だけが扱える飛脚を利用して後を追跡し、二人は地上の様子を確認しながらバルとアイラを探す。
「レナ殿、あちらの方が騒がしいでござる」
「あっちか!?」
幼少の頃から鍛え上げた聴力でハンゾウは噴水が存在する広場の方で兵士達の騒ぎ声を耳にすると、建物の屋根の上から二人は広場の様子を確認する。どうやら王国兵が冒険者の集団と争っているらしく、怒声が行きかっていた。
「貴様等、隠し事をすると只では済まんぞ!!」
「うるせえっ!!俺達に指図するんじゃねえよ!!そんな女たちなんか知らねえと言っているだろうが!!」
「この場所にこの二人が駆けつけたという報告を受けている!!ここに居たお前達が見ていないはずがない!!」
「何よ偉そうに……知らない者は知らないと言っているでしょ!?」
冒険者と兵士が言い争う光景を見てレナは何が起きているのかとハンゾウに視線を向けると、彼女は会話を聞き取りながら彼等が争うまでの経緯を推理して説明する。
「どうやらこの広場でお二人を見かけたという一般人の報告を受けて兵士が駆けつけたところ、ここで休憩していた冒険者の方々と言い争っているようでござる」
「こんな場所で休憩?しかも夜に……」
「兵士のせいで王都の冒険者は仕事を引き受けられない状態でござるからな。そのせいで仕事も出来ずに街中を徘徊する冒険者も多いのでござるよ。最も、今回の冒険者の方々の中には革命団に通じる人間も居るようでござる」
ハンゾウは冒険者の中に革命団の協力者が存在する事に気付き、二人の捜索のために革命団の人間も協力してくれているらしい。その話を聞いてレナは自分が勝手に救出に向かったのに二人を助けるために動いてくれた革命団に感謝する一方、勝手に行動した事を後で謝罪する事を決めた。
「革命団か……ハンゾウはあの人達を信用できる?」
「拙者も世話になっている身でござるが、革命団の事は内々に調査済みでござる。彼等は信用できるとマリア殿も言っておられたでござる」
「そっか……ここには二人はいないようだし、先を急ごう」
「承知」
「あ、その前に……」
広場には二人が居ない事を確認するとレナは緑笛を取り出して近場に存在する緑影を呼び出す。笛を吹いてから10秒も経過しないうちに2名の緑影が訪れ、挨拶も無しに調査の結果だけを報告する。
「この周辺の建物は調査したが、ここにはお前達の探す二人はいない」
「だが、ここの住民によると確かに二人らしき人影を見かけたらしい。彼等の話しではこの道を通ったそうだ」
「ありがとう、なら俺達も向かおう」
「いや、我々は念のためにここをもう少し捜査する」
ラナと違って二人の緑影はまだレナ達を完全に信用していないのか内容だけを伝えると立ち去り、その二人の態度にレナとハンゾウは肩をすくめ、情報を頼りに二人が通り抜けた道を移動する。
バルとアイラはどちらも剣士と格闘家の職業のため、普通の人間よりも身体能力が高い。なので追跡する人間も二人を上回る速度で後を追わねばならず、休む暇もなく駆け続ける。その途中、レナは観察眼と遠視の能力を発動させて裏路地の方で人影を発見した。
「あそこに誰かがいる!!」
「あそこでござるな!!」
二人は裏路地に飛び降りると、上空から降りてきた二人に折れた大剣を掲げた人物が襲い掛かってきた。
「おらぁっ!!避けるんじゃないよ!!」
「うわっ!?ちょ、俺だよバル!?」
「ああっ!?一体誰だって……レナ?」
「バル殿、無事でござったか!!」
右目から血を流しながら折れた大剣を振り下ろしてきたバルに対し、真剣白刃取りで受け止めたレナは彼女を落ち着かせるために声を掛けると、バルはレナとハンゾウの顔を見て驚いた表情を浮かべる。その一方でレナとハンゾウもバルの状態を見て絶句し、彼女にこれほどの手負いを負わせる相手はこの王都には一人しか存在しない。
「その傷……まさか、ミドルにやられたのか?」
「はあっ……くそ、ちょっと油断してね。いや、私も年を取ったというべきかな……いででっ!?」
「動かないで!!すぐに治療を……」
「そんな暇はないよ……あんたら、すぐにアイラさんの元へ向かいな」
治療を施そうとするレナとハンゾウの手を振り祓い、バルは二人の肩を掴んでアイラの救出を願う。この場にはバルしか存在せず、母親の姿が見当たらない事に気付いたレナは何が起きたのかを問う。
「バル、母上は何処に!?」
「アイラさんは……私をここに残して一人で兵士を引き付けて逃げたんだ。今ならまだ間に合う、すぐに追いかけてくれ……」
「レナ殿、すぐに空間魔法でバル殿を屋敷へ!!」
「分かった、ハンゾウはバルを頼む」
アイラが逃げた方向を指差すとバルは気絶したらしく、二人は彼女の身体を抱きかかえると空間魔法で深淵の森の屋敷へ送り込む。傷だらけのバルをハンゾウに任せたレナは一人で戻ると、示された方角に向けて駆け出す。
「母上っ……!!」
「おい、待て!!そこのお前、何者だ……うおっ!?」
「な、何だ!?」
移動の最中に兵士や一般人とすれ違うが、風のような速度でレナは彼等をすり抜け、母親の姿を探す。やがて街道に大勢の兵士の集団を発見し、その集団の中心では激しい金属音が鳴り響いている事と聞きなれた女性の声が響いてきた。
「くそ、何だこの女は!?」
「強すぎる……!!」
「捕獲は諦めろ!!殺せ!!」
兵士達の言葉を耳にしたレナは怒りの表情を浮かべ、足元に力を溜めて一気に兵士の集団を飛び越える。自分達の頭上を通り過ぎる少年の姿に兵士達は呆気に取られるが、その隙にレナは兵士達に囲まれた人物の元へ向かう。
「母上ぇっ!!」
「っ――!?」
兵士に囲まれていた人物はレナの声を聞いて上空を見上げると、そこには数年ぶりに再会を果たす息子が存在する事に気付き、アイラは歓喜の表情を浮かべてレナの名前を叫ぶ。
「レナ……」
「母上、頭を下げて!!」
「えっ!?」
だが、再会を喜び合う暇もなく、レナはアイラに頭を下げるように指示すると反鏡剣を引き抜き、加速剣撃を発動させてアイラの元へ切りかかろうとしてくる兵士の集団を薙ぎ払う。
「回転!!」
「きゃあっ!?」
『ぎゃあああっ!?』
アイラの頭上を刃が通り過ぎると、剣先から凄まじい衝撃波が放たれ、アイラを囲う様に構えていた大盾を所持していた兵士達が吹き飛ばされた。それを確認したアイラは呆然とした表情を浮かべ、その一方でレナは無事に着地すると、反鏡剣を構えてアイラと背中を合わせる。
「母上、色々と言いたいことがあるかもしれないけど、今はここを抜け出す事に集中して下さい!!」
「そ、そうね……でも、これだけは言わせてちょうだい。レナ、貴方本当に強くなったわね……」
意外にも冷静な息子の言葉にアイラは戸惑いながらも背中を合わせ、吹き飛んだ兵士達の姿を見てしばらく見ない間の息子の成長ぶりを見せつけられて驚きを隠せない。彼女のよく知っているレナは屋敷の裏庭でアリアの指導の元で必死に剣の素振りを行っていた子供だったが、数年ぶりに再会した今のレナはアイラの全盛期を上回る実力を身に着けていた。
一応は闘技祭で変装したレナは見かけてはいるが、あの時のアイラは状況的に他の人間の試合をゆっくりと観察する暇もなく、ミドルとの戦闘で助けたときもレナの実力を完全には把握できていなかった。再会した親子はお互いに背中を合わせると自分達を取り囲む兵士を睨みつけ、口元に笑みを浮かべる。この状況下で笑う二人に兵士達は不気味さを覚え、隊長格の男が号令を下す。
「殺せ!!邪魔をするならばその男も敵だ!!」
『うおおおおっ!!』
隊長の言葉に兵士達は雄たけびを上げて二人に押し寄せるが、彼等が相手を使用としているのは「剣姫」と呼ばれた前時代の最強の冒険者と、数多の強敵を打ち倒した最強の「剣鬼」である事を知らない。
※盛り上がってまいりましたね。次回「兵士死す(嘘)」!!
「レナ殿、あちらの方が騒がしいでござる」
「あっちか!?」
幼少の頃から鍛え上げた聴力でハンゾウは噴水が存在する広場の方で兵士達の騒ぎ声を耳にすると、建物の屋根の上から二人は広場の様子を確認する。どうやら王国兵が冒険者の集団と争っているらしく、怒声が行きかっていた。
「貴様等、隠し事をすると只では済まんぞ!!」
「うるせえっ!!俺達に指図するんじゃねえよ!!そんな女たちなんか知らねえと言っているだろうが!!」
「この場所にこの二人が駆けつけたという報告を受けている!!ここに居たお前達が見ていないはずがない!!」
「何よ偉そうに……知らない者は知らないと言っているでしょ!?」
冒険者と兵士が言い争う光景を見てレナは何が起きているのかとハンゾウに視線を向けると、彼女は会話を聞き取りながら彼等が争うまでの経緯を推理して説明する。
「どうやらこの広場でお二人を見かけたという一般人の報告を受けて兵士が駆けつけたところ、ここで休憩していた冒険者の方々と言い争っているようでござる」
「こんな場所で休憩?しかも夜に……」
「兵士のせいで王都の冒険者は仕事を引き受けられない状態でござるからな。そのせいで仕事も出来ずに街中を徘徊する冒険者も多いのでござるよ。最も、今回の冒険者の方々の中には革命団に通じる人間も居るようでござる」
ハンゾウは冒険者の中に革命団の協力者が存在する事に気付き、二人の捜索のために革命団の人間も協力してくれているらしい。その話を聞いてレナは自分が勝手に救出に向かったのに二人を助けるために動いてくれた革命団に感謝する一方、勝手に行動した事を後で謝罪する事を決めた。
「革命団か……ハンゾウはあの人達を信用できる?」
「拙者も世話になっている身でござるが、革命団の事は内々に調査済みでござる。彼等は信用できるとマリア殿も言っておられたでござる」
「そっか……ここには二人はいないようだし、先を急ごう」
「承知」
「あ、その前に……」
広場には二人が居ない事を確認するとレナは緑笛を取り出して近場に存在する緑影を呼び出す。笛を吹いてから10秒も経過しないうちに2名の緑影が訪れ、挨拶も無しに調査の結果だけを報告する。
「この周辺の建物は調査したが、ここにはお前達の探す二人はいない」
「だが、ここの住民によると確かに二人らしき人影を見かけたらしい。彼等の話しではこの道を通ったそうだ」
「ありがとう、なら俺達も向かおう」
「いや、我々は念のためにここをもう少し捜査する」
ラナと違って二人の緑影はまだレナ達を完全に信用していないのか内容だけを伝えると立ち去り、その二人の態度にレナとハンゾウは肩をすくめ、情報を頼りに二人が通り抜けた道を移動する。
バルとアイラはどちらも剣士と格闘家の職業のため、普通の人間よりも身体能力が高い。なので追跡する人間も二人を上回る速度で後を追わねばならず、休む暇もなく駆け続ける。その途中、レナは観察眼と遠視の能力を発動させて裏路地の方で人影を発見した。
「あそこに誰かがいる!!」
「あそこでござるな!!」
二人は裏路地に飛び降りると、上空から降りてきた二人に折れた大剣を掲げた人物が襲い掛かってきた。
「おらぁっ!!避けるんじゃないよ!!」
「うわっ!?ちょ、俺だよバル!?」
「ああっ!?一体誰だって……レナ?」
「バル殿、無事でござったか!!」
右目から血を流しながら折れた大剣を振り下ろしてきたバルに対し、真剣白刃取りで受け止めたレナは彼女を落ち着かせるために声を掛けると、バルはレナとハンゾウの顔を見て驚いた表情を浮かべる。その一方でレナとハンゾウもバルの状態を見て絶句し、彼女にこれほどの手負いを負わせる相手はこの王都には一人しか存在しない。
「その傷……まさか、ミドルにやられたのか?」
「はあっ……くそ、ちょっと油断してね。いや、私も年を取ったというべきかな……いででっ!?」
「動かないで!!すぐに治療を……」
「そんな暇はないよ……あんたら、すぐにアイラさんの元へ向かいな」
治療を施そうとするレナとハンゾウの手を振り祓い、バルは二人の肩を掴んでアイラの救出を願う。この場にはバルしか存在せず、母親の姿が見当たらない事に気付いたレナは何が起きたのかを問う。
「バル、母上は何処に!?」
「アイラさんは……私をここに残して一人で兵士を引き付けて逃げたんだ。今ならまだ間に合う、すぐに追いかけてくれ……」
「レナ殿、すぐに空間魔法でバル殿を屋敷へ!!」
「分かった、ハンゾウはバルを頼む」
アイラが逃げた方向を指差すとバルは気絶したらしく、二人は彼女の身体を抱きかかえると空間魔法で深淵の森の屋敷へ送り込む。傷だらけのバルをハンゾウに任せたレナは一人で戻ると、示された方角に向けて駆け出す。
「母上っ……!!」
「おい、待て!!そこのお前、何者だ……うおっ!?」
「な、何だ!?」
移動の最中に兵士や一般人とすれ違うが、風のような速度でレナは彼等をすり抜け、母親の姿を探す。やがて街道に大勢の兵士の集団を発見し、その集団の中心では激しい金属音が鳴り響いている事と聞きなれた女性の声が響いてきた。
「くそ、何だこの女は!?」
「強すぎる……!!」
「捕獲は諦めろ!!殺せ!!」
兵士達の言葉を耳にしたレナは怒りの表情を浮かべ、足元に力を溜めて一気に兵士の集団を飛び越える。自分達の頭上を通り過ぎる少年の姿に兵士達は呆気に取られるが、その隙にレナは兵士達に囲まれた人物の元へ向かう。
「母上ぇっ!!」
「っ――!?」
兵士に囲まれていた人物はレナの声を聞いて上空を見上げると、そこには数年ぶりに再会を果たす息子が存在する事に気付き、アイラは歓喜の表情を浮かべてレナの名前を叫ぶ。
「レナ……」
「母上、頭を下げて!!」
「えっ!?」
だが、再会を喜び合う暇もなく、レナはアイラに頭を下げるように指示すると反鏡剣を引き抜き、加速剣撃を発動させてアイラの元へ切りかかろうとしてくる兵士の集団を薙ぎ払う。
「回転!!」
「きゃあっ!?」
『ぎゃあああっ!?』
アイラの頭上を刃が通り過ぎると、剣先から凄まじい衝撃波が放たれ、アイラを囲う様に構えていた大盾を所持していた兵士達が吹き飛ばされた。それを確認したアイラは呆然とした表情を浮かべ、その一方でレナは無事に着地すると、反鏡剣を構えてアイラと背中を合わせる。
「母上、色々と言いたいことがあるかもしれないけど、今はここを抜け出す事に集中して下さい!!」
「そ、そうね……でも、これだけは言わせてちょうだい。レナ、貴方本当に強くなったわね……」
意外にも冷静な息子の言葉にアイラは戸惑いながらも背中を合わせ、吹き飛んだ兵士達の姿を見てしばらく見ない間の息子の成長ぶりを見せつけられて驚きを隠せない。彼女のよく知っているレナは屋敷の裏庭でアリアの指導の元で必死に剣の素振りを行っていた子供だったが、数年ぶりに再会した今のレナはアイラの全盛期を上回る実力を身に着けていた。
一応は闘技祭で変装したレナは見かけてはいるが、あの時のアイラは状況的に他の人間の試合をゆっくりと観察する暇もなく、ミドルとの戦闘で助けたときもレナの実力を完全には把握できていなかった。再会した親子はお互いに背中を合わせると自分達を取り囲む兵士を睨みつけ、口元に笑みを浮かべる。この状況下で笑う二人に兵士達は不気味さを覚え、隊長格の男が号令を下す。
「殺せ!!邪魔をするならばその男も敵だ!!」
『うおおおおっ!!』
隊長の言葉に兵士達は雄たけびを上げて二人に押し寄せるが、彼等が相手を使用としているのは「剣姫」と呼ばれた前時代の最強の冒険者と、数多の強敵を打ち倒した最強の「剣鬼」である事を知らない。
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