不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

北聖将軍の撤退

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「我々はこのまま引き返す。だが、その前に負傷兵の治療を行いたい……お前達が交渉を持ち掛けてきた以上、掴まった部下達は生きているのだろう?」
「ああ、問題ないぞ!!それと治療に関してはこの冒険者達に頼むと良い!!腕のいい治癒魔導士が勢揃いだからな!!」
「あ、治療なら私も手伝えるよ~」


連れ出した氷雨の冒険者の中には高レベルの治癒魔導士も存在し、回復薬では治療が間に合わない兵士に関しては回復魔法で治療を行える。既に先の戦闘で捕縛した北聖将軍の兵士達の治療は終了しており、捕まっていた兵士達は北聖将の元に戻って来た。


「将軍!!ご無事でしたか!!」
「申し訳ありません!!我々が不甲斐ないばかりに……」
「お前達、無事だったか……負傷者はいないのか?」
「はい、彼等のお陰で我々の治療は済んでおります……ですが、代わりに相当な治療費を要求されましたが」
「人聞きが悪いわね。言っておくけど命が助かっただけでもありがたいと思いなさい。戦場で生き残れただけでも幸運なのよ」


治療を受けた兵士達が恨めしそうに北聖将に苦言を告げるが、傭兵であるシズネは淡々と注意する。彼女も職業柄、戦場に赴く事が多々あるので治療した人間に対して礼儀を弁える事は当たり前のため、自分の命と引き換えならば金銭を支払う程度の事で喚く方がみっともないと考えていた。

ハシラのシズネの言い分は理解を示し、治療を受けた兵士達の治療代は後で送金する事を約束すると、即座に兵士を連れて引き返す事を告げる。


「東聖将よ。我々は自分の領地へ引き返し、しばらくの間は領地内で守備を固めよう。だが、もしも急変が起きた場合はすぐに連絡を送ってくれ。出来る限りの協力をする事を約束しよう」
「うむ!!約束だぞ!!」
「ティナ王女様、何か起きましたらすぐに我々へ連絡をください」
「うん、ありがとう……でも、気を付けて帰ってね?」
「……ご心配ありがとうございます」


ティナの言葉にハシラは笑みを浮かべ、臣下として彼女に一礼を行うと兵士達を率いて北方領地へと引き返すためにここまで運んで来た武器と兵糧の一部を東聖将へ引き渡した。


「東聖将よ、我々が運んで来た物資の一部は置いていくぞ。薬剤に関しては悪いがこちらの負傷兵の治療のために与えられる量は少ないが……」
「おおっ!!それは助かるな!!こちらも人手が増えて丁度少し困っていたところだ!!有難く受け取らせてもらうぞ!!」
「ああ、それとエリナよ。お前にはこれを渡そう」
「えっ?」


ハシラはエリナの方へ振り返ると、収納石のブレスレットを使用して異空間から特殊な形をしたボーガンを取り出し、エリナに渡す。どうやら腕に装着するタイプの物らしく、全体が漆黒に染められたボーガンだった。


「これはお前が王国四騎士に昇格したと聞いて友人の小髭族に特別に作ってもらったボーガンだ。名前は「黒弓」素材は世界樹の枝を使用しているらしい。暗闇の中でも目立たないように黒く染めている……要らないか?」
「し、師匠があたしのために!?あ、ありがとうございます!!大切にします」
「ふっ……最初の奇襲に関しては見事な手際だったぞ。だが、俺を超えたければもっと腕を磨く事だ」


嬉しそうに自分の渡した黒弓を受け取るエリナにハシラは笑いかけると、今度こそ別れの挨拶を告げて1万の軍勢を引き連れて東壁街から引き返した。結果的には東聖将軍とバルトロス王国から派遣された冒険者達の連合軍によって撃退する事は成功したが、もしも戦闘が長引いていた場合は東聖将側も大きな被害を受けていた可能性も高い。

今回の勝利は北聖将側に援軍の情報が伝わっておらず、更に奇襲が成功したからこそ上手く行ったが、仮に北聖将軍が攻め方を変えていた場合は確実に勝利出来たとは言い切れない。また、長期戦に陥れば南聖将や王都の軍隊が動き出す可能性もあったため、早急に決着を着けることが出来たのは幸いだった。


「作戦成功といったところね。だけど、今度の戦は簡単にはいかないわよ」
「うん……きっと、王都から軍隊が差し向けられるだろうね」


シズネの言葉にレナは頷き、北聖将軍が引き返したという報告を聞けば王都のカレハが動き出す事は間違いなく、東の領地に大軍を送り込む可能性は高い。その場合は必然的に他の六聖将が派遣される事は間違いなく、下手をしたら北聖将以外の六聖将を総動員して討伐軍を派遣する可能性があった――




――北聖将軍が引き返した後、兵士達は北聖将が残してくれた物資の移送や破損した城門の修復作業を行う間、王国側から派遣された冒険者達は東壁街のギンタロウの屋敷に集まる。だが、数が多いだけに屋敷の中に案内されたのは冒険者達の中でも腕利きの猛者だけが集まった。


「はっはっはっ!!まずは君達に礼を言いたい!!わざわざ遠方のバルトロス王国からよくぞここまで助けに来てくれた!!礼を言うぞ、ありがとう!!」
「何だか随分と変わった将軍様だね……まあ、あんたみたいな奴は嫌いじゃないよ」
「生憎だがこちらは依頼として引き受け、協力しているだけだ。礼を言われる筋合いはない」
「……俺達は王国からギルドマスターの釈放を条件に貴方に協力するように言われている。だから気にする必要はない」


ギンタロウの前には黒虎のギルドマスターであるバルと、氷雨の代表を担うカゲマル、最後に牙竜のギルドマスターの代理を務める「ガンモ」という名前の巨人族の男性冒険者が座り込んでいた。3人の他にも剣聖であるシズネ、ジャンヌ、ロウガの姿も存在し、当然ながらにティナやエリナ、最後にレナも存在した。

他の面子も大体は屋敷内に待機しているが、冒険者の多くは街中の宿屋や兵士の宿舎を借りて過ごしており、自分達の冒険者ギルドの代表の命令を受け取るまで待機状態に入っている。屋敷の中に入る事を許されたのは冒険者の中でも高ランクで信頼の高い者だけに限られていた。


「ギンタロウ殿、率直に聞くがこれからどうされるつもりだ?北聖将と和解出来たのは幸いだが、今後我々はどう動くべきなのかそちらの意見を聞かせて貰いたいのだが……」
「うむ、その事に関しては俺も悩んでいる!!だから皆の意見を聞かせて欲しい!!」
「ならば俺から意見を言わせてもらおう……俺とハンゾウを含め、氷雨に所属する暗殺者は今後は情報収集のために集中したい。この国に潜伏しているはずのキラウとマリア様の居場所を探るため、王都への潜入を考えている」


カゲマルは情報収集のために動く事を宣言し、他の者も特に反対はしない。戦力的にはカゲマルやハンゾウが抜ける事になるが、その点は剣聖の3人や他の冒険者が補えば問題はなく、キラウとマリアの捜索も重要なので今後はカゲマル達には情報収集に集中してもらう。


「まあ、それが妥当だろうね……キラウの奴はともかく、マリアの奴が捕まっている以上はこのまま王都へ攻め込む事も出来ないしね」
「マリア殿が人質として利用される可能性がある以上、迂闊に動く事は出来ないという事か……」
「だけどあまり長居は出来ないわ。私達の情報は必ず王都へ知られるはずよ、もしもカレハ王女が他の六聖将を派遣した場合、今回のように犠牲者を最小限に抑えて撃退出来るとは限らないわ」


北聖将軍を撃退する事には成功したとはいえ、もしも次は複数の六聖将が派遣された場合は今回のように上手く対処出来るとは限らない。だが、シズネの言葉を聞いてレナは率直な疑問を抱く。
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