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外伝 ~ヨツバ王国編~
冒険者の統率者
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「もしも他の六聖将が動く場合、最初に来るのは誰か分かりますか?」
「その場合は間違いなく、南聖将が真っ先に動くだろうな!!あいつは昔から俺の事を嫌っていたからな!!それに人質にされた俺の部下の件も何とかしなければ……」
「貸し与えていた500名の兵士が人質にされているという件か……救出する方法はないのか?」
「難しいな……南聖将の領地を守護しているのは魔物使い共が操る魔獣達だからな。実は何度か偵察兵を送り込もうとしたが、全て途中で気付かれて追い払われている。魔物共は我々よりも感覚が鋭いせいか、暗殺者の職業の兵士でも気付かれてしまうようだ」
「ほう……」
暗殺者の職業の兵士でさえも偵察に失敗しているというギンタロウの言葉にカゲマルが反応し、自分ならばそのような失敗はしないとばかりに堂々とした態度を貫く。
「ならば南方の領地の偵察はこの俺がやろう。この国の暗殺者がどの程度の基準に達しているのかは知らんが、和国の忍者ならばどんな場所でも忍び込む事が出来る事を証明してやろう」
「ほう!!あの有名な和国の忍者だったのか!!ならば偵察を任せても平気か?」
「いいだろう、だが忍び込むにしても時間が掛かる。最低でも5日は情報収集のために戻ってくる事はない」
「5日か……仕方ないか」
いくらカゲマルが優秀な忍者だとしても移動距離や領地の規模を考えても情報収集に時間が掛かるのは仕方がなく、早速彼はハンゾウを引き連れて南聖将の領地へ向かう。
「では5日後に戻ってくる……その間、お前達は警備を固めておけ」
「言われなくても分かってるよ。気を付けて行ってきな」
「ハンゾウも気を付けてね」
「任せて欲しいでござる。必ず、役立つ情報を持って帰ってくるでござる」
レナ達に見送りを受けたカゲマルとハンゾウが屋敷から抜け出すと、残された者達は彼等が情報を持ち帰るまでに今後の東壁街の警備に関しての話し合いを行う。
「城門の修復にはどの程度の時間が掛かるの?」
「うむ、それほど時間は掛からないだろう。明日までには元に戻っているだろうな!!」
「ちなみに聞きたいことがあるんだけど、あの城門の素材は木製なんだろ?そんなもん、どうやって直すんだい?」
「簡単な事だ、傷ついた箇所に回復薬を塗り込めば後は勝手に再生して元通りになるだけだぞ?」
「え!?そんな方法で治るのかい!?」
「ああ、あの城門は特別製だからな!!はっはっはっ!!」
「よく笑う男ね……でも、そう考えると警備という点ではこの街は十分に守備に優れているわね」
東壁街の周囲は頑丈な岩壁によって守られているため、城門を突破する以外に侵入する方法があるとすれば断崖絶壁の岩山を登るか、あるいは空を飛んでくる以外に方法はない。但し、どちらの方法も高所に配置された見張り台の兵士達が見逃すはずがなく、十分に対応出来る。また、この世界では飛行船は存在するがヨツバ王国には存在しないため、空から攻め込まれる心配は少ない。
心配するべき点があるとすれば南聖将に貸し与えていた兵士達の安否であり、500名の兵士が人質に取られている状況はあまりにも不利だった。兵士の家族も街中に数多く存在し、もしも南聖将が人質にした兵士の家族を利用し、彼等に何らかの隠蔽工作を行わせようとする可能性もある。
「兵士達の家族の様子はどうなんだい?自分の所の家族が人質にされているなんて聞かされたら心配してんだろう?」
「いや、兵士が人質に取られている事はまだ話を伏せている。内容が内容だけに迂闊に話す事も出来なくてな……」
「今はそれがいいだろう。家族を人質に取られていると知ったらどんな行動を取るか分からないからな……」
「けど、いずれはバレちまうんじゃないかい?何時かは話さないといけない時があるよ」
「うむ……」
バルの言葉にギンタロウは難しい表情を浮かべ、流石の彼も派遣した兵士の家族にどのように事情を伝えればいいのか頭を悩めているらしい。早急に兵士達は救出しなければならないが、その方法が思いつかない限りはどうしようもない。
「問題は他にもあるぞ。氷雨の冒険者達がマリア殿を救うと言い出して勝手に行動を始めようとする輩も現れ始めている。先日もガロの奴が突っ走って抜け出そうとした所を俺が止めたぐらいだ」
「皆さん、マリア様の事が心配なんです……ですけど、未だに居所の手掛かりすら掴めていない事にやきもきしているようで……」
「たくっ、こういう時こそ冷静になって全員で力を合わせないとならないってのに……」
「全員が力を合わせるという点にかんしては難しいだろう。我々は別々のギルドから派遣された冒険者同士だ。これまでのいざこざをなかった事が出来るわけではない」
「ふん!!王妃に従属したギルドマスターの配下の男の言葉は重みがあるな!!」
「何だと……貴様等の方こそ、マリアを崇拝するだけの傀儡ではないのか?」
「止めな!!こんな時に喧嘩してどうするんだい!!」
ガンモの言葉にロウガが反発すると、二人の間に険悪な雰囲気と化し、バルが慌てて二人を止める。やはり別々のギルドから派遣された冒険者同士ではお互いに上手く連携が取れず、シズネが呆れたようにため息を吐く。
「問題は山積みね……ひとまずはカゲマルとハンゾウが戻ってくるまでの間、無断行動を取ろうとする冒険者が現れないように見張る必要があるわ」
「ふん、それ以前に何故ただの傭兵がこの会議に参加している?いくら剣聖だからといって指図される謂れはない」
「貴方も自分の立場を弁えたらどうかしら?ここにいるレナはバルトロス王国の王族よ。つまり、レナの気分次第で貴方のギルドマスターの釈放の件が流れる可能性がある事も理解しているのかしら?」
「…………」
「シズネ、あんまり意地悪するような事を言わないでよ。それにゴンちゃんだってギガンさんの事を慕っているんだから俺は釈放を反対するはずないでしょ」
シズネの言葉にガンモは押し黙り、レナはシズネに注意するが、生憎と雰囲気は悪化してしまう。マリアのようにカリスマ性と実力が優れた人間がこの場に居れば纏まる事も出来るだろうが、生憎と彼女の代理を行える程の立場と実力を持つ者は滅多に存在しない。
「ふむ、どうやら君達は仲が悪いらしいな……では、こうしたらどうだ?冒険者同士で話し合いを行い、一時的に自分達の代表を決めるのだ!!」
「代表……それはつまり、あたし達の間で冒険者の指揮を取る人間を見いだせといいう事かい?」
「別にそんな難しく考えなくていい、だが纏まりがない者達が集まった場合は誰かを上に立て、全員に一体感を持たせればいいのだ!!俺の側近のキン、ギン、ドウも昔は仲が悪かったが、俺の元へ従うようになってからは関係が良好化したからな!!」
「なるほどね……つまり、あたし達同士で共通のリーダーを作り出せという事かい」
「そうね、その考え方は悪くないかもしれないわ」
「ふむ、リーダー……つまりは統率者を決めるという事か」
ギンタロウの提案は意外と悪くないと考えたのか、各ギルドの代表者達は考え込み、このまま別々のギルドの冒険者同士が争い合う状況を打破するため、新たな統率者を選別する事に決めた――
※ガンモの実力は牙竜のギルドの中でも三番手ぐらいです。ギガン同様に寡黙な男ですが、仲間想いの熱い漢です。
「その場合は間違いなく、南聖将が真っ先に動くだろうな!!あいつは昔から俺の事を嫌っていたからな!!それに人質にされた俺の部下の件も何とかしなければ……」
「貸し与えていた500名の兵士が人質にされているという件か……救出する方法はないのか?」
「難しいな……南聖将の領地を守護しているのは魔物使い共が操る魔獣達だからな。実は何度か偵察兵を送り込もうとしたが、全て途中で気付かれて追い払われている。魔物共は我々よりも感覚が鋭いせいか、暗殺者の職業の兵士でも気付かれてしまうようだ」
「ほう……」
暗殺者の職業の兵士でさえも偵察に失敗しているというギンタロウの言葉にカゲマルが反応し、自分ならばそのような失敗はしないとばかりに堂々とした態度を貫く。
「ならば南方の領地の偵察はこの俺がやろう。この国の暗殺者がどの程度の基準に達しているのかは知らんが、和国の忍者ならばどんな場所でも忍び込む事が出来る事を証明してやろう」
「ほう!!あの有名な和国の忍者だったのか!!ならば偵察を任せても平気か?」
「いいだろう、だが忍び込むにしても時間が掛かる。最低でも5日は情報収集のために戻ってくる事はない」
「5日か……仕方ないか」
いくらカゲマルが優秀な忍者だとしても移動距離や領地の規模を考えても情報収集に時間が掛かるのは仕方がなく、早速彼はハンゾウを引き連れて南聖将の領地へ向かう。
「では5日後に戻ってくる……その間、お前達は警備を固めておけ」
「言われなくても分かってるよ。気を付けて行ってきな」
「ハンゾウも気を付けてね」
「任せて欲しいでござる。必ず、役立つ情報を持って帰ってくるでござる」
レナ達に見送りを受けたカゲマルとハンゾウが屋敷から抜け出すと、残された者達は彼等が情報を持ち帰るまでに今後の東壁街の警備に関しての話し合いを行う。
「城門の修復にはどの程度の時間が掛かるの?」
「うむ、それほど時間は掛からないだろう。明日までには元に戻っているだろうな!!」
「ちなみに聞きたいことがあるんだけど、あの城門の素材は木製なんだろ?そんなもん、どうやって直すんだい?」
「簡単な事だ、傷ついた箇所に回復薬を塗り込めば後は勝手に再生して元通りになるだけだぞ?」
「え!?そんな方法で治るのかい!?」
「ああ、あの城門は特別製だからな!!はっはっはっ!!」
「よく笑う男ね……でも、そう考えると警備という点ではこの街は十分に守備に優れているわね」
東壁街の周囲は頑丈な岩壁によって守られているため、城門を突破する以外に侵入する方法があるとすれば断崖絶壁の岩山を登るか、あるいは空を飛んでくる以外に方法はない。但し、どちらの方法も高所に配置された見張り台の兵士達が見逃すはずがなく、十分に対応出来る。また、この世界では飛行船は存在するがヨツバ王国には存在しないため、空から攻め込まれる心配は少ない。
心配するべき点があるとすれば南聖将に貸し与えていた兵士達の安否であり、500名の兵士が人質に取られている状況はあまりにも不利だった。兵士の家族も街中に数多く存在し、もしも南聖将が人質にした兵士の家族を利用し、彼等に何らかの隠蔽工作を行わせようとする可能性もある。
「兵士達の家族の様子はどうなんだい?自分の所の家族が人質にされているなんて聞かされたら心配してんだろう?」
「いや、兵士が人質に取られている事はまだ話を伏せている。内容が内容だけに迂闊に話す事も出来なくてな……」
「今はそれがいいだろう。家族を人質に取られていると知ったらどんな行動を取るか分からないからな……」
「けど、いずれはバレちまうんじゃないかい?何時かは話さないといけない時があるよ」
「うむ……」
バルの言葉にギンタロウは難しい表情を浮かべ、流石の彼も派遣した兵士の家族にどのように事情を伝えればいいのか頭を悩めているらしい。早急に兵士達は救出しなければならないが、その方法が思いつかない限りはどうしようもない。
「問題は他にもあるぞ。氷雨の冒険者達がマリア殿を救うと言い出して勝手に行動を始めようとする輩も現れ始めている。先日もガロの奴が突っ走って抜け出そうとした所を俺が止めたぐらいだ」
「皆さん、マリア様の事が心配なんです……ですけど、未だに居所の手掛かりすら掴めていない事にやきもきしているようで……」
「たくっ、こういう時こそ冷静になって全員で力を合わせないとならないってのに……」
「全員が力を合わせるという点にかんしては難しいだろう。我々は別々のギルドから派遣された冒険者同士だ。これまでのいざこざをなかった事が出来るわけではない」
「ふん!!王妃に従属したギルドマスターの配下の男の言葉は重みがあるな!!」
「何だと……貴様等の方こそ、マリアを崇拝するだけの傀儡ではないのか?」
「止めな!!こんな時に喧嘩してどうするんだい!!」
ガンモの言葉にロウガが反発すると、二人の間に険悪な雰囲気と化し、バルが慌てて二人を止める。やはり別々のギルドから派遣された冒険者同士ではお互いに上手く連携が取れず、シズネが呆れたようにため息を吐く。
「問題は山積みね……ひとまずはカゲマルとハンゾウが戻ってくるまでの間、無断行動を取ろうとする冒険者が現れないように見張る必要があるわ」
「ふん、それ以前に何故ただの傭兵がこの会議に参加している?いくら剣聖だからといって指図される謂れはない」
「貴方も自分の立場を弁えたらどうかしら?ここにいるレナはバルトロス王国の王族よ。つまり、レナの気分次第で貴方のギルドマスターの釈放の件が流れる可能性がある事も理解しているのかしら?」
「…………」
「シズネ、あんまり意地悪するような事を言わないでよ。それにゴンちゃんだってギガンさんの事を慕っているんだから俺は釈放を反対するはずないでしょ」
シズネの言葉にガンモは押し黙り、レナはシズネに注意するが、生憎と雰囲気は悪化してしまう。マリアのようにカリスマ性と実力が優れた人間がこの場に居れば纏まる事も出来るだろうが、生憎と彼女の代理を行える程の立場と実力を持つ者は滅多に存在しない。
「ふむ、どうやら君達は仲が悪いらしいな……では、こうしたらどうだ?冒険者同士で話し合いを行い、一時的に自分達の代表を決めるのだ!!」
「代表……それはつまり、あたし達の間で冒険者の指揮を取る人間を見いだせといいう事かい?」
「別にそんな難しく考えなくていい、だが纏まりがない者達が集まった場合は誰かを上に立て、全員に一体感を持たせればいいのだ!!俺の側近のキン、ギン、ドウも昔は仲が悪かったが、俺の元へ従うようになってからは関係が良好化したからな!!」
「なるほどね……つまり、あたし達同士で共通のリーダーを作り出せという事かい」
「そうね、その考え方は悪くないかもしれないわ」
「ふむ、リーダー……つまりは統率者を決めるという事か」
ギンタロウの提案は意外と悪くないと考えたのか、各ギルドの代表者達は考え込み、このまま別々のギルドの冒険者同士が争い合う状況を打破するため、新たな統率者を選別する事に決めた――
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