不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

狩猟勝負

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「ああ、そういえばそんな事もあったね。やたらと腕の良い奴が入って来たと思ったから、あの時はマリアの奴に引き抜かれないように他の奴には黙ってたんだよ」


二人の話を聞いていたのか、バルが振り返ってエリナが冒険者である事を証明する。当時の頃からエリナの射撃の腕は素晴らしく、もしも冒険者として活動していたらもっと上の階級に昇格していたかもしれない。


「そうだったのか……というか、試験で俺よりも高いランクに受かっていたのか。なんか割とショックだけど……」
「な、なんかすいません……けど、それならあたしも兄貴を手伝えるんですよね?」
「そうだね。ならこれで4人目か……あと1人はどうするかな。ミナ辺りを誘おうかな?」


レナの知り合いの冒険者は限られ、氷雨の冒険者の中で友人と言える間柄の人間はミナやジャンヌぐらいしか存在しない。黒虎の冒険者ならば友人は居たが、生憎と殆どがこの場に居合わせていなかった。黒虎の冒険者の殆どはD~Fの冒険者を占め、もしも高いランクに昇格した冒険者が居ても大抵の場合は氷雨のような大手のギルドに移籍してしまう。

ちなみに現在の黒虎と氷雨の関係はギルドマスター同士が仲直りしたので比較的に友好的な関係を築き、基本的には一般人からの依頼は黒虎が引き受け、貴族や大手の商団などの依頼は氷雨が引き受けている。バルとしては黒虎が氷雨の傘下として扱われるのは少々気になったが、ギルドを維持するためには見栄と外聞を捨てて氷雨と協力関係を築く。


「よし、ミナを探してこよう。さっき見かけたから……あ、あそこに居た。お~い、ミナ……」
「ちょっと待てよ。なんかさっきの爺さんと話し合ってるぞ?」


ミナを見かけたレナは呼びかけようとしたが、ダインがそれを止めて彼女がロウガと何かを話し合っている事を指摘する。ミナの他にも彼女の冒険者集団のガロとモリモの姿も存在し、どうやらロウガのチームに入るように勧誘されているらしい。


「ミナ、ロウガさんがここまで言ってるんだぞ?勿論、手伝うよな?」
「う、うん……別に反対するつもりはないけど」
「いや、別に無理強いはするつもりはないが……」
「ガロ、お前ミナをレナさんの所に行かせないようにしてるだけじゃ……」
「あ~あ、聞こえねえよ!!」


どうやらレナがミナを勧誘する事を予想していたガロが先手を打ち、ロウガの元に自ら赴いたらしい。これでミナを勧誘する事は出来ず、こんな時に限ってレナは他に知り合いの冒険者が居ない事に頭を悩ませる。


「参ったな……他に氷雨の冒険者の知り合いなんてゴウライさんやシュンさんぐらいしかいないし……そもそも二人ともいないけど」
「おいおい、どうするんだよ?このままだと僕達4人だけで挑む事になるぞ!?」
「誰か適当な人間を誘うか?」
「いや、それは賛成出来ないっすよ。あたし達を支持していない人を誘っても付いてきてくれるか分からないし、そもそも氷雨の冒険者ならロウガさんとジャンヌさんを勝たせるために協力してくれるとは思えないっす」
「う~ん……」


冒険者という条件さえなければシズネやコトミンも参加出来たが、生憎とレナには他に知り合いの優秀な冒険者はこの場には限られ、ミナが断られたからといってまさか同じ代表者のジャンヌを誘うわけにはいかない。別に統率者にどうしてもなりたいというわけでもないが、やはり勝負するのならば他の人間に失礼の内容に全力で挑みたかった。

頭を悩ませる間にも時間は経過し、他の代表者達が面子を揃えて準備を整える中、レナは誰を選べばいいのか考えていると、不意に誰かが肩に手を置く。


「レナ、ちょっといいかい?」
「え、バル?どうしたの急に……そっちは人数は集まったの?」
「ああ、ちょっと昔の知り合いを集めたよ」


肩を掴んだのは既に4人の冒険者を集めたバルが訪れ、彼女が仲間にしたのは全員が氷雨の冒険者らしく、中年揃いだった。どうやら彼女と古い付き合いのある冒険者ばかりらしく、氷雨に所属しておきながらもジャンヌやロウガではなくバルを支持したのは彼等らしい。


「おお、あんたがレナかい?マリアさんの甥だって聞いてるぜ」
「俺達は遠征から帰ってきたばかりでな、顔を見るのは初めてか?」
「バルからあんたの事をよく聞いてるぜ。何でも若い割には骨のある奴だってな」
「骨しかない友達も居たりします」
「ん?はははっ!!スケルトンの友達でもいるってのか!?面白い奴だな!!」


バルの傍に集まった中年の冒険者は気さくな態度でレナ達と接し、常に実力社会で他人を蹴落とす事を企む人間が多い氷雨の冒険者の中では珍しいタイプだった。バルは苦笑いを浮かべながら彼等を紹介した。


「この人達はあたしの先輩の冒険者でね、若い頃はよく世話になったんだよ。この年齢でも未だに現役を続けているんだから頭も上がらないね」
「何言ってんだ!!俺達は生涯現役だぞ!?」
「お前さんが冒険者を引退したと聞いた時は大泣きしたぞ?先輩より早く引退する後輩がいるかよ全く……」
「まあ、あたしにも色々とありまして……」
「お、というかそこにいるのはダインじゃねえのか!?お前、デカくなったな!!」
「ど、どうも……お久しぶりです!!」


ダインの存在に気付いた冒険者が声を掛けると、お互いに知り合いだったのかダインは慌てて頭を下げる。どうやらバルもダインも頭が上がらない存在らしく、その内の小髭族の男性がレナに視線を向け、何かを察したように頷く。


「ほう……これは逸材だな、良い後継者を持ったなバル」
「あ、はい!!いや、別にあたしの後継者という程でもないんですけどね……」
「お前さんの弟子なんだろう?なら後継者で間違いないだろうが!!おい、坊主。お前さんには悪いが俺達は全力で勝負に挑ませてもらうぜ!!年寄りだからって舐めてると痛い目見るからな?」
「そんな理由で馬鹿にしませんよ。というか、皆さんよりもロウガさんの方が年上なんですし、十分にお若いですよ」
「聞こえているぞ!!誰が年寄りだ!!」
「いや、あんたは年寄りだろうが……」


獣人族の鋭い聴覚でロウガは怒鳴りつけるが、バルは呆れたように言い返すと、レナに振り返って呼び止めた理由を話す。


「さてと……本題に入るよ。あんたら、まだ人数が揃っていないんだろ?それならあたしの権限で一人だけ今この場で冒険者登録をしてやろうか?」
「え!?いいのかそんな事をしちゃって!?」
「言いも何も、あたしは黒虎のギルドマスターだよ?それぐらいの事は出来るさ……というのは建前で、実はちょっとこっちも訳ありでね」


バルはレナとダインの肩を掴むと二人を他の者から引き離し、小声で話しかけてきた。


「あんたらも気付いてんだろ……ここにいる奴等の殆どが氷雨や牙竜の冒険者だって事をさ」
「ああ、うん……」
「知ってるよ。というか、黒虎の冒険者って2、3人ぐらいしかいないんじゃないのか?」
「失礼だね、4人だよ!!最近は優秀な若手も増えたんだよ!!」
「それ、レナも数に入れてるんじゃないの?」
「……まあ、それはおいといて」

ダインの言葉が図星だったのかバルはわざとらしく話を逸らし、どうして競争相手であるレナ達を手伝うように冒険者登録を行おうとする理由を話す。




※現在の黒虎はマリアが引き抜きしないので冒険者の数も増えてます。でも、結局は高ランクに昇格した冒険者は一般人からの仕事だけでは張り合いがないので氷雨や牙竜のギルドに移籍したりしてますが……
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