不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

5人目の冒険者

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「ここにいる奴等の殆どが氷雨の冒険者というだけで肩身が狭いんだよ。あたしが長い間、マリアと仲違いしていた事もあってあんまり良い印象を抱かれてなくてね。陰口も言われてうんざりしてるんだよ」
「それはまあ、同情するけどさ……それとこれと僕達に協力する事が何の関係があるんだよ?」
「この場に集まっているのは高ランクの冒険者、つまりは一流の冒険者だって事はあんたらも知ってるんだろ?なのにあたしのギルドの奴等と来たら3、4人しか集まっていない。そのせいで他のギルドの奴等から馬鹿にされてるんじゃないかと肩身が狭い思いをしてるんだよ。牙竜の奴等でさえ10人以上も連れてきてるのに」
「ああ、なるほど……」


バルトロス王国から選別された100名の冒険者のうちの8割以上は氷雨の冒険者が占め、黒虎の冒険者に至っては1割にも満たない。そのせいでバルを含め黒虎の冒険者は数が少ないせいで他のギルドの者達に軽視されているという。

だが、黒虎の冒険者の数は少なくとも質という点では決して氷雨にも劣らず、実際にレナに至っては剣聖の称号を持つ剣士を相手に何度も勝利を収めている。闘技場や闘技祭、更に腐敗竜や地竜との戦闘では最も大きな功績を上げ、実際に戦闘となればレナに勝る冒険者がゴウライ程度しか存在しない。


「少し前にあたしのギルドの連中が氷雨の奴等と揉めてね、どうも理由というのが氷雨の奴等があたし等のギルドから選ばれた冒険者の数が少ない事を嘲笑したみたいなんだよ。あたしが途中で見かけて止めなければ大喧嘩になっていただろうね」
「なるほど、それで今ここで黒虎の冒険者を増やしたいわけ?」
「まあ、そういう事さ……あんた等からもシズネ当たりに頼んでうちのギルドに入るように説得してくれないかい?青の剣聖が黒虎の冒険者ギルドに入ったとなればうちの名声も高まるし、氷雨の奴等からも馬鹿にされる事もないだろうしね」
「聞こえてるわよ」


3人の内緒話に聞き耳を立てていたシズネが呆れた表情で会話に加わり、自分の剣聖の称号を利用して他の冒険者ギルドに威を示すためにレナとダインに勧誘を促すバルに彼女は呆れながらも答えた。


「悪いけれど、私は傭兵を止めるつもりはないわ。冒険者という職業にもあまり興味はないし、残念だけど他を当たってちょうだい」
「なんだい、けちんぼだね!!今なら特典でレナも付けるよ!!」
「特典……そ、そんな事を言われても、私の答えは変わらないわよ」


特典という言葉に若干シズネは躊躇したが、長年続けてきた傭兵稼業を辞めるつもりはなく、きっぱりと断る。残念ながらシズネの意思が固いと分かるとバルはゴンゾウに顔を向ける。


「なら、あんたはどうだいゴンゾウ?レナとダインとは随分と仲が良いようじゃないかい、ここはあたしのギルドに……」
「いや、俺は牙竜から移籍するつもりはない。牙竜の冒険者として俺は誇りを持っている」
「というか、僕は別に黒虎の冒険者じゃないんだけど……」
「なんだい、どいつもこいつも薄情者だね……」


ゴンゾウからも断られたバルはため息を吐き出し、シズネやゴンゾウ以外にレナ達の面子の中で知名度の高い者はおらず、仕方なく立ち去ろうとしたときに彼女の服の裾をコトミンが掴む。


「バル、まだ私が残っている」
「ん?ああ、レナのペットの嬢ちゃんかい。悪いね、今は大人の話をしているからあっちでワンコ達と遊んでな」
「むうっ……私はただのペットじゃない。回復魔法も扱える優秀なペット」
「いや、ペットという部分は否定しないのかよ!?」
「ぷるぷるっ」


コトミンは自分を侮るなとばかりに胸を張り、頭の上に乗ったスラミンも同意するように身体を弾ませる。そんな二人(二匹?)の反応にバルは頭を掻き、仕方がないとばかりに頷く。


「しょうがないね、ならあんた等を特別にうちのギルドに入れてやるよ。正式に加入するには本当なら色々と面倒な手続きや書類を書いてもらう必要があるんだけど、今回は仮免という事でこれを渡してやるよ」
「これは?」
「ギルドカードさ。といっても、正式に登録したわけじゃないから今はただのカードにしか過ぎないけどね」


バルは名前が記されていないギルドカードをコトミンに手渡すと、彼女は不思議そうにギルドカードを見つめ、やがて自分の胸の谷間に挟む。その行為に隣に立っていたシズネは頬を引くつかせ、他の者達も何処にしまってるんだと呆れてしまうが、ギルドカードを渡された以上はこれでコトミンも冒険者になった事を意味する。

まだ正式な登録前なので階級も与えられない状態だが、仮とはいえ冒険者になった事は間違いなく、早速バルは他の代表者達に話を付けてコトミンを冒険者として扱うように認めさせる。他の代表者達もシズネのような有名な人間ではなく、無名のしかも頭にスライムを乗せるような華奢な女の子がレナ達のチームに加入する事に文句はなかった。


「……という事で、あの女の子を臨時的にあたしのギルドの冒険者に加入させるよ。これでレナの所も人数が揃ったし、問題なく狩猟勝負を始められるだろう?」
「色々と言いたい事はあるが……まあ、いいだろう」
「私も異議はありません」
「ああ、問題ない」
「良かったねコトミン、これでお前もペットから冒険者に昇格したぞ」
「やった」
「ぷるぷるっ♪」


代表者達がコトミンの加入を認めると、レナは彼女の頭とスラミンの頭を両手で撫でまわす。事情はともかく、結果的にコトミンも晴れて冒険者と認められ、これで代表者全員の選手が揃った。


「うむ!!どうやら準備は整ったようだな!!では、これより狩猟の場に案内しようではないか!!」
「狩猟の場?」
「我々が定期的に狩猟に訪れる地域に案内する!!そこは俺の管理する領地の中でも危険地帯ではあるが、冒険者の君達ならば問題はないだろう!!ではその場所まで俺達に乗ってくれ!!」
「俺達に乗れって……まさか、その場所まで背負って行く気かい!?」
「当然だ!!普通の馬よりも断然に速く辿り着くからな!!はっはっはっ!!」


ギンタロウは当然のように自分の胸元を叩き、体勢を屈めて背中に乗り込むように指示を出す。彼の傍に控えていた他のケンタウロス族の兵士達も同じように体勢を屈め、全員を乗せるつもりなのか背中に乗るように促す。


「どうぞ、お乗りください」
「鞍が必要な方はこちらに用意しています」
「移動中、決して落ちないようにしっかりと我々にしがみ付いて下さい」
「いや、気持ちは有難いんだけどさ……あたしは武器を合わせるとかなり重いよ?それでも平気かい?」
「はっはっはっ!!全く問題ないぞ!?我々は普段から大量の魔獣を仕留めては背負って帰っているからな!!但し、巨人族の者は体型の問題で悪いが別に用意した馬車に乗ってくれ!!」
「……変わった男だな」


巨人族であるガンモと彼に同行する選手を除いた他の者達はケンタウロス族の兵士の背中に乗り込み、しっかりと離れないようにしがみつく。レナは北聖将軍との戦闘の際にも乗った事があるギンタロウの背中に乗り込むと、コトミンも後ろに乗り込んできた。


「えっと……二人ですけど、大丈夫ですか?」
「うむ!!全く問題ないぞ!!むしろ軽すぎて拍子抜けするほどだ!!」
「おおっ……中々良い眺め」
「ぷるるんっ」


ギンタロウは背中にレナとコトミン(+スラミン)が乗り込んだのを確認すると立ち上がり、号令をかけて街中を走り出す。


「出発!!全員、俺に続けぇっ!!」
『うおおおおおっ!!』


ギンタロウを戦闘にケンタウロス族の兵士達が駆け出し、普通の馬よりも圧倒的な速度で駆け抜ける。その様子を残された者達が見送った――
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