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外伝 ~ヨツバ王国編~
北聖将の毒殺
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「報告!!報告!!」
「何だ貴様は!?」
「許可もなく入ってくるな!!」
玉座の間に慌てた様子の兵士が入り込み、それを騎士達が食い止める。この玉座の間への許可無き侵入は厳罰が課せられるのだが、兵士はそれを承知の上で駆け込んできたのか、騎士達に阻まれながらも叫び声をあげた。
「国王代理!!どうか、私の報告をお聞きください!!」
「……何事かしら?」
「ほ、北聖将のハシラ様が……!!」
「ハシラ殿がどうかしたのですか?」
この状況下で兵士がハシラの名前を口にした事にツバサは嫌な予感を覚え、兵士の言葉を促すと、彼は涙を流しながら急報を告げる。
「北聖将のハシラ様が死亡されました!!死因は毒殺、恐らくは暗殺されたかと……!!」
「そんな馬鹿なっ!?」
「ほ、北聖将がっ……!!」
ハシラが死亡したという報告に玉座の間に存在したほぼ全員が動揺し、動じなかったのは二人だけだった。その内の一人はカレハであり、彼女は兵士の報告を受けて黙り込む。そしてもう一人は彼女の傍に控える顔面にいくつもの傷跡がある大男が前に出る。
大男が身を乗り出すと周囲の者達はそのあまりの威圧に圧倒され、北聖将の死の報告を受けて混乱していた者達も静まり返った。彼こそが六聖将の筆頭にして「最強の将」の称号を持つ武人「クレナイ」である。彼の息子であるアカイは王国四騎士の筆頭を務めるが、その彼をも上回る覇気を放つクレナイは兵士の前に赴き、視線を見下ろす。
「ハシラが死んだ、それは真か?」
「は、はい……間違いありません、死亡が確認されています」
「誰が殺した?」
「そ、それはまだ分かりません……」
「詳細を話せ、奴はどのような経緯で死亡したかをだ」
クレナイを前にして兵士は身体を震わせながらハシラの死亡した際の状況を話す。兵士の報告によると、北方領地へ引き返したハシラは国王代理のカレハの命令に逆らい、軍隊を引き返した事を領地に残っていた配下から攻め立てられていたという。しかし、ハシラは頑なに軍隊を引き返した理由を話さず、再度軍隊を動かす様子もなかったという。
ハシラが軍隊を引き返してから翌日の朝、彼の判断に異議を申し立てるために配下の騎士達が彼の自宅に訪れると、そこには既に毒によって死亡していたハシラが横たわっていたという。ハシラの死体の傍にはワイングラスが倒れ、床には葡萄酒が零れたと思われる染みが残っていた。
すぐに騎士達はハシラの治療を行おうとしたが、死後から既に数時間以上も経過していたらしく、ワイングラスと床に広がった葡萄酒を調べた所、どちらも毒物が発見された。考えらえる死因はハシラは葡萄酒に仕込まれた毒を飲んだ事で死亡したという。
「ハシラ様の家で保管されていた酒類を調べてみた所、どうやら全ての酒に毒物が含まれていたらしく、ハシラ様は何者かに暗殺されたのは間違いないとの事です……犯人は捜索中ですが、未だに手掛かりの一つも見つからず、現在も捕まっておりません」
「奴が毒で死んだだと……」
「有り得ません!!そもそもハシラ殿は滅多な事では酒は飲まれません!!」
同じ六聖将であるツバサとクレナイはハシラとも親交があり、彼が普段から一切酒は飲まない事を知っている。友人を招く際に酒を自宅に保管している事は知っているが、普段は滅多に酒を飲む事はない。しかし、兵士によるとハシラの死体と家の中を調査した結果、ハシラが毒で死亡した事は間違いないという。
「ハシラ様の遺体からは毒物を採取した時の反応が身体に残っていました。皮膚は紫色に腫れあがり、全身から甘い香りが漂っている事から使用された毒は「紫毒華」本来は罪人の処刑用の毒ですが、この毒薬を飲み込んだ人間は一切の苦しみも感じずに死亡し、肉体は紫色に染まる猛毒です……」
「……他の者に無理やりに飲まされた可能性は?」
「家の中を捜索しましたが、特に荒らされたような形跡は残っておらず、そもそもハシラ様は自宅に使用人の一人すら住まわせていません。全ての家の窓は鍵が閉められ、扉の方も鍵が掛けられていました。訪れた者達は窓からハシラ様が倒れているのを確認し、止む無く扉を破壊して入って来たそうです」
「そんな馬鹿な……ならば、ハシラ殿は毒が入っている事に気付かずに酒を飲み、死んでしまったというのですか?」
六聖将の中でも用心深く、しかも普段から酒を好まないハシラらしからぬ死に方にツバサは違和感を抱き、本当に彼が毒に気付かずに死んだとは思えなかった。しかし、兵士によればハシラは毒で死亡した事は間違いなく、今現在の北方領地では騒動が起きていた。
「ハシラ様が死亡した事で北方の兵士達は混乱に陥っています。しかも、バルトロス王国の各地から軍勢が集結し、戦争の準備を始めているという噂まで流れております」
「何だと……それは本当の話か?」
「じ、事実確認はまだですが……」
兵士の言葉を聞いたクレナイはツバサの方に振り返り、やがて二人はカレハへと視線を向ける。彼女は兵士の話を全て聞き終えると、やがて命令を下す。
「何だ貴様は!?」
「許可もなく入ってくるな!!」
玉座の間に慌てた様子の兵士が入り込み、それを騎士達が食い止める。この玉座の間への許可無き侵入は厳罰が課せられるのだが、兵士はそれを承知の上で駆け込んできたのか、騎士達に阻まれながらも叫び声をあげた。
「国王代理!!どうか、私の報告をお聞きください!!」
「……何事かしら?」
「ほ、北聖将のハシラ様が……!!」
「ハシラ殿がどうかしたのですか?」
この状況下で兵士がハシラの名前を口にした事にツバサは嫌な予感を覚え、兵士の言葉を促すと、彼は涙を流しながら急報を告げる。
「北聖将のハシラ様が死亡されました!!死因は毒殺、恐らくは暗殺されたかと……!!」
「そんな馬鹿なっ!?」
「ほ、北聖将がっ……!!」
ハシラが死亡したという報告に玉座の間に存在したほぼ全員が動揺し、動じなかったのは二人だけだった。その内の一人はカレハであり、彼女は兵士の報告を受けて黙り込む。そしてもう一人は彼女の傍に控える顔面にいくつもの傷跡がある大男が前に出る。
大男が身を乗り出すと周囲の者達はそのあまりの威圧に圧倒され、北聖将の死の報告を受けて混乱していた者達も静まり返った。彼こそが六聖将の筆頭にして「最強の将」の称号を持つ武人「クレナイ」である。彼の息子であるアカイは王国四騎士の筆頭を務めるが、その彼をも上回る覇気を放つクレナイは兵士の前に赴き、視線を見下ろす。
「ハシラが死んだ、それは真か?」
「は、はい……間違いありません、死亡が確認されています」
「誰が殺した?」
「そ、それはまだ分かりません……」
「詳細を話せ、奴はどのような経緯で死亡したかをだ」
クレナイを前にして兵士は身体を震わせながらハシラの死亡した際の状況を話す。兵士の報告によると、北方領地へ引き返したハシラは国王代理のカレハの命令に逆らい、軍隊を引き返した事を領地に残っていた配下から攻め立てられていたという。しかし、ハシラは頑なに軍隊を引き返した理由を話さず、再度軍隊を動かす様子もなかったという。
ハシラが軍隊を引き返してから翌日の朝、彼の判断に異議を申し立てるために配下の騎士達が彼の自宅に訪れると、そこには既に毒によって死亡していたハシラが横たわっていたという。ハシラの死体の傍にはワイングラスが倒れ、床には葡萄酒が零れたと思われる染みが残っていた。
すぐに騎士達はハシラの治療を行おうとしたが、死後から既に数時間以上も経過していたらしく、ワイングラスと床に広がった葡萄酒を調べた所、どちらも毒物が発見された。考えらえる死因はハシラは葡萄酒に仕込まれた毒を飲んだ事で死亡したという。
「ハシラ様の家で保管されていた酒類を調べてみた所、どうやら全ての酒に毒物が含まれていたらしく、ハシラ様は何者かに暗殺されたのは間違いないとの事です……犯人は捜索中ですが、未だに手掛かりの一つも見つからず、現在も捕まっておりません」
「奴が毒で死んだだと……」
「有り得ません!!そもそもハシラ殿は滅多な事では酒は飲まれません!!」
同じ六聖将であるツバサとクレナイはハシラとも親交があり、彼が普段から一切酒は飲まない事を知っている。友人を招く際に酒を自宅に保管している事は知っているが、普段は滅多に酒を飲む事はない。しかし、兵士によるとハシラの死体と家の中を調査した結果、ハシラが毒で死亡した事は間違いないという。
「ハシラ様の遺体からは毒物を採取した時の反応が身体に残っていました。皮膚は紫色に腫れあがり、全身から甘い香りが漂っている事から使用された毒は「紫毒華」本来は罪人の処刑用の毒ですが、この毒薬を飲み込んだ人間は一切の苦しみも感じずに死亡し、肉体は紫色に染まる猛毒です……」
「……他の者に無理やりに飲まされた可能性は?」
「家の中を捜索しましたが、特に荒らされたような形跡は残っておらず、そもそもハシラ様は自宅に使用人の一人すら住まわせていません。全ての家の窓は鍵が閉められ、扉の方も鍵が掛けられていました。訪れた者達は窓からハシラ様が倒れているのを確認し、止む無く扉を破壊して入って来たそうです」
「そんな馬鹿な……ならば、ハシラ殿は毒が入っている事に気付かずに酒を飲み、死んでしまったというのですか?」
六聖将の中でも用心深く、しかも普段から酒を好まないハシラらしからぬ死に方にツバサは違和感を抱き、本当に彼が毒に気付かずに死んだとは思えなかった。しかし、兵士によればハシラは毒で死亡した事は間違いなく、今現在の北方領地では騒動が起きていた。
「ハシラ様が死亡した事で北方の兵士達は混乱に陥っています。しかも、バルトロス王国の各地から軍勢が集結し、戦争の準備を始めているという噂まで流れております」
「何だと……それは本当の話か?」
「じ、事実確認はまだですが……」
兵士の言葉を聞いたクレナイはツバサの方に振り返り、やがて二人はカレハへと視線を向ける。彼女は兵士の話を全て聞き終えると、やがて命令を下す。
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