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外伝 ~ヨツバ王国編~
ツバサの疑惑
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「……カレハ様、市中ではある噂が広がっています。バルトロス王国で捕らわれているはずの国王様、お呼び他の王族の方々は捕まってはおらず、現在もバルトロス王国にて滞在しているだけであると」
しかし、カレハの傍に仕えていた長身の女性は意義を唱える。身長は180センチを超え、森人族の中でも美貌に優れ、無駄な肉が一切ない体つきが特徴的な女性だった。彼女は何故か地球の「和服」を想像させる服装を身に着け、腰には緑色の鞘に納められた正真正銘の日本刀を携えていた。
彼女の名前は「ツバサ」六聖将の「防護将」を務め、更にハヤテの姉にしてミドリ家の当主を務める。六聖将の中でも特に兵士達から信頼が厚く、七大聖剣の「クサナギ」の管理を任せられている。
「ツバサさん、噂はあくまでも噂です。六聖将でもある貴女まで噂に振り回されてはなりません」
「しかし、過去に召喚された勇者様が残された言葉には「火のない所に煙は立たぬ」とあります。これは諺という勇者様の世界の文化なのですが……」
「その言葉は知っています。和国でも伝わっている文化ですからね……何らかの根拠がなければそもそも噂にはならない、という意味ですね」
ツバサの言葉にカレハは動じた様子も見せずに頷き、二人が異世界の文化を口にした事で周囲の家臣達は戸惑うが、要するにツバサが問いたいのはこの噂の真偽だった。
「先日にバルトロス王国に向かわせた使者からも報告は『バルトロス王国は戦争の準備を進めている』というだけでした。しかし、この使者達に最初に応対をしたのはカレハ様だけだと聞いております」
「はい、そうですね。私が最初に使者から話を伺っています」
「……実は少し前、私の所にも使者は訪れました。彼が言うにはバルトロス王国でデブリ国王の御姿を拝見したと」
「国王様を見た!?」
「捕らわれているのではなかったのか……?」
王国に向かわせた使者が戻って来た時、彼等は「王国が戦争の準備を行っている」という言葉しか告げなかった。しかし、それに疑問を抱いたツバサは独自に使者に抜擢された者と接触し、事の真相を伺っていた。
「失礼ながら、その者の話を聞くところによるとデブリ国王様が姿を現し、近々国へ引き返すという報告を受けたそうです。ですが、それならばどうして我々への報告を怠ったのか尋ねた所、それ以上は何も言わずに黙り込みました」
「なるほど、つまりツバサさんはその男が市中に噂を流した張本人だと言いたいのですね」
「……いいえ、私が知りたいのは彼がどうして国王様から受けた報告を黙っていたのか、それは何者かが使者達を口封じさせたのではないかと考えています」
「口封じ!?」
「一体誰が……」
カレハの言葉にツバサは眉を顰め、自分の言葉の真意を理解しながらわざと論点をずらそうとしているカレハの対応に彼女は不満を募る。
「カレハ様、ここはもう一度だけ使者を送り込み、バルトロス王国が本当に我々と戦争を行う気なのか、彼等の同行を探るべきだと思います。使者は六聖将のハシラ殿か、あるいは私自身が出向くべきだと思います」
「ろ、六聖将が使者を……!?」
「それは……問題ないのか?」
六聖将の中でも忠誠心が高いハシラはツバサも信用しており、領地の問題で彼が最もバルトロス王国へ出向きやすい。ツバサ自身も名乗り上げたのは自分の目で使者の言葉の真偽を確かめたいと思ったためだが、彼女はカレハの反応を伺う。
(私の予想通りならばカレハ様は使者を送るのは拒むはず……)
もしもカレハが使者に口封じを行い、バルトロス王国で監禁ではなく、保護されている国王と他の王族とハシラやツバサが接触するのを恐れているはずだった。ここで彼女が何らかの理由で使者を送るのを反対した場合、ツバサは彼女がヨツバ王国を乗っ取ろうとしていると確信出来る。
「そうですね……分かりました。では、六聖将のハシラ殿とツバサ殿を新たな使者として任命します。準備を整え次第、バルトロス王国へ向かいなさい」
「えっ……」
「ほ、本気ですか国王代理!?」
「六聖将を使者として向かわせるなど……」
しかし、予想に反してカレハは特に反対も行わずにあっさりとハシラとツバサを使者として送り込む事に賛同し、命令を与える。そんな彼女の対応にツバサは呆気に取られ、ここまで余裕の対応を行うカレハに益々疑問を抱く。
(反対しない……?カレハ王女は我々がバルトロス王国に向かっても問題ないと考えている?まさか、六聖将である我々を暗殺して口封じするつもりか?それとも、何か別の考えが……?)
カレハの真意が読み取れず、内心戸惑いながらツバサは彼女の前に跪き、使者の任を引き受ける事を承諾した。
「……国王代理の命、謹んで引き受けさせてもらいます」
「ええ、仮にもしも国王様と弟と妹が無事だった場合、何としても連れて帰って下さい。ハシラの方からは貴女が命令を受けた事を伝えて下さい」
「はっ……承知しました」
異様な余裕の態度を貫くカレハにツバサは疑問を抱きながらも、早速準備を行うために玉座の間を出て行こうとした。しかし、彼女が出る前に扉が外側から開け放たれ、慌てた様子の兵士が中に入り込む。
しかし、カレハの傍に仕えていた長身の女性は意義を唱える。身長は180センチを超え、森人族の中でも美貌に優れ、無駄な肉が一切ない体つきが特徴的な女性だった。彼女は何故か地球の「和服」を想像させる服装を身に着け、腰には緑色の鞘に納められた正真正銘の日本刀を携えていた。
彼女の名前は「ツバサ」六聖将の「防護将」を務め、更にハヤテの姉にしてミドリ家の当主を務める。六聖将の中でも特に兵士達から信頼が厚く、七大聖剣の「クサナギ」の管理を任せられている。
「ツバサさん、噂はあくまでも噂です。六聖将でもある貴女まで噂に振り回されてはなりません」
「しかし、過去に召喚された勇者様が残された言葉には「火のない所に煙は立たぬ」とあります。これは諺という勇者様の世界の文化なのですが……」
「その言葉は知っています。和国でも伝わっている文化ですからね……何らかの根拠がなければそもそも噂にはならない、という意味ですね」
ツバサの言葉にカレハは動じた様子も見せずに頷き、二人が異世界の文化を口にした事で周囲の家臣達は戸惑うが、要するにツバサが問いたいのはこの噂の真偽だった。
「先日にバルトロス王国に向かわせた使者からも報告は『バルトロス王国は戦争の準備を進めている』というだけでした。しかし、この使者達に最初に応対をしたのはカレハ様だけだと聞いております」
「はい、そうですね。私が最初に使者から話を伺っています」
「……実は少し前、私の所にも使者は訪れました。彼が言うにはバルトロス王国でデブリ国王の御姿を拝見したと」
「国王様を見た!?」
「捕らわれているのではなかったのか……?」
王国に向かわせた使者が戻って来た時、彼等は「王国が戦争の準備を行っている」という言葉しか告げなかった。しかし、それに疑問を抱いたツバサは独自に使者に抜擢された者と接触し、事の真相を伺っていた。
「失礼ながら、その者の話を聞くところによるとデブリ国王様が姿を現し、近々国へ引き返すという報告を受けたそうです。ですが、それならばどうして我々への報告を怠ったのか尋ねた所、それ以上は何も言わずに黙り込みました」
「なるほど、つまりツバサさんはその男が市中に噂を流した張本人だと言いたいのですね」
「……いいえ、私が知りたいのは彼がどうして国王様から受けた報告を黙っていたのか、それは何者かが使者達を口封じさせたのではないかと考えています」
「口封じ!?」
「一体誰が……」
カレハの言葉にツバサは眉を顰め、自分の言葉の真意を理解しながらわざと論点をずらそうとしているカレハの対応に彼女は不満を募る。
「カレハ様、ここはもう一度だけ使者を送り込み、バルトロス王国が本当に我々と戦争を行う気なのか、彼等の同行を探るべきだと思います。使者は六聖将のハシラ殿か、あるいは私自身が出向くべきだと思います」
「ろ、六聖将が使者を……!?」
「それは……問題ないのか?」
六聖将の中でも忠誠心が高いハシラはツバサも信用しており、領地の問題で彼が最もバルトロス王国へ出向きやすい。ツバサ自身も名乗り上げたのは自分の目で使者の言葉の真偽を確かめたいと思ったためだが、彼女はカレハの反応を伺う。
(私の予想通りならばカレハ様は使者を送るのは拒むはず……)
もしもカレハが使者に口封じを行い、バルトロス王国で監禁ではなく、保護されている国王と他の王族とハシラやツバサが接触するのを恐れているはずだった。ここで彼女が何らかの理由で使者を送るのを反対した場合、ツバサは彼女がヨツバ王国を乗っ取ろうとしていると確信出来る。
「そうですね……分かりました。では、六聖将のハシラ殿とツバサ殿を新たな使者として任命します。準備を整え次第、バルトロス王国へ向かいなさい」
「えっ……」
「ほ、本気ですか国王代理!?」
「六聖将を使者として向かわせるなど……」
しかし、予想に反してカレハは特に反対も行わずにあっさりとハシラとツバサを使者として送り込む事に賛同し、命令を与える。そんな彼女の対応にツバサは呆気に取られ、ここまで余裕の対応を行うカレハに益々疑問を抱く。
(反対しない……?カレハ王女は我々がバルトロス王国に向かっても問題ないと考えている?まさか、六聖将である我々を暗殺して口封じするつもりか?それとも、何か別の考えが……?)
カレハの真意が読み取れず、内心戸惑いながらツバサは彼女の前に跪き、使者の任を引き受ける事を承諾した。
「……国王代理の命、謹んで引き受けさせてもらいます」
「ええ、仮にもしも国王様と弟と妹が無事だった場合、何としても連れて帰って下さい。ハシラの方からは貴女が命令を受けた事を伝えて下さい」
「はっ……承知しました」
異様な余裕の態度を貫くカレハにツバサは疑問を抱きながらも、早速準備を行うために玉座の間を出て行こうとした。しかし、彼女が出る前に扉が外側から開け放たれ、慌てた様子の兵士が中に入り込む。
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