不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

結婚の資格

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「な、なるほど……そういう理由があったか。だが、しかし……」
「言っておくがカンナギ神殿と掟を作り出したのはデブリ国王、お前だろう?自分が定めた制度だ。素直に諦めろ」
「父上になんて口をっ……!!」
「言っておくが西聖将が忠誠を誓うのは国であって国王ではない、そこを間違えるな」
「ぐぬぬっ……!!」


自分達を救い出すためにティナがレナと結婚しなければならない理由を知ったデブリ国王は黙り込み、カンナギ神殿の創設も掟に関しても彼が大きく関わっている。厳密に言えば彼がまだ少年時代だった頃、当時は「師」として崇めていたバルトロス帝国に召喚された勇者の頼みだからこそ彼はヨツバ王国内に神殿を建てた。




『ねえ、デブリ。もしも俺が死んだ後にまた勇者が召喚された時、その勇者のために何か残したいんだ』
『デブリ王子、俺からもお願いします』
『師匠、ナオ、何を弱気な事を……』


昔の記憶を思い返し、デブリはかつて自分を救ってくれた勇者の事を思い出す。一人はバルトロス帝国(バルトロス王国の建国前の時代に存在した国家)に召喚された「初級魔術師」の勇者、もう一人はヨツバ王国が「エルフ王国」と呼ばれていた時代に召喚された「暗殺者」の勇者、どちらもデブリにとっては大切な人達だった。


『いや、リーリスの奴が昨日変な夢を見たとか言ってね。アイリス様がどうたらこうたらとか……』
『まあ、リーリスさんの話はともかく……僕達の様に地球から召喚される人がまた現れた時の場合を考えて何かを残したいんです。だから、協力してくれますか?』
『分かりましたぞ!!師匠と親友の頼みとあればこのデブリ、何でもします!!』




彼等は誰にでも優しく、時には厳しく、一度怒らせたら手が付けられない性格の勇者だった。だが、彼等の行動理念は常に他人のために動き、決して私利私欲で勇者である自分の力を利用した事は無い。過去に召喚されたどんな勇者よりも二人の方が立派な人物だとデブリは信じている。

そんな勇者の頼みだからこそデブリは国王となった後に神殿を建設し、ついでに当時の帝国の科学者の協力を得て精霊薬を生成する施設を作り出して貰った。ちなみに掟に関しては最初は誰にでも入られるようにすると困るという理由で適当に「ヨツバ王族と神殿の管理者以外は入れない」という物に定めたのだが、まさかこんな形で自分の娘が他国のしかも王子であるレナと結婚に至る理由になるなど思いもしなかった。


「お父様、別によろしいのではないですか?レナ王子はバルトロス王国の第一王子、それにハヅキ家の血筋でもありますもの。結婚の資格は十分にあるのでは?」
「ノル、何を言い出すんだ!?ティナは誰とも結婚させない!!僕達家族だけのティナだろう!?」
「え~……」
「言っておくが、結婚を認める認めないの話はどうでもいい。当人同士が了承した以上、この国の法律では結婚を妨げる事は出来ないはずだ」


ヨツバ王国では結婚をする場合、大事なのは当人の意思であり、家族に許可を貰う必要はない。なのでデブリ国王たちが反対した所でレナとティナが結婚する気持ちがあるのならば結婚を妨げる事は出来なかった。しかし、大切な娘が自分達のためによく知らない男と結婚するなど素直に納得できるはずがない。


「だ、駄目じゃ駄目じゃ!!制度を決めたのは確かに儂だが、それならば制度を改めれば良い!!この場を以て宣言しよう、カンナギ神殿には誰であろうと立ち入る事を許可すると!!」
「そんな屁理屈が通ると思うな。制度を撤廃し、新たな制度を発令したとしてもこいつが入ったのは制度が撤廃される前の話だ。今更制度を取り下げようと私は認めないぞ」
「……という事らしいなので、お義父さん。よろしくお願いします」
「誰がお義父さんじゃ!?」


レナが頭を下げるとデブリ国王は憤慨するが、そんな父親の姿をみていい加減に起こったティナが文句を告げる。


「もう!!いい加減にしてよお父さん!!レナたんは命懸けでお父さんたちを救ってくれたんだよ?レナたん達が来てくれなかったら、今頃私も皆も殺されてたんだよ!?わがまま言わないで!!」
「ううっ……!?し、しかしだな、ティナはそれでいいのか?この男と結婚する事が嫌ではないのか?」
「えっ?全然嫌じゃないよ?レナたんと結婚できるのならすっごく嬉しいもん!!」
「「てぃ、ティナぁああっ……」」
「騒がしい人達っすね……」
「全くでござる」


満面の笑みでレナとの結婚をする事が嫌ではない事を告げたティナにデブリ国王とアルン王子は崩れ落ち、その様子を見ていたエリナとハンゾウは呆れた表情を浮かべる。そんな彼等に対してレナは更に爆弾発言を行う。


「あ、それと……結婚はティナだけじゃなくて、こちらのコトミンとも一緒にします」
「よろしく」
「誰だお主は!?」
「ちょっと待て、ティナだけではなく側室まで作る気か!?」
「違う、私が第一婦人でティナが第二婦人」
「え~……ずるいよコトミンちゃん」
「あの、その中にあたしも含めて貰っていいですかね?」
「「ふ、ふ、ふざけるなぁあああっ!!」」


コトミンとエリナの発言にデブリ国王とアルン王子は激怒するが、しばらくの間は彼等にこの結婚はあくまでも形だけのものであり、用事を済ませればすぐに離婚する事を伝えるとどうにか落ち着いた――
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