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外伝 ~ヨツバ王国編~
石像の街
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「……ていうか、本当にどうなってるんだ?ここまで来て兵士がいないなんておかしいだろ」
「戦闘は避けられるのだから喜ぶべき事でござる……等と言っていられない程におかしな状況でござるな」
「もう、城門まで辿り着きそう」
草原を進み、遂には王都の目前まで近付いてきたレナ達は兵士達の姿が確認出来ない事に疑問を抱かずにはいられず、レナはアイリスと交信を行う。
『アイリス……アイリス?』
『……ん……す』
しかし、何故かアイリスと交信を行おうとしてもまるで電波が悪い携帯電話のように途切れ途切れにしか彼女の声(思念)が聞こえず、レナは周囲を振り返る。すると城門の近くに「月光樹」が生えている事に気付き、この樹木のせいでアイリスとの交信が遮断された事に気付く。
アイリスは地球の生物、正確には魂を持つ存在が近くにいるとレナと交信が行えない。そして元々は地球の植物であった月光樹が植えられている場所では彼女との交信が上手く繋がらない。しかも王都にはこの月光樹が至る場所に植え付けられているため、王都の様子を調べる事も難しい。
交信が出来ない以上はアイリスに頼る事は出来ず、最後に交信を行ったのは昨夜の話である。いつでもアイリスと交信できる日常を過ごし過ぎたせいで彼女に定期的に交信をする事を怠ったレナは、自分のミスに頭を悩ませる。
(アイリスと交信できないとなると街の様子を調べられない……どうして城壁の兵士達は何もしないんだ?)
城壁の上には兵士達らしき姿が見えるが、何故か固まったまま動かず、レナ達に対して何の反応も示さない。城壁の上の兵士は人形で罠でも仕掛けているのかと思われた時、唐突に城壁が内側から開け放たれた。
「何!?」
「城門が……!?」
自分達が何かをする前にまさか城門が開くとは思わなかったレナ達は咄嗟に身構えるが、予想に反して開け放たれた城門の内側からは兵士の大群が現れる様子もない。開かれた城門を見てレナ達は冷や汗を流し、自分達の存在に気付いて城門を開いたのかと思ったが、それにしては何の反応もない事に疑問を抱く。
「……聞け、城門の兵士達よ!!我が名はヨツバ王国の第一王子アルン!!我等が国の王が帰還したぞ!!早く出迎えぬか!!」
アルンが意を決して城壁の兵士達に声を掛けるが、それでも彼等が動く様子はなく、城門を開いただけで何の反応も示さない。そんな姿を見てアルンは怒りを抱き、デブリ国王に振り返る。
「父上、ここは私が先行して様子を確かめてきます。どうか、ここでお待ちください」
「何を言う、これが罠だとしたらどうする!?」
「その可能性があるからこそ、私が先に行きます。父上を危険な目に合わせるわけにはいきません!!」
「待て、アルン!?」
デブリ国王の制止を振り切ってアルンはバイコーンを走らせると、城門を潜り抜けて街中にまで入り込む。そして彼は街に入って早々に目の前に広がる光景に圧倒され、バイコーンから落馬しかける。その様子を見て慌てて他の者達も入り込み、アルンの元へ駆けつけた。
「アルンよ!!いったいどうし……」
「お兄さま、何が……」
「お兄ちゃん、大丈夫……えっ?」
「こ、これは……何が起きたんだ!?」
――城門を潜り抜けた全員の視界には街道に広がる無数の「石像」を目撃する。全ての石像は恐怖と驚愕が入り混じった表情を浮かべた状態で放置され、すぐに彼等が城下町の住民である事をレナ達は見抜く。しかも見渡す限りでも何十人、何百人の森人族が石像と化していた。
石化される直前に彼等は何を見たのか全ての石像は逃走を試みようとした状態で固まっており、動く気配がない。何よりも城壁の兵士たちも住民と同じ被害を受けていたらしく、今更ながらに彼等も石像と化した状態で城壁の上に立っていた事にレナ達は気付く。
「こ、これはいったい……何が起きたというのだ!?」
「兄貴、精霊薬を!!精霊薬でこの人達を救いましょう!!」
「いや、もしも街の住民全員が石像にされていたら……数が足りなくなる」
視界の範囲内でも数百人の住民の石像が存在し、もしも城下町の住民全員が石像にされていた場合はレナ達だけではどうしようもできない。精霊薬で石化を解除しようと数が足りなくなり、そうなれば東壁街の草原で石化されたシズネ達も救い出す事は出来なくなる。
だが、状況を確認するためには石化された人間から事情を聞くしかなく、レナは城壁の上の兵士に視線を向け、街を見渡せる彼等ならば街の人間が石化された原因を知っているのではないかと思い、城壁に移動しようとした。
「あそこにいる兵士達を復活させて事情を聞こう……」
「ぷるぷるっ!!」
「レナ殿!!何かが近づいてくるでござる!!」
レナが城壁に移動しようとした時、肩に乗っていたスラミンが震え出し、直後にハンゾウも気配感知を発動させて自分達に近付いてくる存在に気付く。感知能力に長けたスライムと忍者であるハンゾウの言葉を聞いてレナ達は身構えると、近くの建物の屋根の上から人影が出現し、地上へ向けて降り立つ
「戦闘は避けられるのだから喜ぶべき事でござる……等と言っていられない程におかしな状況でござるな」
「もう、城門まで辿り着きそう」
草原を進み、遂には王都の目前まで近付いてきたレナ達は兵士達の姿が確認出来ない事に疑問を抱かずにはいられず、レナはアイリスと交信を行う。
『アイリス……アイリス?』
『……ん……す』
しかし、何故かアイリスと交信を行おうとしてもまるで電波が悪い携帯電話のように途切れ途切れにしか彼女の声(思念)が聞こえず、レナは周囲を振り返る。すると城門の近くに「月光樹」が生えている事に気付き、この樹木のせいでアイリスとの交信が遮断された事に気付く。
アイリスは地球の生物、正確には魂を持つ存在が近くにいるとレナと交信が行えない。そして元々は地球の植物であった月光樹が植えられている場所では彼女との交信が上手く繋がらない。しかも王都にはこの月光樹が至る場所に植え付けられているため、王都の様子を調べる事も難しい。
交信が出来ない以上はアイリスに頼る事は出来ず、最後に交信を行ったのは昨夜の話である。いつでもアイリスと交信できる日常を過ごし過ぎたせいで彼女に定期的に交信をする事を怠ったレナは、自分のミスに頭を悩ませる。
(アイリスと交信できないとなると街の様子を調べられない……どうして城壁の兵士達は何もしないんだ?)
城壁の上には兵士達らしき姿が見えるが、何故か固まったまま動かず、レナ達に対して何の反応も示さない。城壁の上の兵士は人形で罠でも仕掛けているのかと思われた時、唐突に城壁が内側から開け放たれた。
「何!?」
「城門が……!?」
自分達が何かをする前にまさか城門が開くとは思わなかったレナ達は咄嗟に身構えるが、予想に反して開け放たれた城門の内側からは兵士の大群が現れる様子もない。開かれた城門を見てレナ達は冷や汗を流し、自分達の存在に気付いて城門を開いたのかと思ったが、それにしては何の反応もない事に疑問を抱く。
「……聞け、城門の兵士達よ!!我が名はヨツバ王国の第一王子アルン!!我等が国の王が帰還したぞ!!早く出迎えぬか!!」
アルンが意を決して城壁の兵士達に声を掛けるが、それでも彼等が動く様子はなく、城門を開いただけで何の反応も示さない。そんな姿を見てアルンは怒りを抱き、デブリ国王に振り返る。
「父上、ここは私が先行して様子を確かめてきます。どうか、ここでお待ちください」
「何を言う、これが罠だとしたらどうする!?」
「その可能性があるからこそ、私が先に行きます。父上を危険な目に合わせるわけにはいきません!!」
「待て、アルン!?」
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「アルンよ!!いったいどうし……」
「お兄さま、何が……」
「お兄ちゃん、大丈夫……えっ?」
「こ、これは……何が起きたんだ!?」
――城門を潜り抜けた全員の視界には街道に広がる無数の「石像」を目撃する。全ての石像は恐怖と驚愕が入り混じった表情を浮かべた状態で放置され、すぐに彼等が城下町の住民である事をレナ達は見抜く。しかも見渡す限りでも何十人、何百人の森人族が石像と化していた。
石化される直前に彼等は何を見たのか全ての石像は逃走を試みようとした状態で固まっており、動く気配がない。何よりも城壁の兵士たちも住民と同じ被害を受けていたらしく、今更ながらに彼等も石像と化した状態で城壁の上に立っていた事にレナ達は気付く。
「こ、これはいったい……何が起きたというのだ!?」
「兄貴、精霊薬を!!精霊薬でこの人達を救いましょう!!」
「いや、もしも街の住民全員が石像にされていたら……数が足りなくなる」
視界の範囲内でも数百人の住民の石像が存在し、もしも城下町の住民全員が石像にされていた場合はレナ達だけではどうしようもできない。精霊薬で石化を解除しようと数が足りなくなり、そうなれば東壁街の草原で石化されたシズネ達も救い出す事は出来なくなる。
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「ぷるぷるっ!!」
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レナが城壁に移動しようとした時、肩に乗っていたスラミンが震え出し、直後にハンゾウも気配感知を発動させて自分達に近付いてくる存在に気付く。感知能力に長けたスライムと忍者であるハンゾウの言葉を聞いてレナ達は身構えると、近くの建物の屋根の上から人影が出現し、地上へ向けて降り立つ
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