不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
850 / 2,091
S級冒険者編

S級冒険者〈ヨクヒ〉

しおりを挟む
――カンエンの案内の元、彼女の妹がいるという屋敷へと向かう。S級冒険者となると住んでいる屋敷も立派なのかと思われたが、何故か案内された場所は建物は随分と年季があるボロ屋敷だった。


「ここです。この屋敷にヨクヒは住んでいます」
「ここって……なんか、凄い建物ですね」
「相変わらずでござるなここは」
「うむ、前よりも老朽化が進んでいるな」
「少し、建物が傾いているように見えるわね」
「す、すいません……妹には何度も屋敷を建て直すように言っているのですが、聞き入れてくれず……」


カンエンの案内の元、レナ達は屋敷の敷地内に入ると彼女は何故か建物の中に入らず、裏庭を移動する。


「申し訳ありませんが、この人数で建物に入ると床が抜け落ちる可能性があるのでこちらに付いてきてください」
「ええっ……」
「ご迷惑をおかけして本当にごめんなさい……」
「貴女のせいじゃないわ。全く、あの娘も相変わらずね」


案内されるがままにレナ達は移動を行うと、やがて敷地内に存在する池の前に立つ。池を覗くとこちらの方だけは手入れがされているのか綺麗に整っており、魚が何匹か見えた。


「あ、池がある……こっちはちゃんと手入れしてるんだ」
「いや、それは池ではありません」
「え?いや、でも何処からどう見ても……」
「レナ殿、魚をよく見て欲しいでござる」


レナはカンエンとハンゾウの言葉に不思議に思いながらも覗き込むと、池の中に入っているのは鯉などではなく、食用の魚が泳ぎまわっていた。しかもどれもこれも大型魚であり、はっきりといって観賞魚には向いていない姿をした魚もいた。


「何だこれ……ここの家主の趣味?」
「まあ、確かにそう思われても仕方ありませんが……妹曰く、この魚たちは飼育しているのではなく、食用として置いているのです」
「食用って……えっ?これ食べるの?」
「あ、駄目です!!迂闊に近づいては!!」


カンエンの言葉を聞いてレナは驚いて池の中を更に覗き込もうとした時、不意に殺気を感じて頭を下げる。その直後、レナの頭部が存在した箇所に「銛」が通り抜けると、屋敷の囲いの壁に突き刺さる。

危うく頭部を貫かれそうになったレナは後方を振り返ると、そこには屋敷の中から銛を投げ込んだと思われる人物が立っており、その人物の姿を見てレナは呆気に取られた。


「子供っ……!?」
「てめえ、何してんだっ!!」


姿を現したのは年齢が12、3歳ぐらいの容姿の少女であり、黒髪をショートカットにまとめ、カンエンとよく似た顔立ちをしていた。但し、その手には長さ3メートル近くも存在する槍が握り締められ、刃の部分が蛇のように曲がりくねっていた。

少女の武器を見たレナは三国志演義の張飛が装備する「蛇棒」と呼ばれる武器だと見抜き、咄嗟に空間魔法を発動させて武器を取り出そうとする。しかし、その前に少女の方が駆け出してレナの元へ向かう。


「俺の魚に手を出そうとはいい度胸だな!!ぶっ殺してやる!!」
「うわっ!?」
「レナ殿、これを!!」


空間魔法を発動させる前に襲いかかって来た少女に対し、咄嗟にハンゾウは自分の腰に差していた短刀をレナに渡すと、咄嗟にそれを受け取ったレナは短刀の刃で振り下ろされた刃を受ける。しかし、子供が繰り出したとは到底信じられない程の威力にレナは膝を崩す。どうにか短刀で攻撃を止める事に成功したが、まるで巨人族のように重い一撃と腕力にレナは圧倒される。


「おらぁっ!!」
「ぐうっ!?」
「止めろヨクヒ、なんて事をっ!?」


ヨクヒはレナの腹部に蹴りを放ち、壁に彼の身体を激突させる。それを見てカンエンが咄嗟に止めようとしたが、頭に血が上がったヨクヒは聞こえていないのかレナに向けて蛇棒を突き刺そうとした。


「これで終わりだっ……!?」
「いい加減にしろよてめえっ!!」


しかし、攻撃を受けた事でレナも切れて怒りを抱くと、瞳を紅色に変色させてハンゾウの短刀を振り払う。咄嗟にヨクヒは蛇棒で受け止めようとしたが、あまりの威力に今度は彼女の方が吹き飛ばされ、戸惑いの表情を浮かべながらもなんとか着地する。

自分が吹き飛ばされたという事実にヨクヒは驚きを隠せず、いったい何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。しかし、その隙を逃さずにレナはハンゾウの短刀を左手に握り締めると右手に空間魔法を発動させ、漆黒の大太刀を抜き取ると二刀流でヨクヒに挑む。


「旋風!!」
「うわっ!?」


レナは両手で刀を左右から振り払った瞬間、ヨクヒは蛇棒の柄で受ける事に成功するが身体が後方へと更に吹き飛ばされてしまう。しかし、途中で地面に蛇棒を突き刺す事でまるで新体操選手のように身体を回転させ、逆に勢いを利用してレナに向かう。


「この野郎!!」
「おらぁっ!!」
「そこまでよ」


二人は同時に攻撃を繰り出そうとした瞬間、空中に魔法陣が出現して二人の攻撃を弾き返す。唐突に現れた魔法陣にレナもヨクヒも戸惑うが、二人の争いを止めたマリアがため息を吐き出す。
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。