850 / 2,090
S級冒険者編
S級冒険者〈ヨクヒ〉
しおりを挟む
――カンエンの案内の元、彼女の妹がいるという屋敷へと向かう。S級冒険者となると住んでいる屋敷も立派なのかと思われたが、何故か案内された場所は建物は随分と年季があるボロ屋敷だった。
「ここです。この屋敷にヨクヒは住んでいます」
「ここって……なんか、凄い建物ですね」
「相変わらずでござるなここは」
「うむ、前よりも老朽化が進んでいるな」
「少し、建物が傾いているように見えるわね」
「す、すいません……妹には何度も屋敷を建て直すように言っているのですが、聞き入れてくれず……」
カンエンの案内の元、レナ達は屋敷の敷地内に入ると彼女は何故か建物の中に入らず、裏庭を移動する。
「申し訳ありませんが、この人数で建物に入ると床が抜け落ちる可能性があるのでこちらに付いてきてください」
「ええっ……」
「ご迷惑をおかけして本当にごめんなさい……」
「貴女のせいじゃないわ。全く、あの娘も相変わらずね」
案内されるがままにレナ達は移動を行うと、やがて敷地内に存在する池の前に立つ。池を覗くとこちらの方だけは手入れがされているのか綺麗に整っており、魚が何匹か見えた。
「あ、池がある……こっちはちゃんと手入れしてるんだ」
「いや、それは池ではありません」
「え?いや、でも何処からどう見ても……」
「レナ殿、魚をよく見て欲しいでござる」
レナはカンエンとハンゾウの言葉に不思議に思いながらも覗き込むと、池の中に入っているのは鯉などではなく、食用の魚が泳ぎまわっていた。しかもどれもこれも大型魚であり、はっきりといって観賞魚には向いていない姿をした魚もいた。
「何だこれ……ここの家主の趣味?」
「まあ、確かにそう思われても仕方ありませんが……妹曰く、この魚たちは飼育しているのではなく、食用として置いているのです」
「食用って……えっ?これ食べるの?」
「あ、駄目です!!迂闊に近づいては!!」
カンエンの言葉を聞いてレナは驚いて池の中を更に覗き込もうとした時、不意に殺気を感じて頭を下げる。その直後、レナの頭部が存在した箇所に「銛」が通り抜けると、屋敷の囲いの壁に突き刺さる。
危うく頭部を貫かれそうになったレナは後方を振り返ると、そこには屋敷の中から銛を投げ込んだと思われる人物が立っており、その人物の姿を見てレナは呆気に取られた。
「子供っ……!?」
「てめえ、何してんだっ!!」
姿を現したのは年齢が12、3歳ぐらいの容姿の少女であり、黒髪をショートカットにまとめ、カンエンとよく似た顔立ちをしていた。但し、その手には長さ3メートル近くも存在する槍が握り締められ、刃の部分が蛇のように曲がりくねっていた。
少女の武器を見たレナは三国志演義の張飛が装備する「蛇棒」と呼ばれる武器だと見抜き、咄嗟に空間魔法を発動させて武器を取り出そうとする。しかし、その前に少女の方が駆け出してレナの元へ向かう。
「俺の魚に手を出そうとはいい度胸だな!!ぶっ殺してやる!!」
「うわっ!?」
「レナ殿、これを!!」
空間魔法を発動させる前に襲いかかって来た少女に対し、咄嗟にハンゾウは自分の腰に差していた短刀をレナに渡すと、咄嗟にそれを受け取ったレナは短刀の刃で振り下ろされた刃を受ける。しかし、子供が繰り出したとは到底信じられない程の威力にレナは膝を崩す。どうにか短刀で攻撃を止める事に成功したが、まるで巨人族のように重い一撃と腕力にレナは圧倒される。
「おらぁっ!!」
「ぐうっ!?」
「止めろヨクヒ、なんて事をっ!?」
ヨクヒはレナの腹部に蹴りを放ち、壁に彼の身体を激突させる。それを見てカンエンが咄嗟に止めようとしたが、頭に血が上がったヨクヒは聞こえていないのかレナに向けて蛇棒を突き刺そうとした。
「これで終わりだっ……!?」
「いい加減にしろよてめえっ!!」
しかし、攻撃を受けた事でレナも切れて怒りを抱くと、瞳を紅色に変色させてハンゾウの短刀を振り払う。咄嗟にヨクヒは蛇棒で受け止めようとしたが、あまりの威力に今度は彼女の方が吹き飛ばされ、戸惑いの表情を浮かべながらもなんとか着地する。
自分が吹き飛ばされたという事実にヨクヒは驚きを隠せず、いったい何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。しかし、その隙を逃さずにレナはハンゾウの短刀を左手に握り締めると右手に空間魔法を発動させ、漆黒の大太刀を抜き取ると二刀流でヨクヒに挑む。
「旋風!!」
「うわっ!?」
レナは両手で刀を左右から振り払った瞬間、ヨクヒは蛇棒の柄で受ける事に成功するが身体が後方へと更に吹き飛ばされてしまう。しかし、途中で地面に蛇棒を突き刺す事でまるで新体操選手のように身体を回転させ、逆に勢いを利用してレナに向かう。
「この野郎!!」
「おらぁっ!!」
「そこまでよ」
二人は同時に攻撃を繰り出そうとした瞬間、空中に魔法陣が出現して二人の攻撃を弾き返す。唐突に現れた魔法陣にレナもヨクヒも戸惑うが、二人の争いを止めたマリアがため息を吐き出す。
「ここです。この屋敷にヨクヒは住んでいます」
「ここって……なんか、凄い建物ですね」
「相変わらずでござるなここは」
「うむ、前よりも老朽化が進んでいるな」
「少し、建物が傾いているように見えるわね」
「す、すいません……妹には何度も屋敷を建て直すように言っているのですが、聞き入れてくれず……」
カンエンの案内の元、レナ達は屋敷の敷地内に入ると彼女は何故か建物の中に入らず、裏庭を移動する。
「申し訳ありませんが、この人数で建物に入ると床が抜け落ちる可能性があるのでこちらに付いてきてください」
「ええっ……」
「ご迷惑をおかけして本当にごめんなさい……」
「貴女のせいじゃないわ。全く、あの娘も相変わらずね」
案内されるがままにレナ達は移動を行うと、やがて敷地内に存在する池の前に立つ。池を覗くとこちらの方だけは手入れがされているのか綺麗に整っており、魚が何匹か見えた。
「あ、池がある……こっちはちゃんと手入れしてるんだ」
「いや、それは池ではありません」
「え?いや、でも何処からどう見ても……」
「レナ殿、魚をよく見て欲しいでござる」
レナはカンエンとハンゾウの言葉に不思議に思いながらも覗き込むと、池の中に入っているのは鯉などではなく、食用の魚が泳ぎまわっていた。しかもどれもこれも大型魚であり、はっきりといって観賞魚には向いていない姿をした魚もいた。
「何だこれ……ここの家主の趣味?」
「まあ、確かにそう思われても仕方ありませんが……妹曰く、この魚たちは飼育しているのではなく、食用として置いているのです」
「食用って……えっ?これ食べるの?」
「あ、駄目です!!迂闊に近づいては!!」
カンエンの言葉を聞いてレナは驚いて池の中を更に覗き込もうとした時、不意に殺気を感じて頭を下げる。その直後、レナの頭部が存在した箇所に「銛」が通り抜けると、屋敷の囲いの壁に突き刺さる。
危うく頭部を貫かれそうになったレナは後方を振り返ると、そこには屋敷の中から銛を投げ込んだと思われる人物が立っており、その人物の姿を見てレナは呆気に取られた。
「子供っ……!?」
「てめえ、何してんだっ!!」
姿を現したのは年齢が12、3歳ぐらいの容姿の少女であり、黒髪をショートカットにまとめ、カンエンとよく似た顔立ちをしていた。但し、その手には長さ3メートル近くも存在する槍が握り締められ、刃の部分が蛇のように曲がりくねっていた。
少女の武器を見たレナは三国志演義の張飛が装備する「蛇棒」と呼ばれる武器だと見抜き、咄嗟に空間魔法を発動させて武器を取り出そうとする。しかし、その前に少女の方が駆け出してレナの元へ向かう。
「俺の魚に手を出そうとはいい度胸だな!!ぶっ殺してやる!!」
「うわっ!?」
「レナ殿、これを!!」
空間魔法を発動させる前に襲いかかって来た少女に対し、咄嗟にハンゾウは自分の腰に差していた短刀をレナに渡すと、咄嗟にそれを受け取ったレナは短刀の刃で振り下ろされた刃を受ける。しかし、子供が繰り出したとは到底信じられない程の威力にレナは膝を崩す。どうにか短刀で攻撃を止める事に成功したが、まるで巨人族のように重い一撃と腕力にレナは圧倒される。
「おらぁっ!!」
「ぐうっ!?」
「止めろヨクヒ、なんて事をっ!?」
ヨクヒはレナの腹部に蹴りを放ち、壁に彼の身体を激突させる。それを見てカンエンが咄嗟に止めようとしたが、頭に血が上がったヨクヒは聞こえていないのかレナに向けて蛇棒を突き刺そうとした。
「これで終わりだっ……!?」
「いい加減にしろよてめえっ!!」
しかし、攻撃を受けた事でレナも切れて怒りを抱くと、瞳を紅色に変色させてハンゾウの短刀を振り払う。咄嗟にヨクヒは蛇棒で受け止めようとしたが、あまりの威力に今度は彼女の方が吹き飛ばされ、戸惑いの表情を浮かべながらもなんとか着地する。
自分が吹き飛ばされたという事実にヨクヒは驚きを隠せず、いったい何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。しかし、その隙を逃さずにレナはハンゾウの短刀を左手に握り締めると右手に空間魔法を発動させ、漆黒の大太刀を抜き取ると二刀流でヨクヒに挑む。
「旋風!!」
「うわっ!?」
レナは両手で刀を左右から振り払った瞬間、ヨクヒは蛇棒の柄で受ける事に成功するが身体が後方へと更に吹き飛ばされてしまう。しかし、途中で地面に蛇棒を突き刺す事でまるで新体操選手のように身体を回転させ、逆に勢いを利用してレナに向かう。
「この野郎!!」
「おらぁっ!!」
「そこまでよ」
二人は同時に攻撃を繰り出そうとした瞬間、空中に魔法陣が出現して二人の攻撃を弾き返す。唐突に現れた魔法陣にレナもヨクヒも戸惑うが、二人の争いを止めたマリアがため息を吐き出す。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。