不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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S級冒険者編

水竜

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「どうするホネミン?これ以上近づけば気づかれそうだけど……」
『そうですね、この湖には用事はありませんし離れましょう』
「……ちょっと待ちなさい、様子がおかしいわ」


湖が甲殻獣の群れが存在する間は近づけないと判断したレナ達は引き下がろうとするが、シズネが湖の水面の異変に気付き、大きな影を視界に捉える。他の者がそれに気づいたときには影は岸部の方に接近し、やがて水飛沫を舞い上げながら巨大な生物が出現した。



――シャアァアアッ!!



姿を現したのは全身が青色の鱗に覆われた巨大な蛇のような生物だが、顔の形は蛇というよりも「竜」を想像させる。突如として現れた生物は岸部に集まった甲殻獣に視線を向けると、顎が外れんばかりに開いて威嚇の声を上げる。


「シャアアッ……!!」
「フガッ……!?」
「フゴォッ……フゴォオオッ!!」


水面から出現した巨大生物に対して甲殻獣の群れも負けずに威嚇するように鳴き声を上げるが、体格差は圧倒的に違い、水中から現れた生物は甲殻獣の一体に喰らいつく。


「シャアッ!!」
「ッ……!?」
『フガァッ……!?』


甲殻獣の1体に喰らいついた生物はそのまま甲殻獣を蛇のように丸呑みすると、岸部に屯していた他の甲殻獣は動揺したように距離をとる。その様子を見ていた生物は自分の縄張りから去っていく甲殻獣の大群の姿を見て咆哮を放つ。その様子を遠目で観察していたホネミンは生物の正体を見抜く。


『あれを見てください、水竜ですよ!!私も見るのは数百年ぶりです!!』
「水竜?」
「竜種の一体よ。外見は蛇と似てはいるけれど、本来は海にしか生息しないはずの竜種のはずだけど……どうやらこの大迷宮では湖に水竜が生息しているようね」
「あ、あれが水竜なのか……僕も初めて見た」
「俺もだ」
「僕も……」


レナも含めてダイン、ゴンゾウ、ミナも水竜を初めて見たらしく、本来は海にしか生息しない生物ならば見かけたことがないのは当たり前の話だった。ホネミンでさえも数百年ぶりに姿を確認したらしく、シズネの場合は傭兵時代にたまたま海に面した地域に訪れた時に1度だけ姿を見かけたという。

水流は甲殻獣を追い払うと、満足したのか水面の中に姿を消す。その様子を見てレナ達は安心する一方、同時に湖から追い払われた甲殻獣が自分たちの元に迫っている事に気づく。


『フゴォオオオッ!!』
『わあっ!?まずいまずい、こっちに来てますよあれ!?』
「ひいいっ!?あの水竜、何てことをするんだよ!?」
「私たちの足では甲殻獣から逃げきれないわ!!戦うしかないわよ!!」
「皆、俺の後ろに下がれ!!」
「ゴンちゃん!?まさか受け止める気!?それはいくら何でも無謀だよ!!」


皆を守るためにゴンゾウが前に出ると、迫りくる無数の甲殻獣に対して腕を広げる。それを見たレナは慌てて止めようとしたが、ゴンゾウは全身の血管を浮き上がらせると、皮膚を赤く変化させた。


「うおおおおっ!!」
『フガァッ!?』
「うわっ!?」
「受け止めた!?あの数の甲殻獣を!?」
「す、すげぇっ!?」


鬼人化を発動させたゴンゾウは限界まで肉体能力の強化を行うと、突進を仕掛けてきた甲殻獣数体を正面から受け止め、逆に弾き返す。その結果、後列に続いていた甲殻獣の群れは倒れこんだ甲殻獣に足元を奪われ、転倒する。甲殻獣の最大の弱点は突進中には急停止できない事であり、ゴンゾウは数体の甲殻獣を倒しただけで他の甲殻獣もまとめて転倒させる。

結果的には甲殻獣の群れがレナ達の前に倒れこみ、その様子を見届けたゴンゾウは安心したのか鬼人化を解除すると、直後に筋肉痛が襲ってきたのか膝をつく。


「ぐうっ……まだ、この力は俺には使いこなせないか」
「いや、十分過ぎるよ!!よくあんなの受け止めたなゴンゾウ!!」
「すぐに回復させてあげるからね」
「助かる……ありがとう、レナ」


レナは回復魔法を施すと、筋肉痛も大分和らいだのかゴンゾウは安堵した表情を浮かべ、その一方でシズネの方は雪月花を引き抜いて倒れた甲殻獣の前に移動する。彼女は雪月花から冷気を迸らせ、甲殻獣を睨みつけた。


「――消えなさい、言葉は分からなくても意味は理解できるんでしょう?」
『フガァッ……!?』


シズネの冷たい眼差しと雪月花から放たれる魔力を浴びた甲殻獣は慌てて起き上がると、身体を引きずりながらもレナ達の元から急いで立ち去る。その様子を見て戦闘を避けられた事にダインは安堵する一方、ホネミンの方は大声を上げる。


『あああああっ!?』
「な、何だ!?今度は何なんだよ!?」
「どうしたホネミン!!コボルトに骨を嚙り付かれたの!?」
『いや、違いますよ!!ほら、あれを見てください!!あれっ!!』
「あれって……洞穴か?」


ホネミンが指差す方向に視線を向けると、そこには土手のように地面が盛り上がった場所が存在し、そこには洞穴のような大きな穴が存在した。
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