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S級冒険者編

第四フェーズ

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「撃剣!!」
「兜砕き!!」


激しい衝撃と共に金属音が鳴り響き、互いに大剣を構えたレナとバルが打ち合う。その迫力は他の人間の介入を許さず、二人は全力で斬り合った。大剣という性質上、普通の剣と違って重みがある分に振り回すのも難しいのだが、その分に一撃の重さは大きい。

互いに全身の筋肉を活用して大剣を振り上げ、攻撃を行う。純粋な身体能力は戦闘職であるバルが勝るが、魔法の力で肉体の限界まで能力を上昇させたレナも負けずに振りかぶり、互角の勝負を繰り出す。そして徐々に攻撃速度と小回りが勝るレナが追いつめていく。


「うおおおおっ!!」
「くぅっ……舐めるんじゃないよ!!」


自分に対して猛攻を仕掛けるレナにバルは後ずさるが、隙あらば反撃を繰り出す。しかし、その反撃さえもレナは打ち破り、逆に彼女の大剣を掴みとる。


「取ったぁっ!!」
「なっ!?」


素手で刃を掴んできたレナに対してバルは呆気に取られるが、その直後に彼女の大剣は氷のように粉々に砕け散ってしまう。いったい何が起きたのか理解できなかったが、レナは物質変換を発動させてバルの大剣を非常に脆い物質に変化させて砕いたに過ぎない。武器を失って呆然とするバルに対してレナは大剣を勢いよく振り回し、止めの一撃を繰り出そうと振りかぶる。


「回転撃!!」
「ぐあっ!?」
「ば、バル……!?」


バルの胴体に大剣の刃が食い込むと、そのまま彼女の肉体は切断された。その光景を見てダインが声を上げるが、すぐにバルの肉体は光の粒子と化して消えてしまう。その様子を見てレナは額の汗を拭い取り、自分の大剣を見て眉をしかめた。


「……偽物だとは分かっていても、やりにくかったな」
「そ、そうだな……偽物なんだよな」
「倒さなければ私達が殺されていた……仕方なかった」
「ああ、そうだな……」
「まあ、しょうがありませんよ。ほらほら、ゴンゾウさんもミナさんも動かないでください、治療が出来ないじゃないですか」
「ご、ごめんね……」


レナが戦っている間、バルの攻撃で負傷したゴンゾウとミナはホネミンに治療を受けていた。ホネミンの状態だったときは自分の肉体を維持するために魔力を使用していたホネミンだが、現在は元の肉体を取り戻したので魔法も扱えるようになった。彼女は回復魔法を施し、二人の治療を行う。

コトミンの回復魔法と比べれば回復速度には劣るが、彼女の場合は二人の同時に回復させるほど器用さを持ち合わせ、両手でゴンゾウとミナの治療を行う。その様子を見ていたシズネは皆の元に戻ると、周囲の光景が変化し始めた。


『第三フェーズを終了とさせていただきます。これより、第四フェーズへと移行します』
「まだあるのか……いい加減にしてほしいよ」
「いったい何なのよこの声は……」
「まだ戦わされるのか……」


休む暇もなく連戦を強要されるレナ達はいい加減にうんざりとしてきたが、泣き言は言っている暇も許されず、周囲の風景が暗黒空間へと染まる。今度は誰と戦わされる事になるのかと全員が身構えると、周囲の光景が変化してやがてのどかな草原へと切り替わった。


「えっ……何だここ?草原か?」
「……敵の姿は見えないな」
「ここは……見覚えがないな」
「嫌な予感がするわね……とんでもない奴と戦わされそうな気がするわ」
「こ、怖い事を言うなよ……」


何の変哲もない草原に場所を移動したレナ達は周囲を警戒すると、ここでレイナの魔力感知が発動し、上空か強力な魔力を感じ取った。嫌な予感を覚えたレナは振り返ると、そこには上空から近づいてくる赤色の竜の姿を発見して声を上げる。


「火竜!?」
「グガァアアアアッ!!」


上空から現れたのは先日にレナ達が倒した火竜よりも一回りは大きい火竜が出現し、そのままレナ達の頭上を通過すると、地上へと降り立つ。その様子を見てレナ達は火竜の迫力に圧倒され、まさか次の相手が竜種である事に全員が取り乱す。


「ぎゃあああっ!?か、火竜ぅううっ!?」
「ダイン、落ち着け!!」
「……どうやら、次の相手のようね」
「そ、そんな……竜種と戦うなんて無理だよ!?」
「やるしかない!!」


火竜の登場にダインは泣き叫び、ミナは竜種を相手にして自分たちだけで勝てるはずがないと告げるが、それでもこれまでの状況から考えても戦う以外に道はない。そもそもこの場所が仮想空間だとしたら逃げ場などなく、戦う以外に道はない。

レナは火竜の登場を確認すると同時に駆け出し、地上に降りている間に仕留めるために退魔刀と反鏡剣を両手で握りしめる。一方で火竜は自分に迫ってきたレナを見て尻尾を振りかざし、横なぎに振り払う。


「ガアッ!!」
「当たるかっ!!」


横方向から迫ってきた尻尾に対してレナは跳躍して回避すると、空中にて両手に紅色の魔力を宿し、上空から攻撃を仕掛けた。
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