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真・闘技祭編
海竜の死骸
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――時は同じく、獣人国に存在する港町では大きな騒動が起きていた。その理由とは港の方に大量の魚の死骸が浮き上がり、しかも全ての死骸が黒焦げと化していた。様子を調べに来た兵士達は何が起きたのか理解できず、黒焦げと化した魚の大群が浮かぶ海面を見て戸惑う。
「こ、これは……何が起きたというのだ?」
「い、いや……おれがおいらたちにもよく分からなくて、漁に出ようとしたときはこんな事になってたんだ」
兵士は港の漁師たちに何が起きたのかを尋ねるが、彼等もこの状況に戸惑いを隠せず、いったい何が原因で海中の魚たちが黒焦げと化して浮かんできたのか理由が分からないという。魚が単純に死んで浮かんでいるだけならば何らかの病原菌が蔓延しているのかと思われるが、問題なのは黒焦げと化した状態で死んでいる事だった。
一先ずは一部の魚を回収して状態を調べるが、内部まで完全に焼き尽くされていた。しかし、それは炎で焼いたという感じではなく、まるで「電流」か何かを流し込まれたような様子である事に兵士は気づく。
「これはいったい……何が起きている?」
「どうした、何があった?」
「何?誰だ……あ、貴方は!?」
調査中に話しかけられた兵士は振り返ると、そこにはロウガの姿が存在した。彼は一時期的に獣人国に帰国し、その傍には彼の弟子の一人でもあるガロの姿もあった。剣聖であるロウガは獣人国でも有名な存在のため、兵士達は彼の顔を見て驚く。
一方でロウガの方は海面に浮かぶ魚の死骸に目を向け、兵士が回収した死骸の状態を確認すると、目つきを鋭くさせる。一方でガロの方は不気味そうに死骸が浮かぶ海面を見下ろす。
「こりゃ酷いな……しばらくは漁が出来そうにない。いったい何が起きたんだ?」
「そ、それが……我々にも分からず困っているのです」
「ふむ……恐らくは何者かが雷属性の魔法を水中で使用した結果、海中に存在した魚たちも死亡したという所だろう。だが……これだけの魚に被害を与えるところを見ると相当に強力な雷属性の魔法を生み出したのか」
ロウガの見解では黒焦げと化した魚たちを見て何者かが海に向けて雷属性の魔法を生み出したと考えたが、生半可な威力の雷属性の魔法を撃ち込んだ所でここまでの被害は生まれない。それこそマリアのように魔法を極めた魔術師の仕業としか考えられない。
世界最強と言っても過言ではないマリアに匹敵する魔術師が存在するのかは怪しいが、少なくとも雷属性の魔法の使い手が現在の状況を引き寄せた事は間違いないと判断したロウガは兵士に振り返る。
「この街に滞在する魔術師を調べた方がいい。その中に雷属性の魔法を得意とする者がいたら事情聴取を行った方がいいだろう」
「は、はい!!分かりました!!」
「それにしても……いったい何が目的でこんなことを。はた迷惑な奴がいたもんだな……うわ、なんだ!?」
「どうしたガロ?」
海面を見ていたガロが驚きの声を上げ、ロウガは何事かと視線を向けると、ガロが指差した方向に巨大な蛇の胴体のような死骸が浮かんでいた。それを見てロウガも驚き、兵士や漁師たちも困り果てた様子を浮かべる。
「ああ、やはりあれが気になりますか。実は俺達も困ってたんですよ」
「な、何だあれは……?」
「恐らくですが、海竜の死体だと思われます」
「海竜……リバイアサンの事か!?」
「はい、顔はないので確認できないのですが、恐らくはここまで流れ着いてきたのでしょう」
リバイアサンの死骸という言葉にロウガとガロに衝撃が走り、街の住民も兵士達もどのように対処すればいいのか困り果てていた。海面に浮かぶ巨大な蛇を想像させる死骸を見てロウガもガロも動揺を隠せず、もしも本当に死骸の正体がリバイアサンだとすれば死因が何なのかを調べる必要があった――
――その後、船を出してリバイアサンの死骸を引き上げる事に成功すると、どうやら流れ着いてきたのはリバイアサンの死骸の一部らしく、せいぜい10メートル程度の長さの胴体が港に引き上げられる。顔面の部分は確かに存在せず、その代わりに傷口の部分が焼かれたような痕跡が残っていた。
「……間違いない、このリバイアサンは殺されている」
「そ、そんな馬鹿な!?」
「現実を見ろ、この傷口は明らかに焦げている。つまり、この海竜は魚の死骸を築き上げた者に殺された……というよりも、襲われた人間がリバイアサンを殺すときに雷属性の魔法を使用し、その影響で海中の魚たちも犠牲になったと考えるべきだろう」
「まさか……マリア様以外にそんな事が出来る魔術師がいるなんて……!!」
ガロは衝撃を受けた表情を浮かべ、本当にリバイアサンを倒せる魔術師がマリア以外に存在するのかと動揺を隠せない。しかし、そんな彼に対してロウガは更に言葉を続ける。
「いや、これは魔術師の仕業ではない」
「えっ……」
「この死骸は明らかに「焼き切り裂かれた」のだ。つまり、リバイアサンを殺した者の正体は……魔法剣士だ」
「何、だって……」
ロウガの言葉にガロは目を見開き、一方でロウガも冷や汗を流す。まさかこの世にリバイアサンを剣で殺す人間が存在したという事実に二人は戦慄を覚えた。
「こ、これは……何が起きたというのだ?」
「い、いや……おれがおいらたちにもよく分からなくて、漁に出ようとしたときはこんな事になってたんだ」
兵士は港の漁師たちに何が起きたのかを尋ねるが、彼等もこの状況に戸惑いを隠せず、いったい何が原因で海中の魚たちが黒焦げと化して浮かんできたのか理由が分からないという。魚が単純に死んで浮かんでいるだけならば何らかの病原菌が蔓延しているのかと思われるが、問題なのは黒焦げと化した状態で死んでいる事だった。
一先ずは一部の魚を回収して状態を調べるが、内部まで完全に焼き尽くされていた。しかし、それは炎で焼いたという感じではなく、まるで「電流」か何かを流し込まれたような様子である事に兵士は気づく。
「これはいったい……何が起きている?」
「どうした、何があった?」
「何?誰だ……あ、貴方は!?」
調査中に話しかけられた兵士は振り返ると、そこにはロウガの姿が存在した。彼は一時期的に獣人国に帰国し、その傍には彼の弟子の一人でもあるガロの姿もあった。剣聖であるロウガは獣人国でも有名な存在のため、兵士達は彼の顔を見て驚く。
一方でロウガの方は海面に浮かぶ魚の死骸に目を向け、兵士が回収した死骸の状態を確認すると、目つきを鋭くさせる。一方でガロの方は不気味そうに死骸が浮かぶ海面を見下ろす。
「こりゃ酷いな……しばらくは漁が出来そうにない。いったい何が起きたんだ?」
「そ、それが……我々にも分からず困っているのです」
「ふむ……恐らくは何者かが雷属性の魔法を水中で使用した結果、海中に存在した魚たちも死亡したという所だろう。だが……これだけの魚に被害を与えるところを見ると相当に強力な雷属性の魔法を生み出したのか」
ロウガの見解では黒焦げと化した魚たちを見て何者かが海に向けて雷属性の魔法を生み出したと考えたが、生半可な威力の雷属性の魔法を撃ち込んだ所でここまでの被害は生まれない。それこそマリアのように魔法を極めた魔術師の仕業としか考えられない。
世界最強と言っても過言ではないマリアに匹敵する魔術師が存在するのかは怪しいが、少なくとも雷属性の魔法の使い手が現在の状況を引き寄せた事は間違いないと判断したロウガは兵士に振り返る。
「この街に滞在する魔術師を調べた方がいい。その中に雷属性の魔法を得意とする者がいたら事情聴取を行った方がいいだろう」
「は、はい!!分かりました!!」
「それにしても……いったい何が目的でこんなことを。はた迷惑な奴がいたもんだな……うわ、なんだ!?」
「どうしたガロ?」
海面を見ていたガロが驚きの声を上げ、ロウガは何事かと視線を向けると、ガロが指差した方向に巨大な蛇の胴体のような死骸が浮かんでいた。それを見てロウガも驚き、兵士や漁師たちも困り果てた様子を浮かべる。
「ああ、やはりあれが気になりますか。実は俺達も困ってたんですよ」
「な、何だあれは……?」
「恐らくですが、海竜の死体だと思われます」
「海竜……リバイアサンの事か!?」
「はい、顔はないので確認できないのですが、恐らくはここまで流れ着いてきたのでしょう」
リバイアサンの死骸という言葉にロウガとガロに衝撃が走り、街の住民も兵士達もどのように対処すればいいのか困り果てていた。海面に浮かぶ巨大な蛇を想像させる死骸を見てロウガもガロも動揺を隠せず、もしも本当に死骸の正体がリバイアサンだとすれば死因が何なのかを調べる必要があった――
――その後、船を出してリバイアサンの死骸を引き上げる事に成功すると、どうやら流れ着いてきたのはリバイアサンの死骸の一部らしく、せいぜい10メートル程度の長さの胴体が港に引き上げられる。顔面の部分は確かに存在せず、その代わりに傷口の部分が焼かれたような痕跡が残っていた。
「……間違いない、このリバイアサンは殺されている」
「そ、そんな馬鹿な!?」
「現実を見ろ、この傷口は明らかに焦げている。つまり、この海竜は魚の死骸を築き上げた者に殺された……というよりも、襲われた人間がリバイアサンを殺すときに雷属性の魔法を使用し、その影響で海中の魚たちも犠牲になったと考えるべきだろう」
「まさか……マリア様以外にそんな事が出来る魔術師がいるなんて……!!」
ガロは衝撃を受けた表情を浮かべ、本当にリバイアサンを倒せる魔術師がマリア以外に存在するのかと動揺を隠せない。しかし、そんな彼に対してロウガは更に言葉を続ける。
「いや、これは魔術師の仕業ではない」
「えっ……」
「この死骸は明らかに「焼き切り裂かれた」のだ。つまり、リバイアサンを殺した者の正体は……魔法剣士だ」
「何、だって……」
ロウガの言葉にガロは目を見開き、一方でロウガも冷や汗を流す。まさかこの世にリバイアサンを剣で殺す人間が存在したという事実に二人は戦慄を覚えた。
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