不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,022 / 2,090
真・闘技祭 予選編

冒険者達との競争

しおりを挟む
――同時刻、レナはエリナと共に行動中、多数の冒険者が街道を駆け巡る「一角兎」を追いかけまわる光景を確認した。一角兎は額の角が青く光り輝かせ、無数の冒険者から逃げ回っていた。


「キュイイッ!?」
「くそ、待ちやがれっ!!」
「そっちにいったぞ!!」
「逃がすか!!」


冒険者達は素早い動きの一角兎に翻弄され、我先にと捕まえようとするが中々に捕まらない。一角兎は動きの速さと小柄な体格を利用して冒険者達の足元を潜り抜けながら逃げ回り、中々捕まる様子はない。


「うへぇっ……なんか醜い光景っすね」
「皆必死なんだよ、そういったら可哀想でしょ」
「はい、すいません。でも、今は敵だから容赦はしませんよ」
「え?」


エリナは口元を舐めると一本の矢を取り出し、彼女は師のハシラから受け取った「黒弓」を構える。矢を装填して狙いを定めると、地上を駆け抜ける一角兎に狙いを定めて彼女は撃ち込む。

放たれた矢は真っ直ぐに一角兎へと迫り、額の角の根元へ衝突させ、回収素材である一本角を切り離す。唐突な出来事に一角兎も冒険者達も呆気に取られ、やがて空中に飛んだ一本角はエリナの元へと飛び込み、彼女は難なく手にした。


「素材回収!!どうですか兄貴?前よりもあたしの狙撃技術は向上したでしょう」
「へえっ……今の、狙ってやったの?」
「そうですよ。単純に当てるだけではなく、何処に角が飛んでいくのかを計算して撃ちました」


自慢げにエリナは自分の元に角が飛んでくるように狙って撃った事を知らせ、そんな彼女に素直にレナは感心した。確かに以前よりも射撃の技術が上がっており、しかも追われて動き回る一角兎を狙い撃ちにしたのだから凄い。

既にエリナの腕前は師の柱に匹敵するかもしれず、狙撃に関する技術ならばシェルにも遅れは取らないだろう。しかし、獲物を横取りされた形になった冒険者達はレナ達に視線を向け、怒りを抱く。


「く、くそっ!!よくも俺の獲物をっ!!」
「それを寄越しやがれっ!!」
「ば、馬鹿っ!?相手をよく見ろ、あの大剣は間違いなくS級冒険者のレナだぞ!!あの破壊王子だ!!」
「誰が破壊王子だ!!」


冒険者の一部は力ずくでレナ達から素材を奪い取ろうとしたが、すぐにレナの存在を知っていた他の冒険者に引き留められる。相手がS級冒険者と知って何人かしり込みするが、それでも厳しい予選を勝ち抜いた彼等の大半は相手がS級冒険者だろうと自分の腕を信じて挑もうとする。


「S級冒険者が何だ!!俺は行くぞ!!」
「くそ、こうなったら全員で掛かるぞ!!いくら強いといってもこれだけの人数ならどうにかなるだろ!!」
「よし、ならお前が先に行け!!」
「いやいや、お前が先に行けよ……」
「うざってぇっ!!退いてろお前ら、俺が相手をしてやる!!」


冒険者の中から巨人族の男性が現れると、その男は両手に手斧を所持していた。それを見てレナはエリナの叔父であるギンタロウの事を思い出し、彼がダインの修行の面倒を見ていた事を思い出す。


「そういえばエリナ、ギンタロウさんがダインの修行を見ていた事は知ってる?」
「ええっ!?何ですかその話、あたし初耳なんですけどっ!?というか、なんで叔父さんがダインの兄さんの修行を……?」
「そこら辺は後で教えるよ」
「おい、無視すんじゃねえぞガキがっ!!」


巨人族の男は手斧を両手で振り回しながらレナの元に接近し、迫りくる冒険者に対してレナは背中の退魔刀を引き抜こうとした時、ここで唐突に風の聖痕が反応を強めた。

先ほどから聖痕は反応を示し、何処か別の場所で誰かが聖痕の力を使用している事は間違いない。その何者かを探すためにレナは移動していたのだが、攻撃に移る寸前に聖痕が反応した事で動きが止まってしまい、隙を生み出す。


(しまっ……!?)


退魔刀を引き抜く寸前で動きを止めたレナを見て巨人族の男は手斧を振りかざし、一気に振り下ろす。その光景を目撃したレナは咄嗟に反対の腕を伸ばして鏡刀を引き抜こうとしたが、その前に巨人族の背中に衝撃が走った。


「ぐはぁっ!?」
「えっ?」
「うわっ!?」


巨人族の男の背中に爆発が生じると、巨体が前のめりに倒れ込み、慌ててレナとエリナはその場を離れる。倒れた巨人族の男は白目を剥いて気絶し、いったい何処から攻撃を受けたのかとレナとエリナは周囲を見渡す。

他の冒険者達も唐突に背中が爆発した巨人族の男を見て動揺し、慌てた様子で辺りを見渡すが、何処にも魔術師らしき姿は見えない。しかし、先ほどの爆発はどうみても魔術師の魔法による攻撃にしか思えず、そうでもなければ爆発が発生して人を吹き飛ばすなど有り得ない。


(今の爆発……それに魔法の呪文も聞こえなかった。という事は……シェルか!!)


レナは観察眼と遠視を発動させて周囲を観察すると、かなり離れた建物の上から「ブラスト」を構えるシェルの姿を発見し、彼女は笑みを浮かべて軽く手を振る。その様子を見てレナは自分に手を振っているのかと思ったが、よくよく見るとシェルの手にはオークの牙と思われる回収素材が握りしめられていた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。