不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,145 / 2,090
魔人編

魔族

しおりを挟む
「かつて魔王という存在がいた時代、あのメドゥーサは誕生したと言われている」
「魔王……」
「帝国がまだ健在だったころ、幾度か勇者召喚と呼ばれる儀式が行われ、魔王と呼ばれる存在を打ち破ったという話は聞いているな?」
「ええ、まあ……でも、確か400年前に行われた勇者召喚を最後に世界ではもう勇者を召喚する方法は無くなったと聞いております」
「帝国の英雄と呼ばれた異世界人が召喚されたのを最後に召喚の儀式は行われず、召喚の方法も失われたという話は聞いているわ」


バルトロス帝国時代、魔王と呼ばれる存在が幾度か誕生した。その度に世界各国は「勇者召喚」と呼ばれる儀式を行い、異世界から勇者と呼ばれる存在を呼び出して魔王の討伐をさせていた。この異世界人とはレナが暮らしていた世界の住民の事を指し、今から400年ほど前に行われた最後の勇者召喚を最後に世界から勇者を召喚する技術は失われた。

技術が失われた理由は勇者召喚に必要な素材である特殊な魔石が発掘できなくなったからだと言われており、現在ではもう勇者を召喚する事は不可能だと言われている。既にソルの代ではもう勇者召喚に必要な魔石は失われていたらしい。


「古文書によると、あのメドゥーサは元々は支配下だった。しかし、ある時に魔物使いの勇者に手によってメドゥーサを逆に支配下に収める事に成功した」
「えっ!?魔物使いが?」
「メドゥーサは魔人族だからな、魔物使いの能力も通じたらしい。その勇者はメドゥーサの力を利用し、かつて世界を騒がせた「魔族」と呼ばれる存在をあの場所に封印したのだ」
「魔族……?」
「魔人族が種族として認められる前に呼ばれていた名前ね」


魔人族がまだ人種として認められなかった頃、彼等は魔族と呼称されていた。魔族はその恐ろしい外見と、魔王の支配下にあったために人々から恐れられ、その中には恐るべき力を持つ存在も多かった。当時の勇者でも魔族全員を相手にする程の力は持ち合わせておらず、仕方なくメドゥーサの石化の魔眼を利用して彼等を封じ込めた。


「メドゥーサの能力を利用し、勇者は魔族たちを封じる事に成功した。しかし、石化の魔眼で石像と化した存在は非常に頑丈で破壊する事は出来ず、地下深くに封印する以外に方法はなかった。幸いにもメドゥーサは不死の存在であるため、勇者の亡き後も封印を続けていたらしい」
「そうだったのか……あの化物、只の化物じゃなかったのか。なら、倒したのはまずかったかな?」
「貴方が気に病む事ではないわ。その魔族とやらが封印されていたとは知らなかったのだし、第一にあの地下に封じ込められた魔物の殆どは討伐済みのはずよ」


話を聞いたレナは自分がメドゥーサを倒したせいでとんでもない奴等が復活したのかと思ったが、マリアの調査では地下に封じられていた魔物達の殆どは石化が解除後、王国兵や騎士が対処して討伐が完了しているはずだった。しかし、ソルによると倒された魔物の中に魔族らしき存在はいなかったらしい。


「確かにあの地下に存在した殆どの魔物は倒されただろう。だが、未だにあの地下には長く封印されている存在がいるはずだ……地下の中でも最も警戒が厳重な場所に封じられているはずだ」
「……それをどうして貴方が知っているのかしら?」
「その知識も古文書に書いてあった内容なんですか?」
「いいや、奴等を封印を強めたのは俺自身だからだ……万が一の場合を想定し、俺は単身で地下に潜って魔族と呼ばれる存在を把握し、奴等の石化が万が一にも解除された場合を想定し、奴等が一時の間は動けないように封印を施した」
「そんな事が出来るのですか!?」


石化状態の魔族を更なる封印を施し、メドゥーサが倒された後も封印が持続するようにソルは細工を行ったらしい。その封印方法というのが特殊らしく、彼は1枚の「お札」を取り出す。


「これを見てくれ」
「これは……お札?」
「おふだ?何だ、それは……?」
「これは……和国で見た事があるわね。お守りや、悪しきものを祓う道具、だったかしら?」


ソルが取り出したのは日本語の漢字で「封魔」と記されたお札であり、随分とボロボロな状態だった。ソル曰く、このお札は400年前に彼が持ち込んだ代物らしく、この札を張られている限りはあらゆる生物が動作を封じる事が出来るという。

和国がまだ「日の国」と呼ばれていた時代、ソルはこの国で魔物を封じる手段を知り、彼は「封魔札」と呼ばれる魔族を封じ込める札を入手した。この札を利用すれば魔族を封印する力があり、仮に石化が解けたとしても封印された魔族は動けず、一時の間は封じ込める事が出来るらしい。


「この封魔札を手に入れた我は魔族を封印を試みた。だが、結果から言えば全ての魔族の石像を封じ込める前にメドゥーサに見つかり、石化されてしまった」
「そんな危険な役目をどうして国王が……」
「正直、こんな話をしても誰も信じてくれないからな。何しろ魔族が存在した時代は帝国が誕生したばかりの頃、他人に話してもおとぎ話だとまともに取り合ってくれなかった。だからこそ我は一人で挑んだのだ」


ソルの言葉に確かに古文書に記されいたとはいえ、当時の時代は魔王や魔族はもう滅ぼされた存在と認識されていた。そう考えれば人々が彼の話を信じようとしなくても仕方ない。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。