不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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魔人編

残された時

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「あれ……そういえば闘技祭で現れた魔人族、もしかして……」
「ハンゾウを襲った奴か!!」
「まさか、あれは……」
「うむ……奴は魔族だ、間違いない。名前は恐らくは竜人将のガイアだ」
「竜人将?」
「魔族の中でもかつて魔王の直属の部下が存在した。その数は七名、七魔将と呼ばれている」


レナ達の脳裏に闘技祭で暴れた「竜人」の姿が思い浮かび、ハンゾウの対戦相手を強襲し、成り代わっていた相手である。このガイアは七魔将と呼ばれる存在であり、既にソルと同様に石像から復活を果たしたらしい。


「ちょっと待ちなさいよ、どうしてガイアとやらはもう復活しているの?封魔札とやらで封印はしていなかったの?」
「正確に言えば出来なかった……俺が用意出来た封魔札は6枚、その中で5枚は封印する事に成功したが、残りの1枚を使う前にメドゥーサに石化されてしまった。だからこそ七魔将の中で封印を施せなかった2名は既に復活を果たしているだろう」
「それじゃあ、あんなのがまだ他に1匹もいるのか!?」
「分からん。だが、調べた限りではあの地下に封じられていた魔族は七魔将を除いても複数は存在した。奴等も放置できない存在だったが、当時の俺ではどうしようもなかった」


ソルは石像が解除された後も封印するために封魔札を用意したが、彼の想像以上に地下には数多くの魔族が存在し、どうしようもなかったという。七魔将だけでも封じようとしたが、結局は封印が成功したのは五人だけであり、既に復活を果たした魔族が存在してもおかしくはない。

封じる事に成功した五人の魔族もいつ復活するかは分からず、仮に全ての魔族が復活した場合、当時の勇者でもどうする事も出来なかった脅威が世界中を暴れまわる事になる。


「頼む、我が子孫よ!!どうか不甲斐ない先祖を許してくれとは言わん!!だが、民のためにも共に戦ってくれんか?」
「……話は分かりました。正直、貴方が先祖という話はまだ信じ切れていない部分もありますが……あの闘技祭で現れた竜人のような存在が他にもいるなら放置は出来ません」
「私も協力するわ……うちの可愛い冒険者に手を出した罪、償わせてあげるわ」
「おおっ!!助かる!!」
「七魔将、か……勇者でも手に負えなかった相手か」


レナ達はソルの頼みを引き受ける事に決めると、ここでレナはアイリスと交信を行いたいと思い、交信を試みた。しかし、反応は戻ってこず、どうやら近くにホネミンがいるらしい。


(ホネミンが近くにいるのか……それでアイリスと交信できないんだな)


アイリスから七魔将の情報を聞き取れるかと思ったが、ホネミンが近くにいる間はレナは交信は行えず、彼女から離れなければならない。ここで席を立って適当に離れた場所へと行こうとした時、ダインが唐突に苦しみ出す。


「うぐぅっ!?」
「ダイン!?」
「ど、どうしたの!?」
「わ、分からない……けど、急に聖痕が……!?」


ダインは突如として右腕を抑えると、レナはすぐに彼の服の袖を引っ張り、右腕を露出させた。その結果、闇の聖痕が異様に発熱している事が発覚し、何が起きているのかと戸惑う。


「これは……!?」
「せ、聖痕が勝手に……ぐああっ!?」
「ダイン!!」
「……み、皆気を付けろ!!やばい奴がこっちに近付いて来てる!!まるで、僕の爺みたいな魔力だ……!!」


レナはダインの言葉を聞いて闇の聖痕を通して彼が何かを察知した事に気付き、マリアに顔を向ける。マリアは自分の手の甲に浮かんだ「風の聖痕」に視線を向けるが、彼女の場合は反応は示していない。

闇の聖痕のみが発動している事を考えても接近してきた存在は闇属性の魔法の使い手の可能性が高く、しかもダインの感覚ではまるで自分の祖父と対峙した時と同じ感覚らしい。ダインの家系は「呪術師」であるため、敵が呪術師である可能性も出てきた。


「ダイン、何処から近付いているのか分かる?」
「あ、ああ……多分、あっちの方からだ」
「あっちというと……ウル達がいる裏庭か!?」


レナは急いで窓へと駆けつけると、裏庭には外に待機させていた魔獣達が戦闘態勢に入っていた。ウル、ミノ、アインの3体が既に威嚇状態へ陥り、魔獣の唸り声が響く。


「グルルルッ……!!」
「キュロロロッ!!」
「ブモォオッ!!」
『…………』


3体の魔獣に取り込まれる形で既に何者かが屋敷の敷地内に侵入し、その人物は全身を黒マントで覆い隠していた。それを確認したレナはダインが感じた嫌な魔力の正体はこの人物だと判断し、外へ飛び出す。


「誰だ、お前はっ!!」
「レナ!!」
「レナさん!!」


レナ以外の者達も外へ飛び出し、シズネやリンダも向かい合う。だが、3体の魔獣とレナ達を前にしても相手は動じた様子は見せず、やがて黒マントを脱ぎ去ると、驚くべき容姿が露になる。
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