不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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魔人編

屋敷への襲撃者

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「なっ……人間!?」
「まさか……」
「うっ……何ですか、この魔力は!?」
「…………」


黒マントが捲れて姿を現すと、レナ達の視界には随分と顔色が悪いが、普通の人間の男性の姿をしていた。肌色はダークエルフのように褐色のように見えるが、実際の所は褐色肌というよりはまるで全身に黒色の魔力の靄のような物を纏っている事に気付く。

男からは死霊使いなどの独特なおぞましい魔力を感じ取り、ここまでの魔力を持つ存在は「キラウ」以外では初めてである。男は杖を持ち、その杖には「黒蛇」のような紋章が刻まれていた。


「誰だいあんたは!!勝手に人の屋敷の乗り込んで!!」
「貴女の家ではないけどね……でも、動かないで頂戴。不審な動きをしたら容赦はしないわ」
「……こいつ、気味が悪いわ」
「見ているだけで肌がぴりぴりする……」
「ぷるるんっ……(近寄りたくない)」


まるで死霊使いが操る死霊人形のように不気味な容姿の相手にレナは警戒する中、相手は何を思ったのかゆっくりと両腕を広げると、全身から湧き出す闇属性の魔力を膨張させる。その光景を見たレナはすぐに敵が「魔鎧術」を発動した事に気付く。


「まさか、これは魔鎧術!?」
「なっ!?嘘だろう!?」
「これは……全員、私の後ろに下がりなさい!!」
「マリア!?」


危機を察知したマリアは窓から飛び出すと、全員の前に立って両手を構えた。彼女は最上級魔法を発動させるために魔力を集中させ、複雑な紋様の魔法陣が空中に展開する。


「プロト・アイギス!!」
「……あぁあああああっ!!」


魔法陣が展開した瞬間、男は奇声を上げたかと思うと、全身から闇属性の魔力を解放させて広範囲に発散させる。その結果、魔法陣によってレナ達は攻撃を防ぐ事には成功した、周囲に闇属性の魔力が広がっていき、やがては黒煙のようにレナの屋敷だけではなく、広範囲に広がっていく。


「な、何だ!?何をしたんだいこいつ!?」
「この魔力は……ま、まずい!!皆、その煙に触れるな!!」
「煙って……うわっ!?」


プロト・アイギスによって直撃は免れたレナ達ではあったが、拡散する闇属性の魔力に対してダインは危機感を抱き、皆に触れないように注意した。しかし、外に出ていた魔獣たちの中でアインとミノは煙に触れてしまい、直後に頭を抑える。


「キュロロロッ!?」
「ブモォオオッ……!?」
「アインちゃん!?ミノ君!?ど、どうしたの!?」
「これは……下がりなさい!!近付いては駄目よ!!」


頭を抑えながら悲鳴を上げた魔獣たちに主人であるティナが心配して近寄ろうとしたが、それを見たマリアは彼女の身体を引き留める。やがて魔獣たちは頭から手を離すと、ゆっくりと起き上がった。

アインとミノが立ち上がったのを見てティナは大丈夫なのかと心配したが、この時にアインとミノの皮膚と鱗が変色し、徐々に全身が黒く染まると、やがて2匹は両腕を広げてレナ達に襲い掛かろうとした。


「ギュロロロッ!!」
「ブモォオオッ!!」
「わあっ!?ど、どうしたの二人とも!?」
「姫様、御下がりください!!」


主人であるティナに襲い掛かろうとした2匹を見てリンダが咄嗟に前に出ると、2匹に対して両手を構える。しかし、それを見たマリアは直感で危険を感じ取り、彼女は右手の風の聖痕を発動させて右腕を放つ。


「下がりなさい!!」
「きゃっ!?」
「ギュロンッ!?」
「ブモォッ!?」


マリアが風圧を発生させると、アインとミノは強風で吹き飛ばされて倒れ込み、リンダが触れる前に離れてしまう。マリアは周囲から迫りくる闇属性の魔力で構成された「黒霧」に視線を向け、風の聖痕を発動させて黒霧を遥か上空へと吹き飛ばす。


「吹き飛びなさい!!」
「す、凄い!?」
「何て魔力……これが風の聖痕の真の力なの!?」
「叔母様、やっぱり凄い……」


レナ以上に風の聖痕を使いこなし、屋敷の外にまで広まろうとしていた魔力を全てマリアは上空へと吹き飛ばし、拡散させて消し去る。その光景にレナ達は安堵するが、未だにアインとミノの身体は黒く染まり、元に戻る様子はない。


「ギュロロロッ……!!」
「ブフゥウウッ……!!」
「ど、どうしたの二人とも!?何でそんなに怒っているの!?」
「いいえ、怒っているわけではないわ……この子達は操られているのよ」
「まさか、死霊人形かい!?」
「ち、違う……でも、似たような感じだと思う。二人の身体の中に闇属性の魔力が混じって、正気を失っているんだ。だから、今は僕達の声は通じない……と思う」


ダインは聖痕を抑えながらもバルの言葉を否定し、現在のアインとミノの身体に起きている現象を話す。その言葉を聞いてレナは死霊使いが死体に魔力を込めて操るように先ほどの男の魔力がアインとミノを狂わせている事を知る。
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