不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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弱肉強食の島編

ハルナVSスカー

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「では儂が審判を務めよう。勝負の内容は相手が動けなくなるまで戦う、これで構わんな?」
「いいだろう」
「よっしゃあっ!!」


ハルナとスカーは向かい合い、睨み合いながら火花を散らす。ミノタウロスの中ではスカーは小柄ではあるが、それでもハルナよりも一回りや二回りは大きい。二人の準備が整ったのを確認すると、族長は試合の合図を行う。


「始めっ!!」
「うおおおおっ!!」
「うらぁっ!!」


二人は同時に踏み込むとお互いの拳を突き出し、顔面に向けて放つ。この時にレナはハルナの行動を見て慌てて声を掛けた。


「馬鹿!!リーチの差があるのに同じ攻撃なんか仕掛けたら……」
「ふんっ!!」
「あがぁっ!?」


腕が長いミノタウロスの方が先にハルナの顔面に的中し、彼女は倒れそうになる。しかし、殴りつけられながらもハルナは踏み止まり、瞳を光らさせて逆にスカーの腕を掴む。

顔面に殴り込まれた腕を掴んだハルナは恐るべき握力で握りしめると、あまりの握力の強さにスカーは目を見開き、彼女は腕を引き寄せて一本背負いの要領で地面に叩きつける。


「せいりゃああっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「一本背負い!?そんな技まで覚えてたのか!?」
「な、何だ今の技……」
「あんなの見たことない」


ハルナが投げ飛ばした姿を見てアンジュとサーシャも驚き、レナでさえもハルナが柔道の一本背負いと酷似した技を使えるなど知らなかった。しかし、地面に叩きつけられながらスカーは起き上がり、苦痛の表情を浮かべながらも今度は拳を振り回す。


「このぉっ!!」
「おっとと……今度は当たるかよ!!」


繰り出された拳に対してハルナは全て回避すると、スカーに向かって再び踏み込み、渾身の力を込めて顎に拳を叩きつける。ボクシングのアッパーカットに似ており、攻撃を受けたスカーは怯む。


「うりゃあっ!!」
「ぐはぁっ……こ、このっ!!」
「今のはボクシングの……!?」


ハルナの動作を見てレナは彼女が格闘技にも精通しているのかと思ったが、すぐにそれは間違いだと気付く。ハルナは人から学ぶような性格ではなく、彼女は生まれた時から戦闘のセンスが優れていたのだ。だからこそ他人から学ばずとも彼女自身が最善の攻撃を繰り出し、それが偶々他の格闘技の技になったに過ぎない。

しかし、ミノタウロスであるスカーは打たれ強く、ハルナの攻撃を喰らいながらも意識を失わずに踏み止まる。この際に血を流すが、冷静さを取り戻したのか目つきを鋭くさせた。


「なるほど……中々やるな。だが、そろそろ俺も本気で行かせてもらうぞ」
「本気?今まで手を抜いていたのか?」
「ああ、その通りだ……ぬううんっ!!」
「うわっ!?」


スカーは気合を込めるように雄たけびを上げると、彼の筋肉が肥大化した。その様子を見てレナはまずい予感がした。ゴンゾウの「鬼人化」とは違うようだが、それと似た様に筋力を強化させる術を隠し持っていたらしい。


「ハルナ!!油断するな、カウンターを決めろ!!」
「かうんたぁっ……?」
「よそ見とはいい度胸だな!!」


レナの言葉にハルナは意味が分からずに疑問を抱くが、その間にもスカーは両腕を広げ、彼女に抱きつこうとした。組み付けば力ずくでどうにかなると判断したらしく、スカーはハルナを抱きしめようとした。


「これで終わりだ!!」
「――お前がな!!」


しかし、抱きつこうとしてきたスカーに対してハルナは笑みを浮かべると、彼女は突っ込んできたスカーの顎に対して今度は掌底を繰り出し、脳を揺さぶる。その結果、スカーは一瞬だが意識を失い、その間にハルナは次の攻撃に移る。

彼女はスカーの背後に移動すると、そのまま力を込めて抱きしめ、後ろに向けて倒れ込む。プロレスのジャーマンスープレックスのように叩きつけるハルナの必殺技だった。


「喰らえっ!!」
「ぐはぁあああっ!?」
「ス、スカー!?」
「ば、馬鹿な……あのスカーが子供扱いだと!?」
「やった!!偉いぞハルナ!!」


ハルナの渾身の一撃によってスカーは意識を失い、白目を剥いて倒れたまま動かない。結果から言えば最初の攻撃以外でハルナはまともにスカーの攻撃を受けておらず、その殴られた傷の方も痣も残っていない。圧倒的な実力差を見せつけた。

よくよく考えたら彼女は外見は人間の様に見えてもミノタウロスであり、その力は聖痕がなくても十分に凄まじい。そもそも聖痕を制御できる頑丈な肉体を持っている時点で魔法が使えなくとも問題はなかったのだ。


「牛人族の長、これで満足か?なら、あたしの男の言う事を聞いてくれよな」
「むむむっ……」


スカーを倒したハルナはレナの右肩に手を置き、ウィンクを行う。試合は自分が勝利したのだから話を聞くのが長との約束であり、長はやがて観念したように頷く。
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