不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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弱肉強食の島編

人の力

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「刺衝突!!」
「アァアアアアッ!?」


退魔刀が黒龍の腹部に突き刺さり、血飛沫が舞い上がる。その光景を見ていた竜人族は信じられない表情を浮かべ、自分達がどんな攻撃をしても通じなかった黒龍の鱗をレナの退魔刀は容易く切り裂く。


「な、何だあの武器は……」
「いや、凄いのはあの人間だ……」
「これが……人間の力なのか!?」


彼等はレナ以外の人間を見た事がなく、圧倒的な力を持つレナを見て人間がこうも強い種族なのかと思い込む。実際の所はレナは人間の中でも特異な存在であり、そして彼が扱う武器は聖剣にも匹敵する武器である。

アダマンタイトで構成された退魔刀は黒龍の鱗も易々と貫き、さらにこの状態でレナは魔法剣を発動させる。体内に刃を突き刺した状態でレナは意識を集中させ、氷漬けにした。


「氷装剣!!」
「アアアアッ!?」


いくら再生能力を所持していようと、傷口を凍り付かせればどうしようも出来ず、剣を引き抜く際にレナは体内から凍らせていく。しかし、黒龍は最後のあがきのつもりか再生させたばかりの首を伸ばし、レナへと放つ。


「ガアアアッ!!」
「くっ!?」
「この野郎!!」


黒龍の牙がレナに届く寸前、先ほど吹き飛ばされたハルナが全身から電流を迸らせながら突っ込み、黒龍の頭部を蹴りつける。まだ再生したばかりの首は呆気なく吹き飛び、頭部が砕け散った。

綺麗に切断されたのならばともかく、砕かれた場合は再生も遅いのか首は瞬時には再生出来ず、視界を失った黒龍は戸惑うように首を動かす。その様子を見てレナは退魔刀を引き抜くと、ハルナに声を掛けた。


「ハルナ、電撃を俺の剣に!!」
「電撃!?なるほど、そういう事か!!」
「何をするつもりだ!?」


ハルナはレナの言葉を聞いて考えを理解したように飛び蹴りの態勢を取り、そのハルナに大してレナは退魔刀を構えた。このままでハルナが退魔刀に切られてしまうと思われたが、レナは刃の腹の部分でハルナの蹴りを受け止める。


「うおおおっ!!」
「……よしっ!!」


全身に電流を纏ったハルナが退魔刀の刀身に電撃を送り込むと、退魔刀に刻まれた雷の魔術痕が発動し、雷属性の魔力を帯びる。この際にレナは退魔刀を振りかざし、黒龍の背中に目掛けて突っ込む。


「これで……終わりだぁあああっ!!」


黒龍の背中に向けて退魔刀は突き刺さった瞬間、雷属性の魔力が体内に直接流し込まれ、黒龍は首がない状態なのでまともな悲鳴も上げられずに痙攣する。しかし、まだ完全には倒しきれず、黒龍は暴れ狂う。


『ッ――――!!』
「うわっ、こいつまだ……」
「レナ王子!!」
「レミア!?」


今まで何処に居たのか、砦の方からレミアは駆けつけると、彼女の手元には聖剣エクスカリバーが握りしめられていた。どうして彼女の手元に聖剣があるのかとレナは驚くが、レミアはエクスカリバーを振りかざし、飛び込む。

退魔刀を突き刺した箇所にレミアはエクスカリバーを振りかざすと、同じように聖剣を突き刺す。その結果、黒龍の肉体は光の剣に貫通し、やがて心臓を貫かれたのか動かなくなった。



『ッ――――!?』



最後に黒龍は身体を激しく痙攣させると、この時にレナとレミアの手にしていた剣が引き抜かれ、地上へと降りたつ。今度こそくたばったのか、黒龍は完全に動かなくなり、その様子を見届けたレナは額の汗を拭いながらレミアに話しかけた。


「あ、ありがとう。助かったよ……でも、何処に居たの?」
「す、すいません……実はさっきまで地割れに挟まって、他の竜人族の方に助けてもらっていました」
「あ、そうだったんだ……でも、その前にその聖剣、何処に持っていたの?」


レミアは黒龍が最初に砦に突っ込んできた際に出来た地割れに挟まり、今まで動けなかった事を説明する。それならば仕方がないが、レナとしては気になるのは彼女が所持する聖剣だった。

この島で出会った時にレミアの手元には聖剣はなかったはずだが、レミア自身もこの場に聖剣がある事に戸惑い、手に入れるまでの経緯を話す。


「私も良く分からないのですが、地割れに挟まっていた時に外から悲鳴が聞こえてきて……早く私も戦って皆さんの助けになりたいと願った瞬間、この聖剣が何処からともなく飛んできたんです」
「へえ~……聖剣にはそんな機能があるのか」
「多分、そうだと思います……こんな事は初めてですが」


話を聞いたレナは聖剣は所有者が強く望むと、自動的に所有者の元に現れる機能があるのかと思い、そんなレナの考えを肯定するかのようにアイリスの方から連絡をしてきた。


『その通りですよ。聖剣エクスカリバーは真の所有者が聖剣を強く求めた時、所有者の元に訪れる機能があるんです。但し、この機能は聖剣エクスカリバーにしか存在しません。他の聖剣には残念ながらその手の機能はありませんから』
『なんだ、そうだったのか……』


生憎と所有者が求めても聖剣が手元に戻るのは聖剣エクスカリバーだけの能力だと判明し、仮にレナが聖剣を手に入れたとしても自分の元に引き寄せる事は出来ない事が判明する。最もレナの場合は自分が欲する聖剣を錬金術師の能力で作り出せるので特に大きな問題はないが、ともかくレミアはこれで万全の状態で戦える。
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